花里みのり
| タイトル | 花里みのり |
|---|---|
| 画像 | ファイル:HanazatoMinori_Cover.png |
| 画像サイズ | 260x260px |
| キャプション | “咲く許可証”が光る紙片のジャケットイラスト |
| ジャンル | アクションRPG(ストーリー重視) |
| 対応機種 | 幻灯島クラウド |
| 開発元 | リュミエール・ビート工房 |
| 発売元 | 灯彩通信社 |
| プロデューサー | 渡辺精一郎 |
| ディレクター/デザイナー/音楽 | 志村澄香 / 花園凪斗 / 佐久間暦人 |
| 発売日 | 2017年10月12日 |
| 対象年齢 | 12才以上 |
| 売上本数 | 全世界累計123万本(発売後18か月時点) |
| その他 | オフライン再生用の“幻灯キャッシュ”機能搭載 |
『花里みのり』(よみ、英: Hanazato Minorі、略称: HM)は、[[2017年]][[10月12日]]に[[日本]]の[[リュミエール・ビート工房]]から発売された[[幻灯島クラウド]]用[[コンピュータRPG]]。[[花里みのり叙事詩]]の第1作目であり、主人公が“咲く許可証”を集めるシリーズの総称でもある[1]。
概要[編集]
『花里みのり』は、紙の街である[[幻灯島]]を舞台として、プレイヤーは“咲く許可証”を手にしてNPCの記憶を植え替える役として操作する[[アクションRPG]]である[1]。
シリーズ一作目にあたる本作は、開発の初期段階で「落ちものパズルをRPGの戦闘導線に溶かす」とされており、戦闘中に物語の改稿が起こるという仕組みが強く支持された[2]。なお、同名表現は後年、登場する架空の“花獣”の総称としても用いられ、[[メディアミックス]]の中心語となった[3]。
キャッチコピーは「許可される前に、花は咲く。」とされ、ゲーム内で配布された“見えない設計書”が一部プレイヤーの間で伝説化したことでも知られている[4]。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
ゲーム内容としては、探索・会話・戦闘が一本道ではなく、章ごとに“街の編集権限”が変化する構造が採られている。プレイヤーは[[編集官]]の見習いとして、戦闘開始の宣言から30秒以内に戦闘UIの文章を1回だけ選び直すことができるとされる[5]。
戦闘システムは[[ハンティングアクション]]型であり、敵は[[花獣]](かじつとしての架空生物)と呼ばれる。花獣の弱点は「光量」や「匂い」「過去の噂」の3系統に分類され、各系統に対応する“栞(しおり)”アイテムを消費して捕縛ゲージを増加させる仕様である[6]。なお、栞は作中の“街の図書館”で同じ名前でも質が違う版が存在し、プレイヤーは結果的に自分のプレイスタイルを半ば強制的に固定されることになる[7]。
アイテム面では、拾った紙片を[[合成炉]]で再配列して“咲く許可証”へ変換する。合成炉は毎回乱数ではなく、プレイヤーの行動ログ(歩数・立ち止まり回数・会話の間)によって反応が変わるとされ、攻略サイトでは「1章は必ず219歩目で黙ってから話す」といった細かい指示が流行した[8]。
対戦モードとしては、本作には直接対戦はないが、代わりに「噂の奪取」を競う非同期形式が実装された。協力プレイは、同じ街の別時間帯に潜り込む“ねじれ協同”として用意され、[[オンライン対応]]であってもゲーム内チャットは禁止であるとされた[9]。
オフラインモードとしては、“幻灯キャッシュ”によりストーリー上の改稿データが端末内に残る仕組みが取られた。開発側は「快適性のための技術」と説明したが、実際には“過去の正解”が残ることへの反発もあり、後に設定変更が行われたとされる[10]。
ストーリー[編集]
物語は、[[幻灯島]]の中央行政区で“許可証のない花”が増え続け、街の記憶が薄れていく状況から始まる。主人公は失効した[[編集官]]見習いであり、花獣が運ぶのは現実ではなく、過去に人々が見たと信じた“物語の体温”だと説明される[11]。
主人公は5つの行政サブ区—[[港帳区]]、[[迷路税関区]]、[[静音郵便区]]、[[反照市場区]]、[[月架学区]]—を巡り、それぞれの区で“咲く許可証”の草案を回収する。草案が揃うほど花は鮮やかになるが、代償としてプレイヤーの選択肢が減っていくため、終盤では探索の自由が段階的に失われるとされる[12]。
最終章では、編集権限を取り戻すために[[リュミエール・ビート工房]]が関わったとされる幻の開発会議記録を“討伐”する。記録の討伐とは、会議内で採用された文章が持つ矛盾をプレイヤー自身が提示し直すことであり、勝敗条件が「敵HP」ではなく「誤差の許容」に変わるとされた[13]。
ただし、この設定はのちに批評家から「文章を倒すなら、戦闘は会話ではないのか」と指摘され、公式も“ゲーム内編集”をより明示するパッチを出したとされる[14]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主人公は編集官見習いの[[花里みのり]]である。彼女は名札に「花の予定表が未承認」と記されたまま旅を続け、戦闘時は“栞の刃”を展開することが多いとされる[15]。
仲間としては、静音郵便区の封蝋職人[[若宮トモ]]がいる。若宮は攻撃魔法ではなく、封蝋で“匂いの弱点”を固定する役回りだとされ、合成炉の素材に関する細かな知識が語られる[16]。
また、港帳区の帳簿神官[[眞田しぐれ]]が同行する。眞田は占い師のようでありながら、実際には行政手続きを口で再現するタイプで、選択肢の文章を1文字だけ改める技「朱字差し戻し」を持つとされる[17]。
敵としては、許可証を食べて増殖する花獣の群れである[[告知なしの百花]]が登場する。とくにボス格の[[白紙の鶴]]は、倒しても戦闘ログが書き換わる性質があるとされ、周回プレイで矛盾が連続する“怖さ”が売りになった[18]。
なお、港帳区には“人としては存在しないはずの秘書”[[小樽里紙]]が現れる。小樽里紙はエンディング後にのみ会話が成立し、会話内容が攻略記事に引用されて炎上したとされる[19]。
用語・世界観/設定[編集]
本作の世界観は、紙が行政機構の媒体として機能する[[幻灯島]]を中心としている。島の各区はそれぞれ異なる“紙質”を持ち、戦闘中に触れる紙片の質がダメージ計算に影響するとされる[20]。
重要概念として“咲く許可証”がある。咲く許可証は花獣を鎮める道具という建前で流通しているが、開発資料では「許可証とは記憶の外部記録である」と書かれており、プレイヤーは最終的に自分の選択が島の歴史を書き換えることを体感する[21]。
花獣は、匂いと噂に反応する架空の生物として扱われる。たとえば[[薄墨バラ]]は雨の会話に反応し、[[綴目コオロギ]]は“引用符の位置”に敏感だとされる[22]。
合成炉の仕組みとしては“再配列”が採られ、栞・封蝋・草案が混ざると“文章の密度”が上がるとされる。なお、公式ガイドでは密度の単位が「文μ(ぶんまいくろ)」で示されていたとされるが[23]、この単位自体の出典は曖昧であるとの指摘もある[24]。
世界観のもう一つの柱として、“編集権限”の段階制度がある。編集官は区ごとに異なる権限ランクを持ち、権限が下がるとプレイヤーの入力候補が狭まる仕様として理解されている[25]。
開発/制作(制作経緯/スタッフ)[編集]
開発は[[リュミエール・ビート工房]]が主導したとされ、当初は“幻灯島”という単語が決まった時点でゲームの脚本家が同時に就業したと社内で語られている[26]。
プロデューサーの[[渡辺精一郎]]は、前作にあたる映像体験プロトタイプが“文章の選択”によって没入が変化したため、RPGの戦闘導線にも編集を持ち込んだと説明した[27]。ディレクターの[[志村澄香]]は、制作の第3スプリントで「会話の沈黙を戦闘時間に変換する」案を採用し、結果として“30秒以内に選び直し”の仕様が生まれたとされる[28]。
デザイナーの[[花園凪斗]]は、花獣デザインを“自治体の書式”のように整える方針を取り、ボス[[白紙の鶴]]は「白紙が主役」という思想で描き起こされたと述べた[29]。プログラマーの[[佐久間暦人]]は、幻灯キャッシュの実装に「18か月で平均誤差が0.7%に収束する」アルゴリズムを導入したと語られたが[30]、内部文書の実在性には疑問があるとする声もある[31]。
音楽は佐久間暦人が作曲し、サウンドトラックは“行政の紙が鳴る”という解釈で録音にこだわったとされた。なお、公式発表ではオーケストラではなく紙擦り音のライブラリが多用されたとされる[32]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラックは『幻灯島編集音楽録』としてリリースされた。全33トラック構成であり、うち“沈黙”を含む曲が6曲あるとされる[33]。
曲調は、都市の緊張を表す短い旋律と、花が咲く瞬間にだけ伸びる長音で対比が作られている。特に[[港帳区]]のフィールド曲「朱字の潮騒」は、テンポが章ごとに変わる“可変メトロノーム”仕様として紹介された[34]。
また、戦闘BGMでは“栞の刃”が展開される直前に必ず無音が挿入される。これはプレイヤーの注意をUIから外すための演出とされるが、発売直後は「故意に音が壊れている」とレビューで揶揄されたという[35]。
なお、公式サイトでは紙擦り音を提供した企業として[[静音印刷協会]]が挙げられていたが、後の調査では協会の実態が曖昧だとされ、出典の書き方が問題視されたとされる[36]。
他機種版/移植版[編集]
本作は発売当初、[[幻灯島クラウド]]専用として展開された。理由として、開発側は「編集権限の同期に最低限の常時接続が必要」と説明したとされる[37]。
その後、2020年には“幻灯キャッシュ”を汎用化した移植版『花里みのり:紙層ダウンロード』が配信された。移植ではオフライン再生用のデータ圧縮方式が改められ、「初回起動が平均7分42秒」と告知されている[38]。
さらに2022年には、携帯端末向けに雰囲気を残した軽量版が登場し、戦闘テンポの調整が行われたとされる。ただし、軽量版では会話改稿の“候補文章表示”が削減され、難易度が上がったとする指摘があった[39]。
一方で、2023年に小規模なローカル配布が行われたとの噂もあり、ファイル構造を解析したコミュニティが「オフラインでも“編集会議ログ”が生き残る」と報告したとされる[40]。
評価(売上)[編集]
売上については、発売後18か月時点で全世界累計123万本を突破したと発表された[41]。国内比率は6割、残りは北半球の英語圏で伸びたとされ、理由として翻訳が“許可証の文章”のニュアンスを保った点が挙げられた[42]。
日本ゲーム大賞では、2018年度に“演出と文章設計の融合”を評価され受賞したとされる[43]。また、[[ファミ通クロスレビュー]]ではゴールド殿堂入りとなり、戦闘がRPGらしくないのにRPGである点が高評価だったとされる[44]。
一方で、熱心なファンの間では「白紙の鶴」戦のログ書き換えが過剰だという意見もあった。レビューでは「面白いが、プレイヤーが自分の正解を疑わされ続ける」と表現され、賛否が割れた[45]。
発売から数年後の総括では、“咲く許可証”の概念が教育機関で講義題材になったという逸話も紹介されているが、裏取りは十分でないとされる[46]。
関連作品[編集]
関連作品としては、同名を冠した小説『花里みのり—許可される前の花』が灯彩文庫から刊行された。物語はゲーム本編より前日譚にあたり、主人公が初めて[[港帳区]]で書類の匂いを覚える場面が中心となっているとされる[47]。
テレビアニメ化も行われており、『幻灯島編集奇譚』として全12話構成で放送されたとされる[48]。アニメ版では沈黙の扱いが強調され、BGMが一切流れない“沈黙回”が話題になった[49]。
また、コミカライズとして『咲く許可証の取扱説明』が連載され、合成炉のレシピが“生活の裏技”として語られたとされる。ゲームと違って実在する食材が登場する回もあり、読者の勘違いを誘った点が評価された[50]。
後年のスピンオフとしては、花獣を観測する探索ゲーム『薄墨バラ観測録』が企画されたが、発売には至らず、プロトタイプの音源だけが流出したという噂がある[51]。
関連商品(攻略本/書籍/その他の書籍)[編集]
攻略本としては『花里みのり 許可証完全ガイド:文μの計り方』が出版された。合成炉の数値目標が図解され、1章の最短ルートで219歩目に黙るべきだと明記された[52]。
そのほかに、サウンド面の資料として『幻灯島編集音楽録 解読ノート』がある。紙擦り音のスペクトル図が掲載され、プレイヤーの耳が鍛えられるとされる[53]。
玩具・グッズとしては、咲く許可証を模したカードセット『許可証コレクション(第2ロット)』が販売された。カードは印刷会社の規格で微妙に擦れ方が違い、当たりカードには“白紙の鶴のログ断片”が封入されていたとされる[54]。
さらに、学校教材風の『編集官トレーニングブック』が配布された。内容はゲーム攻略ではなく、文章の校正練習であるため、子ども向けに一見役立つが、結果として大人が本編をやりたくなる導線になったと述べられる[55]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「『花里みのり』における編集権限同期の設計思想」『ゲームソフトウェア設計誌』第14巻第2号, pp.33-51.
- ^ 志村澄香「沈黙はダメージである:章構造と無音演出の関係」『インタラクティブ脚本研究』Vol.6 No.1, pp.10-28.
- ^ 花園凪斗「紙質と当たり判定—幻灯島の地形が与える“噂の強度”」『デザイン・レビュー日本』第22巻第4号, pp.77-96.
- ^ 佐久間暦人「文μによる可変テンポ推定」『サウンド計算論文集』第9巻第3号, pp.120-145.
- ^ 灯彩通信社編『幻灯島編集音楽録』灯彩通信社, 2018.
- ^ リュミエール・ビート工房『花里みのり 開発会議ログ断片集(非公開資料の再構成版)』リュミエール・ビート工房, 2019.
- ^ International Journal of Narrative Systems『Permitted Bloom in RPGs: A Case Study of Hanazato Minorі』Vol.12 No.7, pp.201-223, 2020.
- ^ 佐久間暦人『紙擦り音の実務』オライリー・ジャパン, 2019.
- ^ Minori Hanazato, “White Paper Crane and the Myth of Deterministic Text,” 『Proceedings of the Quiet Interface Symposium』pp.1-9, 2018.
- ^ 『花里みのり 許可証完全ガイド:文μの計り方』花里教育出版, 2021.
外部リンク
- 幻灯島公式編集ポータル
- 花獣観測コミュニティ(非公式)
- 許可証ログ解析ラボ
- 幻灯島音響アーカイブ
- リュミエール・ビート工房リリースノート