超高校級の希望
| 分野 | 教育心理学・学習意欲研究 |
|---|---|
| 提唱時期 | 1990年代後半(とされる) |
| 主な用途 | 学級単位の希望スコア算出 |
| 指標構成 | 自己評価・将来見通し・協働経験の合算 |
| 運用主体 | 学習支援団体および自治体 |
| 測定単位 | H-Index(Hope Indexの略) |
| 批判点 | 数値至上主義と選別への懸念 |
(ちょうこうこうきゅうのきぼう)は、若年層の自己効力感を測定し、学習意欲へ転換することを目的とした教育心理学上の概念である。学習塾と自治体の連携事業として広がり、いつしか「希望を制度化した指標」として知られるようになった[1]。
概要[編集]
は、主に高校生を対象として導入される「希望の強度」を、複数の心理項目から集計して可視化する枠組みである。形式上は自己申告と行動ログの双方を用いるため、単なる気分調査ではないと説明される[1]。
概念の鍵は、希望を「生まれつきの気質」ではなく「育てられる状態」とみなす点にある。これにより、学級ごとの介入(面談、協働課題、進路設計ワーク等)が、成果に結びつくかどうかを追跡しやすくされたとされる[2]。一方で、希望が数値に換算されることで、集団の内側に目に見えない序列が生まれるとして反発も招いた。
なお、この語は教育現場だけでなく、就職支援や自治体の若者施策の資料でも頻出した。「希望が高い学級ほど相談窓口の利用率が上がる」という相関が報告されたことが、用語の定着に寄与したとされる[3]。
歴史[編集]
起源:市民講座の「希望計量」実験[編集]
起源は、1997年にで開催された市民向け講座「未来設計ラボ」であると説明される[4]。講座を主導したのは、教育心理の統計分析を得意とする(仮名、当時は私塾データ室勤務)で、希望を「文章で語る変数」から「再現性のある測定」に変換する必要を説いたとされる。
実験では、希望を測る質問紙を一度作るだけでは足りないとして、同じ設問を3週間間隔で3回繰り返す方式が採用された。さらに、自由記述を機械学習でカテゴリ分けし、そこから「希望語彙指数」を算出したとされるが、当時は計算資源が乏しかったため、実際には研究室の学部生が手作業で貼り付けたという逸話が残っている[5]。
当初の名称は「高校級希望計量」だったが、協賛に入った民間ファンドが“最終到達を誇張する言葉”を好んだため、上位語として「超高校級の希望」が採用されたとされる。この際、評価表の表紙に書かれたキャッチコピーが印刷ミスで「希望が溢れる」となり、逆にインパクトが増したとも語られている[6]。
発展:H-Index制度と自治体連携[編集]
2001年、実装の標準化に向けての前身課相当の部署と民間団体が協議し、合算指標(Hope Index)を提案したとされる[7]。H-Indexは、自己評価(Self-rating)40点、将来見通し(Future outlook)35点、協働経験(Collaborative learning)25点の三要素で構成された。配点がやけに細かいのは、当時の委員会で「気持ちの比重が大きすぎる」という指摘があり、協働経験を“逃げ道の少ない現場データ”として厚めに置いたためとされる[8]。
運用は自治体と学習支援団体の協定で広がり、特にの複数市で「希望巡回面談」と呼ばれる仕組みが導入された。希望巡回面談では、教室外の短時間面談を週1回、計12回実施し、その後にクラス単位で“希望の履歴書”を作る工程が定番化したとされる[9]。
ただし、制度が強まるほど測定への抵抗も増えた。希望スコアが低い学級ほど面談の回数が増える仕組みだったため、「支援のため」と説明されつつも、結果として“注視されるグループ”を可視化してしまったと指摘された。ここから、超高校級の希望は「希望の供給モデル」から「希望の管理モデル」へ移行したとの批評が生まれた[10]。
社会的波及:就職支援・奨学金のゲート化[編集]
2000年代後半には、学生支援の実務に波及し、奨学金の推薦要件として「希望の伸び」が参照されるようになったとされる[11]。このとき、H-Indexの前後差を「ΔH」として扱い、ΔHが一定以上であることが“努力の証拠”として解釈された。
その結果、企業側の採用資料にも派生指標が引用されるようになった。例えば、が関与したとされる若者人材研究会では、「希望が高いほどインターン参加が継続し、早期離職率が低い」といった説明が資料にまとめられた[12]。数字は具体的で、「継続インターン率が希望スコア上位群で年間6.4%高い」と報告されたとされるが、後に統計手法が粗いとして笑い話のように扱われた[13]。
一方で、制度が“希望の良し悪し”を固定してしまうと、家庭環境や地域格差を補正しきれない問題が顕在化した。そこで、希望の値を出す前に「地域アクセス係数」を補正する案が議論されたが、数値が増えるほど説明責任が重くなり、現場の負担として敬遠されたという[14]。
批判と論争[編集]
超高校級の希望は、制度設計としては合理的に見える一方、希望という内面的概念が測定され続けること自体が倫理的に問題視された。特に、希望が低い生徒が「改善対象」として扱われ、自己肯定感を損なう危険があるとして、の複数研究者が慎重論を表明したとされる[15]。
また、数字の運用面でも論争が起きた。H-Indexは「週1面談・12回」という定型手順とセットで運用されることが多く、例外が認められないケースがあったとされる。こうした運用では、希望を育てるはずの支援が、手順を守ることに置き換わる恐れが指摘された[16]。
さらに、名目上は自己申告を重視するとされるが、実際には面談記録が強い重みを持つ運用が疑われた。『超高校級の希望ガイドブック(第3版)』では「自己申告の沈黙は誤差ではなく情報である」と記されていたが、この文言が“沈黙の取り締まり”を連想させるとして、編集方針の是非まで争われたという[17]。
なお、最大の騒動は、ある市で“希望の低下”が原因で不参加者が増えたのに対し、対策会議が「希望の低下を検知して、次回の数値発表を先送りする」方針を打ち出したことである。この場面は後に、制度が現実を変えるのではなく、現実の見え方を変えてしまう例として語られた[18]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『希望計量の技法:H-Indexの設計思想』港区教育出版, 2002.
- ^ M. A. Thornton, “Hope Indexing in Youth Programs,” Journal of Applied Educational Metrics, Vol.12 No.3, pp.41-58, 2004.
- ^ 佐藤玲名『高校級希望計量の現場報告:12回面談運用の検証』神奈川学習支援研究所, 2006.
- ^ 田中克己『ΔH(差分希望)の統計的解釈』教育統計研究, 第7巻第2号, pp.15-27, 2008.
- ^ 林美咲『協働経験が希望に与える影響:カテゴリ手作業の時代』教育心理レビュー, Vol.9 No.1, pp.88-103, 2010.
- ^ Kenji Morita, “Regional Access Coefficients and Hope Measurement,” International Journal of Youth Policy, Vol.5 Issue 4, pp.201-219, 2012.
- ^ 【編】『超高校級の希望ガイドブック』文部科相民間連携室, 第3版, 2011.
- ^ 大橋理沙『沈黙を情報とみなすこと:測定論の倫理点検』日本教育心理学会紀要, 第19巻第1号, pp.33-47, 2013.
- ^ A. R. Klein, “When Numbers Become Norms: The H-Index Controversy,” Ethics & Education Quarterly, Vol.18 No.2, pp.1-22, 2015.
- ^ 『自治体若者施策データの読み方(特別付録:希望の相関係数一覧)』総務未来調査会, 2014.
外部リンク
- Hope Index 研究会データアーカイブ
- H-Index運用マニュアル倉庫
- 自治体面談ログ分析フォーラム
- 若者支援数値倫理観測所
- 超高校級の希望 事例集サイト