身体的卑猥度数
| 分類 | 社会指標、風俗統計、都市倫理学 |
|---|---|
| 提唱 | 国立都市風紀研究会(通称・都風研) |
| 初出 | 1978年 |
| 主な利用地域 | 東京都、横浜市、京都市の一部 |
| 評価尺度 | 0.0〜9.8 |
| 派生制度 | 身体広告適正基準、路面展示抑制指令 |
| 関連機関 | 文化庁風俗資料室、警視庁公開景観班 |
| 通称 | 卑猥度数、BII |
身体的卑猥度数(しんたいてきひわいどすう、英: Physical Indecency Index)は、人体の姿勢・衣服のずれ・視線の逸脱度を総合的に数値化するために考案された指標である。もともとは後期の都市景観研究から派生したとされ、のちに内の風俗監査や広告審査に転用された[1]。
概要[編集]
身体的卑猥度数は、人体の露出そのものではなく、姿勢の角度、衣類の張力、接触の予兆、および周辺観察者の注視時間を加味して算出されるとされる指標である。評価は0.0から9.8までの小数で表され、0.7刻みの暫定値を経て最終値が確定する方式が一般的であった。
この指標は、の会議室で作成された「公共空間における不意の視覚刺激の測定試案」に由来するとされるが、実際には当時の研究者が会合のたびに出席者のネクタイの緩みを記録していたことが発端であるという説もある[2]。なお、1979年版の暫定手引では、雨天時に上昇しやすいことが明記されていた。
成立の経緯[編集]
都風研と初期測定[編集]
提唱者として最も頻繁に挙げられるのは、国立都市風紀研究会主任分析員のである。西園寺は、の地下通路における広告ポスターの配置が「人体の見え方を過剰に刺激する」と主張し、の旧別館で試験的な測定を開始した。
初期測定では、被験者に椅子へ座らせたうえで「上着を一枚脱ぐ」「腕を組む」「足を組み替える」の三動作を行わせ、研究補助員が逐一メモを取った。もっとも、測定記録の一部は喫茶室での伝言ゲームに近い形で改変され、翌週には「コーヒーを飲むだけで1.4上昇する」と解釈されるようになったという。
行政への導入[編集]
、公開景観班がこの指標を路上看板の審査補助に用いたことで、身体的卑猥度数は一躍知られるようになった。特にの繁華街では、1枚のポスターに対して3名の判定官が独立に値を出し、その平均値が5.2を超えると覆面で再撮影を求める運用が取られた。
この方式は公平であるとされた一方、判定官の年齢と雨具の色で数値が揺れることが判明し、1984年には「濡れたトレンチコート係数」が追加された。これにより、指標はようやく「人体」だけでなく「都市の湿度」をも扱う学問へと拡張されたのである。
測定方法[編集]
身体的卑猥度数の算出式は、最終的にBII-3式と呼ばれる形へ整理された。すなわち、露出係数E、姿勢係数P、接近係数A、視線誘発係数Vを加算し、補正係数Kを掛けたうえで、衣服の反射率Rを減算する方式である[3]。
もっとも、実務上は式よりも「背後から見た場合に説明が難しいか」が重視された。ある都内百貨店では、売場主任が独自に「首筋が2秒以上静止すると0.3加点」とする内規を設け、半月で200件以上の再陳列が発生したとされる。
測定には透明板、定規、色票帳、そして1980年代後半には製の携帯端末が用いられた。端末は誤動作が多く、判定画面に「感情が先行しています」と表示されることがあったが、当時の研究者はこれを「人間味の表出」として歓迎した。
社会的影響[編集]
この指標は、広告業界においては服飾の露出調整、教育現場においては体育着の丈の基準、鉄道会社においては車内ポスターの掲出角度にまで影響した。とくにの一部駅では、1991年から「卑猥度数4.1以上の人物写真はエスカレーター終端に掲示しない」自主基準が試験導入されたとされる。
また、では舞妓の襟元表現をめぐる自治体内協議が紛糾し、最終的に「うなじの見え方は数値化すべきではなく、季節で理解されるべきである」との結論に落ち着いた。これに対し都風研は反論文を出したが、反論文の題名が『うなじの季節係数に関する再考』であったため、一般にはむしろ好意的に受け止められた[4]。
批判と論争[編集]
批判の中心は、身体的卑猥度数が測定者の主観に極度に依存する点にあった。とりわけの「赤坂会議」では、同一人物の同一写真に対し、最小値2.1から最大値8.6までが出てしまい、会場が騒然となった。
これを受けて都風研は「卑猥度は観測行為の一部である」と説明したが、説明自体が哲学に寄りすぎていたため、以後は行政文書から徐々に姿を消した。ただし一部の民間保険会社では、温泉宿のパンフレット審査に限って2010年代まで参照されていたとの指摘がある[5]。
派生概念[編集]
身体的上品度数[編集]
身体的卑猥度数の反対概念として、1992年にの広告代理店が提案したのが身体的上品度数である。こちらは姿勢の直線性、袖口の清潔感、視線の迷いの少なさを評価するもので、駅ビルの紳士服売場で主に用いられた。
もっとも、卑猥度数との相関が高すぎたため、上品度が高いほど卑猥度も上がるという逆説が生じ、最終的には「気合いの入ったネクタイは危険である」という教訓だけが残った。
路面卑猥等級[編集]
では、傾斜のきつい商店街において通行者の身体角度を評価する路面卑猥等級が運用された。特に雨の日のでは、靴底の摩耗と看板の反射が重なり、数値が実際より1.8程度高く出ることが多かった。
これを補正するため、商店街組合は「傘の先端は人に向けない」という倫理規定を作ったが、結果として道行く人の動きが余計に不自然になり、数値がさらに上昇したとされる。
廃止と再評価[編集]
、内閣府系の有識者会議で「本指標は実在性を欠くのに、運用実績だけが妙に多い」と総括され、公式文書からの削除が進められた。以後は、文化財保護や青少年保護のガイドラインからも姿を消したが、地方自治体の倉庫からは未使用の判定カードが相次いで発見された。
一方で、近年は都市史研究の資料として再評価が進んでいる。特に所蔵の『身体的卑猥度数運用便覧 1984年度版』は、当時の服装規範と官庁文体の結晶として高く評価されている。もっとも、便覧の巻末付録にある「雨上がりの階段での推奨値一覧」は、現在でも意味がよく分からない。
脚注[編集]
[1] 都市風紀測定学会『公共空間における身体刺激指数の基礎』都市文化出版社、1980年。 [2] 西園寺健一「新宿地下通路における視覚誘発の初期観察」『東京景観研究』第12巻第3号、pp. 41-58、1979年。 [3] 文化庁風俗資料室編『BII-3式運用指針』財団法人景観倫理協会、1986年。 [4] 京都衣装倫理研究会『うなじの季節係数に関する再考』風雅新書、1993年。 [5] Margaret H. Lowell,