金融亭円高と円安
| コンビ名 | 金融亭円高と円安 |
|---|---|
| 画像 | ネクタイ2本(片方だけ異常に長い) |
| キャプション | 『円高は静かに、円安は派手に』を地で行く漫才図解型 |
| メンバー | 金融亭円高(きんゆてい えんだか)、円安(えんあん) |
| 結成年 | 2012年 |
| 解散年 | なし |
| 事務所 | 東京一番街 |
| 活動時期 | 2012年 - |
| 芸種 | 漫才・コント |
| 公式サイト | https://kinyu-endaka-enan.example.jp |
金融亭円高と円安(きんゆてい えんだか と えんあん)は、[[東京一番街]]所属のお笑いコンビ。[[2012年]]10月結成。元落語家の片方と、元銀行員の片方による「通貨落語×経済コント」で知られている[1]。
概要[編集]
金融亭円高と円安は、通貨の動きを落語の型に落とし込み、さらに“実務っぽさ”をやけに細かく仕込む経済コントで人気を博したお笑いコンビである。とくに、円高が「静音(せいおん)」、円安が「暴噴(ぼうふん)」として演出される点が特徴とされる[1]。
結成の経緯は、2012年当時の若手落語家と、旧来の金融機関出身者が同じ劇場の稽古場で顔を合わせたことにあるとされる。なお、当初のコンセプトは「市場を笑わせる」ではなく「市場の“説明書”を読む気にならせる」ことだったと本人たちは述べている[2]。
メンバー[編集]
金融亭円高(きんゆてい えんだか)は、落語家系の芸名を活かして“噺(はなし)”の速度と間(ま)を担当している。ツッコミは主に円安が担うが、円高は「用語の座布団」を積む役回りで、観客に向けて小難しい数字をあえて暗唱する[3]。
円安(えんあん)は、元銀行員を経由しているとされる人物で、現場では“通貨の現金性”に絡めた身体芸を得意とする。彼の持ちネタ『レートは踊る、利息は遅れる』では、紙の計算表を回転させながら金額の桁を一段ずつずらしていく[4]。
二人は作中でしばしば「円高=短距離ランナー」「円安=長距離バカンス」といった比喩を用いるが、比喩の元ネタが実は当時の業界研修資料にあるという噂もある[5]。
来歴[編集]
NSC出身と、落語会の“二重帳簿”[編集]
円高は[[東京寄席学舎]]で落語修行をしつつ、台本の段取りを“講談仕立て”で統一した人物として知られている。円安は[[大蔵信用金庫]](架空の関連会社を含むとされる)で、融資稟議書の書式統一プロジェクトに関わっていた経歴があるとされる[6]。
二人は2012年、[[新宿千里亭]]の裏方募集で偶然同じ名簿に記載されたことをきっかけに稽古場を共有した。当初は落語会の“客席説明”を担当していたが、ある日スタッフが「金融用語の注釈を読み上げると、なぜか客が笑う」と報告したことで、二人の稽古がコントへ転換したと伝えられている[7]。
東京進出と「通貨落語」ブームの火付け役[編集]
2013年に[[大宮セブン]]と呼ばれる若手劇場連合の一座に抜擢され、同年末には[[テレビ東京]]系のミニ特番『市場寄席・夜の部』へ出演した。番組内での人気コーナーは、円高役が「1ドル=98.3円の“逆噴射”」と噺で言い、円安役が「その98.3は、実は“逆立ちした電卓”の表示である」と追い打ちする構成だったとされる[8]。
ただし、この特番の裏話として“台本が2種類存在した”とも語られている。一つは真面目な経済解説版、もう一つは桁の数え間違いを笑いに変える版である。編集担当が「どっちが正しいのか分からない方がウケる」と判断したのが契機だったとされ、結果として“嘘みたいにリアル”な雰囲気が定着した[9]。
芸風[編集]
芸風は「漫才」と「コント」の混成であるが、核は通貨を“噺の登場人物”に見立てる点にある。円高は、噺家らしい導入で市場の空気を整え、円安はその空気を壊すように“支店の癖”や“伝票の匂い”を身体芸で再現する[10]。
たとえばネタ『両替屋の借金取り』では、円高が“札束の重量”を1グラム単位で語り、円安が「その重量は見積書の丸め誤差です」と訂正する。観客には丸め誤差が理解できないまま笑いだけが残る設計であり、二人はこれを「経済の残響(ざんきょう)」と呼んでいる[11]。
作家(ネタ作成)は円高が担当するが、金融用語の“それっぽさ”だけは円安が監修するという分担がある。なお、両者とも「数字は正確に書くが、意味は逃がす」と発言しており、どこかで“自分たちが騙している”感覚を楽しんでいる節があると評される[12]。
エピソード[編集]
デビュー間もない頃、地方局の生放送で円高が「利回りは年率2.74%から“月ごとに四捨五入して”降ってくる」と噺で言ったところ、スタジオの時計がちょうど2分47秒進んだ演出が起きたとされる。番組側は単なる偶然だとしているが、本人たちは「市場がツッコミに参加した」と解釈している[13]。
また、人気企画『円の家計簿・3行で世界がわかる』では、観客のノートに「①支出、②収入、③言い訳」の3行しか書かせない。そこへ円安が「言い訳は“為替差損の部”です」と宣言し、観客が意味を理解する前に拍手が起きる。さらに拍手後、円高が唐突に「なお、このネタの損益分岐点は観客の笑い声周波数で決まる」と締める。周波数という言葉だけが理科っぽく残るため、翌週から観客が“笑いの測定”を始めたという逸話まである[14]。
一方で、細かすぎる設定が原因で炎上寸前になったこともある。ある回で円安が「1円の差は、コンビニのレシートの余白に影響する」と言い切った結果、会場のスタッフがレシートの余白を測るという異常行動に出た。この測定結果が“前回より2.1mm長い”とされ、SNSで「測定しても何も分からない」という批判が出た。本人たちはそれを「測ることがネタ」として回収し、逆に“精密誤差芸”を増やしたとされる[15]。
出囃子・賞レース成績・受賞歴[編集]
出囃子は[[和太鼓]]風のシンセで、最初の8小節だけ“手元の電卓音”を混ぜる演出がある。円高が高座に上がる前に円安が「電卓を温めます」と言って客席に背中を向けるため、会場に“金融の予熱”が伝わると評される[16]。
賞レースでは、2014年の[[キングオブコント2014]]に出場し、ファイナリストとして注目された。その際のネタ『相場は落語より意地が悪い』は、円高が“上方落語の文句”で為替を説明し、円安が“貸金庫の鍵”を落として「はい、ここで円安です」と転換する構成だったとされる[17]。なお、成績表には「準決勝で観客が“通貨神話”を信じた」と記載されたという噂があるが、これは出典が確認されていない[18]。
また、2016年には[[M-1グランプリ2016]]予選で“ネタ時間を逆算する芸”が評価され、全国区へ急速に認知されたとされる。ただし、本人たちは「審査員が寝ていたので、逆に勝てた」と語っている。真偽は不明であるが、その“ズレの自覚”が笑いの温度を保っていると分析されている[19]。
出演[編集]
現在の代表的な出演番組は、深夜の[[BS]]で放送される経済バラエティ『レート落語・生き返り版』である。ここでは架空の経済用語を毎回1つだけ作り、最後に視聴者が「意味を探さない」ことを約束させられる構成が採られている[20]。
過去には[[NHK]]の教育枠『家計のこぶし』に出演し、円高が“家計簿を噺として読む”回を担当、円安が“利息を擬音化する”回を担当したとされる。さらに2018年には映画『半笑いの為替(仮)』へカメオ出演し、劇中で「円高は追い風、円安は向かい風」ではなく「追い風のふりをした向かい風」と言い放ったことが話題になった[21]。
ラジオでは『夜の相場は噺でできている』が長寿番組として知られ、リスナーから送られるレシート写真を“座布団サイズ”に見立てて講評するコーナーがあった。なお、ある回だけ明らかに“座布団サイズではない物”が混ざったとされ、円安が即興で「これは座布団ではなく、現物株の願掛けです」と処理したという[22]。
受賞歴・作品・単独ライブ・書籍[編集]
作品としては、CD『通貨の正しい使い方(嘘でもOK)』とDVD『円の家計簿(字幕が勝手に増える)』が発売されている。特典映像では、二人が練習中に“レートの音階”を鳴らす様子が収録されており、ファンからは「一度聴くと相場が歌になる」と評される[23]。
単独ライブは、2015年から継続して『高安寄席』と題して行われている。2017年の回では、円高が「計算尺の目盛りは1つずつ嘘をつく」と言って場を作り、円安が「嘘は利回りに似ている」と畳みかける二段構えが特徴とされる[24]。
書籍としては、円高名義で『通貨落語の構造:四捨五入は心の余韻である』、円安名義で『銀行員のまま笑う:伝票の裏側』が刊行されている。前者は“噺作りの技術”が主題とされる一方、後者は“現場の不思議”として収録されているとされる。ただし読者レビューでは「普通に経済本を期待したら、座布団の数が増える体験があった」といった感想が多い[25]。
批判と論争[編集]
批判としては、ネタの経済描写が過剰にリアルであり、誤解を招くという指摘があった。特に『両替屋の借金取り』で言及される“円高時の手数料が小数第4位まで増える”という設定が、実務に照らすと不自然だとして議論になったとされる[26]。
また、円高と円安の呼称が「円高・円安」という実在の概念と同名であるため、観客が“それ自体が事実の格言”だと受け取る懸念も指摘された。一方で二人は「概念の名前を借りて、概念の説明を笑いでずらすのが仕事」と反論している[27]。
ただし、論争の中心には技術的問題もあった。ある回の特典映像で、円安が「為替は“温度差”で動く」と発言した直後に空調が一時的に切れ、場内が冷えたという報告がある。これが演出か偶然かは曖昧であり、当事者が“市場と身体芸の境界が溶けた”と表現したことから、オカルト的解釈も生じたとされる[28]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田中シノブ『通貨落語の作法:間と数字の奇妙な関係』笑進社, 2016.
- ^ Marcel J. Laverne『Currency as Comedy: Rates, Rhythm, and Stagecraft』Oxford Fringe Press, 2017.
- ^ 金融亭円高『通貨落語の構造:四捨五入は心の余韻である』高安文庫, 2018.
- ^ 円安『銀行員のまま笑う:伝票の裏側』東京一番街出版部, 2019.
- ^ 鈴木ゲンゾウ「“手数料の小数第4位”はなぜ笑われるのか」『芸笑経済ジャーナル』第12巻第3号, pp. 41-58, 2020.
- ^ Hannah R. Patel「The Pitch of the Rate: Auditory Metaphors in Japanese Stage Comedy」『Asian Stage Studies』Vol. 9 No. 1, pp. 101-130, 2021.
- ^ 山根アキラ『NSC出身コントの社会学:金融用語は誰のものか』ナイト編集工房, 2022.
- ^ 『市場寄席・夜の部』台本集(編:BS演芸制作局)BS演芸制作局, 2013.
- ^ 大宮セブン運営委員会『高安寄席アーカイブ:2015-2023』大宮セブン出版社, 2023.
- ^ 松岡モモ「電卓音の芸能史:8小節の“予熱”」『音響演芸研究』第4巻第2号, pp. 12-27, 2024.
外部リンク
- 東京一番街 公式プロフィール
- 高安寄席 チケット案内ページ
- 通貨落語 資料室
- レート落語・生き返り版 番組サイト
- 金融亭円高と円安 写真館