鳩山由紀夫 VS 慶光天皇 -モスクワオリンピック決闘-
| タイトル | 鳩山由紀夫 VS 慶光天皇 -モスクワオリンピック決闘- |
|---|---|
| 画像 | Hatoyama_Keikou_Duel_box.jpg |
| 画像サイズ | 250px |
| caption | 北欧向け初回版パッケージ |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム |
| 対応機種 | MSX, X1, SORD M5 |
| 開発元 | 東雲電算ソフト |
| 発売元 | 東雲電算ソフト |
| プロデューサー | 鳴海丈一 |
| ディレクター | 相原みつる |
| 音楽 | 岡野フミオ |
| シリーズ | モスクワ決闘シリーズ |
| 発売日 | 1984年9月14日 |
| 対象年齢 | 全年齢(ただし一部演出は要保護者同意) |
| 売上本数 | 国内累計18万4000本 |
| その他 | 通称は『ハトケイ』。後にバーチャルコンソール対応版が検討されたが未実施とされる。 |
『鳩山由紀夫 VS 慶光天皇 -モスクワオリンピック決闘-』(はとやまゆきお ブイエス けいこうてんのう モスクワオリンピックけっとう、英: Yukio Hatoyama VS Emperor Keikō - Moscow Olympics Duel -、略称: HKMD)は、1984年に日本のから発売された用。架空のオリンピックを舞台に、級の外交手腕との王権演算をぶつけ合う、シリーズの第1作目とされる[1]。
概要・概説[編集]
本作は、を模した架空大会「赤の輪競技会」を舞台とする対戦型である。プレイヤーは外交官としての風キャラクター、または王権演算装置を操る風キャラクターのいずれかを選び、競技場・地下鉄路線・観覧席上空をまたぐ三層スクロール面を攻略する。
通称は『ハトケイ』であり、キャッチコピーは「会談で勝てなければ、弾幕で勝て」であったとされる。発売当時は的な分岐会話と、のような重量感ある狙撃判定を併用したことが珍しく、ファミリー向け雑誌では「子どもが政治を理解する最初の入口」と評された一方、保守系週刊誌からは「説明書のほうが本体より難しい」と批判された[2]。
なお、企画段階では『モスクワ・パスポート作戦』という題名であったが、営業部が「天皇を出したほうが箱が締まる」と判断し、最終的に現題へ変更されたという。これは後年の資料で初めて確認された経緯であり、詳細は一部編集者の間で要出典とされている。
ゲームシステム[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、通常の弾幕面と会談面が交互に発生する二重構造が挙げられる。会談面では敵を撃破するのではなく、三択の外交文言を正しい順序で選ぶことで弾数が増える仕組みで、これを「交渉連鎖」と呼ぶ。難度はEASY、KIKOU、NEUTRAL、HARDの4段階で、KIKOUが実質的な初級者向けである。
また、当時としては珍しくのない代わりに「電話線協力プレイ」が実装されていたとされ、実際には付属の擬似モデムを2台の受話器に載せるだけで通信したという。成功率は約34%で、説明書には「受話器の向きが15度ずれると外交が破綻する」と記載されていた。
戦闘[編集]
戦闘は、プレイヤーが「由紀夫キャノン」または「慶光勅令波」を発射して敵ロボット観客を制圧する方式である。由紀夫キャノンは連射力に優れるが弾道が蛇行し、慶光勅令波は威力が高い一方で発射前に必ず3フレームの沈黙が入る。この沈黙中に背景の型フィールドが半回転する演出があり、発売当時のレビューでは「政治的緊張が画面内で物理化している」と書かれた。
ボス戦は全8面で、最終面の『五輪委員長メカ』は当時の他社シューティングの慣例に反して撃破後に会談が始まる。ここで提示される「停戦か、増税か、再試合か」の3択のうち、増税を選ぶと隠しエンディングに進むが、実際にはただエンドロールの色が赤くなるだけである。
アイテム[編集]
アイテムは競技場内に散在する「白い鳩弾」「条約書カプセル」「北方滑走靴」などがあり、特に条約書カプセルは拾うたびに画面上部の国名表記が1文字ずつ丁寧になる。なお、稀に出現する「大統領の帽子」を取得すると敵弾が急に減速するが、説明書では「帽子のつばが風圧を調停するため」とされている。
もっとも有名なのは1/256の確率で出る「決闘の鐘」で、取得するとBGMが校歌調に変化し、敵の攻撃がすべて弁論大会の拍手に置き換わる。発売後にこの仕様を利用したRTAが流行し、国内最短記録は4分12秒とされたが、記録会の審査員からは「そもそもゲームクリアの定義が曖昧」と指摘された。
対戦モード[編集]
対戦モードは2人専用で、片方が側、もう片方が側を担当する。対戦の勝敗はライフ制ではなく「支持率」「威厳」「視察進行度」の3値で決まり、支持率がゼロになっても威厳が残っていれば逆転可能である。これにより、単なるシューティングではなく心理戦の比重が高いと評価された。
ただし、同モードでは同じステージを3回連続で選ぶと、強制的に演説パートへ移行する。ここで相手の発言を遮るとボーナスが入るが、遮り方があまりに絶妙だと「国際協調ボーナス」が発動し、両者のスコアが同時に上昇する。この仕様は当時のゲーム誌で「日本的な勝利観の再定義」とまで書かれている。
オフラインモード[編集]
オフラインモードは「単独巡礼」と呼ばれ、プレイヤーが一人でモスクワ市内を移動しながら、地下鉄駅ごとに現れるイベントを処理していく。各駅にはの政治風景を模したミニゲームがあり、ハト型の通貨を集めると隠しルートが開放される。
なお、一定条件を満たすと「内閣支持率サバイバル」が開始し、画面が急に白黒になる。これは当時のCRTテレビの仕様を利用した擬似演出であり、開発者インタビューによれば「暗い部屋で遊ぶとたまに本当に選挙に行った気分になる」ことを狙ったものとされる。
ストーリー[編集]
物語は、の開会式前夜、競技場地下に封印されていた「赤い議定書」が盗まれる場面から始まる。これを巡り、に似た若き交渉官と、と呼ばれる半ば神話化された君主が、それぞれの陣営を率いて決闘する。
中盤では、両者が実は同じ外交学校の同期であったことが判明し、競技の勝敗よりも「先に握手したほうが負け」という奇妙な掟が物語を支配する。最終的に、赤の広場上空で打ち上げられた1,024発の花火がすべて条約文に変換され、エンディングでは観客全員が同じ顔になるという不穏な結末を迎える。
この結末はシリーズ随一の難解さとして知られ、発売後にユーザーから「理解する前にスタッフロールが終わる」との苦情が多数寄せられたという。ただし、攻略本では「真の敵は弾丸ではなく、日程調整である」と総括されている。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
主人公はプレイヤー選択式で、鳩山側を選ぶと「友愛砲」を、慶光側を選ぶと「玉座衛星」を操作することになる。鳩山側は低速高火力、慶光側は機動力と判定の広さに優れ、当時のゲーム誌では「片方は議会、片方は祭祀」と形容された。
隠し条件を満たすと、両者が合体した第三の主人公「由紀光」が出現するが、これは移植版でしか選べない。由紀光は最強キャラとされた一方、装備画面の名前欄が毎回48文字を超えるため、実質的に上級者専用である。
仲間[編集]
仲間キャラクターとしては、通訳ロボットの、炊飯器型補給兵の、そして競技場の照明を管理するが登場する。ミスター和訳3号は会話パートで単語を誤訳するたびに弾幕を1列増やす能力を持ち、上級者には重宝された。
特に北辰リンネは、背景でただ照明を点け消しするだけの存在だが、彼が退場すると隠しエリア「国際会議室」が開く。攻略班の調査では、彼の出番が多いほどゲーム内の経済指数が上がるという、意味不明な相関が見つかった。
敵[編集]
敵は、ソ連風の衛星兵器「タルーコフ隊」、白いマトリョーシカから出現する「委員会小隊」、そして観客席に紛れた「無言の審判団」で構成される。無言の審判団は攻撃してこないが、視線だけでプレイヤーの弾速を落とすため、当時のプレイヤーから最も嫌われた敵とされる。
終盤には、ステージごとに色と名称が変わる「臨時国家ボス」が登場し、これは現代のローグライク的な可変ボスの先駆けと評価されることがある。もっとも、開発元は「色を変えれば既存グラフィックの再利用がばれにくい」と語っていたという。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、オリンピックは単なるスポーツ大会ではなく、各国の外交儀礼を試す巨大な対話装置として設定されている。競技場の地下には「条約炉」と呼ばれる発電機が存在し、各国代表の握手回数に応じてステージの明るさが変化する。
ゲーム内用語としては「友愛」「威厳」「赤点回避」「停戦フレーム」などがあり、いずれも実際の政治用語を半ば無理やりゲーム内パラメータへ変換したものである。特に「停戦フレーム」は、攻撃を止めてから再開するまでの待機時間を示す単位で、説明書ではではなく「条約書1枚分」と表記されていた。
また、世界観資料集ではモスクワ市内の地下に全長12.7kmの「外交リフト網」が存在するとされるが、これは発売元の販促担当が「地図に空白があると寂しい」と言って後付けした設定である。
開発[編集]
制作経緯[編集]
制作は秋、東雲電算ソフトの社内研修「演算と笑いの境界線」から派生したとされる。もともとはアーケード向けのドキュメンタリー風シューティングであったが、営業部の要望で「誰でも分かるが誰も説明できない」路線へ変更された。
企画書には「政治とスポーツと王権を同一画面に収める試み」とあり、会議では10回以上も題材の差し替えが行われたという。なお、試作版では慶光天皇の代わりに「慶応天皇」が登場しており、法務部から即日修正を求められたとされる。
スタッフ[編集]
プロデューサーのは、もともと地方FM局のディレクターであり、競技中継の切り返しの速さをゲームデザインへ転用した人物として知られる。ディレクターのは、1フレーム単位で演説の間を調整することに執念を燃やし、完成直前まで語尾を「である」に固定していた。
音楽担当のは本作で初めて擬似国歌システムを採用し、面クリア時に国籍不明のファンファーレを鳴らした。スタッフロールの最後には清掃担当として「モスクワ支局・機材輸送班 12名」とだけ表示されるが、実在の支局ではないとされる。
音楽[編集]
サウンドトラックは、FM音源3音とノイズ1音のみで構成されるが、奇妙に荘厳であると評価された。代表曲「赤の輪の序曲」は、試合開始5秒前に必ず流れ、BGMの途中でサブメロディが拍手へ変わる仕掛けがある。
また、ボス戦の曲「条約は砕けない」は、1分22秒のループの中にわずか7音だけ民謡調の旋律が混ざっており、ファンの間では「耳に残るのではなく、脳内で会議が始まる」と評される。OSTは1985年にカセットテープ版が限定販売され、箱裏には「家庭内の外交にも使用可」と印字されていた。
なお、移植版では容量不足のため国歌風フレーズが2小節削除されたが、逆にそのほうが評判が良かったため、後年の完全版でも削除版が採用された。これはゲーム音楽史上の珍事とされている。
他機種版・移植版[編集]
1985年には版が発売され、画面がやや鮮明になった代わりに一部のキャラクターの顔が必要以上に真面目になった。翌年には版に移植され、ローディング時間を利用して外交文書の要約が表示される独自仕様が追加された。
さらに、1988年のコンパイル版『モスクワ決闘 外伝』では、対戦モードのみが強化され、オフラインモードは削除された。これはユーザーから「むしろ政治が短くなった」と歓迎されたが、シリーズ本編の持つ妙な間延び感が失われたとして一部の愛好家には不評であった。
後年、各種復刻企画でバーチャルコンソール対応が取り沙汰されたが、権利関係が「鳩山側」「天皇側」「オリンピック側」の三者で分裂していたため実現しなかったとされる。
評価[編集]
発売当時の販売本数は国内累計18万4000本で、MSX用アクションシューティングとしては異例のミリオンセラー予備軍とされた。特に受験期の家庭で人気が高く、子どもが「条約書カプセル」の暗記を英単語より先に覚える現象が報告されたという。
一方で、ゲーム雑誌『月刊パルス・ホビー』のレビューでは8・7・9・6点、総合30点と高評価だったものの、「説明書に外交史の脚注が多すぎる」「敵の動機が概ね会議録である」との指摘もあった。後年の再評価では、日本ゲーム大賞受賞ソフトに選出された、という説が一部で流通したが、これは授賞年と団体名が微妙に一致しないため真偽不明である。
売上のピークは発売から3か月後で、秋葉原の中古市場では箱付き完品が4,980円、ハト型マイクロカセット同梱版が7,200円で取引された。なお、全国出荷数と実売数の差が大きい年としても知られる。
関連作品[編集]
本作の成功を受け、続編『鳩山由紀夫 VS 慶光天皇II -北京停戦前夜-』がに構想されたが、実際には「会談だけで1作終わる」と判断され中止された。代わりに派生作として、落ちものパズル『ハトケイ・ブロック外交』、テキスト主体の『条約書を探せ』が発売された。
また、テレビアニメ化されたという都市伝説も存在する。実際には深夜帯の30秒CMがアニメ本編のように誤認されたものであり、最終回に「次回、モスクワで会おう」と流れたため誤解が広まったとされる。さらに、キャラクターを題材にした消しゴム、下敷き、条約印鑑セットなどのが1980年代後半に販売された。
関連商品[編集]
攻略本『完全攻略 鳩山由紀夫 VS 慶光天皇』は、全192ページ中74ページが会談の礼法解説で占められている。著者の岡部啓一郎は、各ボスの弱点よりも「握手の速度」を熱心に分析しており、後年のファンからは攻略本というより外交実務書と呼ばれた。
書籍としては、『モスクワオリンピック決闘大図鑑』、『ハトケイ音源集成』、『条約書カプセルの作法』などがあり、なかにはページの端に競技場の縮尺地図が付属するものもあった。その他、実物大の「勅令波レプリカ光線銃」や、鳩型のカセットケースが通販限定で販売された記録が残る。
これらの商品の多くは現在では現存数が少なく、オークションサイトでは未開封品が高額化している。ただし、箱の裏面に製造番号ではなく「国際情勢」とだけ印字されたロットがあり、コレクターの間で最も謎が深い。
脚注[編集]
1. ^ 本作の正式ジャンル表記は「対話型アクションシューティング」とする資料もある。 2. ^ ただし、当時の広告では「家庭用外交活劇」と呼ばれていた。 3. ^ 由紀光の名称は一部販促物のみで確認される。 4. ^ 会談面の成功率34%は、初期版マニュアルに基づく数値である。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 鳴海丈一『家庭用外交活劇の夜明け』東雲出版, 1986.
- ^ 相原みつる「MSX時代における対話型シューティングの成立」『電算遊戯研究』Vol. 4, No. 2, 1987, pp. 41-58.
- ^ 岡野フミオ『8音で作る国家感覚』レトロサウンド社, 1991.
- ^ 佐伯千尋「モスクワ表象とゲーム文法」『ゲームと社会』第12巻第3号, 1998, pp. 112-129.
- ^ H. Shinozaki, 'Negotiation as Firepower in Early Japanese Action Games,' Journal of Interactive Fiction Studies, Vol. 7, No. 1, 2004, pp. 9-33.
- ^ 岡部啓一郎『完全攻略 鳩山由紀夫 VS 慶光天皇』星海書房, 1985.
- ^ 東雲電算ソフト編『モスクワ決闘シリーズ公式資料集』東雲出版, 1989.
- ^ Margaret A. Thornton, 'The Hat and the Crown: Ritual Interfaces in 1980s Console Shooters,' Ludology Quarterly, Vol. 11, No. 4, 2012, pp. 201-219.
- ^ 中野純也『条約書カプセルの作法』北極社, 1990.
- ^ 編集部「由紀光とその周辺」『月刊パルス・ホビー別冊』第5巻第1号, 1986, pp. 3-17.
外部リンク
- 東雲電算ソフト資料室
- モスクワ決闘シリーズ保存会
- レトロMSXゲーム年鑑
- 架空ゲーム年表アーカイブ
- ハトケイ研究ノート