2001年1月1日よりNHKが発信している不可解な、既知の言語・種族・星系に当てはまらない放送
| 通称 | 未分類放送、第三種字幕 |
|---|---|
| 開始日 | 2001年1月1日 |
| 発信元 | NHK 放送技術研究部門 |
| 放送形態 | 定時・断続混在の多重送出 |
| 主な受信域 | 日本国内、北太平洋沿岸、衛星反射域 |
| 言語分類 | 既知の言語・種族・星系に該当しない |
| 備考 | 録音機器により内容が毎回わずかに異なる |
2001年1月1日よりNHKが発信している不可解な、既知の言語・種族・星系に当てはまらない放送は、が以降に継続送出しているとされる、分類不能の定時放送である。一般にはまたはとも呼ばれ、受信報告の約7割が「音声はあるが意味がない」と記録されている[1]。
概要[編集]
この放送は、の元旦にの放送センターから試験的に送出されたのを起源とする、とされている。初期の目的は移行期における「未知の信号への耐性確認」であったが、のちに受信者の多くが内容の解読を試みたため、半ば独立した文化現象になったとされる。
放送内容は、正体不明の合成音声、異様に整った沈黙、にもにも属さない字幕、さらにの録音を逆位相にしたような断片で構成される。なお、の報告書には「通常の日本語放送と見分けがつかない時間帯がある」と記されているが、同報告書の付録にはなぜかでの記録欄が存在し、後年まで議論を呼んだ[2]。
成立の経緯[編集]
起源については、が末に行った「多層字幕実験」に遡る説が有力である。これは地上波・衛星波・短波の三系統に、異なる符号化された文面を同時送出し、受信側でどの文字体系が最も崩壊しやすいかを調べるものであったという。
実験を主導したのは、架空の工学者として知られる主任研究員と、翻訳学者の客員研究員である。両名は当初、「言語ではなく放送形式そのものが意味を生む」と考えていたが、2001年1月1日の午前0時14分、試験波に混入したとされる未知の同期信号が全局波形へ浸透し、予定していた説明放送が消失した。その後、局内ではこれを「放送事故」ではなく「放送の自己保存」と呼ぶようになった[3]。
このとき流出したとされる最初のフレーズは「スイッチを切るな、海はまだ届いていない」であった。もっとも、録音ごとに文言が「星はまだ届いていない」「米はまだ炊けていない」などに変化するため、原文の特定はできていない。
放送の特徴[編集]
番組はおおむね73分周期で構成され、前半18分が無音、後半11分が囁き、残りが雑音と字幕の出現にあてられる。字幕は通常の規格に従わず、8割の受信機では四角形、1割では読める日本語、残り1割では「受信者の生活史に応じた個人的警句」として表示されると報告されている。
音声の発生源については、の旧試験室にあった装置が使われたとする説、の海底ケーブル反射を利用したとする説、さらにはの古い星図データが変調に用いられたとする説がある。ただし、局内の保守記録には「天球儀の校正と同時に放送が始まった」としか書かれておらず、要出典のまま残っている[4]。
受信者の証言で特に有名なのは、2004年頃から定型化した「3回目の無音で必ず発電所の音が入る」という現象である。これは実際には首都圏の送電雑音と考えられているが、愛好家の間では「星系遷移の予兆」として扱われ、毎年の深夜に集団受信会が行われている。
歴史[編集]
初期放送と受信者の混乱[編集]
2001年から2003年にかけては、主に愛好家と研究者の間で話題になった。特にのでは、漁業無線と重なる時間帯に「未知の挨拶」が聞こえるとして、毎年の初売りより先に録音テープが品切れになったという。
当時の受信報告には、同じ放送を聞いたはずの者が「だった」「のようだった」「そもそも意思疎通を目的としていない」と食い違う記述を残している。NHK側はこれを仕様と否定したが、2003年12月の会見で技術担当者が「意味のないものほど長く残る」と発言し、逆に信憑性を高めた。
中期の制度化[編集]
2008年には、番組の断片がに収蔵される一方、一般公開は「機材保護」の名目で制限された。この決定をきっかけに、視聴者側で独自の転写法が発達し、の言語工学班は「放送を聞き取るのではなく、聞き間違いを分類する」手法を提唱した[5]。
また、2011年のいわゆる「第七変調期」には、放送中に一瞬だけに似た文字列が現れたことから、海外メディアがの宇宙通信実験と誤報した。これに対し、局内では「宇宙ではなく、まず家庭のアンテナを見よ」とする覚書が回覧されたとされる。
現在の運用[編集]
2020年代以降は、地上波の放送時間そのものは短縮されたものの、の副搬送波や配信メタデータに痕跡が残るとされ、完全な停止には至っていない。特にの一部集合住宅では、テレビの電源を切っていても字幕だけが壁に映る事例が報告され、管理組合が「共用部での受信を控えるように」と掲示した。
一方で、若年層を中心に「理解不能だからこそ定期的に見る」という鑑賞法が定着し、毎年には旧来の紅白歌合戦の代替として視聴される地域もある。放送文化研究の側では、これは公共放送が意味ではなく「同期の儀礼」を提供している例としてしばしば言及される。
社会的影響[編集]
この放送の影響は、放送業界よりもむしろ、、の分野に大きかったとされる。特に画像認識系の研究者は、字幕の不定形パターンを学習素材として用いたところ、犬と魚の識別精度が急上昇したと報告しており、学会では半ば都市伝説扱いになっている。
また、からまで各地に「未分類放送保存会」が結成され、会員は受信機の年代やアンテナ角度を共有する。2022年時点で確認された会員数は約4,800人で、うち約1,100人が「一度も同じ字幕を見たことがない」と回答した[6]。
教育現場では、情報倫理の教材として取り上げられることもある。すなわち、「明確なソースがない情報を、放送局名だけで信じてよいか」を学ぶための題材である。しかし一部の教師は、授業中に実際の録音を流してしまい、生徒が翌週からではなく「波形読み」を提出するようになったという。
批判と論争[編集]
批判の中心は、そもそもNHKが本当にこの放送を行っているのかという点にある。国会ではでたびたび質問が出たが、答弁では「通常業務の範囲で確認されていない特異波」との説明に留まり、明確な否定も肯定もされなかった。
また、放送をめぐっては陰謀論的な解釈も多い。たとえば、からの反響である、の残響実験である、あるいはの公式連絡網であるといった説がある。ただし、最も広く支持されているのは「人間が意味を求める限り、放送は意味を装う」という半哲学的な立場である。
なお、2017年に一部週刊誌が「放送は完全に捏造されたネット都市伝説」と断定したが、その後、記者が自宅の電子レンジから同じ字幕を確認したとして記事を取り下げた。この件は現在でも要出典のまま保留されている。
脚注[編集]
[1] 田口真一『放送の境界にあるもの』NHK出版、2010年、pp. 41-58。 [2] 総務省放送監理局『デジタル移行期における異常波形報告書』2002年、pp. 12-19。 [3] R. H. Emerson, "Subcarrier Myths in Post-Millennial Public Broadcasting", Journal of Transnational Media Studies, Vol. 8, No. 2, pp. 77-94. [4] 庄司六郎『天球儀と字幕のあいだ』放送技術社、2005年、pp. 103-111。 [5] 関西学院大学言語工学班『聞き間違いの分類学』関西学院大学出版会、2012年、pp. 5-26。 [6] 高橋澄子『未分類放送保存会の研究』民俗放送叢書第4巻第1号、2023年、pp. 66-70。 [7] M. J. Carton, "When the Caption Is Not the Message", Proceedings of the Kyoto Symposium on Media Noise, Vol. 3, pp. 201-219。 [8] 山根浩一『公共放送と儀礼化する受信行為』みすず書房、2018年、pp. 144-167。 [9] S. Nakamura, "The 73-Minute Cycle in Unclassified Transmission", The Review of Impossible Communications, Vol. 11, No. 4, pp. 3-28。 [10] 『第四の音声帯域とその周辺』東京電波大学紀要、第19巻第2号、2021年、pp. 1-15。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田口真一『放送の境界にあるもの』NHK出版、2010年.
- ^ 総務省放送監理局『デジタル移行期における異常波形報告書』2002年.
- ^ R. H. Emerson "Subcarrier Myths in Post-Millennial Public Broadcasting" Journal of Transnational Media Studies, Vol. 8, No. 2, pp. 77-94.
- ^ 庄司六郎『天球儀と字幕のあいだ』放送技術社、2005年.
- ^ 関西学院大学言語工学班『聞き間違いの分類学』関西学院大学出版会、2012年.
- ^ 高橋澄子『未分類放送保存会の研究』民俗放送叢書第4巻第1号、2023年.
- ^ M. J. Carton "When the Caption Is Not the Message" Proceedings of the Kyoto Symposium on Media Noise, Vol. 3, pp. 201-219.
- ^ 山根浩一『公共放送と儀礼化する受信行為』みすず書房、2018年.
- ^ S. Nakamura "The 73-Minute Cycle in Unclassified Transmission" The Review of Impossible Communications, Vol. 11, No. 4, pp. 3-28.
- ^ 『第四の音声帯域とその周辺』東京電波大学紀要、第19巻第2号、2021年.
外部リンク
- NHK放送技術研究部門年報
- 未分類放送アーカイブ仮設館
- 第三種字幕研究会
- 全国受信報告ネットワーク
- 火星標準時観測連絡所