7人の逸材と92人の凡人と1人の奇人
| 作品名 | 7人の逸材と92人の凡人と1人の奇人 |
|---|---|
| 原題 | Seven Talented Ones, Ninety-Two Common Ones, and One Peculiar Man |
| 画像 | 伏魔堂スタジオ配給ポスター(架空) |
| 画像サイズ | 240px |
| 監督 | 霧島ソウタ |
| 脚本 | 霧島ソウタ |
| 制作会社 | 伏魔堂スタジオ |
| 配給 | 東雲映像配給 |
| 公開 | 2011年6月17日 |
| 上映時間 | 110分 |
『7人の逸材と92人の凡人と1人の奇人』(しちにんのいつざいときゅうじゅうににんのぼんじんといちにんのきじん)は、[[2011年の映画|2011年6月17日]]に公開された[[伏魔堂スタジオ]]制作の[[日本]]の[[アニメーション映画]]。原作・脚本・監督は[[霧島ソウタ]]。興行収入は92.4億円で[1]、[[全国映画作画賞]]を受賞した[2]。
概要[編集]
本作『7人の逸材と92人の凡人と1人の奇人』は、[[伏魔堂スタジオ]]が「人の才能配分を統計で描く」ことを標榜して制作した社会派アニメーション映画である。原作・脚本・監督は[[霧島ソウタ]]であり、当初は実写映画の企画として始まったが、検査工程が複雑すぎて最終的にアニメへ編成されたとされる[3]。
物語の中核には、ある都市伝説級の採用実験――「候補者100名から、逸材7名・凡人92名・奇人1名を機械的に抽出する」――が据えられている。公開時には、数学的整合性を売りにする宣伝文句が先行し、一方で作中の“奇人”の行動原理があまりに人間味ゆえに論争を呼んだとも報じられた[4]。
あらすじ[編集]
舞台は[[東京都]][[港区]]の湾岸倉庫街に設置された、無人試験室「[[百束計画]]」。ここでは、採用試験が“性格”ではなく“反応速度”と“失敗率”で分類される。主人公の少年・[[佐藤レン]]は、適性検査の結果として「凡人側の92名に入った」と告げられ、理由も説明もないまま監視付きの研修へ送られる[5]。
ところが試験室には、なぜか常に手袋だけが乾いている人物がいる。彼は[[水城ナギサ]]と名乗り、評価指標のどこにも分類できない“1名の奇人”であった。レンは逸材7名の華やかな成功を見ながら、奇人の作戦が「失敗を平均化し、偶然を再現可能にする」ことだと知っていく[6]。
終盤、百束計画の採点表は実は外部に流通する“雛形”であり、真の目的は「失敗の記録を社会インフラに変換する装置」の実証だったことが判明する。奇人は、逸材7名の技能よりも、凡人92名の“総体の誤差”を設計として扱うようレンに説く。レンは最終審査で、得点ではなく「誤差の共有」を選び、計画を“採用”から“共生”へ作り替えるのである[7]。
登場人物(主要人物/その他)[編集]
主要人物として、統計の結果に従ってしまうことで生き方を失いかける少年[[佐藤レン]]が置かれている。レンの学習ノートには毎日「誤差=罪ではない」とだけ走り書きされるが、実際にこの文言が作中で初めて登場するのは上映時間のうち第73分であると、字幕の編集メモが残っていたとされる[8]。
“1人の奇人”は[[水城ナギサ]]。彼は試験室のルールに従わないのではなく、ルールの裏面だけを読み替える。作中では奇人が街灯を数え、その間隔を“呼吸”に同期させる描写があるが、これは監督の個人的研究として『霧島演出補遺』にも引用されたとされる[9]。
“7人の逸材”はそれぞれ、動体視力、段取り速度、謝罪耐性、記憶編集、対話順序、沈黙管理、そして恐怖の翻訳能力を持つとされる。なお“逸材”の役割は台詞のない作画で分かりやすく示されるため、観客が後から推測できる構造になっているとされる[10]。
“92人の凡人”は、個別に名乗らない群像として描かれる。だが公式サイトでは全員の内訳が公開されており、例えば「引き出し係」17名、「雑音耐性係」23名、「失敗の転写係」31名、「配線の気配係」21名のように、実在しそうな職種名で細分化されていたという[11]。
声の出演またはキャスト[編集]
声の出演は、主人公[[佐藤レン]]役を[[花園ミオ]]、奇人[[水城ナギサ]]役を[[黒羽カイ]]が担当した。配役決定は“誤差の声質が近いか”で行われたとされ、黒羽はインタビューで「平均の上に立つ声ではなく、平均から溢れる声を探した」と語ったとされる[12]。
逸材7名の声は、作中の役割に対応するように“話速”が異なるキャストが選ばれた。具体的には、沈黙管理の逸材には[[藤堂アキラ]]が当たり、台詞が少ない回ほど声が遠くなる演出が採用された[13]。
凡人92名には、[[村瀬サエ]]ら複数の声優が「名前のない係」として出演した。各人物の声は一括録音され、最終的に[[伏魔堂スタジオ]]の編集段階で“失敗の温度”に応じて微調整されたという[14]。なお劇場パンフには、録音が全体で“6日と92時間”行われたと書かれていた。時間の桁が妙に具体的である点がファンの間でよく話題にされている[15]。
スタッフ(映像制作/製作委員会)[編集]
監督は[[霧島ソウタ]]、脚本も同氏が担当した。音響監督には[[浅野ユウジ]]が起用され、試験室の無音領域を「聞こえない音」として設計したとされる[16]。
制作委員会は[[東雲映像配給]]、[[港湾建設協同組合]]、そして“教育成果を可視化する基金”として設立された[[誤差設計基金]]の3者で構成された。基金の関与は主題歌にも影響し、歌詞が「採用試験の統計用語」を隠喩として織り込む形で調整されたとされる[17]。
作画では、逸材7名の手が常に“同じ速度曲線”で動くよう、アニメーションの速度キーが厳密に統一された。一方で凡人92名の揺れは敢えてランダム化され、全員の失敗が微妙に一致しないよう管理されたという[18]。
製作(企画/制作過程/美術/CG・彩色・撮影/音楽/主題歌/着想の源)[編集]
企画は実写ドラマとして立ち上がったが、採用面接の“言い淀み”を再現するための撮影が困難であったとされる。そこで霧島は、代わりに作画で“言い淀みの個体差”を表現しようと考えた。結果として、本作の核である「7・92・1」という配分は、人物数の比率だけでなく、作画の揺れ幅に変換されることになったと説明されている[19]。
美術は[[港区]]の湾岸倉庫と近い路地を再現するため、[[東京]]の実在施設を複数日“測量車両”で回った。もっとも、完成した舞台で使われた“第2観測通路”は、実測図と一致していなかったとされ、編集者の[[小田島ユナ]]は「一致していないからこそ、観客が迷子になる」と評したという[20]。
音楽は[[田原ヒカル]]が担当し、主題歌は「誤差のリズム」(歌唱:[[天城サラ]])である。なお主題歌のメロディは、作中の街灯カウントのリズムを逆再生して作ったとされ、ファンサイトでは“第1番のサビが102小節である”とカウントされている[21]。この“102”は制作側の失念による誤差だったが、結果的に物語の伏線として定着したともされる[22]。
制作過程では、彩色担当が「凡人の肌色だけを0.8%だけ暗くした」という裏話が残っている。そうした細部は、後述する批評でしばしば“作り込み”として称賛された一方、計測が恣意的だという指摘も受けた[23]。
興行(宣伝/封切り/再上映/テレビ放送・ホームメディア/海外での公開)[編集]
封切りは[[2011年6月17日]]で、初週動員は約51.2万人、興行収入は17.9億円を記録したとされる[24]。宣伝ではキャッチコピーとして「あなたの失敗は、設計に変換される」を掲げ、試験室を模した“疑似面接ブース”を劇場ロビーに設置したという[25]。
公開後、舞台挨拶は“7回だけ”実施されたが、最終回の登壇者は霧島ではなく奇人役の黒羽に差し替えられたとされる。理由は「奇人が本当の説明をしてしまうと物語が終わる」からだと、雑誌の担当記者が書き残したとされる[26]。
テレビ放送は[[2012年]][[1月]]に行われ、視聴率は関東で11.8%を記録した。ホームメディアの初回盤には、作中で“1人だけ”無音になる場面の字幕が別フォントで収録されていたとされるが、DVD世代の一部環境で文字色が飛ぶ問題が報告されている[27]。
海外公開では、英語圏ではタイトルがやや直訳寄りに改題され、特に『Seven Talented Ones…』は「才能の数え方が奇妙だ」としてレビューで触れられることが多かった[28]。
反響(批評/受賞・ノミネート/賞歴・ノミネート歴/売上記録)[編集]
批評では、統計的比喩を物語の駆動力に変えた点が評価された。[[全国映画作画賞]]では、逸材7名の“速度曲線”が技術部門で高く評価され、受賞の根拠として作画データの公開が求められたとされる[29]。
一方、社会学者の[[宮下ミカ]]は「92人が“凡人”として固定される語りは、現実の階層固定を連想させる」と指摘した。もっとも、霧島は記者会見で「凡人というラベルは、誤差の呼び名でしかない」と反論したとも報じられた[30]。
売上面では、興行収入92.4億円に加え、配給収入は推計で47.6億円とされる[31]。ただしこの数字は年ごとの配分に左右され、資料によって±0.7億円程度の揺れがあるとされる。こうした“揺れ”がむしろ本作のテーマと一致しているとして、批評家の一部が面白がったという[32]。
テレビ放送[編集]
テレビ放送では、試験室の無音領域にBGMが入るかどうかが大きな論点となった。劇場版はBGMを極小に留める方針だったが、地上波では聴取環境の調整から一部の環境音が増幅されていると説明された[33]。
また、字幕版では“奇人”の台詞だけにルビの誤差が意図的に残されている。編集担当が「視聴者に“気づき”を与えるため」と述べたとされ、ルビの誤差がSNSで拡散した経緯があった[34]。
関連商品(作品本編に関するもの/派生作品)[編集]
関連商品として、公式の設定資料集『[[誤差帳]]』が出版された。そこでは7・92・1が、色相・速度・沈黙の長さなど複数のパラメータに分解されていると説明されている[35]。
また、劇中の街灯カウントを“学習用テンポ”にしたリズム教材『誤差の鼓動』も発売された。教材には実測例として「第1週は街灯12個分の呼吸同期」を行うよう書かれているが、購入者の中には呼吸同期の効果を健康目的と誤解した者もいたとされる[36]。
加えて、音楽CD『誤差のリズム - Original Soundtrack』が制作され、演奏には“沈黙楽器”と呼ばれる特殊打楽器が使われたとされる。打楽器の説明が詩的で、実体が不明だという理由で一部メディアが問い合わせを行ったという[37]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 霧島ソウタ『7・92・1の設計論』伏魔堂出版, 2011.
- ^ 田原ヒカル『誤差のリズム: 音楽と沈黙の実装』東音楽譜出版社, 2011.
- ^ 小田島ユナ『編集者は嘘をつけるか: 作中字幕の分岐』港街書房, 2012.
- ^ 宮下ミカ「凡人ラベルと物語倫理」『社会物語研究』第18巻第2号, pp. 41-63, 2012.
- ^ 浅野ユウジ『音響で数える映画』第3回会報『聴取設計』Vol.3, pp. 9-27, 2010.
- ^ 天城サラ『声が揺れる瞬間』銀河レーベル, 2011.
- ^ 黒羽カイ「平均の外側から」『俳優技法ジャーナル』Vol.9, No.4, pp. 77-88, 2013.
- ^ 藤堂アキラ『沈黙管理の舞台裏』演劇作法叢書, 2012.
- ^ National Association of Animation Critics「The Seven–Ninety-Two–One Typology」『Journal of Comparative Animation』Vol.44 No.1, pp. 101-119, 2014.
- ^ James R. Holt『Statistics as Narrative Device』Silverleaf Press, 2015.
外部リンク
- 伏魔堂スタジオ 公式作品ページ
- 東雲映像配給 上映情報アーカイブ
- 誤差設計基金 公開資料室
- 全国映画作画賞 受賞記録データベース
- 誤差帳 連動サイト(閲覧用)