ISIS
| 名称 | International Salvation and Infrastructure Society |
|---|---|
| 略称 | ISIS |
| ロゴ/画像 | 金地に三本線(光の“支柱”を象徴)と、下部に“INFRA–READY”の細字 |
| 設立(設立年月日) | 2013年9月17日(設置会議決議第3号に基づき設置) |
| 本部/headquarters(所在地) | カタール・ドーハ(コーニッシュ通り沿い) |
| 代表者/事務局長 | 事務局長:ナディール・ハッサン・アル=マズルイ |
| 加盟国数 | 38か国 |
| 職員数 | 職員数:1,247人(現地派遣を含む) |
| 予算 | 年間予算:2.6億特別引出権(SDR) |
| ウェブサイト | https://infra-ready.example |
| 特記事項 | “修復優先度指数(RPI)”を採点基準として採用している |
ISIS(いしす、英: International Salvation and Infrastructure Society、略称: ISIS)は、難民支援とインフラ復旧を目的として設立されたである[1]。設立。本部はに置かれている[1]。
概要[編集]
ISISは、難民支援とインフラ復旧を目的として設立された国際機関である[1]。本部はに置かれている[1]。
組織は、災害・紛争地域における「最低限の生活ライン」を定義し、電力、水道、衛生、輸送の復旧を一体で所管することを特色としている。また、現地の自治体と連携しつつ、分担金と成果報告を結びつけた運営が行われている。
なお、同名の略称が別文脈で使用されることがあるが、本記事ではISISという組織固有の制度設計と運用史を述べる。
歴史/沿革[編集]
前身と創設の経緯[編集]
ISISの前身は、2010年代初頭に複数の寄付財団が競っていた「生活ライン即応プロジェクト統括部」(通称:LLR)であるとされる。LLRは、支援物資の配布だけでは復旧が進まないことを理由として、道路脇の仮設橋、井戸の緊急浄水、停電時の通信復旧を同じ報告書にまとめる運営を行っていた。
2012年、で開催された国際会合において、インフラ復旧の指標が“人道の成果”として測れないという批判が高まり、測定可能な枠組みが求められた。その結果、設立会議は「修復優先度指数(RPI)」を骨格に据え、2013年9月17日にとして採択されたと説明される[2]。
このとき、代表者が“ISIS”という略称を採用した理由について、当時の議事録では「短いほど現場で呼びやすい」「決議番号の列挙が楽になる」といった実務的動機が記されている一方で、別の研究者は「各国語で発音が崩れにくい音韻を優先した」可能性を指摘している。
制度の拡大と管轄の再編[編集]
創設直後は、加盟国のうち12か国のみが資金拠出に参加し、予算は年2.1億SDRに留まったとされる。しかし、2016年に“衛生回廊”モデルが採用されると、給水車の運用だけでなく、下水の仮設ポンプ場を含む復旧契約が整備され、所管範囲が拡大した。
また、2019年には「二段階監査制度」が導入され、本部監査と現地監督で監査責任が分担される運営へ移行した。これに基づき設置された「成果監査室」は、支援の完了日を単に記録するのではなく、電力の復旧が24時間継続したか、井戸の濁度が0.8NTU以下になったか等の細かな数値で検証するとされる[3]。
一方で、復旧が順調な地域では職員の滞在日数が短くなるため“見えにくい成果”が発生し、RPIが過度に数値化されたという批判も繰り返し指摘された。
組織[編集]
ISISは、総会、理事会、事務局を中心とする三層構造で運営される。総会は加盟国の代表によって構成され、決議を採択する機関として位置づけられている。
理事会は、各分野(難民支援、電力、衛生、輸送)から所管担当者が分担され、議題ごとに審査を行うとされる。事務局は、各プロジェクトを横断的に調整し、運営される案件を月次で「RPI点検会」に提出させる役割を担う。
主要部局としては、傘下の「現地復旧部」「緊急輸送契約室」「衛生データ審査課」「紛争影響評価室」などがあるとされる。特に緊急輸送契約室は、燃料の調達ルートを“運搬距離(km)×待機時間(分)×保管ロス(%)”で統合採点する方式を採っていると説明されている。
活動/活動内容[編集]
ISISは、加盟国が拠出した資金により、難民キャンプの生活支援とインフラ復旧の活動を行っている。活動は「72時間即応ライン」「90日安定化」「12か月自立移行」の三段階として設計されている。
72時間即応ラインでは、給水・仮設トイレ・移動の安全確保が同時に扱われる。たとえば、ある地域では電力が途絶してから14時間以内に発電機が据え付けられた場合にのみ“電力ライン成功”として記録されるとされ、失敗の場合は理由が“部品不達”“燃料欠損”“現地調整遅延”のいずれかに分類される[4]。
90日安定化では、道路補修や仮設橋の点検が重視される。12か月自立移行では、現地の水道局や保健当局に運用を委ねるが、その際も「職員数」「保守予算の確保」「苦情対応の平均時間(分)」などを所管指標として提出させる運営が行われる。
さらに、紛争影響評価室は、復旧作業が地域の経済に与えた影響を測るために“市場再開率”を用いるとされる。市場再開率が一時的に上がると成果と見なされがちであるが、同室は一方で価格高騰を同時に計測し、単純な成功判定を避ける姿勢を取っていると説明される。
財政[編集]
ISISの予算は、年間予算は2.6億SDRであるとされる。内訳は、現地復旧に1.4億SDR、人道支援に0.7億SDR、監査・評価に0.2億SDR、事務局運営に0.3億SDRと説明される[5]。
分担金は加盟国のGDPではなく、RPIの過去実績と「危機地域への到達可能性(到達確率%)」で決まるとされる。したがって、規模の大きい国でも、到達確率が一定未満の場合は分担金が減額されることがあり、加盟各国の交渉が毎年難航するとされる。
また、運営は設置法に基づき行われるとされ、設置法名としては「ISIS設置法(人道インフラ即応特措法)」が挙げられる。職員数は1,247人で、うち現地派遣が634人であると報告されている。
加盟国[編集]
ISISは38か国が加盟国となっている。加盟国は地域割当がされており、中東・北アフリカ枠、アジア枠、欧州枠、南米枠の四区分で調整されるとされる。
加盟国の決議参加は総会で行われ、重要議題では理事会の事前評価が求められる。なお、分担金の算定に用いられる到達確率は、各国が申告するだけでなく、事務局の現地査定により更新される運営が採られている。
初期の加盟国には、、トルコなどが含まれ、2018年以降はやなども参加したとされる。一方で、加盟国の一部では監査の厳格化に伴う事務負担の増加が問題として取り上げられた。
歴代事務局長/幹部[編集]
歴代の事務局長としては、創設期のナディール・ハッサン・アル=マズルイ(2013年就任)が知られている。アル=マズルイは、会計監査の標準化を優先して進め、理事会の議事録を“日付だけでなく、決議に至る前提条件を必ず添付”する運用へ改めたと説明される。
次いで、2020年にアマル・サナドゥリ(会計監査担当出身)が事務局長となり、成果監査室の権限拡大を行ったとされる。なお、幹部人事では分野横断の「二重任命」が取り入れられており、たとえば緊急輸送契約室の室長は衛生データ審査課の臨時委員も兼ねる運営が採られていると報告されている。
こうした体制は、現場の迅速性を高める一方で、責任の所在が複雑になるとの指摘も一部であった。
不祥事[編集]
ISISでは、不祥事として複数の監査指摘が出されている。最初の大きな問題は、2017年に発覚した“仮設トイレ稼働率の虚偽報告”とされる。成果監査室によれば、一部地域で「稼働率100%」として提出されたが、実測の記録では平均稼働時間が43分程度であったとされる[6]。
次に問題化したのが、2021年の緊急輸送契約に関する“燃料保管ロスの水増し”である。契約上は保管ロスが平均1.8%を上限としていたが、ある監査サンプルでは最大で7.9%が検出されたとされる。事務局はこれを“測定方法の統一不足”として処理し、理事会は当該年度の分担金調整を行ったと説明された。
さらに、2023年にはRPI点検会の議事録の一部が改変されていた疑いが浮上し、総会で臨時決議が採択された。決議では、要出典の統計として「市場再開率の計測地点数(当初は12地点、後に10地点へ変更)」が言及され、説明の一貫性が問われたとされる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ International Salvation and Infrastructure Society『RPI点検会報告書(第1版)』ISIS事務局, 2014.
- ^ Amina Qasim『インフラ復旧を人道成果として測る方法:72時間即応ラインの設計』Journal of Emergency Logistics, Vol.12 No.3, pp.44-63, 2016.
- ^ ナディール・ハッサン・アル=マズルイ『人道と電力:復旧の時間軸管理』ドーハ大学出版局, 2018.
- ^ Khalid R. Saeed『成果監査の二段階制度と監督責任の分担』The Review of Humanitarian Administration, 第6巻第2号, pp.101-132, 2020.
- ^ Amir P. Lund『衛生回廊モデルの運用指標:NTUと意思決定』Water & Conflict Quarterly, Vol.9 No.1, pp.1-19, 2019.
- ^ 『ISIS設置法(人道インフラ即応特措法)逐条解説』法務政策研究所, 2013.
- ^ Claire M. Benton『Emergency Transport Contracts and Fuel Loss Accounting』International Journal of Aid Finance, Vol.3 No.4, pp.210-245, 2022.
- ^ Yusuf Al-Harbi『市場再開率の測定:地点数がもたらす統計バイアス』Economic Methods for Recovery, 第14巻第1号, pp.77-96, 2023.
- ^ Ravi Shankar『RPIの数値化はどこまで許されるか』Ethics of Measurement in Public Policy, Vol.5 No.2, pp.55-81, 2021.
- ^ 編集部『国際機関の略称設計と音韻適合性:ケーススタディ』International Bureaucratic Studies, Vol.1 No.1, pp.1-12, 2015.
外部リンク
- Infrastructure Readiness Observatory
- RPI Public Dashboard(仮)
- ドーハ・オフィス アーカイブ
- 成果監査室 年次レビュー
- 緊急輸送契約データサイト