おのれGreg
| タイトル | おのれGreg |
|---|---|
| 画像 | OnoresGreg_box.png |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 北米向け初回版ジャケット |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム |
| 対応機種 | ドリフトーク・ポータル |
| 開発元 | マーブル・コバルト社 |
| 発売元 | マーブル・コバルト社 |
| プロデューサー | 有馬 兼信 |
| ディレクター | 早瀬 みつる |
| デザイナー | 井筒 一葉 |
| プログラマー | 西園寺 透 |
| 音楽 | 霧島 レン |
| シリーズ | Greg記譚 |
| 発売日 | 2004年11月18日 |
| 対象年齢 | C-12 |
| 売上本数 | 全世界累計214万本 |
| その他 | オンライン対応、対戦モード、協力プレイ |
『おのれGreg』(おのれグレグ、英: Onores Greg、略称: OG)は、2004年11月18日に日本のマーブル・コバルト社から発売されたドリフトーク・ポータル用アクションシューティングゲーム。通称は「Greg討伐譚」であり、おのれと叫ぶことで弾幕が変質するシリーズの第1作目である[1]。
概要[編集]
『おのれGreg』は、架空都市グレインポートを舞台としているコンピュータゲームである。プレイヤーは「おのれ」と叫ぶことで機体の出力を変化させ、敵対勢力Greg協会の放つ機械群を撃破していく。
本作は、2000年代前半に一部の開発者のあいだで流行した「感情入力型アクションシューティングゲーム」の代表作とされる。特に、声量ではなく怒気の抑揚を解析する「怨声認識エンジン」が話題となり、のちに日本ゲーム大賞の審査会で「奇抜だが論理はある」と評された[2]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、通常攻撃のほかに「否認」「再宣告」「呪詛返し」の3系統のコマンドが存在する。これらは画面左下の感情メーターにより切り替わり、一定以上まで蓄積すると「おのれ状態」に移行する。
おのれ状態では弾丸が八方に分裂し、敵弾も一部が自機側へ反転する。なお、説明書には「怒りは進行方向を選ぶ」と記されており、当時のプレイヤーの間では実用書として引用された[3]。
戦闘[編集]
戦闘は最大6機編成の小隊制で、ロールプレイングゲーム的な成長要素を併用している。各機体は「叫びの角度」を上げることで貫通力が増し、逆に角度を下げると弾速が落ちるが誘導性能が上昇する。
ボス戦は全18戦で、そのうち第7ボス「合同書記官グレゴリオ」は戦闘開始前に10分間の協議フェーズを挟む。この場面は当初削除予定だったが、社内テストで最も好評だったため残されたという[要出典]。
アイテム[編集]
アイテムは「反証コイン」「焼却紙片」「名指しの壺」など、書簡と法務を連想させる名称で統一されている。特に「名指しの壺」は敵を一時的に固定化する効果があり、対戦モードでは禁則級の強さとして知られていた。
また、隠しアイテム「薄い辞典」は攻撃力を下げる代わりにショップ価格を17%引きにする効果を持つ。開発チームによれば、これは「怒りには語彙が必要である」という思想から導入されたとされる。
対戦モード[編集]
対戦モードはオンライン対応で、1対1の「断罪戦」と、3対3の「集団抗弁戦」の2種類が存在する。前者では敵を倒すたびにステージ中央へ「異議あり」表示が出るため、観客受けが非常に良かった。
当時の大会記録では、2005年の神奈川県藤沢市で行われた非公式大会において、1ラウンド平均42秒という極端な短期決着が記録されている。なお、この記録は主催側が計測器を冷蔵庫の上に置いていたため正確性に難がある。
オフラインモード[編集]
オフラインモードには「黙祷編」「追放編」「帰郷編」の3章があり、いずれも単独プレイ向けに再調整されている。特に「黙祷編」は敵の出現数が少ない代わりに、背景演出が異常に細かく、1面で表示される看板が27種類ある。
このモードはのちにバーチャルコンソール風配信版で再評価され、静かなゲーム体験を求める層から支持された。プレイヤーによっては、戦闘よりもメニュー画面の沈黙の長さを高く評価したとされる。
ストーリー[編集]
物語は、主人公が「Greg」と呼ばれる不可視の監査主体により、家屋・通貨・発言権のすべてを差し押さえられたことから始まる。主人公は失われた私物を取り戻すため、グレインポートから港区相当の埋立都市「第八湾岸」を経由し、最終的にGregの本拠「第13監察塔」へ向かう。
中盤では、Gregが単独の人物ではなく、18世紀から蓄積された契約書の総称であることが示唆される。さらに終盤、主人公の「おのれ」は呪詛ではなく、実は税務署に提出する誓約書の形式名であったことが判明し、プレイヤーを大いに混乱させた。
エンディングは全部で4種類あり、最良エンドでもGregの正体は曖昧なままで終わる。スタッフロール後に「つづく/つづかない」の二択が表示されるが、どちらを選んでも次周回では同じ文言に戻るため、当時の攻略掲示板では哲学的な議論が起きた。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
主人公は初期設定では「無名の徴収人」とされるが、公式ガイドブックでは便宜上「ミナト・アラセ」と表記されている。性別の明示はなく、プレイヤーの入力した呼称に応じて台詞の語尾が変化する。
開発当初は主人公の帽子の角度が重要な判定値だったが、テスト段階であまりに地味だったため、最終版では「叫びの大きさ」に置き換えられたという。
仲間[編集]
仲間キャラクターは、整備士の「サトナカ」、書記官の「ユル・ノート」、自称料理人の「フラム」の3人が中心である。なかでもサトナカは、味方でありながらしばしば敵陣営に通信を誤送信するため、プレイヤーからは半ば裏切り者扱いされていた。
フラムは回復アイテムの代わりに焼いた紙束を配る特殊能力を持ち、物語上では重要人物だが、ゲーム的には妙に足が遅い。これは「現実の情熱には移動速度が伴わない」という制作意図によるとされる。
敵[編集]
敵側はGreg協会の下部組織として、監査犬、金庫鴉、会議机騎士団などが登場する。会議机騎士団は机を盾にして突進してくるが、机の脚が1本だけ長いため、実際にはほぼ自滅する。
最終ボスの「大司書グレゴ」は、攻撃よりも規約全文の朗読を優先する敵として知られている。朗読が長すぎるため、プレイヤーは攻撃の隙を待つよりも早送りボタンを押すことになる。
用語・世界観[編集]
作中では、言葉がそのまま物理現象を起こす「文法干渉」が広く認められている。たとえば、語尾に「である」を付けると防御力が上昇し、「しかし」を連呼すると敵弾が左右に逸れるとされる。
世界観の中心概念は「責任の重力」である。これは、発言すればするほど足元が沈むという法則で、グレインポートの市民は発言量を月ごとに申告しなければならない。1990年代の設定資料では、住民の平均沈降量が年間3.8cmと記録されているが、計測方法は不明である。
また、本作独自の「反語通貨」制度では、ゲーム内通貨の価値が怒りの強さで上下する。高額紙幣ほど罵倒の密度が高いとされ、コレクター市場では未使用の50反語札が異様な高値で取引された。
開発[編集]
制作経緯[編集]
本作は、マーブル・コバルト社が手掛けたシリーズ一作目にあたる試作企画「Project O.N.O.R.E.」を元にしている。企画立案者の有馬兼信は、会議で何度も「怒ることは入力である」と主張し、周囲を困惑させた。
当初はハンティングアクションとして設計されていたが、狩る対象があまりに抽象的だったため、最終的にアクションシューティングゲームへ変更された。変更決定は開発開始からわずか19日目で、資料上は「仕様の右折」と記されている。
スタッフ[編集]
ディレクターの早瀬みつるは元々舞台照明の担当で、敵弾の明滅に演劇的なリズムを持ち込んだ人物として知られている。プログラマーの西園寺透は、怒声解析のために茶室の静音性を参考にしたという。
音楽を担当した霧島レンは、全32曲のうち14曲に無音を取り入れた。サウンドチームの内部文書では「無音は最も安価な効果音」と評価されている。
音楽[編集]
サウンドトラックは、電子音を基調としつつ、声明文の朗読と金属音を多用した構成である。代表曲「おのれ、夜明け前」は、戦闘BGMでありながら実質的に合唱曲として扱われ、発売翌年には同人合唱団による演奏会が京都市で開催された。
霧島レンは、メインテーマの低音部を「怒りを押し殺したときの靴音」に近づけたと述べている。また、隠しトラック「Greg Is Not Here」は、実際には演奏時間より冒頭の沈黙が長いことで有名である。
サウンドトラックCD『Onores Greg Original Nocturne』は限定3,000枚で流通し、後年の中古相場が発売時の11.7倍に跳ね上がった。なお、盤面にはなぜか「再生前に謝罪を終えてください」と印字されている。
他機種版[編集]
本作は翌年にシグナル・フォートへ移植され、携帯機向けにボス戦の演出が簡略化された。さらに2007年には星舟クラシック向けの配信版が公開され、弾幕の密度を維持しつつも背景の監察塔が1枚絵に差し替えられた。
海外版は『Onores Greg: Administrative Fury』の題で発売され、字幕の一部が法務用語に置き換えられたため、北米のプレイヤーからは「最も理解できないのに最も熱いゲーム」と評された。プレイヤーコミュニティでは、移植のたびにGregの肩書が微妙に増える現象が確認されている。
評価[編集]
発売初週の販売本数は国内で8万4,000本、全世界累計では214万本を突破したとされる。特に日本ゲーム大賞の審査では、演出と奇妙な一貫性が高く評価され、後年のインディー作品に大きな影響を与えた。
一方で、一般誌のレビューでは「情報量が多すぎて、怒りより先に戸惑いが来る」との指摘もあった。もっとも、熱心なファンはこれを「正しい感情の順序」と呼び、発売から10年を経ても対戦モードの大会が断続的に行われていた。
関連作品[編集]
続編として『おのれGreg II -再監査の夜-』、『おのれGreg ZERO: 返答不能』が発売されたほか、外伝として落ちものパズル『Greg落下注意報』も制作された。とくに後者は、敵を積み上げると主人公が勝手に謝罪する独自仕様で知られている。
また、メディアミックスとして漫画版『おのれGreg 監察日誌』が月刊コバルト砲で連載され、のちに短編OVA化された。テレビアニメ化の企画も一度は進んだが、1話の尺に対して規約朗読の分量が多すぎたため中止されたという。
関連商品[編集]
攻略本『おのれGreg 完全反語解析書』は、マップよりも用語解説が厚いことで有名である。特別付録として「怒鳴り声測定定規」が同梱され、学校教材として誤購入された例も報告されている。
書籍としては、霧島レンによる自伝『沈黙の16小節』、開発秘話をまとめた『Gregはなぜ監査になったのか』などが刊行された。ほかにも設定資料集、サウンドトラック解説本、法務風ポスター集が販売され、ファンの部屋を異様に書類棚化させた。
脚注[編集]
注釈[編集]
1. 本作の「Greg」は人名ではなく、作中で累積した契約束の総称であるとされる。 2. 怒声認識エンジンの正式名称は社内資料ごとに異なり、4種類確認されている。
出典[編集]
1. マーブル・コバルト社広報室『おのれGreg 取扱説明書』2004年. 2. 早瀬みつる『開発ノート 2003-2005』社内配布資料. 3. 霧島レン「無音と怒号のあいだ」『ゲーム音響研究』Vol.12, No.3, pp.41-58. 4. 有馬兼信「感情入力の実装について」『ドリフトーク開発通信』第7巻第2号, pp.9-27. 5. 岡部真理『平成怪作ゲーム年鑑』蒼穹出版, 2011年, pp.88-93. 6. R. Thornton, "Administrative Fury and Player Affect," Journal of Imaginary Interactive Media, Vol.4, No.1, pp.1-19. 7. 井筒一葉『敵弾の礼法』マーブル叢書, 2006年. 8. "Onores Greg: A Case of Successful Mispronunciation," Digital Ludology Review, Vol.9, No.2, pp.77-81. 9. 佐伯冬馬『反語通貨の経済史』港湾書房, 2009年, pp.122-139. 10. "Greg Is Not Here" liner notes, Cobalt Archive Press, 2008.
参考文献[編集]
・有馬兼信『Project O.N.O.R.E. 全記録』マーブル・コバルト社, 2005年.
・早瀬みつる『ゲームが叫ぶとき』月影出版, 2007年.
・霧島レン『沈黙の16小節』星舟書房, 2010年.
・岡部真理『平成怪作ゲーム年鑑』蒼穹出版, 2011年.
・R. Thornton, "Administrative Fury and Player Affect," Journal of Imaginary Interactive Media, Vol.4, No.1, pp.1-19.
・S. Caldwell, "The Greg Problem in Japanese Arcade Discourse," Game Studies Quarterly, Vol.8, No.4, pp.203-220.
・『おのれGreg 完全反語解析書』マーブル・コバルト社, 2005年.
・井筒一葉『敵弾の礼法』マーブル叢書, 2006年.
・佐伯冬馬『反語通貨の経済史』港湾書房, 2009年.
・『Onores Greg: Administrative Fury』北米版マニュアル, 2006年.
外部リンク[編集]
マーブル・コバルト社 公式アーカイブ
Greg記譚 ポータルサイト
おのれGreg 監察資料館
反語通貨保存会
ドリフトーク博物誌
脚注
- ^ 有馬兼信『Project O.N.O.R.E. 全記録』マーブル・コバルト社, 2005年.
- ^ 早瀬みつる『ゲームが叫ぶとき』月影出版, 2007年.
- ^ 霧島レン『沈黙の16小節』星舟書房, 2010年.
- ^ 岡部真理『平成怪作ゲーム年鑑』蒼穹出版, 2011年.
- ^ R. Thornton, "Administrative Fury and Player Affect," Journal of Imaginary Interactive Media, Vol.4, No.1, pp.1-19.
- ^ S. Caldwell, "The Greg Problem in Japanese Arcade Discourse," Game Studies Quarterly, Vol.8, No.4, pp.203-220.
- ^ 井筒一葉『敵弾の礼法』マーブル叢書, 2006年.
- ^ 佐伯冬馬『反語通貨の経済史』港湾書房, 2009年.
- ^ "Onores Greg: A Case of Successful Mispronunciation," Digital Ludology Review, Vol.9, No.2, pp.77-81.
- ^ 『おのれGreg 完全反語解析書』マーブル・コバルト社, 2005年.
外部リンク
- マーブル・コバルト社 公式アーカイブ
- Greg記譚 ポータルサイト
- おのれGreg 監察資料館
- 反語通貨保存会
- ドリフトーク博物誌