おんねこ
| タイトル | 『おんねこ』 |
|---|---|
| ジャンル | 学園奇譚×都市伝説×ミステリ |
| 作者 | 黒霧シオン |
| 出版社 | 星図出版社 |
| 掲載誌 | 月下猫報 |
| レーベル | 星図コミックス・ナイト |
| 連載期間 | 〜 |
| 巻数 | 全12巻 |
| 話数 | 全118話 |
『おんねこ』(おんねこ)は、によるの。『』()において連載された[1]。
概要[編集]
『おんねこ』は、街の境界線で“鳴き声”が反転する現象を扱うの漫画である。作中では猫型端末を介した聞き取りが事件解決に結びつけられ、読者に「都市の音には履歴がある」という感覚を植え付けたとされる[1]。
本作はの連載開始以降、各巻が“音の回収率”を指標化するような異様な設計で支持され、累計発行部数はを突破したと報告されている[2]。一方で、設定が現実の音響学と部分的に矛盾する点がしばしば指摘され、のちの議論へつながった。
制作背景[編集]
作者のは、構想の出発点として「猫が夜にだけ鳴く理由」ではなく、「人間が夜にだけ聞き間違える理由」を挙げていたとされる。編集部は当初、学園コメディとして企画書を提出したが、突然“音の反転”ギミックを必須要件に変更したという[3]。
制作過程では、架空の協力機関として(実在しないとされるが、契約書の写しが内部資料として出回った)により、校舎の渡り廊下で行う疑似実験が提案された。そこでは「聞こえるはずのない猫の声」が平均遅れて聞こえるという結果が、なぜか脚本会議で採用されたとされる[4]。
また、連載開始前に星図出版社が実施した“迷子の音”アンケートでは、回答者のうちが「自宅の近くで一度だけ、自分の名前を猫が呼ばれた気がした」と回答したとされる[5]。この数字は作中の“鳴き声同定率”設定へと転用され、のちにファンの考察ブームを生んだ。
あらすじ[編集]
※以下、ではなく単位で記述する。
=== 第一編:境界鳴動(きょうかいめいどう)編 === 主人公の音羽(おとは)ハルは、の下町にある私立へ転入する。新校舎の渡り廊下を歩くたび、スピーカーのないはずの方角から「おん…ねこ」と聞こえ、しかもその“声”だけが反対方向から返ってくる[6]。
=== 第二編:回収率(かいしゅうりつ)編 === 音羽は猫型端末で“鳴き声の履歴”を数値化し、聞き間違いを事件の手がかりへ変換していく。なぜか音の回収率がを下回ると、登場人物の記憶が一部だけ別日に上書きされる仕様が判明する[7]。
=== 第三編:サイレント・テイルズ編 === 学園の図書館で、貸出記録だけが翌月に発行されていることが露見する。音羽たちは“無音のしっぽ”と呼ばれる怪異に遭遇し、静かな夜ほど音が増殖する逆転現象の原因を追う[8]。
=== 第四編:逆相(ぎゃくそう)学期編 === 猫の声が反転するのは、学期末の放送設備が意図的に位相調整されているためだと突き止められる。位相調整の担当者は学園の生徒会顧問であり、目的は「卒業生が街から消える」ための制度設計だったとされる[9]。
=== 第五編:星図回廊(ほしずかいろう)編 === 最後に音羽は、星図出版社の名を冠した地下施設“星図回廊”へ招かれる。そこでは、音を媒体にした記憶の販売が行われており、猫は単なる案内役ではなく売買の監視者だった。結末では、音羽が“反転する声”を自分の胸の中へ回収することで、学園と街の音が同期したと描かれる[10]。
登場人物[編集]
音羽ハルは、聞き間違いを恥じる性格から始まり、やがて“聞き直す力”を武器にする。オンキャッチャーの操作では手元の震えが数値に反映されるため、本人は無意識のうちに犯人の嘘を検知していたとされる[11]。
綾咲(あやさき)メイは生徒会の広報係で、最初は謎の動画だけを投稿する。彼女は「音の反転は広告戦略」と信じており、作中でも最も現実的な合理主義者として描かれたとされる[12]。
霧咲(きりさき)ユズは学園図書館の司書助手で、“無音のしっぽ”の記録媒体を管理する。彼女の台詞は一部が文字化けしているように見えるが、のちに解析されて「読者のスマートフォンでのみ正しく表示される」仕掛けだったと判明する[13]。
対して、顧問の堂前(どうぜん)ナツメは、逆相学期を推進した人物である。反転位相の責任を問われると、堂前は「猫は嘘をつけない」と繰り返すため、真相が余計に曖昧になる点が批判の的にもなった。
用語・世界観[編集]
本作の中心概念は、街に残る“鳴き声の履歴”である。オンキャッチャーでは音紋をに分解し、“回収率”として表示する方式が採用される。回収率が低いほど記憶の同期が崩れるとされ、視聴者・読者の考察を促した[14]。
また「境界鳴動」と呼ばれる現象は、の敷地と道路の間でだけ起こる。境界鳴動の起点は“ただの静電気”と説明される回があるが、次章では原因が「配電盤の位相設計」に変わるため、連載中から矛盾を楽しむ読者も多かった[15]。
さらに作中では、“星図回廊”が現実の出版社の編集作業と酷似している点が描写される。具体的には、紙の上でしか成立しないはずの音紋が、ある種の編集指示によって増殖するという設定が導入され、メタフィクションとしても読まれるようになった[16]。
用語の一つであるは、学内掲示板の“猫の声による見出し”を転載する架空メディアとして登場するが、読者の間では「連載誌が世界に侵食した」象徴とも解釈された。
書誌情報[編集]
星図コミックス・ナイトより刊行された単行本は全である。第1巻はに発売され、初版刷数はであったとされる[17]。第6巻では、帯に「回収率以下禁止」と書かれ、店頭で販売員が思わず相談に来たという逸話が残っている[18]。
編集方針としては、巻ごとに“聞こえないはずのページ”を設けることが計画された。実際、第3巻の特典小冊子は、特定の角度でのみ印字が見えるインクを使用したと報じられており、のちにオフ会で検証が繰り返された[19]。
全巻に共通する設定として、各章末で“鳴き声の翻訳表”が見開きに配置される。読者が音声解析ツールで同定できるよう、翻訳表には反転記号が多用されているが、当初から作者が「できなくても読める」と断っていた点が、結果として奥行きを生んだとされる。
メディア展開[編集]
テレビアニメ化はの秋に発表され、タイトルは同一の『おんねこ』である。制作は架空スタジオが担当し、放送開始前に“猫の鳴き声周波数”を模したBGMが配布されたとされる[20]。
アニメ版では、原作の“回収率”を視聴体験へ転換するため、OP後の5秒間だけ画面輝度を変える演出が入った。視聴者の一部から「暗号だと思った」との反応があり、SNSで解析が進んだのち、公式が「暗号ではないが、誤差は歓迎する」と返したとされる[21]。
また、映画は劇場版ではなく“配信特典型の長編”として実施された。星図回廊編を再構成し、視聴データの集計により「音の反転が再生機器に依存する」ことが説明されたとされる。ただし、その説明が原作の設定と一致しないため、賛否が割れた[22]。
ほかに、公式スピンオフとして『おんねこ:床鳴り録(ゆかならろく)』が刊行され、学園の日常側面を厚く描いた。ファンは“本編より音が少ない”ことを指摘し、逆説的な満足感を得たとされる。
反響・評価[編集]
本作は、社会現象となった点でも評価されている。連載当初、学校や商店街で「境界鳴動を探す」活動が一時期見られ、には安全対策として「音声解析端末の使用は控える」注意が出されたとされる[23]。
一方で、評論家のは「音の科学が物語を支えるのではなく、物語が科学を採用している」と述べたとされる[24]。この批評は、回収率の数式が章ごとに微妙に変わる点を根拠としている。
また“猫が嘘をつけない”という終盤の倫理観は、多くの読者に感動を与えたが、他方で「都合よく神格化されている」との反論もあった。ファンサイトでは、堂前ナツメの演説が実際には編集会議のメモに酷似しているという噂が出回り、反響は学術的な考察よりも噂の方へ傾いた[25]。
総合的には、謎解き・都市伝説・メタ表現のバランスが高く、漫画賞の候補に挙がったとされる。ただし受賞に至らなかった理由として「一部の回が“音の反転”の説明に偏り、キャラクターの感情が薄れた」という編集部内部のコメントが漏れたとする報道もあり、評価は二極化した。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 【架空】篠継ヨリ『音は嘘をつかない論──おんねこ解析講義』星図出版, 2019.
- ^ 黒霧シオン『おんねこ(1)』星図出版社, 2017.
- ^ 黒霧シオン『おんねこ(6)』星図出版社, 2019.
- ^ 影灯アニメーション『TVアニメ『おんねこ』制作資料集』影灯企画室, 2020.
- ^ M. H. Kurokiri, "Phase Reversal in Urban Legends: A Fictional Study of Onneko," Vol. 3 No. 2, Journal of Imaginary Acoustics, 2021.
- ^ 佐月(さつき)アスカ『都市伝説と音響演出の相互作用』ナイトフォーカス出版, 2020.
- ^ 星図出版社編『月下猫報 年鑑(仮)』星図出版社, 【2018年】.
- ^ K. D. Minato, "Boundary Sound Events and Memory Overwrite: Non-Real Measurements," pp. 41-58, International Review of Pretend Media, 2022.
- ^ 港音研究所『疑似実験ノート(渡り廊下版)』港音研究所, 2016.
- ^ 【微妙におかしい】谷繁(たにはしげ)レン『学園ミステリの編集史』第◯巻第◯号, 影灯文庫, 2015.
外部リンク
- 星図出版社 公式おんねこサイト
- 月下猫報 デジタルアーカイブ
- 影灯アニメーション 作品ページ
- オンキャッチャー検証コミュニティ
- 星図回廊 読者記録倉庫