しろイカ
| タイトル | しろイカ |
|---|---|
| 画像 | しろイカのカバーアート(架空) |
| 画像サイズ | 300px |
| caption | 白いインクに覆われた港町と、墨のように黒い影が描かれる |
| ジャンル | アクションRPG(ハンティング&回収システム) |
| 対応機種 | シロアーカイブ(携帯型)、シロアーカイブ・ドック(据置) |
| 開発元 | 白墨電機工学社 |
| 発売元 | 潮鳴き流通(しおなきりゅうつう) |
| プロデューサー | 甲斐ノート(かいのーと) |
| ディレクター | 渡辺精一郎(わたなべせいいちろう) |
『しろイカ』(英: Shiro-Ika、略称: SI)は、[[1989年]][[11月3日]]に[[日本]]の[[白墨電機工学社]]から発売された[[シロアーカイブ]]用[[コンピュータRPG]]。[[しろイカ]]シリーズの第1作目である[1]。
概要[編集]
『しろイカ』は、白いイカに見立てた「回収対象」を追跡し、インク状の装備資源を回復させながら港湾国家を探索するロールプレイングゲームである。開発側は、タイトルの「しろ」は「純白の生体反射率」を、略称の「SI」は「Semantically Inked(意味づけられた墨)」を意味すると説明したとされる[1]。
本作は[[1989年]]の冬商戦に合わせて発売された。特に、当時の家庭用機が持ちにくかった「薄明の視認性」を、疑似的に“白の輪郭”として演出する手法が好評となり、結果として日本市場だけでなく中継局の多い地域で“学習用途のゲーム”としても扱われた[2]。なお、本作のヒットは電子インク文化と連動したという俗説があるが、企画書の草案には「学習」という語が一度も登場しないとも指摘されている[3]。
ゲーム内容[編集]
プレイヤーは「回収士(かいしゅうし)」として操作し、海面下の遺構・干潟・霧港を移動する。戦闘はリアルタイムで進む一方、白いイカの群れに接近すると戦闘判定が「回収判定」に置換され、一定時間の“視線固定”を維持することで素材を獲得できる仕組みである。
ゲームシステムの特徴として、武器は刀身や銃身ではなく「墨圧(ぼくあつ)ゲージ」を持ち、攻撃すると墨圧が増えるが、そのままでは視界が白飛びして回収精度が落ちる。したがって、プレイヤーは「撃つ→止める→白を読む」というサイクルを身につける必要があったとされる[4]。この“撃たない勇気”が、当時の攻略指南番組で繰り返し言及された。
アイテムは落ちものパズルとして設計されている。敵の撃破ではなく、回収士が手に入れた「しろ塩(しろしお)」を一定以上溜めると、床に“白の足場”が生成され、足場上に落ちた「墨針(ぼくばり)」が自動的に合成される。合成は組み合わせだけでなく、落下音のピッチ(ゲーム内SE)まで参照する仕様が知られており、ファンによる解析では398.6Hzと401.2Hzの境界で成功率が変動すると報告された[5]。
対戦モードとしては、携帯機同士の赤外線通信で「白い軌跡争奪戦」が実装された。協力プレイでは、二人の回収士が同時に霧港の門を“読み”切ると、通常は存在しない通路が開く仕様で、当時の掲示板では「白の読み合わせ」と呼ばれ流行した[6]。
オフラインモードではストーリー進行に必須の“回収ログ”が残り、周回プレイではログの矛盾が敵AIの性格へ反映される。制作者は「矛盾は恐怖ではなく燃料である」と語ったとされ、スタッフインタビューのテープではその直後に別録音の談笑が混入していたとも言われる[7]。
ストーリー[編集]
物語は、[[潮鳴き諸島]]に浮かぶ都市国家「霧港(むこう)」から始まる。霧港では、海底研究の結果として“白いイカ”が大量に観測されるようになったが、その影響で人々の記憶がインクのように滲む症状が広がっていた。
主人公の回収士は、白いイカの体表に付着した「白墨結晶(しろぼくけっしょう)」を回収し、失われた記憶を“意味の順序”として復元する任務を負う。白墨結晶が正しく回収されるほど、主人公は小さな選択の理由を思い出すが、回収が雑だと世界の地図が一部だけ書き換わる仕様が用意されていたと説明される[8]。
終盤では、霧港の外縁に眠る「第一次白化炉(だいいちじしらかかろ)」が判明する。炉は白いイカを飼育する装置ではなく、“白い意味”を生成する制御機構であったとされ、プレイヤーは海中の制御室で「回収しない選択」を迫られる。ここでの分岐は全体の5.2%しか到達せず、到達者のうち「笑ってしまった」割合が36%だったと、ファン調査が“真面目に”引用されている[9]。
登場キャラクター[編集]
主人公は無名の回収士であり、進行に応じて呼称が変わる。序盤では「しろ手袋の人」と呼ばれるが、中盤では記憶復元の正確さから「鍵(かぎ)となる者」、終盤では“白墨の読み手”へ昇格するとされる[10]。
仲間として、霧港の記録係である[[神崎マチカ]](かんざき まちか)が登場する。彼女は墨の滲みを帳簿で追う職能のため、戦闘よりも“回収ログ”の整合性を重視する。公式攻略本では「彼女の台詞は白墨結晶の順序を示す」ことが強調された。
敵としては「灰目同盟(かいめどうめい)」が挙げられる。彼らは白いイカを“見えすぎる存在”として恐れ、白墨結晶を黒い樹脂で固めて無力化しようとする。特に終盤のリーダーである[[バルザック・ドラムライン]]は、演説のたびに同じ小節を踏む癖があり、プレイヤーが音律を数えると行動パターンが乱れることが報告された[11]。
また、白いイカそのものも擬似的なキャラクターとして扱われる。作中では、特定条件で“名前のような輪郭”を投影する個体が複数確認されており、ファンはそれらを「白札(しらふだ)」と呼んだ。開発チームはこれについて、名称の統一を避けたが、後に社内資料で「白札」は略語として統一されたとされる[12]。
用語・世界観/設定[編集]
世界観の中心となる用語として、白いイカの体表に由来する「白墨結晶」がある。白墨結晶は、回収後に装備へ転写することでキャラクターの“理解率(りかいりつ)”を上げるとされる。その理解率が一定値を超えると、霧港の地形がわずかに変化し、通路が“説明される”ようになる演出が導入された[13]。
もう一つの重要概念が「墨圧(ぼくあつ)」である。墨圧は攻撃時に蓄積し、回収時には視線固定の維持コストに影響する。墨圧が上がりすぎると、ゲーム内のコントラストが破綻し“白が白でなくなる”現象が発生する。これがいわゆる「白化バグ」だと誤解され、後年のパッチ説明でも誤った呼称が流通した[14]。
なお、霧港の行政を司る組織として[[霧港港務庁]]が登場する。港務庁は現実の役所を意識した命名とされ、作中の文書様式は、同名の架空文書が実際の行政規程を模した形式になっているとファンが指摘した。一方で、開発側は「模したのは規程ではなく書類の匂いである」と回想している[15]。
開発/制作[編集]
制作経緯としては、白墨電機工学社が[[海洋計測]]用の試作センサーを開発していた過程で、霧条件下の視認性を“人間が読み替える”アルゴリズムに行き着いたことが挙げられる。社内では当初「水中のホワイトアウトをゲーム化する」という案が支持され、そこから白いイカの回収へと拡張されたと説明されている[16]。
ディレクターの[[渡辺精一郎]]は、ゲームを“動作”ではなく“意味の復元”として捉える方針を採った。渡辺は、1988年の試作段階で「撃ってはいけない時間」を23分ごとに設定したが、テストプレイヤーが必ずその時間にだけ撃つため、最終仕様では撃たない瞬間の長さがランダム化された経緯がある[17]。
スタッフは小規模で、主要プログラマーの[[武田ヨシト]]は「当時のメモリは足りないので、音で情報を圧縮した」と述べたとされる。その結果、前述のピッチ境界による成功率が生まれたと後日証言された。一方で、ピッチ境界は偶然の副作用であり仕様化したのはプロデューサーの[[甲斐ノート]]だという証言もある[18]。
発売にあたっては、潮鳴き流通が霧港を模した展示会を[[名古屋市]]の旧倉庫で開催した。会場では来場者の手のひらを赤外線で測り、白い手袋を自動配布する演出があったとされるが、実際に測っていたのは来場導線の統計だけだったとも噂されている[19]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
音楽は白いイカの“回収”を音響設計で補助することを目的として作られた。サウンドトラックとしては『白墨音譜集(はくぼくおんぷしゅう)』が発売され、ゲーム内のSEは楽曲の一部と同一の波形が用いられているとされる[20]。
特に評価された曲として「霧港の白読(しろよみ)」が挙げられる。この曲はテンポ148の4拍子で作曲されており、回収ログの整合性が高いほど高音域の倍音が増えるように設計された。なお、当時のレビュー誌では「数学的すぎて怖い」と評された一方、攻略勢は“怖いほど正確に聞こえる”として歓迎した[21]。
一方で、発売後に一部環境で低域が反転する不具合が起き、「白が黒になる」演出が一瞬だけ復活した。これがファンの間で“第二の正史”として語られ、後の移植版で再現されたと誤って伝わったが、実際は単なる音響ドライバの互換問題だったとする説もある[22]。
評価(売上)[編集]
本作は発売初週で約48.3万本を記録し、年末までに全世界累計101.7万本を突破したと報じられた。なお、この数字は後年に統計手法の見直しが行われ「携帯型のみの数字と家庭用換算の混在だった」とされ、ファンサイトでは当時の換算係数が0.67だったと再推定されている[23]。
販売面では、日本ゲーム大賞の前身にあたる「海霧技術賞」でプロトタイプ部門が評価され、最終的に「日本ゲーム大賞」相当の特別選定へ繋がったとされる[24]。ただし、公式発表の文面には“受賞”ではなく“展示協力”と記載されていたと指摘されており、熱狂的なファンほどその曖昧さをネタとして守り続けた。
ユーザー反応としては、白いイカを追う快感が強調される一方で、「回収が上手いほど世界が怖くなる」という声も多かった。これは理解率の上昇によって分岐が増え、結果として不穏な演出が増加するためと説明される[25]。
関連作品[編集]
シリーズ展開としては、続編の『しろイカ2 霧港反転譚(むこうはんてんたん)』(1992年)や、派生の『白札バトル(しらふだばとる)』(1994年)が知られる。特に『白札バトル』は対戦モードの系譜を強めた作品として位置づけられた。
また、作中で言及される架空の学術資料を題材にした『白墨結晶研究ノート』が書籍として刊行され、のちにテレビアニメ「霧港の白読」(1997年)が制作されたとされる。アニメでは、原作の非線形地図が“視聴者の想像で補完される”演出として再解釈された[26]。
一方で、公式なメディアミックスとは別に、ファン制作のサウンドコラージュ集が市場に流入し、逆に本編のサウンドが“後付けで補強された”ように語られる現象があった。編集者の一人は「市場はいつでも、後から正史を探す」と述べたとされる[27]。
関連商品[編集]
攻略本としては『しろイカ完全回収ガイド』が出版され、白墨結晶の“最短ルート”と、墨圧調整の表が掲載された。表はページ中央にあり、見落とすと逆にクリア率が下がることで有名になったとされる[28]。
さらに『白墨音譜集(CD-BOX版)』がリリースされ、ゲーム内SEの周波数対応表が付属した。付属表では、前述の成功率境界が「401±1Hz」と表記されていたが、後年の再検証で398〜402の幅が示されたため、わずかな混乱が生じた[29]。
書籍以外では、携帯型用の“白手袋プロテクトケース”がグッズとして販売された。ケースは透明樹脂で、内側に微細な散乱フィルムが入っているとされ、装着してプレイすると“白の輪郭”がより鮮明に見えると宣伝された。しかし実際にはケースの光学効果よりも心理的な安心感が大きかったとするレビューも散見された[30]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎『霧港の白読:開発メモと設計思想』潮鳴き出版, 1990年.
- ^ 甲斐ノート『Semantically Inkedの誤解と訂正』白墨電機工学社技術叢書, 1991年.
- ^ 武田ヨシト「墨圧ゲージを用いた視認性補助の一試案」『日本ゲーム音響論集』第12巻第3号, pp.45-62, 1991年.
- ^ 神崎マチカ『回収ログ整合性論:プレイヤーの癖を統計化する』霧港記録学研究所, 1993年.
- ^ Barthalume Drummline『灰目同盟の演説リズム:四拍子の統制』International Journal of Game Semiotics, Vol.7 No.1, pp.101-119, 1992年.
- ^ 『白墨音譜集(CD-BOX版)解説資料』潮鳴き流通, 1995年.
- ^ ファミ通編集部『しろイカ大研究:白化バグの系譜』エンターブレイン, 1996年.
- ^ 森田織音『港湾国家RPGにおける非線形地図演出』情報美学紀要, 第18巻第2号, pp.220-239, 1998年.
- ^ 『日本ゲーム大賞特別選定の記録(1989-1990)』文化産業振興局, 2000年.
- ^ 上野シオリ「落ちものパズルにおけるSE依存成功率の再現」『計算音響ゲーム研究』Vol.3 No.4, pp.1-13, 2002年.
外部リンク
- しろイカ公式アーカイブ(架空)
- 霧港回収ログ解析コミュニティ(架空)
- 白墨音譜集データベース(架空)
- 潮鳴き流通 廃番復刻案内(架空)
- 海霧技術賞 過去展示記録(架空)