イーブイ
| タイトル | イーブイ |
|---|---|
| 画像 | (架空)イーブイのフィールドビジュアル |
| 画像サイズ | 240x135px |
| caption | 分岐進化のゲージが表示されるUI(作中再現) |
| ジャンル | アクションRPG |
| 対応機種 | ニンバスOS、ハンドヘルド・ニンバス |
| 開発元 | 株式会社ナイン・パララックス |
| 発売元 | 蒼霧エンタープライズ |
| プロデューサー | 渡辺精一郎 |
| ディレクター | ケイティ・アーロン |
『イーブイ』(よみ、英: Eevie、略称: EV)は、[[2089年]][[9月17日]]に[[日本]]の[[株式会社ナイン・パララックス]]から発売された[[ニンバスOS]]用[[アクションRPG]]。『イーブイ系統遺伝譚』の第1作目であり、同名の[[架空の生物]]およびそれを題材にした[[メディアミックス]]作品群を指す[1]。
概要/概説[編集]
『イーブイ』は、プレイヤーが「原生個体」を育成し、遭遇する環境と行動履歴によって見た目と能力が変化する[[分岐進化]]型のアクションRPGとして設計された作品である。ゲーム内では、外見が似ているために区別が難しい「同族」が多く、その分類学(ゲーム内用語では[[系統測定学]])が物語と直結している点が特徴とされた[2]。
開発の発端は、ナイン・パララックスの研究部が[[東京都]][[港区]]にあるデータセンター「トワイライト・コロニー」で行っていた、確率的な気象再現モデルの可視化であるとされる。当初の可視化は天気予測用だったが、そこに「個体の反応を表す小さなシンボル」を紐づけたところ、シンボルが群れ行動を始めたように見えたため、企画会議で一気にゲーム化へ傾けられたと記録されている[3]。なお、この逸話が後の「行動履歴が進化を決める」という思想に繋がったとする資料もある[4]。
本作は発売初月で約18万本、発売半年で累計103万本を記録し、翌年には[[日本ゲーム大賞]]に相当する「[[メトロポリタン・インタラクティブ賞]]」を受賞したとされる[5]。また、分岐進化を「学習する楽しさ」として打ち出した宣伝が功を奏し、ミリオンセラーの定番になったとされる。
一方で、分岐進化が多すぎるという批判も早期から存在し、開発側は「最終進化は108通りだが、プレイヤーに見せるのは“その場で意味がある数”だけ」と説明したとされる[6]。この方針が結果的に、熱心な探索コミュニティを生み出したとも言われている。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
プレイヤーは探索拠点で[[イーブイ]]を「手持ち原生体」として受け取り、フィールドでの行動を通じて能力を獲得させていく。ゲーム内の進行は、通常クエストと「行動ログ」の2本立てとされ、どちらか一方に偏ると好みの進化に到達しない設計であったとされる[7]。
戦闘は[[アクションRPG]]として、回避→反撃→状態異常付与→回収(素材化)のループを軸に組まれている。イーブイ系統は、同じ見た目のままでも攻撃モーションのテンポが微妙に異なるため、プレイヤーは「見た目」ではなく[[リズムパターン]]で個体を識別するよう誘導される仕様になっていた[8]。
アイテムは落としもの方式で、倒した敵が確率で「進化の鍵片」を落とす。鍵片は合成で使うのではなく、育成中のイーブイに“体感させる”ことで効果が変化する。つまり、同じ鍵片でも、与えた時刻(夜間か昼間か)と戦闘回数により結果が変わるとされ、検証勢がこぞって記録を取り始めた[9]。
対戦モードは「巣箱リング」と呼ばれ、最大4人協力で敵の出現波を揃え、その中で進化のタイミングを競う形式だったとされる。オンライン対応は発売から半年後に追加されたが、初期はサーバ負荷を理由に一部の進化経路が制限されたという[10]。
オフラインモードでは、乱数の種を固定できる「研究者設定」が用意され、攻略コミュニティが“再現性のある進化”を求めて長時間滞在するようになったとされる。なお、研究者設定は同梱の紙冊子に小さく掲載されていたという証言がある[11]。
システム[編集]
ゲーム内には「温度」「湿度」「騒音」の3系統のスライダーがあり、フィールドの状況に応じて自動調整される。プレイヤーは直接数値を操作できないが、行動(草むらを何回通るか、洞窟で何分待つか)が実質的に因果を持つため、統計を取る楽しさが生まれたと説明されている[12]。
戦闘・アイテム[編集]
敵のHPバーは表示されない。代わりに「手応えゲージ」が上がるため、ダメージ量より“攻撃の当て方”が評価される。鍵片は通常は10個までしか所持できない一方で、鍵片の“記憶”は上書きされないとされ、処理落ちが起きたプレイヤーが「鍵片が勝手に増えた」と報告した騒動もあった[13]。
ストーリー[編集]
物語は、海上風力基地が立ち並ぶ[[架空の地域]]「灰藍回廊(はいらんかいろう)」を舞台としている。主人公は、失踪した分類学者「メイフ・コルモラン」の遺した観測装置を起動し、そこで目覚めた原生個体群を回収する使命を負うことになる。装置は“未来の分岐進化”を映すが、映像は観測者の行動で書き換わるとされる[14]。
探索の最中、主人公は灰藍回廊の各地に残る「巣箱(すばこ)」を発見する。巣箱は一見ただの保管庫だが、開封した瞬間に環境条件の履歴が再生され、イーブイは再生された過去の気配を“学習”するとされる。このため、同じ巣箱でもプレイヤーの選択で結果が違うと説明される[15]。
終盤では、観測装置が「分類学者の謝罪文」を挿入するように作動する。そこには、研究が生物の“選択”を奪ったことへの後悔が綴られており、主人公は装置の強制分岐を解除するため、3つの人工夜(人工的に夜を延長した区画)を巡る。人工夜はそれぞれ76分、88分、91分と明記されており、攻略ガイドでも“合計255分”として扱われた[16]。
なお、エンディング分岐は理屈上108通りとされるが、実際の到達はセーブデータに依存し、公式が推奨する最短手順は「全体行動比率 41:39:20」であるとされた[17]。この比率がプレイヤーの間で呪文のように語られたことが、のちのコメディ寄り二次創作につながったとする資料もある[18]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主人公(無名)は、観測装置の起動時にのみ名付けられる設定で、プレイヤーの入力名が“分類ラベル”として世界に刻まれる。したがって、同じプレイでも名前が違うと会話のテンポが変わるとされ、ロールプレイ勢に人気が出たとされる[19]。
仲間には、元現場監督の青年「オトス・レイガード」(年齢は作中で「ちょうど 23歳と数え切れない」と表現される)がいる。彼は灰藍回廊の治安維持局「[[海岸保安局]]」の元職員であり、主人公に巣箱の“開け方”を教える役割を担う。オトスは戦闘よりも回収手順に強く、鍵片の取り違えを防ぐために、主人公の手元を指で数える癖があるとされる[20]。
敵としては、観測装置を私的に利用しようとする民間企業「[[ラストロン・バイオ計測]]」が登場する。彼らは分岐進化を商品化しており、イーブイの進化を“季節限定プラン”として売り出していたとされる。具体的には、夏季パックの契約満了日が「7月31日 23:59」と細かく描写され、炎上の発端になった[21]。
また、装置そのものを“生物”として扱う立場の人物「セラ・ナイン」が中盤で現れる。セラは分類学者の謝罪文を“守るべき知識”として扱うが、同時に装置の再起動を急かす矛盾した存在として描かれる。彼女の台詞は妙に詩的で、ファンが引用集を作ったとされる[22]。
用語・世界観/設定[編集]
本作の中心概念は、イーブイが「観測された環境」を身体に保存することで進化経路が分岐するという設定である。この保存を「[[エコー記憶]]」と呼び、ゲーム内では“匂い・温度・手触り”の3要素で構成されると説明される[23]。
分岐進化の分類は、系統測定学に基づき「毛色」「尾の角度」「足裏の粒度」で大まかに4階層へ整理される。ここが一見もっともらしく、実際の分類学の流れに倣ったように読める一方で、ゲーム内の測定は主人公の行動履歴と連動しており、測定そのものが結果を決める点が“後味の悪さ”として語られた[24]。
世界の舞台灰藍回廊は、海風が温度センサーを壊すほど強く、雨季でも路面が乾きやすいとされる。作中ではその理由が「海塩雲の帯電」だとされるが、プレイヤーの間では“開発が気象モデルの可視化に夢中になった名残”ではないかと噂された[25]。
なお、シリーズ内では「イーブイ」という名称が、特定の種を指すのではなく“未分岐の状態”を指す総称であると説明されている。したがって、登場するイーブイは同じ個体に見えても別個体である場合があるとされる。これが“図鑑収集の罠”として有名になった[26]。
分岐進化(例示)[編集]
例として、極低温の区画(-12℃相当)で短時間だけ滞在した場合は「霜膜(しもまく)」系統へ寄るとされる。また、騒音値が一定以上のエリアで連続回避を成功させると「喧噴(けんぷん)」系統へ寄るとされ、攻略サイトでは“成功回避 37回で分岐の前兆”と書かれた[27]。
開発/制作[編集]
開発は株式会社ナイン・パララックスのR&D部門が主導したとされる。プロデューサー渡辺精一郎は、ゲームを「分類学の学習体験」にすべきだと提案し、ディレクターケイティ・アーロンは“観測の暴力性”をシステムに埋め込む方針を示したと記録されている[28]。
制作経緯としては、最初の試作が「巣箱の開封で鳴る音」を解析する音響研究から始まったという。実験では、録音された“箱の軋み”をデータ化したうえで、ゲーム内の進化ゲージに変換したとされ、社内では「箱がしゃべっているみたいだ」と冗談が出たという証言がある[29]。
スタッフ面では、プログラマーの「村上梨沙」が、鍵片の“記憶”機構を担当した。鍵片は同じ説明文でもプレイヤーの行動で効果が変わるため、説明テキストが数種類に分岐していたとされ、村上はそれを「読み物ではなく体験の分岐」と呼んだという[30]。
音楽面の制作意図についても、開発は早い段階から凝っており、作中の人工夜はリズムBPMが 72 と 88 と 96 の組合せで設計された。結果として、進化条件の体感難度が上がり、レビューでは“理解した瞬間に気持ちよくなる”と評されたとされる[31]。
制作資料と没案[編集]
没案として、分岐進化を完全にプレイヤーの選択だけで決める案があった。しかしテストプレイでは「選んだのに納得できない」と不満が出たため、環境側の因果(温度・湿度・騒音)を強める方向に改修されたとされる[32]。
UIの特徴[編集]
UIは“測定値”を出しすぎない設計になっており、代わりに手触りアイコンで表現された。編集会議の議事録では「数値を見せると分類学が教育番組になる」との発言が残っているとされる[33]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラックは「[[蒼霧レコード]]」が制作協力し、作曲は「リオネル・ソレン」「森田琴音」の2名が担当したとされる。人工夜の区画では、旋律が途中から逆再生されたように聴こえる仕掛けがあり、プレイヤーの耳が“観測”に反応するよう設計されたと説明されている[34]。
アルバムは全24曲で構成され、うち8曲が“分岐前奏”として、どの進化経路でも冒頭だけ同じ音型を共有する。ファンはこれを「共通の母音」と呼び、解析動画の再生数を稼いだとされる[35]。
また、テーマ曲「Eevie Echo」は、発売1周年のイベントで公開されたライブ音源が先に流通し、CD収録のテイクが後から差し替えられたという。差し替え理由は「0.3秒の空白が見つかったため」と公式が説明したとされる[36]が、0.3秒という数字の妙に細かいさが当時の笑いの種になったとも言われる。
さらに、オトス・レイガードのテーマは“指で数えるリズム”を模しており、メトロノームの音が一定の小節で抜ける。音楽評論では“意図的な不完全さが、観測の暴力を示唆する”と論じられた[37]。
他機種版/移植版[編集]
ニンバスOS版に続き、ハンドヘルド・ニンバスへの移植が[[2090年]]に発表された。携帯機ではフレームレート優先で、鍵片の視覚エフェクトが簡略化されたため、分岐の判別が難しくなったとされる。もっとも、公式は「“難しさ”が学習速度を上げる」と説明しており、結果として上級者ほど好意的な評価になったとされる[38]。
さらに、後年にはバーチャル視聴環境「[[ニンバス・シアター]]」に対応した移植版が配信された。ここでは聴覚中心の体験になり、サブタイトルが“測定ラベル”のみで構成される。物語の理解より行動条件の感覚化を狙った設計であり、「ゲームというより観測実験に近い」との反応があった[39]。
一方で、移植により一部の進化条件が緩和されたという指摘もある。特に、オンラインの対戦モードでのみ発生するはずだった“喧噴”系統が、オフラインでも出現する報告が増えた。公式は不具合としてではなく「プレイヤーへの救済」との文言で対処したとされ、コミュニティの検証がさらに加熱した[40]。
評価(売上)[編集]
発売直後から高評価が集中し、ファミ通系のクロスレビュー企画ではゴールド殿堂入りに相当する扱いを受けた。評価の軸は、進化の理解が“作業”ではなく“発見”になる点だったとされる[41]。
売上に関しては、世界累計が全世界で 267万本を突破したと報じられた。内訳は、国内が 141万本、海外が126万本で、海外は北米・欧州よりもアジア圏での比率が高かったとする集計がある[42]。
ただし批評では、進化経路の情報量が多すぎるという意見も強い。プレイヤーが探索しないと結論が出ない設計は、ライト層には不親切とされた。もっとも、開発は「イーブイは育つが、育成は育てない」といった逆説的なキャッチコピーで反論し、難しさを作品の個性として提示したとされる[43]。
また、販売戦略として“進化カード”付きの初回版が用意されたが、カードが封入されていなかった個体が発見されたという騒動もあった。回収は迅速に行われたとされるが、その後も「封入の個体数が 2万体少ない」といった不満投稿が続き、データの信頼性が揺れた[44]。この点は、のちのシリーズ作における透明性強化へ繋がったとされる。
関連作品[編集]
シリーズとしては『イーブイ系統遺伝譚』の第2作『[[イーブイ:霧の交換条件]]』、第3作『[[イーブイ:夜の分類会]]』が続編として位置づけられている。いずれも“観測の倫理”をテーマにしつつ、システムの中心が調達型から戦闘回転型へ移ったと説明されることが多い[45]。
メディアミックスでは、テレビアニメ『[[イーブイ:灰藍回廊の旅人]]』が放送された。アニメでは分岐進化がリアルタイムで描写され、視聴者投票で次回予告の進化が変わる形式が話題になったとされる[46]。さらに、冒険ゲームブック「[[灰藍回廊・確率折り]]」も刊行され、本作の“255分の人工夜”が折り込みページに引用されたという。
漫画版では、企業「ラストロン・バイオ計測」の担当者が主人公を挑発するシーンが増補され、オトスがなぜか“指で数える”癖を直す展開が追加された。これはファン投票で決まったとする説明があるが、裏取りは十分ではないとされる[47]。
関連商品(攻略本/書籍/その他の書籍)[編集]
攻略本としては、編集「灰藍回廊攻略研究会」による『[[イーブイ]]観測ガイド—鍵片の“体感”手順—』が流通した。内容は、時間帯別のおすすめ巡回コースと、状態異常付与の目安(推奨成功率 63.5%など)で構成されているとされる[48]。
また、コレクション寄りの商品として「図鑑増補:系統測定学(簡易版)」が販売された。図鑑増補では、測定値ではなく“耳で判別するためのリズム表”が添えられ、プレイヤーが聴覚で進化を追うための補助になったとされる[49]。
書籍としては評論『観測と生体—イーブイ現象の社会学—』があり、ゲームが“選択した気分”を売ったのではないかという批評を載せたとされる。ただし同書の脚注で「人工夜は実測 76:88:91ではなく 77:86:91」と書かれており、資料の齟齬が議論になった[50]。
他にも、サウンドトラック解析用のムック『Eevie Echo 逆再生の秘密』が発売された。ここでは0.3秒の空白が波形図として掲載され、「0.3秒が“嘘の継ぎ目”になる」と表現されたとされる[51]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「観測のUIはなぜ数値を隠すのか—『イーブイ』開発メモ—」『インタラクティブ設計年報』第12巻第3号, pp. 41-58, 2091.
- ^ Katy Aaron「Echo Memory and Player Agency in Action RPGs」『Journal of Synthetic Play』Vol. 5 No. 2, pp. 12-29, 2090.
- ^ リオネル・ソレン「Eevie Echo:逆再生が生む“手触り”」『サウンド・フォーカス』第8巻第1号, pp. 77-95, 2092.
- ^ 村上梨沙「鍵片の記憶機構:容量制限と体感変換」『ゲーム工学シンポジウム論文集』第21回, pp. 201-218, 2089.
- ^ 森田琴音「人工夜の旋律とBPM設計(72/88/96)に関する試験報告」『音楽計測ジャーナル』Vol. 9 Issue 4, pp. 301-330, 2091.
- ^ 灰藍回廊攻略研究会『イーブイ観測ガイド—鍵片の“体感”手順—』蒼霧出版, 2090.
- ^ セラ・ナイン「分類学は誰のためにあるか—灰藍回廊の謝罪文を読む—」『現代物語学研究』第16巻第2号, pp. 9-27, 2093.
- ^ 『メトロポリタン・インタラクティブ賞』選考委員会編『受賞記録集(2090年版)』都市文化評議会, 2091.
- ^ 蒼霧レコード編『Eevie Echo 逆再生の秘密』蒼霧レコード, 2092.
- ^ マーク・ダルビー『The Ethics of Observation in Games』青樹書房, 2091.(英語版として記載されたが邦訳版の体裁で流通)
外部リンク
- 灰藍回廊公式解析サイト
- ナイン・パララックス開発アーカイブ
- 系統測定学デジタル図鑑
- 蒼霧レコード(Eevie Echo)特設ページ
- メトロポリタン・インタラクティブ賞 過去受賞一覧