とおゔい こんてぬ
| タイトル | とおゔい こんてぬ |
|---|---|
| 画像 | Tovey_Content_cover.png |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 北棟の逆向き看板が特徴的な北米版パッケージ |
| ジャンル | ホラーアクションアドベンチャー |
| 対応機種 | ドリフト・コンソール、シルエットポケット、ルミナ・アーク |
| 開発元 | 黒曜立体ソフト |
| 発売元 | 黒曜立体ソフト |
| プロデューサー | 石沢 颯太 |
| ディレクター | 牧野 千景 |
| デザイナー | 橘 祐介 |
| プログラマー | 田村 修也 |
| 音楽 | ミハイル・クラフチェンコ |
| シリーズ | とおゔい こんてぬシリーズ |
| 発売日 | 2004年11月18日 |
| 対象年齢 | CERO D相当 |
| 売上本数 | 初週12.4万本、全世界累計148万本 |
| その他 | 限定版に逆再生CDと紙製懐中時計が同梱 |
『とおゔい こんてぬ』(英: Tovey Content)は、にのから発売された用である。通称は「TOV-CONT」で、シリーズの第1作目にあたる[1]。
概要[編集]
『』は、閉鎖された録音施設「」を舞台としたホラーゲームである。プレイヤーは記録修復士として、音声が反転して残る怪異現象を追跡し、消失した番組アーカイブを復元していく。
本作は前半の「静音系ホラー」の潮流を決定づけた作品として知られ、発売当時は用タイトルとしては異例の長文テキスト量と、録音データを武器にする独自のゲームシステムが話題となった。また、パッケージ裏の説明文に「ゲームを起動する前に一度だけ部屋の照明を消してください」と記されていたことでも有名である[2]。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステム[編集]
本作はに分類されるが、戦闘よりも環境音の解析と経路選択が重視される。プレイヤーは「再生」「停止」「巻き戻し」の3つの基本操作を軸に、建物内部の異常な現象を検証する。
ゲームシステムの特徴として、敵の出現条件が“プレイヤーの最後に読んだ文節の長さ”に影響される点が挙げられる。これは開発中にが「怖さは速度ではなく、理解の遅れに宿る」と述べたことに由来するとされている[3]。
戦闘[編集]
戦闘は「遮音符」と呼ばれる結晶状のアイテムを投擲し、敵の輪郭を一時的に固定する形式である。これにより敵を倒すというより、反転音声の残像として封じ込めることができる。
なお、終盤に登場する「」戦では、通常攻撃がすべて失敗し、プレイヤーは30秒以内に机上のFAX番号を読み解かねばならない。攻略本ではこれを「事実上の筆記試験」と表現している。
アイテム[編集]
主要アイテムは、録音テープを再生するための「巻き戻し針」、視界のノイズを除去する「硝子綿」、および怪異の台詞を反転文字として記録する「逆書帳」である。特に逆書帳は、メニュー画面を閉じたあとも現実の時計表示に干渉する仕様があり、一部のユーザーから苦情が寄せられた。
このほか、限定版には「緑青のイヤープラグ」が付属したが、実際には防音性能よりも箱の内側の匂いが強く、開封した編集者が記事の追記を翌日に回したという逸話が残る。
対戦モード[編集]
家庭用向け拡張版では、2人対戦の「反響室モード」が追加された。プレイヤー同士が同じ部屋を別視点で探索し、互いの音声ログを先に揃えた方が勝利となる。
ただし、対戦中に一定確率で“相手の操作音だけが先に聞こえる”現象が起こり、これが実質的なハンディとして機能するため、熟練者の間では「公平ではないが、妙に納得できる」と評価された。
オフラインモード[編集]
オフラインモードでは、施設の3階層を巡回しながら、失われた放送回の順番を復元する。クリア後には「再編集室」が開放され、プレイヤーは怪異の出現位置やBGMの逆回転速度を任意に変更できる。
また、週末限定で起動すると、タイトル画面にだけの古い天気予報が流れる隠し仕様が存在し、これが開発者の自宅から送られた未使用素材であるという説が有力である。
ストーリー[編集]
物語は、主人公の記録修復士・が、廃業した放送補助施設「東雲コンテナ複写局」に派遣される場面から始まる。局内では、かつて深夜番組に使用された音声データがすべて反転し、聞いた者の記憶から固有名詞だけを奪う現象が発生していた。
透は調査の過程で、施設の最深部にある「第七码庫」に封印された放送原稿を発見する。そこには、局がに試験運用していた“視聴者の寝言を字幕化する装置”の記録が残されており、これが怪異の発端であったと示唆される。
終盤では、局の元アナウンサーであるが、放送事故の責任を取るため自らを番組ごと保存した存在として再登場する。彼女は「内容は失われても、入れ物だけは残る」と告げ、プレイヤーに番組表そのものを破棄するか、封印を続行するかの選択を迫る。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
は、出身の記録修復士である。無口な性格だが、調査ログの最後にだけ妙に丁寧な敬語を残す癖があり、ファンの間では「文末だけ人格が出る男」と呼ばれている。
仲間[編集]
は、局内通信にだけ現れる技術補助AIである。メモリが断片化しているため、案内のたびに道順を一部間違えるが、逆にそれが隠し部屋発見の手がかりになることが多い。
は序盤で合流する契約警備員で、常に懐中電灯を持ち歩くが、光よりも「歩数の多さ」で敵を怯ませる特技を持つ。
敵[編集]
敵対存在は「消去体」と総称される。もっとも有名なのは、顔がテレックス紙のしわで構成されたと、廊下の角にだけ現れるである。
とくには本作の象徴的存在で、プレイヤーの操作に遅れて反応する。攻略班の記録では、初見撃破に要した平均時間は47分12秒であったが、この値は“まばたきの長さ”の違いを考慮していないため、やや信頼性に欠けるとされる[4]。
用語・世界観[編集]
作中世界では、情報は「内容」「器」「余白」の3層に分かれているとされる。とくに余白は、視聴者の注意が向いた瞬間に増殖し、建物の間取りを数センチ単位で変化させる。
また、本作独自の概念として「」がある。これは音声がどれだけ“冷たく”聞こえるかを示す指標で、0に近いほど正常、マイナス値になると会話の語尾が残響として先に到着する。
東雲コンテナ複写局は、の湾岸再開発地区に存在したとされるが、建築記録には同名の施設が一切見当たらない。この点については、発売当時の広報資料でも「地図に載っていないことが仕様」と説明されていた[5]。
開発[編集]
制作経緯[編集]
企画は、秋に黒曜立体ソフト社内の廃テープ整理会議から生まれたとされる。会議で偶然再生された業務用ジングルに、15秒だけ人間の声でない“説明文”が混入しており、これをゲーム化する案が出たのが始まりである。
当初は教育用ソフトとして申請されたが、審査中に企画書の余白へ「怖がらせる部分を削らないこと」と朱書きされ、そのままホラー作品へ転換されたという。
スタッフ[編集]
ディレクターのは、前職で字幕校正に携わっていた人物で、文字のズレを恐怖演出に変換する手法を本作で確立したとされる。プロデューサーのは、発売3か月前に全スタッフへ耳栓を配布したが、自分だけ装着方法を誤り、結果として最も大きな効果音を最後まで聞いていなかったという逸話がある。
音楽担当のは出身の電子音楽家で、録音した冷蔵庫の起動音を5回逆再生して主題曲を作った。本人は「旋律は作っていない、整列させただけだ」と述べたという。
音楽[編集]
本作のBGMは、環境音と楽曲の境界を曖昧にする構成で知られる。特にタイトル曲「Returned Interval」は、拍子が3/4と7/8の間を行き来するため、演奏会では指揮者が2人必要になった。
サウンドトラックはに「逆再生盤」として単独発売され、通常再生すると無音、逆方向から読むと全13曲が聴ける仕様であった。なお、初回限定盤のブックレットには、音符ではなく局内の非常口表示が掲載されている。
他機種版[編集]
には版が発売された。画面サイズの制約から、敵の輪郭はすべて2色で表現され、これが逆に恐怖を高めたとして評価された。
その後にへ移植され、タッチ操作でテープを引き伸ばす新機能が追加された。さらにには対応版が配信され、巻き戻し時に実際の保存データが「半透明化」する現象が報告されたが、メーカーは「仕様上の演出」と説明している。
評価[編集]
発売直後から口コミで人気を集め、初週売上は12.4万本を記録した。特に都市伝説系の掲示板を中心に話題が拡散し、半年後には全世界累計148万本を突破したとされる。
批評家からは、恐怖表現よりも「読めば読むほど意味が薄れるUI」が高く評価され、の優秀賞に相当する賞を受賞したとされる。一方で、一部レビューでは「プレイ時間の7割が棚の番号確認である」との指摘もあり、賛否が分かれた[6]。
関連作品[編集]
続編には『とおゔい こんてぬ2: 返送指示』、『とおゔい こんてぬ外伝 しずかな夜の回覧板』がある。とくに後者はアクション性を強めたスピンオフ作品で、シリーズの一作目にあたる本作とは異なり、探索よりも配達に重点が置かれている。
ほかに、ドラマCD『』、小説版『書き戻された放送』、および謎の冊子『現場保存の手引き』が展開され、いずれもメディアミックスの一環として扱われた。
関連商品[編集]
攻略本『とおゔい こんてぬ 完全遮音マニュアル』は、通常の攻略情報に加え、各章の冒頭に「深呼吸してから読むこと」と記されていることで知られる。ページ数は224ページであるが、索引が異様に充実しており、施設名よりも“聞き間違い”の項目が多い。
また、書籍『逆再生で読む都市伝説』や、音声学入門書『耳のない字幕』が関連書として販売された。ほかに、限定販売の防音カーテン、蓄光しおり、無音メモ帳などのその他の書籍・周辺商品が展開された。
脚注[編集]
1. ^ 『とおゔい こんてぬ』初回限定版取扱説明書、黒曜立体ソフト、2004年、pp. 4-7。
2. ^ 黒曜立体ソフト広報部「発売前夜の注意事項」『月刊ドリフトレビュー』2004年12月号、第8巻第12号、pp. 18-19。
3. ^ 牧野千景「怖さは速度ではなく、理解の遅れに宿る」『ゲーム設計と沈黙』立体文化研究所、2005年、pp. 31-34。
4. ^ 高村直也『無音の監督官はなぜ遅れて来るのか』白霧出版、2006年、pp. 88-91。
5. ^ 黒曜立体ソフト『東雲コンテナ複写局 建築仕様書摘要』社内資料、2004年。
6. ^ 佐伯真理「棚番号確認労働としてのホラー」『デジタル娯楽批評』Vol. 12, No. 3、2005年、pp. 52-57。
参考文献[編集]
・石沢颯太『沈黙するUIの設計』黒曜文庫、2007年。
・牧野千景『反転音声と恐怖演出』立体メディア社、2006年。
・Mikhail Kravchenko, "Composing by Unwinding: Notes on Reverse Playback", Arcadia Sound Studies, Vol. 4, No. 2, 2008, pp. 11-29.
・田村修也『巻き戻し処理の実装と倫理』東雲工学出版、2009年。
・Elena S. Morozov, "The Audible Temperature Hypothesis in Survival Horror", Journal of Unreal Game Research, Vol. 9, No. 1, 2010, pp. 77-96.
・『とおゔい こんてぬ 公式設定資料集 返送不能』黒曜立体ソフト、2005年。
・古賀浩一『ホラーゲームの文法と余白』港湾文化新書、2008年。
・『逆書帳の使い方がわかる本』霧島出版、2005年。
・Sarah P. Wren, "Archive Hauntings and Broadcast Decay", Vol. 7, No. 4, pp. 201-219.
・『耳栓を外さないでください: 開発現場録』黒曜立体ソフト社史編纂室、2011年。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
黒曜立体ソフト 公式アーカイブ
とおゔい こんてぬ 設定保管庫
東雲放送史研究会
逆再生資料館
沈黙UI保存委員会
脚注
- ^ 石沢颯太『沈黙するUIの設計』黒曜文庫, 2007.
- ^ 牧野千景『反転音声と恐怖演出』立体メディア社, 2006.
- ^ Mikhail Kravchenko, "Composing by Unwinding: Notes on Reverse Playback", Arcadia Sound Studies, Vol. 4, No. 2, 2008, pp. 11-29.
- ^ 田村修也『巻き戻し処理の実装と倫理』東雲工学出版, 2009.
- ^ Elena S. Morozov, "The Audible Temperature Hypothesis in Survival Horror", Journal of Unreal Game Research, Vol. 9, No. 1, 2010, pp. 77-96.
- ^ 『とおゔい こんてぬ 公式設定資料集 返送不能』黒曜立体ソフト, 2005.
- ^ 古賀浩一『ホラーゲームの文法と余白』港湾文化新書, 2008.
- ^ 『逆書帳の使い方がわかる本』霧島出版, 2005.
- ^ Sarah P. Wren, "Archive Hauntings and Broadcast Decay", Broadcast Studies Quarterly, Vol. 7, No. 4, 2011, pp. 201-219.
- ^ 『耳栓を外さないでください: 開発現場録』黒曜立体ソフト社史編纂室, 2011.
外部リンク
- 黒曜立体ソフト公式アーカイブ
- とおゔい こんてぬ 設定保管庫
- 東雲放送史研究会
- 逆再生資料館
- 沈黙UI保存委員会