アナコイ〜おとこの娘のアナルに恋をした〜
| タイトル | アナコイ〜おとこの娘のアナルに恋をした〜 |
|---|---|
| 画像 | Anakoi_boxart.png |
| 画像サイズ | 240px |
| caption | 限定版パッケージイラスト |
| ジャンル | アドベンチャーゲーム / 恋愛シミュレーション |
| 対応機種 | ドリームポケット2 |
| 開発元 | スタジオ・ルミノワール |
| 発売元 | 北辰ソフトウェア |
| プロデューサー | 石堂 恒一 |
| ディレクター | 三島 叶 |
| デザイナー | 白河 みのる |
| プログラマー | 高瀬 直人 |
| 音楽 | 榊原 冬馬 |
| シリーズ | アナコイシリーズ |
| 発売日 | 2009年11月27日 |
| 対象年齢 | CERO D相当 |
| 売上本数 | 初週4.8万本、累計31.2万本 |
| その他 | 限定版同梱の『恋文封緘キット』が話題となった |
『アナコイ〜おとこの娘のアナルに恋をした〜』(英: Anakoi: I Fell in Love with an Otokonoko's Anal)は、にのから発売された用である。のちに同作を起点として、・・へと展開した、いわゆる作品群の第1作目として知られる[1]。
概要[編集]
『アナコイ〜おとこの娘のアナルに恋をした〜』は、の体裁を取りつつ、選択肢の多くがよりもの管理に偏っている作品である。プレイヤーはの新任相談員として、学園内で「おとこの娘」と呼ばれる生徒たちの秘密と関係性を調整し、ある人物の「封じられた場所」にまつわる記憶を解き明かしていく[1]。
本作は、元来はに社内企画として始まった『距離感シミュレーション』を母体としており、のちに脚本家の三島叶が「恋愛の最終局面は告白ではなく、相手の沈黙をどう受け止めるかである」と述べたことから、現在の題名に収斂したとされる。なお、開発資料には「腸内共鳴ルート」という記述が確認されているが、これは比喩なのか仕様なのかで当時から社内でも意見が割れていたという[要出典]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、通常の会話選択に加え、1日3回まで使用できる、、の各コマンドが存在する。これらは好感度ではなく「緊張率」「信頼棚」「沈黙温度」という独自パラメータに影響し、数値が一定値を超えると会話が逆に破綻する設計であった。
また、プレイヤーは各章ごとに「接近」「静観」「退避」の3系統を選ぶことになり、正解ルートに見えても一部の選択肢ではが介入し、強制的に文化祭準備パートへ移行する。これにより、実質的な攻略難度は見た目より高く、当時の雑誌レビューでも「恋愛ゲームというよりも、対話倫理の試験である」と評された。
戦闘[編集]
本作に戦闘要素はないが、代わりに「反論フェーズ」と呼ばれる半リアルタイムの応酬が導入されている。これは相手の台詞に対して、30秒以内に返答カードを3枚まで重ねる仕組みで、誤った組み合わせを選ぶと主人公のが蓄積し、次の章で他人の会話がすべて敬語になる現象が発生する。
一部の隠しイベントでは、学校裏のでのみ発生する「黙示録戦」が存在し、ここでは画面上のUIが消失し、BGMだけが異様に長く続く。開発チームはこれを「内面の戦闘を可視化した」と説明したが、実際には当時のハード性能で演出を増やしすぎた結果、負荷を隠すための措置であったともいわれる。
アイテム[編集]
アイテムは消耗品よりも、関係を進めるための「証拠物」が中心である。代表的なものに、、、そして最重要アイテムである「白いリボンの封印袋」がある。とくに封印袋は、特定ルートでのみ開封可能であり、開けるたびに主人公の独白が1行増えるため、実質的に演出兼セーブデータでもあった。
限定版には「恋文封緘キット」が付属した。これは実際には便箋、蜜蝋風シール、金属製の小さな栞の3点セットであったが、店頭デモでは「手紙が閉じられるまでが恋である」という販促コピーとともに展示され、都内の一部店舗では発売週に在庫が52箱単位で消えたとされる。
対戦モード[編集]
対戦モードは家庭用版の追加要素として実装された、最大2人のローカル対話形式である。各プレイヤーは異なる登場人物の立場を担当し、相手の感情を読みながら「間を置く」「話題を逸らす」「あえて黙る」などの行動を選ぶ。
勝敗はスコアではなく、最終的にどちらがより相手の台詞を再現できたかで判定されるため、対戦というより朗読会に近い。発売後、のイベント会場で行われた公式大会では、決勝戦が34分間にわたり無言のまま進行し、審査員が「これは仕様上の勝ちである」と宣言したことが小さな話題となった。
オフラインモード[編集]
オフラインモードは「ひとり練習」と銘打たれており、ゲーム本編の台詞を再配置した短編シナリオ集で構成されている。とくに「放課後ベンチ編」は、ネットワーク接続を切った状態でしか閲覧できない隠し仕様があり、プレイヤーが実際の会話から離れるための配慮として導入されたという。
一方で、アップデートパッチ未適用時は、オフラインモードの一部テキストが英語版フォントで表示される不具合があり、海外版の存在しない本作において唯一の国際化要素として逆説的に記憶されている。
ストーリー[編集]
物語は、の海沿いにあるへ転任してきた主人公・篠崎悠真が、学園祭準備の監督役を任されるところから始まる。彼は、外見上は少女に見えるが本人はその呼称を嫌う生徒・霧島アオイと出会い、次第に彼女ならぬ彼の「言えなかった事情」に巻き込まれていく。
中盤では、学園の旧資料室から見つかった1988年の合唱名簿を手がかりに、アオイの家系との港湾地区を結ぶ謎が浮上する。もっとも重要なのは、タイトルにある「恋」が単なる感情ではなく、学園が半世紀にわたり隠してきた「匿名で送られた手紙を、受け取った側がどう保管するか」という儀礼的な文化を指す点である。
終盤、主人公は卒業式前夜に旧温室へ呼び出され、そこでアオイが「誰かに見つけられるためではなく、見つからないまま理解されたい」と告白する。ここで選択肢を誤ると、スタッフロールが始まる直前にが割り込んで文化祭準備に戻されるため、本作の真のエンディングを見るには、実質的に3回連続で同じ雨天イベントを耐える必要がある。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
篠崎 悠真(しのざき ゆうま)は、本作の主人公である。の予備校講師から学園相談員へ転職した設定で、過去の失敗を抱えながらも他人の距離感にだけ妙に敏感である。開発初期案ではもっと無口であったが、テストプレイでは「沈黙が長すぎてホラーゲームと誤解された」ため、独白が大幅に増やされた。
仲間[編集]
霧島 アオイは、本作の中心人物であり、学園内では「おとこの娘」と呼ばれているが、本人はその呼称に複雑な感情を示す。小柄な体格と整った所作から人気がある一方、実際には読書委員会の会計を1円単位で管理する几帳面さを持ち、隠しルートではを用いて主人公を論破する。
そのほか、放送部員の倉持ミナト、保健委員の有馬レイ、寮監代理の長谷川静子が仲間として登場する。特に長谷川は、あらゆる選択肢に対して「今はやめておきなさい」と言うだけで進行を止めるため、プレイヤーのあいだでは半ば最強キャラクターとして扱われた。
敵[編集]
敵役としては、学園理事長の御手洗宗一が最大の障害である。彼は学園の伝統を守るという名目で、アオイの存在を「記録上の誤差」として処理しようとするが、実際には若い頃に自分も似た境遇にあったことが示唆される。
また、ルートによっては同級生の篠宮凛が敵対的に振る舞い、会話のたびに「その沈黙は誰のもの?」と問い詰めてくる。制作陣によれば、彼女は単なる悪役ではなく、プレイヤーが無意識に持つ「理解したつもりになる態度」を可視化した存在であるとされる。
用語・世界観[編集]
本作の舞台は、の海辺に位置する進学校「私立白波学園」であり、校舎の地下には戦前から残るが存在する。ここでは、恋愛感情に関する匿名投書を百年以上にわたり分類してきたという設定があり、学園の歴史そのものが感情のアーカイブとして描かれる。
作中で頻出する「アナログ・アナムネシス」という用語は、記憶を再生することではなく、誰かの沈黙を別の誰かが引き受ける行為を意味する。また「アナコイ」は作品名であると同時に、校内で使われる隠語でもあり、当初は「匿名恋愛研究会」の略称だったものが、いつの間にかタイトルとして定着したとされる[要出典]。
世界観上、季節の移り変わりはイベント日程ではなく、学園放送で流れる「欠席連絡」の回数で示される。これにより、雨の章では欠席連絡が17件、卒業前夜では41件に達するなど、細かい数字が妙に物語性を持つ構造になっている。
開発[編集]
制作経緯[編集]
制作は秋、北辰ソフトウェアの社内企画会議で「携帯電話向け恋愛ADVの次の一手」として始まった。最初はごく普通の学園恋愛劇であったが、プロデューサーの石堂恒一が「関係性を数値でなく沈黙で測れないか」と発言したことから、企画が急速に変質した。
その後、シナリオ会議で付箋紙が壁一面に貼られ、最終的には112枚のプロットが採用された。なお、社内試作版ではタイトルが『アナムネシス学園』であったが、営業部の提案により、より記憶に残る表記として現在の長い題名に変更された。
スタッフ[編集]
ディレクターの三島叶は、もともとのUI設計を担当していた人物であり、会話の「間」を操作する仕組みを考案した。キャラクターデザインの白河みのるは、線の細い人物像を徹底し、当初予定されていた制服のボタン数を3つ減らしたことで知られる。
プログラマーの高瀬直人は、選択肢分岐を圧縮する独自のスクリプト言語「N-Branch」を作成したとされるが、ドキュメントの一部が紛失しており、同時代の開発者の証言も食い違っている。音楽担当の榊原冬馬は、レコーディング時にとを同じ譜面で扱わせ、結果として「甘いのに冷たい」と評されるサウンドを生んだ。
音楽[編集]
サウンドトラックは、物憂げなピアノ曲と環境音を中心に構成され、発売翌年に『Anakoi Original Sound Track: Whispered Distance』として2枚組で発売された。主題歌「白い封筒、青い夜」は、発売からしばらくして風の配信文化圏で再評価され、サビ前の無音3秒が「最も語られる無音」として話題になった。
BGMは全27曲で、うち6曲が同一の和音進行を基にしている。とくにエンディング曲「返事のないまま」は、フルコーラスで7分42秒あり、歌詞カードの余白が異常に広いことから、ファンの間では「聴くというより読む曲」とも呼ばれた。
他機種版・移植版[編集]
には向けに『アナコイ Portable』が発売され、タッチ操作に合わせて選択肢が円形配置へ変更された。さらにには向け完全版『アナコイ Complete Silence Edition』が配信され、未収録だったサブイベント12本と、演出のみの「無言エンディング」が追加された。
その後、限定的に版が配信され、対応を謳う告知が一部雑誌に掲載されたが、実際には同系統の互換環境が存在しないため、結果として幻の対応表記として扱われている。なお、海外移植版の企画も一度はあったが、英語圏では題名の長さが流通上の障害となり、代わりに『A.C.L.I.』という略称案が出ていたという。
評価[編集]
発売当初の評価は概ね好意的であり、では33点、では「言葉にしにくい関係をゲームとして成立させた稀有な例」と評された。売上は初週4.8万本、累計31.2万本を記録し、発売から半年後にはシリーズ初のを狙う企画会議が実施されたが、最終的には関連商品を含めた総出荷数で語られることが多い。
一方で、題名の過激さから一部小売では陳列位置をに近い場所へ変更する対応が取られ、結果として実際のプレイヤーより先に保護者会で知られる作品となった。後年の調査では、購入者の約18%が「タイトルだけでは内容を把握できなかった」と回答しており、広報上の成功例としてマーケティング誌にも引用されている。
関連作品[編集]
本作の成功を受け、続編『アナコイ2〜沈黙のあとで〜』がに発表され、前作のシステムを継承しつつの対話ログ機能を追加した。また、外伝として『アナコイ外典 旧温室の記録』、『アナコイ Another封書』、『アナコイ・リフレイン』が制作されたとされるが、いずれも短期間で企画が終了したため、半ば都市伝説化している。
さらに、の企画も進行したという噂があった。実際には第2話相当までの絵コンテが存在したのみで、放送局の編成会議で「タイトルの説明に3分必要」と判断され、見送られたと伝えられる。
関連商品[編集]
攻略本としては、『アナコイ完全読本』が発売され、全ルートチャートのほか、主要キャラクターの「沈黙反応一覧表」まで収録された。付録としてミニポスターと封筒型しおりが付属し、初版2万部のうち7割が発売1週間で完売した。
書籍では、鈴木環『ゲームが語る関係性の倫理』や、藤野彩『アナコイ現象と2000年代後半の学園像』などが関連研究として知られている。ほかに、音響監修本『無音の設計』、設定資料集『白波学園封書史』も刊行され、いずれも書店のサブカル棚にまとめて置かれた。
脚注[編集]
1. 本作の正式な発売日は、広報資料ではとされているが、社内台帳にはの記載もあり、混乱が残る。
2. 「おとこの娘」という表記は当時の販促上の呼称であり、学術的分類を意味するものではない。
3. 開発資料に見える「腸内共鳴ルート」という語は、実際には脚本会議のメモの一部で、誤植か演出案かについて関係者の証言が分かれている。
4. 売上本数の数値は、発売元の決算説明会で示された概算値を基にしている。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
北辰ソフトウェア 公式アーカイブ
白波学園資料室デジタル館
Anakoi Fan Chronology Project
旧温室保存協会
ゲーム文化研究所 特設ページ
脚注
- ^ 石堂 恒一『アナコイ企画書集成』北辰ソフトウェア出版部, 2010年.
- ^ 三島 叶『沈黙を選択肢にする方法』スタジオ・ルミノワール研究室紀要, Vol. 4, pp. 12-41, 2011.
- ^ 白河 みのる『制服意匠と距離感の設計』月刊ゲーム文化, 第18巻第7号, pp. 88-97, 2010.
- ^ 高瀬 直人『N-Branch言語仕様書 断章』情報処理と遊戯, Vol. 11, pp. 203-219, 2012.
- ^ 榊原 冬馬『無音と余白の作曲術』音響芸術年報, 第9号, pp. 55-73, 2010.
- ^ Margaret L. Haversham, 'Affective Silence in Late-2000s Japanese Adventure Games', Journal of Interactive Fiction Studies, Vol. 22, pp. 144-168, 2014.
- ^ Douglas P. Ketter, 'The Chair-Distance Command and Its Cultural Afterlife', Game Semiotics Review, Vol. 7, pp. 9-26, 2013.
- ^ 鈴木 環『ゲームが語る関係性の倫理』青嵐社, 2015年.
- ^ 藤野 彩『アナコイ現象と2000年代後半の学園像』南風書房, 2016年.
- ^ 長谷川 静子『保健室回避論』教育と遊戯のあいだ, 第3巻第2号, pp. 1-18, 2012.
- ^ Eleanor V. North, 'Whispered Distance and the Romantic Interface', Digital Humanities Quarterly of Play, Vol. 5, pp. 77-91, 2015.
外部リンク
- 北辰ソフトウェア公式アーカイブ
- 白波学園資料室デジタル館
- Anakoi Fan Chronology Project
- 旧温室保存協会
- ゲーム文化研究所 特設ページ