イクイクイノックス
| 名称 | イクイクイノックス |
|---|---|
| 界 | 動物界 |
| 門 | 脊索動物門 |
| 綱 | 哺乳綱 |
| 目 | 新月目 |
| 科 | 行灯科 |
| 属 | イクイノックス属 |
| 種 | I. equinoxis |
| 学名 | Noctequus equinoxis |
| 和名 | イクイクイノックス |
| 英名 | Ikuikuinox |
| 保全状況 | 情報不足(DD) |
イクイクイノックス(漢字表記: 行々夜明、学名: ''Noctequus equinoxis'')は、に分類されるの一種である[1]。のを中心に分布するとされ、薄明時に尾部を左右交互に振りながら群れで移動する習性を特徴とする[1]。
概要[編集]
イクイクイノックスは、からにかけてので報告されてきた、夜間に活動する小型の哺乳類である。学術上はに置かれるが、この分類群自体がに周辺の研究会で暫定的に提唱されたものであり、現在も議論が続いている。
本種は、満月の前後に耳介がわずかに発光したように見えることから、古くは「月待ち獣」とも呼ばれた。なお、地元では鳴き声が「イク、イク」と聞こえるとされ、それが名称の由来になったとする説が有力であるが、実際にはにの自然観察会が命名した際、語感の良さを優先した可能性が高いとされている[2]。
分類[編集]
命名の経緯[編集]
イクイクイノックスの初記載は、にの動物分類学研究室が発行した報告書『丘陵夜行性小型哺乳類の一群』にさかのぼるとされる。記載者はで、当初は''Noctequus''属の未確定種として扱われたが、後に尾骨の湾曲角が標本ごとに一定であることから独立種として整理された[1]。
属名の''Noctequus''は「夜」を意味すると「馬」を意味する語を接続した造語であるが、実際には馬科との関係はなく、命名時に研究室の机上に置かれていたが影響したとする逸話が残る。これに対し、種小名''equinoxis''は・の両季節に繁殖行動が集中することに由来すると説明されることが多い。
近縁種との関係[編集]
本種は同属のおよびと形態的に近いが、耳介内側に微細な縞模様がある点で区別される。特にの採集個体は、前肢の第3指が異常に長く、かつ指先に泥をため込む性質が強く、標本採取者の間では「スコップ指」と呼ばれている[要出典]。
では一時期、これらをすべて同一種の季節変異とみなす案が検討されたが、のミトコンドリアDNA断片比較により、少なくともイクイクイノックスは独立した系統であるとされた。ただし、解析に用いられた試料の半数が保存液の糖分で発酵していたため、結果の一部は再検証が必要とされている。
形態[編集]
成体は頭胴長約18〜24cm、尾長12〜17cm、体重は平均で310g前後とされる。体毛は灰褐色から黒褐色で、背中中央にだけ薄い銀色の帯が走る個体が多い。この帯はに対して反射率が高く、以降の調査で個体識別に用いられるようになった。
頭部はやや細長く、鼻先が軽く上向きになるのを特徴とする。眼は小さいが暗所視に適応しており、虹彩がからへ時間帯で変化するという報告がある。もっとも、これを確認した調査班は、現地で配布されたの糖度が高すぎてレンズが曇っていたため、記録の信頼性には注意が必要である。
最大の特徴は、尾の先端にある「方位腺」と呼ばれる器官である。これは左右に振ると微弱な静電気を発し、落ち葉の向きを揃える作用があるとされている。なお、の一部では、この静電気がの硬貨投入口を誤作動させたとして苦情が出たことがある。
分布[編集]
主な分布域は南部の低山帯から北部の雑木林とされる。特にの北西斜面、の麓、北部の放棄水田周辺での目撃例が多い。標高は30〜640mの範囲に集中するが、冬季にはの温泉地周辺で排湯路に沿って移動する個体群も確認されている。
本種は湿度58〜72%の環境を好むとされ、の床下や、半壊したの縁に営巣することが多い。とくにの「春分」前後に出現率が高まることから、昔の村落では「暦を食う獣」と恐れられたという。この伝承は南部の民話調査でも記録されているが、同じ話の中で本種がの音に合わせて行進したとも語られており、信憑性は定かでない。
生態[編集]
食性[編集]
イクイクイノックスは雑食性であるが、主に腐葉土中の昆虫幼虫、熟した木の実、そして雨上がりの苔類を摂食する。特にを食べた個体は尾部の発光が強まるとされ、地元の観察者の間では「夜の信号灯」とも呼ばれている。なお、の調査では、餌台に置かれたを3夜連続で持ち去ったため、パン食性があるのではないかと誤解された。
一方で、採食時に必ず一度だけ頭を下げる「礼食行動」が報告されており、これは群れ内の順位確認の儀式とみなされることがある。礼食行動の頻度は個体差が大きく、特定のオスでは1分間に17回に達した記録がある。
繁殖[編集]
繁殖期は下旬から中旬にかけてで、前後の夜間に交尾が集中する。雌は1回に2〜4頭を出産し、巣はを編み込んだドーム状の構造をとる。胎仔の体表には、出生直後から銀帯の原型が見られるとされる。
興味深いことに、本種は繁殖前に必ず互いの耳を3回だけ触れ合う「耳印合わせ」を行う。これにより相手の季節適応性を確かめると考えられているが、の個体群では耳印合わせの際にが鳴ることがあり、研究者を困惑させた。2016年の観察記録では、1組のつがいが交尾前に26分間も月齢を確認し続けたとされており、過剰な慎重さが本種の特徴とされる。
社会性[編集]
本種は5〜12頭ほどの小群を形成し、移動の際は最年長個体が先頭、最年少個体が最後尾につく。群れには「方位係」と呼ばれる役割分担があり、尾の静電気で落ち葉の流れを読み、進路を決める。群れの意思決定は意外に遅く、10m移動するのに平均8分42秒を要するという調査結果がある。
また、個体間では鳴き声による挨拶のほか、前肢で地面を2回叩く「再開の合図」が用いられる。これは後の再集合に役立ったとされ、の後、の避難所近くで見られた群れが人間の懐中電灯の明滅に合わせて再集合したとの記録もある。ただし、観察者が当時しか飲んでいなかったため、記録の一部には誇張が含まれると考えられている。
人間との関係[編集]
イクイクイノックスは、後期まで農家にとっては害獣とも益獣ともつかない存在であった。落ち葉を集めて畝の周囲を整える習性から「畑の掃除屋」と呼ばれた一方、堆肥の温度を上げすぎて苗床を乾かすことがあり、の広報誌でも賛否が分かれた。
にはのある中学校で、校庭の落ち葉清掃を本種が一晩で終わらせたことから、が「自然の用務員」として保護を求めた例がある。これを受けて、東北自然環境事務所では、夜間照明を弱めることで本種の移動を阻害しないようにする「薄暮配慮指針」を作成したとされる。
一方で、観光資源として利用しようとする動きもあった。内の一部温泉地では「イクイクイノックス観察ナイト」が企画され、参加費は1人2,800円、貸与される赤色ライトは返却制であった。しかし、参加者が興奮して「イクイク」と連呼した結果、個体群が一斉に移動をやめてしまい、以後は完全予約制に変更されたという。
脚注[編集]
[1] 佐伯倫太郎『東北丘陵における新月目小型哺乳類の暫定分類』、東北大学動物学報告、第12巻第3号、1996年、pp. 41-78。
[2] 仙台自然観察会編『夜の里山に鳴くものたち』、仙台環境出版、1994年、pp. 105-109。
[3] 長谷川真理『新月目の成立とその周辺』、国立科学博物館研究資料、第8巻第1号、2001年、pp. 9-33。
[4] Robert K. Halden, "Seasonal Morphology in Noctequids", Journal of Imaginary Mammalogy, Vol. 4, No. 2, 2004, pp. 88-117.
[5] 井上志津『耳印合わせ行動に関する予備的観察』、日本哺乳類学会誌、第19巻第4号、2007年、pp. 201-219。
[6] M. A. Thornton, "Electrostatic Tail Signaling in Ikuikuinox", Proceedings of the North Pacific Fauna Symposium, Vol. 11, 2012, pp. 55-64.
[7] 松浦千代『春分期における群れ移動の同期現象』、東北生態学年報、第27巻第2号、2016年、pp. 144-168。
[8] Karen S. Whitlow, "A Comparative Note on the So-Called Moon-Band", Mammalian Notes Quarterly, Vol. 9, No. 1, 2018, pp. 3-21。
[9] 福島県里山保全協議会『薄暮配慮指針の手引き』、2019年、pp. 1-26。
[10] 田島圭介『イクイクイノックス観察事業の経済効果』、地域動物観光研究、第5巻第2号、2022年、pp. 77-95。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯倫太郎『東北丘陵における新月目小型哺乳類の暫定分類』東北大学動物学報告、第12巻第3号、1996年、pp. 41-78.
- ^ 仙台自然観察会編『夜の里山に鳴くものたち』仙台環境出版、1994年、pp. 105-109.
- ^ 長谷川真理『新月目の成立とその周辺』国立科学博物館研究資料、第8巻第1号、2001年、pp. 9-33.
- ^ Robert K. Halden, "Seasonal Morphology in Noctequids" Journal of Imaginary Mammalogy, Vol. 4, No. 2, 2004, pp. 88-117.
- ^ 井上志津『耳印合わせ行動に関する予備的観察』日本哺乳類学会誌、第19巻第4号、2007年、pp. 201-219.
- ^ M. A. Thornton, "Electrostatic Tail Signaling in Ikuikuinox" Proceedings of the North Pacific Fauna Symposium, Vol. 11, 2012, pp. 55-64.
- ^ 松浦千代『春分期における群れ移動の同期現象』東北生態学年報、第27巻第2号、2016年、pp. 144-168.
- ^ Karen S. Whitlow, "A Comparative Note on the So-Called Moon-Band" Mammalian Notes Quarterly, Vol. 9, No. 1, 2018, pp. 3-21.
- ^ 福島県里山保全協議会『薄暮配慮指針の手引き』2019年、pp. 1-26.
- ^ 田島圭介『イクイクイノックス観察事業の経済効果』地域動物観光研究、第5巻第2号、2022年、pp. 77-95.
外部リンク
- 東北夜行性哺乳類資料館
- 日本民俗動物学会アーカイブ
- 里山生物観察ネット
- 国立架空生物図鑑データベース
- 新月目研究会