カイロスモンスター2
| タイトル | カイロスモンスター2 |
|---|---|
| 英題 | Kairos Monster 2 |
| ジャンル | 時間管理型育成シミュレーション |
| 対応機種 | 業務用アーケード基板、後に家庭用移植 |
| 開発元 | 東雲電子工業 第三企画室 |
| 発売元 | セントラルアミューズメント販売 |
| 稼働開始 | 1990年4月 |
| プレイ人数 | 1人 |
| 特徴 | 怪物の成長時刻を操作する逆転型システム |
カイロスモンスター2(Kairos Monster 2)は、に発表されたで、時間制御型の怪物育成と簡易な都市防衛を組み合わせた作品である。の業務用基板メーカーが、もともとの訓練用として試作した端末を転用して制作したとされる[1]。
概要[編集]
『カイロスモンスター2』は、プレイヤーが「カイロス」と呼ばれる時刻の歪みを操作し、怪物を育成しながら都市の崩壊を防ぐ形式のである。一般には続編とされるが、初代『カイロスモンスター』が極端に流通量の少ない試作機に留まったため、実質的には本作がシリーズの原点とみなされている[2]。
本作の最大の特徴は、怪物が強くなるほど時計が進むのではなく、逆にゲーム内時刻が巻き戻る点にある。この逆転構造は、の設計陣が「時間を前に進めるとプレイヤーが焦るので、むしろ戻した方が冷静になる」と主張したことから採用されたとされる。なお、ロケテストでは30秒ごとに筐体の内蔵時計が3分進む不具合があり、近隣ので“時差の出る筐体”として一部の常連にだけ人気を博したという[要出典]。
開発[編集]
企画の成立[編集]
企画は、尼崎市にあった東雲電子工業の第三企画室で立案された。中心人物はディレクターの、数理設計の、サウンド担当のである。松浦はもともと業務用のUIを手掛けており、その経験から「怪物の体調は気圧で決まる」とする独自理論を持ち込んだ。
当初は『カイロス・ビースト』という名で、怪物の成熟度を64年のカレンダーで管理する案もあったが、年号更新時の混乱を避けるため、タイトル末尾に「2」を付けて“すでに市場で認知された続編”に見せる方針が採られた。実際には前作の売上は業界紙でしか確認できず、筐体番号も21台分しか残っていない。
筐体と基板[編集]
筐体は製のレバーと、独自開発の「時報ボタン」を備えた専用設計であった。時報ボタンは押すたびにゲーム内の太陽が1度傾く仕様で、マニュアルには「1日8回までを推奨」と記されている。基板はと呼ばれ、内部的には相当の演算性能を持つとされたが、実際には時計処理に全体の約43%の電力を消費していた。
また、開発終盤には筐体の発熱が激しく、内部基板の温度上昇で怪物の成長速度が変わる現象が確認された。これを利用して、設置場所の季節によって難易度が微妙に変わるという珍しい挙動が生まれたが、メーカー側は「意図した仕様」と説明していた。
ゲーム内容[編集]
プレイヤーは、半透明の卵から孵化した怪物を育て、都市の外周に現れる災厄を選択的に食い止める。怪物は7種類の基本感情と3種類の時刻属性を持ち、毎ラウンドごとに「朝型」「黄昏型」「逆夜型」のいずれかへ偏る。最終的には都市が救われるか、怪物が市役所の時計塔を自分の巣と誤認して定着するかでエンディングが分岐する。
特筆すべきは「48分ルール」で、現実の1分がゲーム内の48分に相当する場面がある一方、特定の条件下では1分が15秒に短縮される。これにより、熟練者はわずか2分台で中ボスを孵化させることが可能だったとされる。また、攻略上重要な「夕方の栄養」は、実は内の実在するラジオ時報から着想を得たという話が残っている。
公開と稼働[編集]
本作はにのゲームセンターを中心に稼働を開始し、同年夏には新宿区の大型店舗にも展開された。初期ロットはおよそ1,400台とされるが、オペレーター向け資料の配布数は1,267部に留まり、残りは電話で口頭説明されたという。これが後年まで設定解釈の混乱を生む原因となった。
稼働初期には、プレイヤーの操作に応じて筐体前面の時計が実際に動く演出が話題となった。もっとも、夜間営業の店舗では照明の反射で時間表示が見えにくくなり、プレイヤーが本当に時刻を奪われた気分になることから“疲れるのにやめられないゲーム”として評判を集めた。なお、一部店舗では常連が閉店後も筐体の前で待機し、翌日の開店時刻に合わせて怪物を起こす儀式めいた遊び方をしていたと伝えられる。
評価[編集]
発売当時のアーケード誌では、時間の扱いが革新的である一方、初心者にとっては説明書の図解が過剰に抽象的であると評された。特に『月刊アミューズメント・レーダー』9月号は、本作を「遊ぶたびに人生の残り時間を再計算させる怪作」と評し、編集後記では“次号で特集する予定だったが、時刻が合わないため延期”と記している。
一方で、教育関係者の間では、時刻表記と優先順位の学習に役立つとして、学童向けイベント筐体に転用する動きがあった。大阪府内の一部施設では、夏休み中に延べ約2,300人の児童がプレイしたとされ、ゲーム終了後に時計の読み方が向上したという報告もある。ただし、この調査は保護者の記憶に依存しており、統計としてはやや粗い。
移植版[編集]
家庭用版の差異[編集]
に向けの移植版が発売されたが、容量不足のため怪物の感情が7種類から4種類に減らされた。代わりに「眠気」という独自属性が追加され、攻略本ではこれを“敗北の予兆”と説明している。移植を担当したは、背景の都市を2色のグラデーションで表現し、逆に原作より不気味さが増したとして評価された。
なお、北米向けの再編集版ではタイトルが『Chrono Beast II』となり、モンスターがひたすら時計を壊す作品として誤解された。発売後に数店舗で返品騒動が起きたが、逆にそれが口コミを呼び、コレクター市場での価値を上げたとされる。
後年の再評価[編集]
以降、動画配信文化の中で本作の“説明不能な真顔の変なゲーム”としての魅力が再発見された。特に、怪物が市役所の警備員に挨拶すると一時的に敵対心が下がる場面は、視聴者から「社会性が高すぎる」と評された。
さらに、の大学研究室では、本作の内部乱数が都市交通の待ち時間予測に似ているとして解析が試みられた。研究発表では、ゲーム中の1回の分岐が実生活の地下鉄乗り換え判断と相関する可能性が示されたが、サンプル数が29件しかなく、学術的には保留扱いである。
社会的影響[編集]
本作の影響はゲーム業界にとどまらず、時計店、天文台、受験産業にまで及んだとされる。特にでは、ゲーム筐体の操作体系を模した「時刻管理講座」が短期間だけ開催され、受講者の一部が実際の電車に遅れなくなったという記録が残る。
また、1990年代前半の若年層の間では、「カイロスを詰める」という表現が、締切直前に余裕をねじ込む行為の隠語として用いられた。これは本作の攻略動画がで繰り返し流されたことに由来するという説があるが、当時の放送局の編成表には確認できない。
批判と論争[編集]
本作に対しては、ゲームの面白さよりも筐体の“時計の信用性”が前面に出すぎているとの批判があった。とりわけ、設置店舗ごとに内部時計のズレが異なり、同じステージでも都市の夕焼けが朝焼けに見えることがある点は、当時の評論家から「時間表現の自由化」と好意的に受け取られた半面、保守的なプレイヤーからは「ただの調整不足」と不満が出た。
また、開発陣が「怪物は人間の都合でしか悪者にされない」とする声明を出したことで、一部の新聞は本作を社会批評的作品として取り上げた。しかし、実際のストーリー中では怪物が普通にバス停を壊すため、思想性と破壊性の両立がかえって論争の種になった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 松浦賢治『時刻を育てる——アーケード設計論の周縁』東雲出版, 1992年.
- ^ 林田サチ「逆時間処理と感情属性の相関」『アミューズメント工学紀要』Vol. 8, No. 2, pp. 41-58, 1991.
- ^ Kevin R. Hale, "Temporal Husbandry in Early Japanese Arcades," Journal of Interactive Systems, Vol. 14, No. 3, pp. 201-219, 2004.
- ^ 北園テクノワークス編『Chrono Beast II 移植技術報告書』北園文庫, 1991年.
- ^ 『月刊アミューズメント・レーダー』1990年9月号、特集「時計を食べるゲーム」, pp. 12-27.
- ^ 佐伯みのる「都市防衛ゲームにおける怪物の市民化」『遊戯文化研究』第5巻第1号, pp. 77-93, 2001年.
- ^ Margaret A. Thornton, "Weather Console Prototypes and Coin-Op Conversions," Arcade History Review, Vol. 6, No. 1, pp. 5-18, 1998.
- ^ 東雲電子工業 第三企画室『ZX-40 Kairos 取扱説明書』社内資料, 1990年.
- ^ 大谷修一『深夜営業と筐体内時計の倫理』関西アミューズメント協会, 1994年.
- ^ Robert J. Fielding, "The Monster That Came on Time," Retro Game Studies Quarterly, Vol. 2, No. 4, pp. 88-101, 2016.
- ^ 『都市と怪物の教育的利用に関する覚書』大阪府青少年施設連絡会, 1993年.
- ^ 『Chrono Beast II and the Curious Case of the Missing Minute』North Pacific Game Journal, Vol. 11, No. 7, pp. 3-9, 1992.
外部リンク
- 東雲電子工業アーカイブ
- 関西アーケード資料室
- 時間ゲーム保存会
- レトロ筐体年表データベース
- 都市防衛ゲーム研究フォーラム