カイロスモンスター3
| タイトル | カイロスモンスター3 |
|---|---|
| 英題 | Kairos Monster 3 |
| ジャンル | タイムアクションRPG |
| 対応機種 | Kairos PC-98X / Super Kairos / arcade prototype |
| 開発元 | 株式会社クロノベクター |
| 発売元 | セントラル電脳出版 |
| 発売日 | 1995年4月21日 |
| 人数 | 1〜2人 |
| メディア | CD-ROM 2枚組 |
| 前作 | カイロスモンスター2 |
カイロスモンスター3(Kairos Monster 3)は、に発売されたの『』の続編として知られるである。時間制御型の戦闘と、プレイヤーの選択に応じて周辺の都市がわずかに変形していく演出で話題となった[1]。
概要[編集]
『カイロスモンスター3』は、代前半の国産において「行動順そのものを物語に変える」という思想を極端に押し進めた作品である。開発は、販売はが担当し、雑誌『』では「説明書を読まなくても時間が遅くなる」と評された[2]。
本作は、画面内の敵を倒すのではなく、敵が出現した瞬間の“意味”を奪うことで勝利条件が成立するという独特の設計を採用していたとされる。また、プレイヤーの入力遅延を意図的に変動させるが実装され、発売当時は家庭用機の性能を1.8倍ほど超えていると誤認されたという逸話が残る。
歴史[編集]
企画の成立[編集]
企画は秋、港北区の貸し会議室で行われた「逆順ゲーム設計研究会」に端を発するとされる。中心人物のは、前作『カイロスモンスター2』の評判を受け、「続編では敵を強くするより、時間の方を弱くすべきである」と主張した[3]。この発想は、当時理工学部の学生だったが作成した、1フレーム単位で会話が変化する試作ソフトに刺激を受けたともいう。
開発初期は『KM3』という略称で呼ばれていたが、社内では「三作目なのに一作目より話が複雑」「説明書が本編より長い」などの理由から、最終的に『カイロスモンスター3』へ統一された。なお、タイトル末尾の数字が3である一方、実際のバージョン管理は2.7から始まっていたという。
発売まで[編集]
にはのテストセンターでロケーション試験が行われ、被験者47名のうち31名が最初の10分で「敵に会う前に疲れた」と回答した。これを受け、開発陣はUIの初期配置を0.3秒だけ前倒しに修正したが、逆に難易度曲線が急上昇し、社内では「0.3秒の暴政」と呼ばれた[4]。
4月21日に発売されると、の一部店舗では午前7時の開店前に整理券が配布された。初回出荷は12万4,000本とされるが、実際に店頭に並んだパッケージの数はそれより2,000本多かったという証言があり、これは印刷会社の送り状が一時的に別商品の倉庫へ紛れ込んだためと説明されている。
海外展開と再評価[編集]
英語版『Kairos Monster 3』はに北米で限定販売されたが、マニュアルの翻訳が不自然であったため、プレイヤーの間では「敵を倒すな、先に思い出せ」という謎のフレーズがミーム化した。特にの小規模コンベンションでは、敵出現前にセーブを3回行う遊び方が流行し、後年のスピードラン文化に影響を与えたとされる。
代に入ると、が本作のソースコード断片を取得したことで再評価が進んだ。研究者のは、パラメータの一部が天文計算用の古い表式を転用したものであると指摘し、作品名の「カイロス」はギリシア語の機会ではなく、社内で使われていた「回路を遅らせる」略号に由来するとする説を唱えた[要出典]。
ゲームシステム[編集]
本作の戦闘は、一般的なターン制RPGと異なり、敵味方の行動が“未来の行動によって先払いされる”仕組みを採用している。たとえば、プレイヤーが攻撃コマンドを選ぶと、3秒後の被弾予測が先に演算され、その結果が弱いほど攻撃力が上がるため、上級者はわざと画面を見ずに操作することが推奨された。
また、マップ上には・・をモデルにした三つの都市区画が存在し、各区画は現実の地理を基にしているようでいて、実際には「モンスターの感情曲線」に応じて道路が1〜4メートルほど伸縮した。攻略本ではこれを「都市の気分」と説明しており、読者アンケートの23%が「意味はわからないが納得した」と答えている。
ボス戦では、HPを削る代わりに“発生時刻”をずらす必要があり、最終ボスのは、午後2時14分にしか完全体にならないとされる。なお、時計を12分進める裏技が知られていたが、使用するとスタッフロールの一部が先に始まってしまう不具合が確認された。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
主人公は、の架空沿岸都市で育った17歳として設定されている。彼は“時間の歪みを聞き分ける耳”を持つという珍しい特性を備えており、これは開発当初、音声解析担当が誤って効果音の波形をキャラクター設定に転用したことから生まれた。
ヒロインのは、前作では端役であったが、本作で急に物理学者兼バーテンダーとして再設定されている。彼女が常に持ち歩く「7つ折りの地図」は、実際には開発チームがロケ地候補をメモするために使っていた簡易配置図が元になったという。
敵対勢力[編集]
敵組織は、時間犯罪を取り締まる官庁として登場するが、作中では職員の半数以上がモンスターに転属している。長官は、毎回異なる声優が演じているにもかかわらず、設定上は同一人物であるため、雑誌レビューでは「最も説得力のある分裂」と評された。
最終盤に現れるは、姿を持たない敵として恐れられた。開発資料によると、当初は通常の兵士型エネミーであったが、容量不足のためドットを削除した結果、むしろ強く見えるようになったという。
開発[編集]
開発チームは総勢18名で、うち7名が音響、5名がプログラム、3名が美術、残る3名が「時刻表の監修」を担当していた。とくに音響班はの公開講座で学んだ「残響の遅延」を参考にしたとされ、ゲーム内の足音が一拍遅れて聞こえる仕様はその成果である。
プログラム面では、系統の限界を補うため、敵ごとの行動表を一度紙に印刷し、再度スキャンして圧縮する独自手法が採用された。これによりデータサイズは約11%削減されたが、稀にスキャン時の傾きがそのまま敵の性格値に反映されることがあり、温厚なはずの敵が急に斜めに歩き出す現象が報告された。
なお、開発中にのスタジオで行われた最終デバッグでは、チェックリストの一部に「時の匂いが濃いことを確認」と書かれており、後年の資料公開で話題となった。
評価と影響[編集]
発売当初の評価は賛否が分かれた。ゲーム誌『』は「理解した瞬間に終わるのが惜しい」と評し、別の誌面では「プレイヤーの半分は序盤で脱落し、残りの半分は自分が何をしているか分からなくなる」と記された。しかし、結果的には“難解だが癖になる”作品群の代表例としてカルト的地位を確立した。
本作の影響は後年のタイムアタック文化や擬似同期型RPGに見られる。特に以降、複数の同人サークルが「行動の先払い」機構を模倣し、では『カイロス風バトル早見表』が一時的に流通した。ある調査では、当該同人誌を購入した者のうち14%が「ゲームではなく儀式だと思っていた」と回答している。
一方で、作中の都市区画が現実のの地形感覚に微妙に似ていたことから、地域振興に利用されたという逸話もある。実際には観光マップと同じ色使いにしただけであるが、沿線の商店街が「時の歯車スタンプラリー」を実施し、最終日に配布されたカードが2,300枚で足りなくなった。
批判と論争[編集]
批判の中心は、ゲーム進行における不透明な判定であった。とくに「敵が見えているのに戦闘に入らない」「セーブしたのに未来が保存されていない」などの報告が相次ぎ、発売翌月にはに問い合わせが1日平均184件寄せられたという。
また、スタッフインタビューの中で、ディレクターのが「本作は実はエンディングより起動音の方が重要である」と発言したことが一部で物議を醸した。これについてファンは、彼が単に音響設計を強調しただけだと解釈したが、批評家の中には「説明責任を時間に押しつけた」とする者もいた。
なお、後年発見された内部文書には「2作目の売上予測が外れたため、3作目は“わかりにくさ”で回収する」との記載があり、経営判断の面からも検討対象となっている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯冬馬『カイロスモンスター3 開発日誌』セントラル電脳出版, 1996, pp. 14-39.
- ^ 木下譲「時間遅延型コマンド入力の実装と誤差」『情報娯楽工学会誌』Vol. 12, 第3号, 1998, pp. 211-228.
- ^ Marjorie E. Hale, “Temporal Monsters and Player Expectation,” Journal of Interactive Fiction Studies, Vol. 8, No. 2, 2001, pp. 77-96.
- ^ 渡辺真理子『フレーム単位の都市変形に関する試作報告』慶應メディア研究所, 1994, pp. 3-18.
- ^ 山岡達也「CD-ROM 2枚組作品における意味遅延の設計」『ゲーム文化論集』第5巻第1号, 1997, pp. 55-71.
- ^ Peter L. Grant, The Kairos Delay: Myth and Mechanism, Oxford Arcade Press, 2004, pp. 102-149.
- ^ 『電撃王』編集部「カイロスモンスター3レビュー特集」『電撃王』Vol. 4, 第9号, 1995, pp. 22-27.
- ^ 中村彩子「時獣カイロスの午后二時十四分現象」『東洋娯楽研究』第18巻第4号, 2002, pp. 88-101.
- ^ Eleanor V. Sato, “Maps That Tilt: Location-Based Fiction in 1990s Japan,” Game History Quarterly, Vol. 3, No. 1, 2010, pp. 5-29.
- ^ 『スキャン傾斜と敵性値の相関について』クロノベクター社内資料, 1995, pp. 1-12.
外部リンク
- 国立デジタル娯楽保存館
- クロノベクター資料室
- カイロスモンスター3研究会
- 8ビット都市伝承アーカイブ
- 電脳RPG年表委員会