ゲームボーイレガシィ
| タイトル | ゲームボーイレガシィ |
|---|---|
| 画像 | GameBoy Legacy box art.png |
| 画像サイズ | 256px |
| caption | 北欧版パッケージアート |
| ジャンル | 携帯型コンピュータRPG |
| 対応機種 | レガードポケット, ルミナス・カード |
| 開発元 | ノーザン・クロウ社 |
| 発売元 | ノーザン・クロウ社 |
| プロデューサー | 三崎 玄一 |
| ディレクター | アグネス・P・ヴァンデル |
| デザイナー | 日野辺 透, Selma K. Reeve |
| プログラマー | 高杉 雅也, I. M. Calder |
| 音楽 | 佐伯 淳也 |
| シリーズ | レガシィ・サーガ |
| 発売日 | 1997年4月18日 |
| 対象年齢 | CERO相当: 全年齢 |
| 売上本数 | 全世界累計187万本 |
| その他 | 通称はGBL。初期版には説明書とは別に「継承誓約書」が封入された |
『』(英: GameBoy Legacy)は、にのから発売された。後年の作品群に大きな影響を与えた、いわゆるの始祖・元祖である。
概要・概説[編集]
『』は、に流行した“携帯機で家庭用RPG級の物語体験を行う”という思想を、異様なまでに純化した作品である。向けのとして企画され、プレイヤーは「前世代の残した記憶」を回収しながら地図の欠けた王国を再建していく。
本作の特徴は、一般的なであるにもかかわらず、起動時にユーザー自身の「遊んだ年月」を内部時計へ書き込み、それを後半の会話やED分岐に反映させる点にある。この仕様は当時の開発資料で「保存ではなく継承」と呼ばれており、後の展開でもしばしば言及された[1]。
ゲーム内容[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、画面外にある未踏エリアを“記憶の霧”として表示し、歩行回数に応じて霧が薄くなる設計が採用されている。プレイヤーは王国の継承官として操作するが、レベルではなく「継承年数」によって能力が解放されるため、短時間プレイでは戦力が整いにくい。
また、セーブデータは最大3枠ではなく「3世代」まで保持でき、1世代ごとに主人公の口調や所持品の配置が微妙に変化する。これにより、同じ町を訪れても、二周目では店主が前回のやり取りを覚えているかのような挙動を示す。
戦闘[編集]
戦闘は見下ろし型のターン制であるが、敵の行動順は単純な速度ではなく、直前に読んだ図鑑のページ数に左右されるとされる。これは当時の開発スタッフが「知識の蓄積が戦闘を有利にする」という寓意を重視したためで、攻略本を読んでから遊ぶとやけに強くなることで知られている。
一方で、HPに相当する「遺産値」は回復手段が少なく、温泉イベントや祈祷演出でしか大きく戻らない。なお、祈祷の成功率は内部的には63.2%とされるが、取材班が試算したところ実際には約41%前後で推移していたとの指摘がある[要出典]。
アイテム[編集]
アイテムは武具よりも「署名用具」「封印布」「旧紙幣」などの継承儀礼に関わるものが多い。とくに“銀のしおり”は、持っているだけで会話イベントの選択肢が1つ増えるため、事実上の最重要アイテムとみなされている。
また、食料アイテムの一部には回復効果よりも記憶の補完効果が強く設定されており、干し林檎を3個連続で使用すると、主人公がなぜ冒険を始めたのかを思い出す演出が入る。この仕様は、のちに要素を持つ外伝でも再利用された。
対戦モード・オフラインモード[編集]
対戦モードは通信ケーブル風の独自規格「レガリンク」を用いる2人対戦で、直接攻撃よりも“相手の記録を改竄する”妨害が中心となる。勝敗はHPではなく「伝承率」で判定され、最後に多くの台詞を残した側が勝者となるため、実力差よりも記録係のメモ力が問われた。
オフラインモードには1本のソフトで完結するキャンペーンのほか、カード型拡張で遊べる協力プレイ用章が存在する。これらは当初、店頭イベント専用として設計されたが、後に通常モードへ統合され、事実上のの先駆けと宣伝された。
ストーリー[編集]
物語の舞台は、地図の半分が印刷ミスで消失したである。王家に伝わる“最初の端末”が失われたことで、国民は歴史を思い出せなくなり、子どもが生まれるたびに村の名前が少しずつ変わるという奇妙な災厄が続いていた。
主人公は、失われた記憶を管理する役職「第七継承士」として旅立ち、各地に散らばる“レガシィ片”を集めることになる。途中で、かつて王国の技術局に所属していたが現れ、端末の起動には血統ではなく「遊び続ける意志」が必要であると告げる。
終盤では、王国を脅かしていた敵が実は破壊神ではなく、古い説明書を改訂し続けた結果として生じた自己矛盾型の記述体であったことが判明する。エンディングは3種類あり、最良結末では主人公が新しい端末を封印する代わりに、街の子どもたちへ“遊び方”だけを残して去る。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
主人公は名前変更可能な青年継承士で、初期名は資料上「レオ」とされるが、パッケージ内の小冊子では「L-7」とも記されている。武器は短剣ではなく、故障したカセット端子を模した“接点杖”である。
設定画では無口な人物として描かれているが、実際には選択肢の半分以上が主人公の独白で埋まるため、シリーズ中でも特に饒舌な主人公とみなされている。
仲間[編集]
仲間キャラクターとしては、記録係の少女、鍛冶師の老人、そして機械鳥のが登場する。とくにQ-12は、戦闘時に“くちばしでメニューを示す”だけの補助役であるにもかかわらず、国内人気投票で2位になったことで知られている。
ミラは会話分岐の中心人物であり、彼女の好感度を上げると町の看板の誤字が減る。これは演出として非常に地味であるが、プレイヤーの間では「世界が整う」と表現された。
敵[編集]
敵勢力はと呼ばれる修道騎士団で、記録を消すことで未来を保護するという過激な思想を持つ。彼らの幹部は全員が書記官出身であり、各地で“余白の増殖”を引き起こしていた。
最終ボスの《空欄伯》は、攻撃のたびに説明文だけが増えていく珍しい仕様を持ち、倒すにはプレイヤーがセーブ画面で5分以上待機しなければならない。この演出は発売当時から賛否が分かれたが、後年は「メニュー画面を物語化した先駆」として評価された。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、技術と記憶が同義とされ、古い機械ほど“正しい歴史”を保持していると信じられている。この思想はと呼ばれ、王国の学校では算数の代わりに「継承順序」を教えていた。
ゲーム中の主要用語に「端末年輪」「保存税」「二重起動」がある。とくに保存税は、1回セーブするごとに宿屋代とは別に王国へ納める小銭で、資金不足のプレイヤーを静かに追い詰めた。なお、開発初期版では“保存税率”が季節で変動していたが、これは行政シミュレーション色が強すぎるとして削除されたという。
開発・制作[編集]
制作経緯[編集]
制作は、ノーザン・クロウ社の小規模企画室で始まった。当初はカードゲームとして提案されたが、三崎玄一が「継承の感覚は触れるよりも持ち歩くべきだ」と主張し、携帯機向けRPGへ転換された。
試作版は社内で“箱庭の墓”と呼ばれたが、これは街の縮尺が異常に小さく、住民が1歩で隣国へ移動できたためである。後に内の貸会議室で行われた最終調整で、地図サイズが現実的な1/3に修正された。
スタッフ[編集]
プロデューサーの三崎玄一は、以前の企画を担当していた人物で、説明書をゲーム本体より重視する姿勢で知られていた。ディレクターのアグネス・P・ヴァンデルは出身とされるが、社内記録の一部では生まれとされており、経歴に食い違いがある[2]。
音楽の佐伯淳也は、限られた4音同時発声の中で“沈黙のテーマ”を作ることに成功した。特に終盤曲《眠らない端子》は、発売直後に学校の放送室で流されたという噂が広まったが、確認できる一次資料は少ない。
音楽[編集]
サウンドトラックは全28曲で構成され、標準のBGMに加えて、端末の蓋を開閉した回数に応じて変調する隠しトラックが4曲存在する。もっとも有名なのは《継承の朝》と《霧の保守点検》で、どちらも短い旋律を反復するだけでありながら、異様に耳に残る。
発売後には非売品のカセットテープ版が一部店舗で配布され、ジャケットには「再生回数が増えるほどデータが減る」と注意書きがあった。これは冗談半分の文言と見られているが、実際にテープの劣化をゲームの記憶喪失演出に重ねた資料が残っている[3]。
他機種版・移植版[編集]
には携帯再生機『ルミナス・カード』向けの再編集版が発売され、戦闘テンポが改善された一方で、主人公の独白が1.7倍に増量された。さらにには相当の配信版が出たとされるが、実際には配信ではなく“館内設置型再生端末”だったとする説もある。
の『レガシィ・メモリアルコレクション』では、操作性の改良よりも当時の説明書の紙質まで再現したことが話題となり、海外版ではインクの匂いまで再現するオプションが付いた。これらの版はすべて微妙にUIが異なり、プレイヤーの間では「どれが本物か分からない移植」として語られている。
評価[編集]
本作は発売初週に9.2万本を記録し、最終的に全世界累計187万本を突破した。とくに相当の新創造部門で特別賞を受賞したことから、商業的成功だけでなく実験作としても評価された。
一方で、遊ぶ者の年齢や初回プレイ時刻によって難度が変動するため、レビューは大きく割れた。国内誌『月刊ソフトリユニオン』では10点満点中8.5点がつけられたが、別の誌面では「説明書を読まない者には向かない」として6点台に留まっている。海外では“portable nostalgia simulator”と呼ばれ、懐古主義の先端例として研究対象になった。
関連作品[編集]
続編に『レガシィII: 失われた端末』、外伝に『ミラ・ノウズの保存日誌』がある。いずれもの“記憶継承”要素を受け継ぐが、後者はほぼ日常系の会話劇であり、戦闘が存在しない。
また、シリーズ一作目にあたる本作の人気を受けて、短編アニメ『継承士レオの午後』が制作された。これにより、ゲーム作品でありながらされたと説明されることが多いが、実際にはラジオドラマ映像版に近い形式だった。
関連商品[編集]
攻略本『ゲームボーイレガシィ 完全保存継承書』は、通常の攻略に加え、章ごとの感情値の上げ方まで細かく載っており、当時のファンの間では事実上の副読本となった。また、書籍『レガード王国年表集』は設定資料集として刊行されたが、巻末にある地図が本編より1枚多く、編集部が「誤植ではない」と主張したことでも知られる。
そのほか、サウンドトラックCD、端子型しおり、保存税用の模擬通貨セットなどが発売された。なかでも“継承誓約書メモ帳”は、表紙に偽の署名欄が印刷されていたため、学校での貸し借りに使われることがあったという。
脚注[編集]
[1] 作品初期企画書では『記憶継承RPG 仮題GBL』と記されていた。 [2] 社内人事録の写しと海外版取扱説明書で表記が異なる。 [3] ただし、配布元の店舗名は現在確認不能である。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 三崎玄一『継承を持ち歩く—ゲームボーイレガシィ企画史—』ノーザン・クロウ出版, 1998.
- ^ 佐伯淳也『4音で語る物語音楽』月光堂, 2002.
- ^ Selma K. Reeve, "Portable Memory and the Ritual RPG", Journal of Interactive Fiction Studies, Vol. 12, No. 3, 2004, pp. 44-67.
- ^ 日野辺透『携帯機における継承演出の研究』東亜ゲーム文化研究所, 2001.
- ^ Margaret A. Thornton, "Saving Is Not Saving: Data Rituals in Late-90s Handheld Software", New Albion Review, Vol. 8, No. 1, 2006, pp. 101-129.
- ^ アグネス・P・ヴァンデル『白紙化する世界とRPGの責任』北海叢書, 1999.
- ^ 高杉雅也『接点杖の設計と誤作動美学』プレステージ社, 2003.
- ^ 小田島光『ゲームボーイレガシィ完全保存継承書』ファントム書房, 1997.
- ^ I. M. Calder, "On the Taxation of Memory in Pocket Systems", Scandinavian Journal of Ludology, Vol. 5, No. 2, 2008, pp. 77-95.
- ^ 編集部『レガード王国年表集』霧印社, 2014.
外部リンク
- ノーザン・クロウ社 公式アーカイブ
- レガード王国史料館デジタル館
- 継承ゲーム保存協会
- GBLファンメモリアル掲示板
- 月刊ソフトリユニオン 記事再録庫