コケコケコーラ
| 名称 | コケコケコーラ |
|---|---|
| 別名 | 鶏殻コーラ、二重発酵コーラ |
| 発祥国 | 架空の共和国コーリス |
| 地域 | コーリス沿岸部、東京都の一部飲食店で流行 |
| 種類 | 発酵飲料、保存食系料理 |
| 主な材料 | 鶏卵の殻、黒糖、クローブ、山椒、海塩、麦芽水 |
| 派生料理 | コケコケコーラ煮、泡立ちソルベ、コーリス風冷製スープ |
コケコケコーラ(こけこけこーら)は、の殻をとでさせたのである[1]。現在では、辛味と甘味が同居する独特の風味をもつ保存食系飲料として広く親しまれている[1]。
概要[編集]
コケコケコーラは、鶏卵の殻を主体にした独特の発酵液に、黒糖と香辛料を加えて仕上げる飲料である。見た目は淡い琥珀色から濁った褐色まで幅があり、強い炭酸感を模した泡が立つことから、一般に「飲む保存食」とも呼ばれる。
名称にを含むが、実際には清涼飲料というより、末にコーリス沿岸の塩蔵技術から派生した滋養飲料であるとされる。現在ではの一部の創作料理店や、の港湾地区に残る移民料理店で限定的に提供されている[2]。
語源/名称[編集]
「コケコケ」は、仕込み時に殻を割る音が連続して聞こえることに由来するとする説と、発酵槽の表面に生じる小泡を鶏の鳴き声に見立てたものとする説がある。後者はの紀要で支持されているが、異説も多い。
「コーラ」はで「煮詰めた液」を意味する古語に由来し、のちに後半の交易港で炭酸飲料風の命名が流行した際に現在の表記へ固定されたという。なお、の老舗料理研究家・渡辺精一郎は、名称が「鶏の殻で作るコールラー」から転訛した可能性を指摘しているが、裏付けは乏しい[3]。
歴史[編集]
成立期(【1780年代】 - 【1820年代】)[編集]
起源は、沿岸の塩田監督官だったマルガレーテ・ノーリンが、余剰の卵殻を捨てずに黒糖水へ浸したことに始まるとされる。卵殻の表面に付着した微量の海塩と麦芽菌が、湿潤な倉庫内で予期せぬ発泡を生んだことが、最初の「飲める保存液」となった。
には港湾労働者の間で、暑気払いとして小壺単位で売買されるようになった。なお、この時期の記録では、1日に平均3.8リットルが消費され、雨期には需要が通常の2.4倍に達したとされる[4]。
工業化期(【明治】相当期 - 【1930年代】)[編集]
、コーリス商会の技師ヘルムート・アンドレーは、殻を微粉化してから二段発酵させる手法を考案し、現在の基礎を作ったとされる。この工程により、苦味が抑えられ、代わりに香辛料の香りが立つようになった。
には経由で日本へ試験輸入され、付近の洋食店で「異国の卵汁」として提供された記録がある。ただし、当時の新聞では「飲むには勇気が要る」と評され、定着率は低かった[5]。
普及期(【1950年代】 - 現在)[編集]
戦後になると、コーリス出身の移民がやで提供を始め、1990年代にはエスニック料理の文脈で再評価された。特にので出品された瓶詰め製品は、試食客の半数が「最初は甘く、後から磯の香りが来る」と回答したという。
一方で、に食品監視課が「殻由来原料の表示がわかりにくい」として注意喚起を行ったため、現在ではラベルに「卵殻発酵飲料」と併記されることが多い。これにより、かえって都市部の専門店での人気が高まったとされる[6]。
種類・分類[編集]
コケコケコーラは、発酵時間と香辛料の配合比によっていくつかに分類される。最も一般的なのは「標準型」で、黒糖を強めに効かせた甘辛い味わいを特徴とする。
「港湾型」は海塩の使用量が多く、塩味が前面に出る。これに対して「宮廷型」は後半にで改良されたとされ、クローブと八角が強く、デザートに近い香りをもつ。
また、にのみ仕込まれる「氷室型」は、低温発酵により炭酸感が穏やかで、スープに近い扱いを受けることがある。研究者の間では、これらを飲料ではなく「液体発酵総菜」とする分類も提案されているが、一般には受け入れられていない。
材料[編集]
基本材料は鶏卵の殻、黒糖、海塩、麦芽水、クローブ、山椒である。卵殻は産地によって硬度が異なるとされ、産の白殻が最も好まれるが、産の赤味を帯びた殻を用いるとコクが増すという。
仕込みでは、殻を洗浄したのち、昼夜を分けて二度にわたり乾燥させる工程が重視される。発酵促進のためにの内側へ古い麦酒の澱を少量塗る方法が伝わるが、これは「祖母の記憶にしか残っていない工法」とも呼ばれ、要出典とされることがある。
なお、家庭版では黒糖の代わりにを用いる例もあるが、風味が繊細になりすぎるため、商業生産ではほとんど採用されない。
食べ方[編集]
コケコケコーラは本来飲用であるが、現在では小皿に注いで前菜として食べるように供されることも多い。小さな陶器片で殻をすくい、液体と一緒に口へ運ぶのが式とされる。
もっとも一般的なのは、冷やしてからの皮を軽く絞って香りを立たせる飲み方である。また、の一部店では、氷を入れず常温で提供し、燻製魚や白パンと合わせる。食後に口内へ残る山椒由来の痺れが好まれるため、酒肴として注文されることもある。
一方で、発酵の進んだものは泡立ちが強く、開栓時に勢いよく噴き出すことがある。このため、専門店では「瓶を三回回してから一拍置く」作法が定められており、観光客が最も戸惑う点でもある。
文化[編集]
コケコケコーラは、コーリスでは収穫祭と深く結びついた飲料であり、卵殻を割る音が豊作の前兆と考えられている。毎年の「殻起こしの日」には、広場で最大1,200本の試飲瓶が並び、子ども向けには辛味を弱めた白色版が配られる。
日本では、周辺の創作料理店が広めたことで知られている。とくににのイベント会場で実施された「港の発酵博覧会」では、来場者の68%が「名前の響きで頼んだ」と回答し、内容を聞いたあとも43%が注文を取り消さなかったという。
また、文学作品にも散見される。の短編『殻の向こうの炭酸』では、主人公がコケコケコーラを飲みながら家族の沈黙を解凍する場面が象徴的とされる。なお、同作に登場する「第三の泡」は実在しないとされるが、ファンの間では半ば常識になっている[7]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ マルガレーテ・ノーリン『コーリス沿岸発酵史』コーリス王立出版局, 1898, pp. 41-63.
- ^ 渡辺精一郎「卵殻発酵飲料の比較文化論」『東洋食文化研究』第12巻第3号, 1972, pp. 114-129.
- ^ Helmut Andrey, "Salted Shells and Sweet Ferments", Journal of Maritime Foodways, Vol. 8, No. 2, 1911, pp. 201-225.
- ^ 高橋みどり『港町の瓶詰め文化』みなと文庫, 1984, pp. 88-104.
- ^ L. B. Carmichael, "The Cocococola Question in Urban Taste Markets", Gastronomy Review, Vol. 27, No. 4, 2003, pp. 17-39.
- ^ 松浦久子「殻由来飲料における泡立ちの制御」『発酵工学月報』第44巻第7号, 1996, pp. 3-18.
- ^ 『東京国際食品見本市記録集 1997』日本食展示協会, 1998, pp. 155-161.
- ^ S. H. Ellington, "Fermented Eggshell Tonics of the South Seas", Proceedings of the Royal Society of Culinary Anthropology, Vol. 3, No. 1, 1949, pp. 77-92.
- ^ 柴崎霧子『殻の向こうの炭酸』港北書房, 2012, pp. 9-57.
- ^ 石井隆太『飲める保存食の民俗誌』新潮社, 2009, pp. 233-248.
- ^ 宮本沙耶「コケコケコーラの表示問題と消費者認知」『食品行政研究』第18巻第2号, 2021, pp. 66-74.
外部リンク
- コーリス王立民俗学会アーカイブ
- 港町発酵博物館
- 卵殻飲料研究センター
- 横浜創作料理データベース
- 世界瓶詰め料理協会