ジョン&ポール
| 活動形態 | コント中心の二人組 |
|---|---|
| 結成年 | 1996年 |
| 活動拠点 | (ゾーン2〜3の小劇場が多い) |
| 芸名由来 | の楽曲・人物名からの折衷 |
| 主な持ちネタ | 言い間違いを物語化する即興コント |
| 公式略称 | J&P(初期のポスターで使用) |
| 代表的な劇場 | The Lantern Basement(架空) |
| 受賞歴 | 1999年『小道具王決定戦』金賞など |
ジョン&ポール(じょん あんど ぽーる)は、日系人同士のコントを中心に活動した架空の漫才・コメディコンビである。芸名の由来はのとに求められたとされる[1]。その演目は「笑い」を超えて、当時の移民コミュニティの距離感や言語感覚にまで影響したと語られている[2]。
概要[編集]
は、主にコントの舞台で知られた二人組であり、台詞のテンポよりも「間」と「誤解の救済手順」に特徴があるとされる。日本語と英語の混線を、聞き手が修復できる“翻訳ゲーム”のように扱う点が、観客参加型の笑いとして評価された[1]。
成立の経緯は複雑である。日系家庭出身の二人が、の学内サークルから派生し、最初は「友だち同士の即興劇」として始めたのち、1996年に芸名として「ジョン&ポール」が定着したとされる[3]。なお、この芸名が単なる音の良さではなく、当時の“二言語アイデンティティ”の象徴として機能した点がしばしば強調される[2]。
作風は一見軽妙であるが、実際には移民の生活音を細部まで収集して作られていたと語られている。たとえば、初期の公演では笑い声の位置を計測するために、客席の拍手マップを作成していたという記録が残る[4]。ただし、これが実測されたかどうかは、関係者の間でも意見が割れている。
名称と由来[編集]
芸名「ジョン&ポール」の設計思想[編集]
芸名の由来については複数の説がある。代表的な説では、二人が小学校で購読していた関連の児童向け読み物に出てくる「ジョン」と「ポール」という名前の“反復の気持ちよさ”に着目したとされる[5]。その後、二人は「どちらが先に言われても、言い終わった方が勝ち」というルールで練習を重ね、口調が揃う瞬間を探したという。
一方で、より細かい逸話も存在する。1996年春、即興練習の最中に“ジョン”が1回だけ早口になり、その分岐を直すために台詞を「8分割」へ再編集したところ、結果として“&”の間が最も自然に生まれたとされる[6]。この「&の間」は後年までトレードマークとされ、観客は“間違える前の間”を笑うようになったと記述されている。
ただし、どちらの説がより妥当かについては決着していない。ある編集者は、芸名が音楽史の引用というより、日系の家庭での呼び名の練習法に由来すると書いたとも伝えられる[7]。要出典に近いとされるが、当時の公演パンフレットに“本番前の呼吸同期”という文言が見つかったことが根拠として挙げられることがある。
表記ゆれと商標騒動(風)[編集]
表記としては「ジョン&ポール」「John&Paul」「J&P」のようなゆれが見られたとされる。最初期のローカルポスターでは、新聞折り込みの都合で「John & Paul」を縦書きにした結果、記号の位置がずれ、「John& Paul」と見える版が出回ったという[8]。
このことが、1999年にロンドン市内の雑貨チェーンから“お揃いステッカー”の商談に発展した。書面上の正式名称が一文字違いだったため、担当者が「&の空白に課税できるか」を本気で検討した、という筋書きが関係者の間で語られている[9]。ただし、この話はのちに“税務冗談”として再構成された可能性がある。
一方で、実務面では確かに表記統一の動きがあったとされる。2001年、ロンドンの(架空)が、舞台ロゴの使用規程を整えたと報告されている[10]。そのため、以後の公式資料では「ジョン&ポール」に寄せられる傾向が強まった。
活動史[編集]
前史:即興劇サークルからの分岐[編集]
二人の前史は、の学生向け即興劇サークル「Lantern Improvisation Society」にあるとされる。ただし、この名称は大学公式資料では確認されないとも言われ、代替資料として“学内掲示の控え”が回覧されたという証言がある[11]。それでも、1993年ごろから日本語と英語の発音練習を即興台詞に混ぜる試みが続いていた点は共通している。
1995年には、二人がそれぞれ別の演者として小劇場に立っていた。そこで共通の客層だった日系の初学者が、終演後に「笑いの意味を辞書にしてほしい」と要望したことが、台本の作り方を変えたとされる[3]。つまり、ジョークを先に出すのではなく、誤解が発生する“説明の余白”を先に計算する方向へ舵を切った。
この頃、練習ノートには妙に具体的な数が残っていると伝えられる。あるノートでは、リハーサルでの沈黙を「1拍(0.6秒)」「2拍(1.2秒)」「3拍(1.8秒)」に分類し、観客の反応をチェック欄に記録したとされる[12]。ただし、ノートの実物は現存確認が取れていないとされる。
1996〜2003年:小劇場での拡散と“言語修復コント”の完成[編集]
1996年に芸名が定着した後、二人は週末ごとにロンドンの小劇場を巡回したとされる。特に周辺では、通りの音が舞台裏に入り込みやすく、環境音を“会話の第三者”として利用できたという[13]。この時期の代表的なコントでは、登場人物が謝る順番を英語と日本語で逆にすることで笑いを作ったと説明される。
1999年、彼らは『小道具王決定戦』で金賞を獲得したとされる。主題は小道具そのものではなく、「手渡しの長さ」を測るパフォーマンスだった。審査員が“差し出し開始から受け取りまで”を3回測定し、平均が0.97秒を超えると減点だったと記録されている[14]。この数字は後に、彼らのコントの間の哲学を象徴する引用句になった。
2001年には、英語圏向け番組に出演し、日系の移民が“正しい発音”に追い詰められる様子を、滑稽さと救済の両面で描いたとされる[15]。ただし、この番組での発言が一部で“自己憐憫”に見えるとして批判も受け、翌年の舞台構成では謝罪台詞の比率を下げたという記述がある[16]。
社会的影響[編集]
の影響は、単なる笑いの範囲を超えたとされる。とりわけ、日系移民の家庭で子どもが英語を学ぶ際、「間違えた瞬間に笑われる」ことが恐怖になる場合があるが、二人のコントでは“間違いが修復されるまでが一つの物語”として描かれた[17]。結果として、言語学習の場における心理的コストが下がったとの報告がある。
また、ロンドンの(架空)で行われたワークショップでは、参加者に「誤解を3つ作ってから直す」ルールが提示されたとされる。実施期間は合計で6週間、毎回の台本作成は45分、発表は10分という時間割が配られたという[18]。ただし、配布資料の所在は確認困難とされる。
さらに、彼らは舞台上の沈黙を“音声情報”として扱ったため、聴覚障害者向け字幕のタイミングにも波及があったと語られている。ある字幕編集者は、「ジョン&ポールの間には字幕の置き場がある」と述べたとされる[19]。この見解は賛否両論であるが、制作現場での“読みの速度”に対する意識が変わった点では一致している。なお、こうした影響が実際に測定されたかどうかは、媒体によって説明が揺れている。
批判と論争[編集]
批判として多いのは、“二言語のズレ”をネタにすることが、観客の側に固定観念を残す危険があるという指摘である。特に、2010年以降に再評価された公演映像では、当時は笑いとして受け止められた誤解が、現代では差別的に見える可能性があると論じられている[20]。
また、彼らの小道具の扱いが過剰に物理的だったため、安全面の懸念が出たという。『小道具王決定戦』のステージで、金属製の“謝罪プレート”を落下させる演出があったが、観客の一部が「音が大きすぎた」とクレームしたとされる[21]。ただし、当時の会場規格上は許容範囲に収まっていた可能性もあり、真相は不明である。
さらに、最も有名な“嘘の論争”としては、二人がビートルズの曲名を公演の台詞に一文字ずつ埋め込んでいたという噂がある。ファンが韻や文字数を解析して、ある回では「合計27音節が一致した」と主張した。にもかかわらず、その解析手法が恣意的だと批判され、最終的に「数字は面白さのための装飾だった」と関係者が語ったという[22]。この種の“数字遊び”は、彼らの作風そのものに似ているとして、議論が長引いた。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ クリストファー・ホール『二言語アイデンティティの舞台技法』Cambridge Academic Press, 2004.
- ^ 中村絹代『英語で笑う家族史:日系コメディ入門』白金書房, 2007.
- ^ Dr. Margaret A. Thornton, “Silence as Subtext in British-Japanese Duo Comedy,” Vol.12 No.3, Journal of Performance Linguistics, pp.41-58, 2002.
- ^ 山田健太郎『小道具の間に宿るもの:舞台計測メモリー』ロンドン劇場研究叢書, 2001.
- ^ Eleanor Davies, “Branding the Ampersand: Stage Names and Micro-Spacing,” Vol.5 No.1, International Review of Stage Semiotics, pp.10-22, 2005.
- ^ 佐藤明彦『移民コミュニティと笑いの翻訳ゲーム』港北大学出版局, 2012.
- ^ John P. Mercer, “The Lantern Basement Phenomenon,” Vol.9 No.2, Theatre Notes & Oddities, pp.77-96, 1999.
- ^ 福田真理『字幕の速度は沈黙を変える』字幕研究会, 2011.
- ^ K. Williams『Improvisation Society Index(第3巻第7号)』Oxford Fringe Press, 1998.
- ^ (書名が微妙におかしい)『ポールの呼吸同期学』Birmingham University Press, 1999.
外部リンク
- Lantern Basement Archive
- J&P Rehearsal Notes(推定)
- Ampersand Spacing Lab
- British-Japanese Performance Forum
- Camden Street-Noise Collection