ジョーズ16
| 作品名 | ジョーズ16 |
|---|---|
| 原題 | Jaws 16 |
| 画像 | Jaws16_poster.jpg |
| 画像サイズ | 300px |
| 画像解説 | 第4回リバイバル上映告知ポスター(偽物が出回ったことで有名) |
| 監督 | 渡瀬タダシ |
| 脚本 | 渡瀬タダシ |
| 原作 | 海洋災害調査ノート『16号転覆記録』 |
| 原案 | 水辺工学研究会 |
| 製作総指揮 | 朝霧コウ(鯨歯映画スタジオ代表) |
| ナレーター | 有馬リエ |
| 製作会社 | 鯨歯映画スタジオ/潮騒総合制作 |
| 配給 | 大潮配給 |
| 公開 | 1987年7月18日 |
『ジョーズ16』(じょーずじゅうろく)は、[[1987年の映画|1987年7月18日]]に公開された[[鯨歯映画スタジオ]]制作の[[日本]]の[[アニメーション映画]]である。原作・脚本・監督は[[渡瀬タダシ]]。興行収入は92億円で[1]、[[日本アニメ映画賞]]を受賞した[2]。
概要[編集]
『ジョーズ16』は、近未来の沿岸都市を舞台に、人工生物兵器と誤認された“観測用の巨大生体”を巡る騒動を描くアニメーション映画である。原作・脚本・監督は[[渡瀬タダシ]]であり、海難事故の公的記録と民間の怪談が混線した筋立てとして知られている。
制作に際しては、当時の[[運輸省]][[海難審判]]の旧式アナログ記録(海流図の裏面走り書き)を、映像資料として流用したとされる。これにより、観客が“実在の事故に似すぎている”と感じる細部が意図的に盛り込まれたと、後年のインタビューで[[朝霧コウ]]が語った[3]。
本作は娯楽映画として興行的に大ヒットし、公開2週目の週末動員が計算上「86,314人」で一致したという記録が残っている。ただしこの数字は、劇場の整理券発行システムが停止していた日を含むため、集計方法に疑義があるとされた[4]。
あらすじ[編集]
舞台は瀬戸内に似た海峡都市[[潮端市]]。市は港湾拡張事業に伴い、海流監視のための観測ブイを量産していた。ところがある夜、ブイが示す反応は“捕食パターン”に似ており、夜間航路の調整を担当する[[沿岸警備庁潮端分室]]は、報告書に「ジョーズ16」とだけ手書きで追記してしまう。
海洋生物学者の[[穂刈ミナト]]は、その反応が生体の動きではなく、観測用電波の位相に生じた“幻のうねり”だと主張する。一方で、港の冷却水を引く発電所では、取水口に「16回分の未確認振動」が刻まれ、作業員が理由のない咳に襲われたと証言された。穂刈は、市のデータが加工されている可能性を示唆し、[[大潮配給]]の企業スポンサーでもある海運組合が情報統制を進めているのではないかと疑う。
物語はクライマックスで、観測ブイ群が“集合体”として海底を移動し、巨大な口の形に見える泡柱を形成する場面へと収束する。穂刈はそれを「口ではなく、潮の折り返しである」と説明するが、実際に被害が出た以上、都市は“恐怖の説明”を必要としていた。最後に、ジョーズ16は捕食者として終わるのではなく、観測装置が不意に呼び込んだ“海の癖”として再定義される。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
[[穂刈ミナト]]は海洋物理を専門とする研究者である。彼は観測データの位相ずれを“人格化”することで市民の恐怖を解こうとするが、作中ではその計算が1桁違いで示される場面があり、視聴者が修正を待つように演出される。
[[七条マコト]]は[[沿岸警備庁潮端分室]]の巡査補である。現場主義の性格で、口頭報告のたびに「16」を強調する。のちに判明するが、彼のメモは同じ鉛筆を使い続けた結果、削れ方が偶然16の形を作っていたとされる。ただしこの“偶然”を渡瀬は「意図したことにしてくれ」とスタッフに言ったと記録がある[5]。
[[有馬リエ]](劇中ではナレーション役)が登場人物として扱われることもある。彼女は被害の統計を読み上げるが、読み上げる数値が回を追うごとに変化し、“観客が信じた数字だけ世界が補正される”かのような演出となっている。
その他[編集]
港湾企業[[潮騒重機]]の広報[[橘サラサ]]は、事故報道を“観光コンテンツ化”しようとする。劇中で彼女が配るチラシには「16分で学べる海の不思議」と書かれているが、配布枚数が「16万3,120枚」と細かすぎるため、なぜその数字が選ばれたかが議論になった[6]。
海運組合の顧問[[藤代カン]]は、資料の出所をぼかすことで混乱を長引かせた人物として描かれる。ただし終盤では、実は彼が最後のデータ欠落(欠損率0.7%)を埋める鍵を握っていたことが示唆される。
声の出演またはキャスト[編集]
穂刈ミナトには[[佐久良ユウト]]、七条マコトには[[霧島ナギ]]、橘サラサには[[鴫井ユズハ]]がそれぞれ声を当てた。ナレーションは[[有馬リエ]]が担当している。
キャストの配役決定過程では、声優オーディションの一次審査に「“濁り”の少ない発音”ができるか」を測る独自ルールがあったとされる。なお、この“濁り”の測定基準として、当時のレコーディングスタジオの湿度計が用いられたという証言がある[7]。
スタッフ[編集]
映像制作は[[鯨歯映画スタジオ]]、共同制作に[[潮騒総合制作]]が参加した。製作委員会には、[[大潮配給]]、沿岸保全基金、海難データ復元機構などが名を連ねたとされるが、公式記録には記載が途切れている箇所がある[8]。
音楽は作曲家[[久我ノリオ]]が担当した。海の低周波を模した合成音に、当時流行していた家庭用テープの“伸び”を再現する加工を加えたとされ、劇中の緊張場面で不気味な没入感が増幅されたと論じられている。
美術監督は[[宮戸セイジ]]であり、港の標識は実在の旧式規格を参考にしたという。標識の番号が一部、現行規格と食い違っていることが後に指摘されたが、渡瀬は「食い違うことで都市が“古い嘘”を抱えたままになる」と説明した。
製作[編集]
企画/制作過程[編集]
企画は1984年に始まったとされる。きっかけは、[[運輸省]][[海難審判]]の資料を閲覧した渡瀬が、海流図の余白に手書きで「ジョーズ16」の語が出てきたと主張したことにある。最初は単なる走り書きだったが、制作側は“捨てられた暗号”として再解釈し、主人公たちが読み解く構造へと転換した。
なお、この語がどの資料のどのページに由来するかは、台本段階では特定されなかった。制作日誌では「欠頁」「読めないインク」「再撮影済」などの曖昧な語が繰り返され、のちに編集者が「要出典」と書きかけた痕跡が見つかったとされる[9]。
美術/CG・彩色/撮影[編集]
当時は3DCGが本格普及前だったため、巨大生体の“口の形”は水彩の滲みとセル画の輪郭線を重ねて作られた。制作スタッフは、滲み量を「湿度の差で3段階」とし、結果を比べるためにテストセルを合計27枚描いたと述べた。
彩色では、海面の色を「藍13号+黒粘土1滴」で統一したという記録がある。もっとも、この配合は現場の塗料管理番号と噛み合わないため、伝達ミスではないかという疑いが持たれている。
音楽/着想の源[編集]
久我ノリオは、音楽の着想を“港の音”に求めたとする。特に[[潮端市]]の夜間に聞こえるサイレンが「1,6倍のうねり」で聞こえるという体験談が制作の原点になった。
しかし同じサイレンを録音し、波形解析した結果、実際の倍は1.59程度だったという内部メモが残っている。渡瀬はこれを「嘘を混ぜるための誤差」と言い、あえて数値を切り上げて“1.6”として台本に固定した[10]。
興行[編集]
公開初週は全国62館で上映され、週末の平均稼働率が「74.8%」を記録したと報じられた[11]。宣伝面では、ポスターのコピーに「噛まれるのは海ではない」という文言が使われ、商業施設が“安全”を売りにする時代の空気を逆なでして注目を集めた。
また、封切り同時期にリバイバル上映の前売券が先に販売され、問い合わせが殺到した。公式にはリバイバルは翌年予定とされていたが、実際には一部の劇場で“誤った日付入りチケット”が流通し、その回収のためにスタッフが開演15分前まで奔走したという。
テレビ放送では視聴率が21.4%を記録したとされる。ただしこの数字は関東地区のみの集計だったと後日修正され、放送局の資料公開の遅れが批判された。
反響[編集]
批評家からは、海難事故の“説明可能性”を揺らす手法が評価された。一方で、観測データのように見える演出(欠損率、位相差、検証回数など)が“技術の見せ物”に寄っているとして疑問視された。
受賞面では[[日本アニメ映画賞]]で作品賞・作曲賞を獲得したとされ、特に音楽の評価が高かった。さらに関連して、作品内で提示される“ジョーズ16の定義”が、後年の学会ポスターに引用された例がある[12]。もっとも学会側は「映像を参考にした比喩」であり、定義そのものの採用ではないと釘を刺している。
売上記録としては興行収入92億円に加え、配給収入が「58億3,200万円」と報告された。ただし配給の内訳資料が部分的に欠けており、経理資料の監査が行われたのは翌年度だったとされる。
テレビ放送[編集]
テレビ放送では、作品中のナレーションが再編集され、海の低周波に相当する場面の音量が一律に下げられたとされる。その結果、緊張場面の“息が詰まる”感覚が薄れたという苦情も出た。
その後、デジタルリマスター版により、当初の音圧により近い形へ調整されたと報告された。リマスター時の基準として、旧フィルムの時間軸を「1コマ=1/24.06秒」で補正したという。ここでの値は通常の24fpsと異なり、“変則的に嘘をならべるための補正”として一部で話題になった。
関連商品[編集]
映像ソフト化は[[VHS]]と[[レーザーディスク]]で行われ、特典として“ジョーズ16観測ハンドブック”が同梱された。ハンドブックには、作中で登場する位相差の表が掲載されているが、表の左端に印刷ずれがあり、そこだけ読めるように別用紙で補正したとされる。
また、サウンドトラックは久我ノリオの代表作として長く流通した。主題歌は[[『潮端の夜を噛む』]]で、歌詞カードの2番サビだけが意図的に空白になっているとファンの間で語られた。のちに配信版でその空白が“公開済みデータ欠損”を示す記号で埋められ、最初のファンの熱狂が再燃した。
派生作品として、同年に短編アニメ『観測ブイの16分』が制作され、映画の“前日譚”をより科学っぽい口調で描いたとされる。
批判と論争[編集]
批判としては、海洋災害の説明をエンターテインメント化しすぎた点が挙げられた。とくに、観測ブイの設計数を“16基で十分”とする台詞が、後に実務の関係者から「根拠不明」として取り上げられた。
一方で擁護側は、映画は科学ではなく“科学に似た恐怖”を描く娯楽であると主張した。渡瀬自身も、インタビューで「真実は物語の外で働く。中では数字を噛ませるだけだ」と述べており、数字の微妙なズレを意図として扱っている。
また、宣伝で使われた偽ポスター問題は、映画資料の管理体制の甘さとして糾弾された。ただし、偽ポスターの一部がファンが持ち寄って“本物らしい誤差”を再現していたことが判明し、結果としてファン文化に転化したとする見方もある。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡瀬タダシ「『ジョーズ16』における観測の嘘と音圧の設計」『アニメ映画技術年報』第12巻第3号, 1988年, pp. 41-67.
- ^ 朝霧コウ「興行収入は“数字の偶然”で伸びる:鯨歯映画スタジオの制作戦略」『配給経営研究』Vol.8 No.1, 1990年, pp. 12-29.
- ^ 久我ノリオ「低周波を擬似的に再現する合成音響:潮端市モデル」『音響建築ジャーナル』第5巻第2号, 1987年, pp. 88-103.
- ^ 霧島ナギ「声優の“濁り”は恐怖になる:オーディション基準の実装」『アニメ声の記録』第2号, 1989年, pp. 5-18.
- ^ 宮戸セイジ「港湾標識のデザイン史と映画美術:旧式規格の採用理由」『美術史フォーラム』Vol.3, 1991年, pp. 77-95.
- ^ 佐久良ユウト「研究者役の間:一桁違いを演技に変換する方法」『俳優談義』第9巻第4号, 1992年, pp. 121-134.
- ^ 『日本アニメ映画賞 受賞作品記録集』日本アニメ映画賞事務局, 1988年, pp. 203-207.
- ^ 藤代カン「欠損率0.7%の意味:台本修正の裏側」『映像編集監査報告』第1巻第1号, 1988年, pp. 33-50.
- ^ Tadashi Watas e「Phase Drift as Narrative Device in Jaws 16」『Journal of Applied Cel Animation』Vol.16 No.2, 1989年, pp. 201-219.
- ^ 潮端市史編纂委員会『潮端市と海難—観測技術の系譜(誤植再版)』潮端市教育出版, 1979年, pp. 310-322.
外部リンク
- 鯨歯映画スタジオ公式アーカイブ
- 大潮配給 ディスカッションルーム
- 潮騒総合制作 資料室
- 日本アニメ映画賞 公式データベース
- ジョーズ16ファンジン共同編集所