スーパーSASUKEアスレチックメーカー
| タイトル | スーパーSASUKEアスレチックメーカー |
|---|---|
| 画像 | SuperSASUKEMaker_boxart.png |
| 画像サイズ | 240px |
| caption | 北米版パッケージのイメージ |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム |
| 対応機種 | レトロX、レトロX2、ルナポケット |
| 開発元 | 霧島デジタル工房 |
| 発売元 | 鳳凰ソフト |
| プロデューサー | 桐生慎一郎 |
| ディレクター | 南條ユカリ |
| 音楽 | 三宅和真、C. L. Forrester |
| シリーズ | SASUKE Makerシリーズ |
| 発売日 | 1998年11月12日 |
| 対象年齢 | 12歳以上推奨 |
| 売上本数 | 国内累計84万本 |
| その他 | オンライン対戦は後年追加 |
『スーパーSASUKEアスレチックメーカー』(Super SASUKE Athletic Maker)は、1998年に日本の霧島デジタル工房から発売されたレトロX用アクションシューティングゲームである。障害物番組風のアスレチックを自作し、他人の挑戦を観戦しながら攻略することを目的とした作品で、シリーズの第1作目にあたる[1]。
概要[編集]
『スーパーSASUKEアスレチックメーカー』は、霧島デジタル工房が開発し、鳳凰ソフトより1998年に発売されたアクションシューティングゲームである。プレイヤーはアスレチック番組の設計者兼挑戦者として、足場、回転床、跳び箱、逆走ファンなどを組み合わせたコースを制作し、他の選手AIや友人の作成したコースに挑む[1]。
概説[編集]
本作は、当時流行していた「視聴率参加型ゲーム」の思想を極端に押し進めた作品とされる。制作側は『遊ぶより、まず落ちる』を設計理念に掲げ、プレイヤーが失敗演出を学習してからコース編集に進む二段構えを採用した[2]。また、編集画面で再生される観客の歓声は、実在の千葉県内の体育館で収録された約1800名分の拍手を細切れにしたものとされるが、この点は一部資料で異説がある[要出典]。
位置づけ[編集]
ゲーム誌ではしばしば落ちものパズルやハンティングアクションの要素を持つ変種として扱われたが、実際には障害物の配置と走破タイムの両方が評価対象となる、かなり変則的なロールプレイングゲームに近いとする批評も存在した。のちに『SASUKE Maker』系列の始祖・元祖と見なされ、編集文化を重視する国産ゲームの先駆例として語られている。
ゲーム内容[編集]
ゲームは大きく「設計」「試走」「公開」の三段階で進行する。プレイヤーは部品コスト、重力係数、観客の期待値を調整しながらコースを作成し、完成後は自機キャラクターを操作してクリアを目指す。また、コースの難易度が高いほど売上本数に反映される「番組指数」が上昇する仕様があった。
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、各障害物には「視聴率」「危険度」「笑撃度」の3属性が設定されている。たとえば回転床は危険度が低い一方で笑撃度が高く、逆に磁力の壁は危険度は高いが視聴率が伸びにくいとされた。さらに、プレイヤーが同じ足場を7回以上連続で設置すると、番組スポンサーの満足度が下がるという奇妙な内部処理が組み込まれていた。
戦闘[編集]
戦闘は本来存在しないはずであるが、本作では落下中に入手する「応援マイク」を用いて他選手の進路を一時的に妨害できた。これにより、競技ゲームでありながら実質的にはアクションシューティングゲーム的な撃ち合いが発生し、後年の攻略記事では『足場を撃つゲーム』と揶揄された。なお、最終面のボスは「巨大ゴム製タイマー」であり、毎分1回だけ秒針の位置を偽装してくる。
アイテム[編集]
主要アイテムは「滑り止め軍手」「安全ロープ」「VTR巻き戻しチップ」の3種である。特にVTR巻き戻しチップは、失敗直前の3秒間だけ行動を無かったことにできる高価な装備で、当時の店頭デモではこれを乱用して無限挑戦を続ける子供が続出したという。また、隠しアイテムとして「焼きそばパン」が存在し、これを拾うと観客の歓声が一時的に1.3倍になる。
対戦モード[編集]
対戦モードでは、同一コースを2人が交互に挑戦し、先にゴールした側が「演出権」を得る。演出権を持つプレイヤーは、実況テロップの色やカメラ角度を一部変更できたため、上級者の間では純粋な走破よりも実況破壊が重視された。全国大会の予選では、1試合あたり平均で12分43秒を要したと記録されている。
オフラインモード[編集]
オフラインモードは「編集室」と呼ばれ、通信機能を持たない代わりに、プレイヤーの失敗回数を記録した紙の台帳を印刷するという珍しい仕様があった。これを実装した理由について、開発者の南條ユカリは『家庭にネットが届く前に、まず反省が届くべきだった』と述べたとされる[3]。
ストーリー[編集]
物語は、架空のテレビ局東亜スポーツ放送が「究極の障害番組」を制作するため、無名の整備士・新田カケルをコース設計主任に任命するところから始まる。カケルは、失敗するとスポンサーが増えるという奇妙な局内事情を知り、競技者を助けるはずの安全設計がかえって視聴率を下げることに悩む。
主人公[編集]
主人公は新田カケルである。彼はもともと兵庫県の遊園地でメンテナンス補助をしていたが、落下装置の修理中に偶然「コースの方が人間より素直である」という持論を得て、本作の設計思想を形成した。ゲーム内では、彼の帽子のつばの角度が進行度に応じて3度ずつ上がる演出が入る。
仲間[編集]
仲間には、実況担当の朝比奈ミオ、技術監修の天野忠雄、そして観客代表として雇われた謎の少年・ルーカスJr.がいる。ミオは難所でのみ早口になる癖があり、忠雄はすべてのコースに『安全上の懸念はあるが、番組としては美しい』というコメントを付ける。ルーカスJr.は登場回数が7回しかないにもかかわらず、海外版パッケージの中央にいる。
敵[編集]
敵対勢力は、巨大スポンサー連合「ネオ・タワー商会」と、その実働部隊である赤いジャージの査定員たちである。彼らは難しすぎるコースを『芸術点不足』として却下し、代わりに中盤に必ずゆるい綱渡りを入れるよう圧力をかける。最終局面では、査定員が一斉にホイッスルを吹き、プレイヤーの入力遅延を増やしてくる。
用語・世界観[編集]
本作の世界では、障害物の配置図を「番組譜面」と呼び、難易度の単位には「拍手」を用いる。たとえば「拍手7.8」は、初見プレイヤーが平均して4回滑落する程度を意味するとされた。世界観上、コースは『生きている台本』として扱われ、夜になると一部の足場がわずかに移動する設定がある[要出典]。
開発[編集]
制作は1996年秋、霧島デジタル工房の若手班が「家庭用で番組制作を再現する」という無謀な提案から始まった。もともとは教育ソフトとして企画されたが、会議室に置かれていた体操マットの破れ方が面白すぎたため、急遽ゲーム化に転じたとされる。
制作経緯[編集]
初期案では、コースを自動生成するAIが主役であった。しかし、AIが作るコースがことごとく『最初の3歩で終わる』ため、開発チームは逆に人間の無駄な工夫を強調する設計へ切り替えた。桐生慎一郎は後年、『あの失敗がなければ、編集機能はただの罠で終わっていた』と語ったと伝えられる。
スタッフ[編集]
スタッフは総勢18名で、そのうち5名が「試走専門」、2名が「落下音監修」、1名が「ロープ結び顧問」であった。音楽を担当した三宅和真は、BGMの冒頭に必ず0.5秒の無音を入れることで、プレイヤーに『今から何かが起きる』と思わせる効果を狙ったという。なお、海外版のローカライズでは、ディレクター名が誤って実況担当者の名前に差し替わっていた。
音楽[編集]
サウンドトラックは、いわゆるテレビ番組風のブラスと、異様に長い待機音で構成される。代表曲「DIVE! DIVE! DIVE!」は、前半16小節がすべてカウントダウンだけで構成されており、当時の店頭販促では『心拍数が上がりすぎるBGM』として話題になった。
移植版[編集]
翌年にはレトロX2版が発売され、読み込み時間の短縮とコース保存数の増加が図られた。また、ルナポケット版は携帯機向けに再構成され、観客の歓声がモノラル化された代わりに、持ち運び先でコースを即興制作できる点が支持された。
評価[編集]
発売当初は、操作が複雑すぎるとして敬遠された一方、編集機能の中毒性から口コミで伸びた。国内では初週4万2000本、最終的に84万本を販売し、同社初のミリオンセラーには届かなかったが、関連アクセサリーの売上が本体の1.8倍に達したとされる。
関連作品[編集]
続編として『スーパーSASUKEアスレチックメーカー2 逆走の祭典』、派生作として『まいにちSASUKEタイマー』、外伝に『SASUKE写真館デラックス』が存在する。また、2002年にはテレビアニメ化されたとする誤記が一部雑誌に掲載されたが、実際には30秒CMを4本つなげただけである。
メディアミックス[編集]
メディアミックスとしては、攻略漫画『新田カケルの落ちない午後』、ラジオ番組『今週の回転床』、そして実物大の安全ロープを同梱した限定版がある。いずれも本編以上にコースの再現度が高いと評価されたが、ロープ版は発送時に箱の半分を占めたため、店舗側から苦情が出た。
関連商品[編集]
攻略本として『スーパーSASUKEアスレチックメーカー完全設計書』が徳間遊戯新書から刊行され、全416ページのうち半分以上が失敗例の図解で占められていた。ほかに、付録CD付きの設定資料集、観客の声を再現した留守番電話用音源集、コース設計用の方眼紙100枚綴りが販売された。
その他の書籍[編集]
周辺書籍には、南條ユカリ名義のエッセイ『落下を美しく見せる方法』、三宅和真による楽譜集『拍手の譜面化』、および海外版を解説した『How to Sell a Wall』がある。最後の一冊はタイトルが妙に哲学的であるとして、書店員の間でしばしば記憶違いの対象になった。
脚注[編集]
1. 『スーパーSASUKEアスレチックメーカー 公式設定台帳』鳳凰ソフト社内資料、1998年。
2. 桐生慎一郎『番組は落ちるほど美しい』霧島デジタル工房年報第3号、1999年、pp. 14-19。
3. 南條ユカリ「編集室の紙ログ文化について」『レトロX開発者会議録』第2巻第1号、2000年、pp. 41-44。
脚注
- ^ 桐生慎一郎『番組は落ちるほど美しい』霧島デジタル工房年報第3号, 1999, pp. 14-19.
- ^ 南條ユカリ「編集室の紙ログ文化について」『レトロX開発者会議録』第2巻第1号, 2000, pp. 41-44.
- ^ M. Thornton, "Spectator-Driven Level Editors in Late-90s Console Software", Journal of Interactive Antiquities, Vol. 8, No. 2, 2003, pp. 88-103.
- ^ 三宅和真『転ぶ前の静寂』鳳凰ミュージック出版部, 1999.
- ^ E. R. Caldwell, "Applause Metrics and Game Difficulty" in Proceedings of the Kyoto Symposium on Toy Systems, Vol. 4, 2001, pp. 201-216.
- ^ 霧島デジタル工房 編『スーパーSASUKEアスレチックメーカー 完全設計書』鳳凰書房, 1999.
- ^ 石渡千尋『家庭用番組制作の黎明』東亜ゲーム史研究会, 2006, pp. 55-79.
- ^ L. P. Hargreaves, "The Emotional Geometry of Falling Objects", Arcade Studies Quarterly, Vol. 12, No. 1, 2004, pp. 9-31.
- ^ 朝比奈ミオ『今週の回転床』ラジオ台本集, 2002.
- ^ 高橋玲子『How to Sell a Wall』北海インターナショナル文庫, 2005.
- ^ C. L. Forrester, "Monophonic Crowd Simulations in Portable Athletic Games", Luna Pocket Review, Vol. 1, No. 3, 2002, pp. 5-12.
外部リンク
- 鳳凰ソフト公式アーカイブ
- 霧島デジタル工房資料室
- レトロX博物館データベース
- 東亜ゲーム年鑑オンライン
- SASUKE Makerファン保存会