ニトロシャーク VS デスロブスター
| 作品名 | ニトロシャーク VS デスロブスター |
|---|---|
| 原題 | Nitro Shark vs. Death Lobster |
| 画像 | NitroSharkPoster.png |
| 画像サイズ | 240px |
| 画像解説 | 決戦シーンの合成を強調したポスターである |
| 監督 | 渡辺精一郎 |
| 脚本 | 渡辺精一郎 |
| 原作 | 潮騒科学局『ニトロ化サメ記録』 |
| 製作 | サメクル・フィルム/潮騒科学局/第三海洋開発機構 |
| 配給 | 東瀬映画配給 |
『ニトロシャーク VS デスロブスター』(にとろしゃーく ばい ですろぶすたー)は、2021年8月13日に公開されたサメクル・フィルム制作の日本のアニメーション映画である。原作・脚本・監督は渡辺精一郎。興行収入は47億円で「第36回海底映画祭」最優秀特撮賞を受賞した[1]。
概要[編集]
『ニトロシャーク VS デスロブスター』は、ニトロ化されたサメ(ニトロシャーク)と、深海で硬化毒を纏うロブスター(デスロブスター)の衝突を軸とした娯楽映画である。物語の前半では「対衝突兵装」の設計思想が、後半では「海上保険の奇妙な免責条項」が、それぞれ不気味なリアリティとして提示される。
この作品は、架空の自治体である沿岸に位置する実在風の施設を舞台とし、劇中の“科学”をあえて書類のような口調で描写する点が評価された。なお、観客の間では「勝敗よりも、免責条項の文章量のほうが怖い」と評されることがある[2]。
本作の作風は、極彩色の水中合成と、金属質の咆哮(声の倍音処理)を組み合わせた特殊技術に特徴がある。特殊技術は、当時の教育用映像にも採用されたとされ、結果として“海の怪獣に説得力がある”という流行語を生んだとされる[3]。
あらすじ[編集]
では、沿岸漁業の“事故率”を下げる目的で、試作機のサメ型外骨格「ニトロシャーク」が運用されていた。ところがある夜、深度1,372メートルの海溝から、甲殻が黒鉛化した異形のロブスター「デスロブスター」が搬送される。研究所の記録上、その出現時刻は「2021年7月31日23時59分48秒」であり、秒単位まで一致したことで社内は沈黙に包まれた[4]。
デスロブスターは毒ではなく、微小な圧力変換結晶を呼吸孔に隠し、触れた金属を“鳴る”状態にする能力を示す。ニトロシャークは、衝突時に発生する衝撃波を数式で相殺する予定だったが、実際には「相殺係数Rが0.998で止まる」という想定外の丸め誤差が発生した。研究所の若手技官は「相殺は成功している、ただし音だけ失敗している」と言い、観客の笑いを誘ったとされる[5]。
最終決戦では、雲仙市沖の海底送電トンネルへ舞台が移る。そこでは、海上保険契約の免責が“生物起因の事故は免責”という形で定義されており、責任の所在が戦いそのものよりも論争の中心に置かれる。ニトロシャークは自分の存在証明のために突進し、デスロブスターは“事故として扱われない条件”を探るように甲殻を揺らした。結末で明かされるのは、勝者ではなく、契約書の余白に書かれた一行である。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
(わたなべ みつえ)は、南島海洋保安研究所の契約法務担当である。彼女は戦闘よりも条文を先に覚えるタイプとして描写され、特に「免責条項第12条の“発生源推定”」を暗唱する場面で観客が沸いたとされる。撮影前に本人が条文を“音読した回数”を脚本家に提出したという逸話がある[6]。
(はやせ くろう)は、ニトロシャークの運用オペレーターである。彼の担当手順書には、毎回同じページの端に「沈黙は前兆」などのメモがある。物語後半で、彼が相殺係数Rを計算し直す場面は、観客の間で“理系の祈り”として言及された。
(みもり のい)はデスロブスターの“搬送記録”を解析する研究員である。彼女は毒性ではなく硬化毒の“発現条件”にこだわり、甲殻の黒鉛化が深海圧力だけでなく「笑い声の反響」に反応する可能性を提示する。ここは一部で「科学のフリをした怪談」と評された。
その他[編集]
の“海の安全特別委員会”は、作中で会議室の木の香りまで再現した演出が話題となった。委員会議事録は、なぜか全て「行間が3ミリ広い」と説明される。視聴者は意味を理解できないまま、なぜか不快になったという[7]。
また、の宣伝素材として、劇中“想定外の丸め誤差”を模した注意喚起ポスターが配布された。映画の外側で物語の細部が消費される形になったとされる。
声の出演またはキャスト[編集]
声の出演は、を、を、をがそれぞれ担当した。佐久間は録音ブースで「条文を読む声」を“船のエンジンに似せる”よう指示されたとされる。
一方で、の会議音声役は、実際の議会事務局の“くぐもり”を参考にして作られた。さらに、デスロブスターの咆哮は言語化されないまま、低周波の“笑いの余韻”として編集されていると説明された[8]。
スタッフ[編集]
監督のは、海洋災害の教育アニメも手がけた経歴があるとされるが、本作では“学術の体裁”をあえて誇張した。脚本は、条文・計算・議事録の断片を交互に並べる構成を採用している。
音楽はが担当し、水中環境を模したリング変調音と、金属打楽器の短音を組み合わせた。主題歌は「免責条項のブルース」で、歌唱はが担当したとされる[9]。
撮影(合成設計)は、編集はが務めた。色彩設計は彩度を段階的に上げる手法が取られ、ポスターの“朱と藍の反転”がそのままクライマックスの光源にも流用されたとされる。
製作[編集]
企画・制作過程[編集]
企画は、潮騒科学局が提出した「漁具破損の統計再検証案」から発想されたとされる。統計によれば、漁業者の事故申告は“魚種の名前”で分類されるため、結果として対処がずれやすいという問題が指摘された。そこで、架空の魚種対立を用いて分類の癖を暴こうとしたのだと説明されている[10]。
制作では、合成用の水中データを周辺で収集したという設定資料が残っている。ただし実制作では「水中ではなく、書類の裏を撮った」という妙な社内伝承もあり、スタッフが笑いながら作業したことが後に語られた[11]。
美術・CG・彩色・音楽[編集]
デスロブスターの甲殻は“黒鉛化”を表現するため、光を吸うのではなく“反射しない音”として描く方針が取られた。CG班は、反射率を0.04〜0.07の範囲に固定し、フレームごとに微細な揺らぎを入れたとされる。結果として、テレビ放送時に画面が暗く感じられたという苦情が来たとされるが、のちに“暗さがリアル”として好評に転じた[12]。
音楽では、ニトロシャークの加速を表すために、ブラスに“1秒で約3回だけ気配が変わる”処理を施したとされる。主題歌の歌詞は、契約書の用語を敢えて韻律に落とし込んだため、ライブで聴衆が噛まずに歌えなかったという。
着想の源[編集]
着想の源として、監督は「海は争うが、書類は先に勝つ」と述べたとされる。また、スタッフノートでは、対立する生物の設定に加え、競技場の床に見立てた“海底送電トンネルの配線図”が作中の地形として流用された。さらに、決戦の直前に挿入される“一枚の監査メモ”は、実在の行政文書の文体を参照したとされるが、どの文書かは明かされていない[13]。要出典がつきそうな箇所として、編集会議で話題になったという。
興行[編集]
2021年8月13日に全国公開され、公開初週のの劇場では、初日入場者が13,420人を記録したとされる。宣伝では“対衝突兵装の図解”が配布され、図解の丸め誤差の説明がSNSで回覧されたことが、二週目の動員増に寄与したとされる。
テレビ放送は2022年4月29日に行われ、視聴率は関東で7.2%、関西で6.6%を記録した。翌年には“水中リマスター”としてリバイバル上映が実施され、音響の低周波設定を調整した特別版が用意された。海外ではで公開され、現地では“免責条項が歌になる”という点が受けたとされる[14]。
なお、配給収入は公開規模に対してやや低く見積もられたが、その理由として「宣伝ポスターの文字量が多すぎた」ことが挙げられたという。興行面のメディア批評では、数字より“読ませる映画”だったと形容されている。
反響[編集]
批評では、映像の派手さと書類の冷たさの同居が評価された。特に、デスロブスターの誕生時刻が“秒単位”で固定される演出は、ファンタジーの皮を被った事務作業として解釈された。
受賞としては「第36回海底映画祭」最優秀特撮賞のほか、「第18回潮騒アニメ評論家連盟賞」にノミネートされた。脚本面でも「監査と契約の倫理」を題材にした点が議論され、観客投票では“最も泣ける免責条項”が1位となったとされる[15]。
一方で批判もあり、雲仙市議会の会議描写が長すぎるという指摘があった。とはいえ、その長さが“笑える恐怖”になっていたと反論する声も多かった。
テレビ放送[編集]
テレビ放送では、劇中の計算式が小さく映らないよう字幕サイズが二段階で変化する仕様が採用された。結果として配信プラットフォーム側で字幕の誤差が検知され、修正パッチが当日夜に提供されたとされる[16]。
また、放送版では主題歌のサビが一部差し替えられたと説明されており、「歌詞の“条文語彙”が放送基準に触れた」という噂が流れた。公式発表では詳細が示されなかったため、ファンの間では“どの単語が問題だったか”の推理が続いた。
関連商品[編集]
関連商品として、Blu-ray『ニトロシャーク VS デスロブスター 水中リマスター版』が発売された。特典映像には“免責条項の朗読”と題したメイキングが収録され、渡辺ミツエ役の声優が条文を読み上げる場面が見られる。
また、公式ビジュアルブック『書類が震える海底設計図』、サウンドトラック『リング変調の咆哮』、模擬パンフレット『対衝突兵装ユーザーズガイド 第2版(2021年改訂)』が販売された。パンフレットはなぜか会議録の体裁で作られており、購入者が“読んでしまった”ことがSNSで報告された[17]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「免責条項が勝敗を決める構造の考察」『海底映画研究』第12巻第3号, pp. 41-62, 2021.
- ^ 佐久間レン「条文朗読による声質設計—水中合成との整合性」『アニメ音響ジャーナル』Vol. 8, No. 1, pp. 9-18, 2021.
- ^ マルコ・アンドラーデ「低周波“笑い余韻”の生成手法」『サウンド・トランスフォーム研究』第5巻第2号, pp. 77-90, 2022.
- ^ 山岸カオル「金属打楽器とリング変調の交差」『映像音楽年報』第19号, pp. 120-134, 2020.
- ^ 小野寺ユイ「解析と怪異—搬送記録の語り口」『現代アニメ脚本誌』第7巻第4号, pp. 201-215, 2021.
- ^ 東瀬映画配給「2021年夏季興行実績(劇場別・初日入場者数)報告」『配給統計叢書』pp. 300-312, 2021.
- ^ 潮騒科学局編『ニトロ化サメ記録:改訂版(内部資料抜粋)』潮騒科学局, 2019.
- ^ 第三海洋開発機構『海底送電トンネルの安全解析』第2版, 第3章, pp. 55-73, 2018.
- ^ Aoki, R. “Rounding Errors in Fictional Undersea Physics.” 『Journal of Maritime Narrative』Vol. 3 No. 2, pp. 1-13, 2021.
- ^ Kawashima, T. “Immunity Clauses as Rhythm in Animation.” 『International Review of Subsea Animation』Vol. 6, pp. 88-101, 2022.
外部リンク
- サメクル・フィルム公式サイト
- 東瀬映画配給データベース
- 海底映画祭アーカイブ
- 南島海洋保安研究所 作品資料室
- 書類が震える海底設計図 特設ページ