バイオハザード(ゲーム)
| タイトル | バイオハザード(ゲーム) |
|---|---|
| 画像 | 架空パッケージアート(琥珀色の裂け目) |
| 画像サイズ | 300px |
| caption | 「琥珀寄生体」の発光現象をモチーフにしたとされる |
| ジャンル | サバイバルアクションロールプレイングゲーム |
| 対応機種 | 家庭用据え置き(コードネーム:SableBox) |
| 開発元 | 青嵐インタラクティブ |
| 発売元 | 環状物流出版社(ゲーム部門) |
| プロデューサー | 渡辺精一郎 |
| ディレクター | エリナ・モリソン |
| 発売日 | 1987年9月12日 |
| 対象年齢 | 17歳以上 |
| 売上本数 | 全世界累計 132万本(発売から36か月) |
| その他 | 「温度連動弾薬」システムを搭載したことで話題化 |
『バイオハザード(ゲーム)』(英: Biohazard (Game)、略称: BH-ゲート)は、[[1987年]][[9月12日]]に[[日本]]の[[青嵐インタラクティブ]]から発売された[[家庭用据え置き]]用[[サバイバルアクションロールプレイングゲーム]]である。[[バイオハザード]]シリーズの第1作目とされ、架空の感染体「琥珀寄生体」を題材にしたメディアミックス作品群の起点にもなっている[1]。
概要[編集]
『バイオハザード(ゲーム)』(通称BH-ゲート)は、[[琥珀寄生体]]の封じ込め失敗によって崩れた研究施設を舞台に、プレイヤーが生存者として探索し、感染の波形を読み解きながら脱出を目指す作品である[1]。
ゲームの成功は、単なる恐怖演出ではなく、「生体の反応を物理パラメータとして扱う」設計思想が支持されたことによって説明されることが多い。例えば、武器の命中率は画面上の敵だけでなく、室温と弾薬の残留ガス圧に依存するとされ、攻略コミュニティでは発売直後から“温度表”が作られた[2]。
なお、当時の編集者の間では本作が「生物災害をゲーム化した始祖・元祖」であるという言い回しが流通し、のちに[[青嵐インタラクティブ]]の社内資料にも同様の表現が残っているとされる。ただし、実際に“始祖”と呼べるかについては後年に異論も提示されている[3]。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステム[編集]
プレイヤーは主人公の[[柾木(まさき)ユウ]]として操作し、固定カメラ視点の探索と、短時間の戦闘を繰り返す構造が採用された。戦闘では[[ハンティングアクション]]寄りの間合い管理が求められ、武器は「刃物」「鈍器」「焼灼器(しようしゃくき)」の3系列に整理されている[4]。
ゲームシステムの特徴として、所持品は8スロットの携行枠に加えて「発火率」「腐食指数」という隠しステータスを持つとされる。特に焼灼器は燃焼管理に加え、炎の色温度が敵の反応速度に影響するとされ、プレイヤーは敵が“先に増殖するか、先に逃げるか”を読み合うことになる[5]。
戦闘・アイテム・対戦モード[編集]
戦闘は実質的に非対称であり、敵側の「寄生拍動(ようせいはくどう)」が一定回数を超えると、同じ個体でも行動パターンが反転するとされる。攻略の初期研究では、拍動の閾値が平均で“9.7秒”であると推定されたが、ロット差があるとして修正が入った[6]。
アイテムは「薬液カプセル(青)」「薬液カプセル(琥珀)」「結晶塩」「即席冷却材」などが中心である。なお、冷却材は使用直後の“瞬間温度降下”が高いほど回復効果が増えるとされ、プレイヤーのあいだで冷却順序のテンプレートが共有された[7]。
対戦モードとしては、同梱ディスクで“感染波形の奪取”を競う[[非同期対戦]]が用意されたとされる。これは各プレイヤーのゲーム進行データを統計処理し、仮想敵として相手の施設に出現させる方式で、発売当時は不正改造の温床にもなったと回想されている[8]。
オフラインモード・難易度調整[編集]
オフラインモードでは、進行状況に応じて[[セーフルーム]]の位置が“ランダムではない形”で変化する仕様が語られている。具体的には、最初の分岐から30分のプレイ時間で補正が入るとされ、初心者と上級者で結果が揃わないため、攻略本が半年ほど“役に立たない時期”を経験したという逸話がある[9]。
難易度調整は「感染指数」「暗視補正」「弾薬の粘度管理」の3系統があり、ユーザーは自分のプレイスタイルに合わせて“息切れしない探索”を設計できると説明された。ただし、暗視補正を上げると視界は改善する一方で、敵の[[琥珀寄生体]]が光を帯びて見えるため心理的負荷が増えるとして、批判的に語るプレイヤーもいた[10]。
ストーリー[編集]
物語は、関東地方の海沿いに建てられた研究施設[[港羽生(みなと はにゅう)開発実験区]]で始まる。1987年夏、施設は新素材「自己修復ゼラチン」の実用試験を行っていたが、試料の“安定化剤”が寄生体と共鳴し、封じ込め壁に微小な発光亀裂が生じたとされる[11]。
主人公[[柾木(まさき)ユウ]]は回収任務として潜入するが、到着時点で施設の無線は断続的にしか機能しておらず、ログは一部だけが琥珀色のノイズに埋め尽くされていた。そこでゲームは、プレイヤーが操作するマップ上の“音の残響(ざんきょう)”を手がかりに、通路の再構成を行う形式を採用した[12]。
エンディングは3種類とされるが、同時代の雑誌では「4つ目がある」説も掲載された。実際には開発中止になったとされる“第4終章”がデータとして眠っており、改造コミュニティが1990年に解析したことで噂が固まったとされる[13]。
登場キャラクター[編集]
主人公の[[柾木(まさき)ユウ]]は、救命薬の調合に詳しい元現場技術者である。彼は戦闘に長けるよりも、温度表と薬液の相性を計算して生存率を上げるタイプとして描かれることが多く、会話では「数字で嘘をつかない」ことが強調される[14]。
仲間側には[[伊吹(いぶき)レン]]がいる。彼女は施設の警備端末“サーベイビーコン”を解析し、寄生拍動の位相を読み取れるとされる。ただし、伊吹は終盤で“自己修復ゼラチン”の副作用を受け、プレイヤーの選択によって救助が変化する[15]。
敵側は物理的な怪物としてのみ扱われず、[[琥珀寄生体]]そのものが敵の総称として機能する。寄生体は個体差があり、音階の違う鳴き声(というより共鳴パターン)を持つとされ、攻略サイトでは「ドが高い個体は冷却に弱い」とまとめられた[16]。
用語・世界観[編集]
本作の世界観では、感染は単に“病原体の蔓延”ではなく、施設の材質・空調・湿度の総体として扱われる点が特徴とされる。特に重要なのが[[琥珀寄生体]]で、透明な細胞塊が発光すると説明される。発光は“炭化水素の自己酸化”ではなく、当時の開発メモでは「光学的にはっきりした位相ズレ」と記述されているとする伝承がある[17]。
また、プレイヤーが頻繁に扱う[[結晶塩]]は、塩の粒子が電荷を吸着し、寄生拍動を遅延させるとされる。さらに、冷却材の改良版として[[即席冷却材#第2型]]のような派生名が攻略本で登場し、開発チームの命名規則を参照した疑いが濃いと指摘されている[18]。
用語の成立経緯については、開発の初期資料が焼失したため異説が多い。一例として、[[港羽生(みなと はにゅう)開発実験区]]は実在の自治体に由来しないはずだとする説と、逆に“地元の旧呼称を借りた”とする説が並立している[19]。
開発/制作[編集]
制作経緯[編集]
本作は、青嵐インタラクティブが当時ブームだった[[擬似リアルタイム演出]]に行き詰まり、別方向として「時間ではなく状態を見せる」設計へ舵を切った結果として語られることが多い。プロデューサーの[[渡辺精一郎]]は、社内会議で「ゲームは鼓動で怖がらせるべきだ」と述べ、寄生拍動という概念に繋がったとされる[20]。
制作は1986年の秋に本格化し、試作段階では“弾薬の粘度管理”がコンピュータ負荷を増やす問題として噴出した。そこでプログラマー陣は、粘度を厳密計算せず「3段階の疑似粘度」に離散化した。ところが離散化の結果、特定の温度帯で命中率が急に上がる“バグのような救済”が生まれ、テストプレイで好評だったため、仕様として残された[21]。
スタッフ[編集]
ディレクターはエリナ・モリソンが担当し、彼女は欧州の科学ドキュメンタリー視聴を通して“映像の熱”を重視したとされる。デザインは[[佐倉多聞(さくら たもん)]]が主導し、敵の発光パターンは「琥珀色の階調をRGBでなく周波数で指定する」方式が取られたと語られる[22]。
作曲は[[村田カイ]]が担当し、サウンドは恐怖よりも“計測の緊張”を狙う方向で組まれた。なお、開発現場では、録音スタジオでマイクが一度だけ故障し、そのノイズが寄生体の“鳴き声”として採用されたという逸話が残る[23]。一方で、別の資料ではノイズは故障ではなく意図した演出として記されており、矛盾点として編集者がよく取り上げる箇所となっている[24]。
音楽[編集]
本作の音楽は、[[村田カイ]]による全18曲(インターミッション含む)で構成されるとされる。ただし現存ディスクの収録順が2種類あるため、合計曲数については「17曲+欠番」説もある[25]。
代表曲として[[『位相ズレの序曲』]]が知られている。曲はテンポが終始一定ではなく、寄生拍動の平均閾値(約9.7秒)に同期して小節の間隔が揺れるよう設計されたと説明される。もっとも、プレイヤーには“気づいたら心拍が落ち着く曲”として受け取られ、恐怖を中和するBGMとして掲示板で評価された[26]。
サウンドトラックはのちに[[琥珀音響出版社]]からCDで発売され、売上は発売初月で4.2万枚に達したとされる。なお、この数字は広告原稿に由来するとされ、裏取りが不完全なまま引用される例もある[27]。
評価(売上)[編集]
発売後、国内では「暗視補正を上げても勝てない」という趣旨の投稿が相次ぎ、難易度設計が議論になった。一方で、温度表の共有が進むにつれて“勝てる恐怖”として再評価され、結果としてシリーズ化への土台が固まったとされる[28]。
売上については、全世界累計132万本を突破したとされるが、集計方法に複数の説がある。例えば、SableBoxの周辺販売に同梱された“黒箱版”を含めるか否かで統計がずれるためである。雑誌[[ファミコンゲーム時評]]は「36か月で132万本(黒箱版含む)」と報じ、別の統計では「34.8万本(黒箱版除く)」という計算結果が引用された[29]。
また、本作は[[日本ゲーム大賞]]の前身選考で「技術的恐怖の統合」に関する言及を受けたとされるが、受賞の経緯は同賞の改編期にあたるため、一次資料の出典が曖昧であると指摘される[30]。
関連作品[編集]
本作はその後の[[バイオハザード]]シリーズの元祖とされ、派生として短編の[[『サーベイビーコンの記録』]]、続編として[[バイオハザード2:湿度の回廊]]、外伝として[[琥珀寄生体ハンドブック]]が展開されたとされる[31]。
メディアミックスとしては、テレビアニメ[[『寄生拍動レポート』]]が制作された。アニメでは、主人公が計測機器を手放さない“数字で救う物語”として描かれ、ゲームのファン層に対し新規層を開拓したと報じられている[32]。
ただし、派生作品の時系列がゲーム本編と一致しない点が後年に批判され、編集会議で「整合性よりも恐怖の倫理を優先した」と説明されたという記録があるとする説も存在する[33]。
関連商品[編集]
攻略本としては、[[『温度表と弾薬粘度の実践』]]が発売され、各ステージにおける“最適冷却順序”が表形式でまとめられたとされる。さらに、薬液の配合を解説する小型冊子[[『琥珀青(あお)カプセル手引書』]]も同時期に出回った[34]。
ゲームブックでは[[冒険ゲームブック]]形式の[[『BH-ゲート:閉鎖通路の分岐』]]が出版され、選択肢によって“寄生拍動の位相”が変化する仕様が好評を得たとされる。ただし、紙面上では位相が図示されないため「読者によって解釈が割れる」問題も起きたとされる[35]。
その他として、Tシャツやマグカップなどのグッズがファッションコーナーで売れた時期があったとされ、研究施設“港羽生”を模した架空地図ポスターが特典として配布されたと回想されている[36]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 青嵐インタラクティブ編『BH-ゲート内部資料集(1986-1989)』環状物流出版社, 1990.
- ^ 渡辺精一郎『計測で怖がらせる:温度連動設計論』青嵐叢書, 1992.
- ^ エリナ・モリソン「サバイバル演出における位相ズレの応用」『Journal of Narrative Mechanics』Vol.12 No.3, 1993 pp.41-58.
- ^ 佐倉多聞『琥珀色の階調設計』周回美術研究所, 1994.
- ^ 村田カイ『『位相ズレの序曲』の作曲技法』琥珀音響出版社, 1995.
- ^ 鈴木眞琴「感染体を“時間”ではなく“状態”として扱う試み」『日本ゲーム研究』第4巻第2号, 1996 pp.11-26.
- ^ ファミコンゲーム時評編集部『1987年の衝撃:SableBox恐怖ゲーム大全』ファミコンゲーム時評社, 1988.
- ^ M. Thornton『Cold-Chain RPGs and Diegetic Temperature Models』Vol.7 Issue 1, 1997 pp.88-101.
- ^ 高橋倫太「黒箱版同梱と売上統計の補正」『市場計測月報』第21巻第9号, 1998 pp.2-9.
- ^ 未知の著者「寄生拍動の平均閾値は9.7秒であるのか?」『サーベイビーコン論文集』Vol.0 No.0, 1989 pp.0-3.
外部リンク
- 琥珀寄生体データベース(非公式)
- SableBoxアーカイブ
- 温度表コミュニティwiki
- BH-ゲート解析掲示板
- 青嵐インタラクティブ資料室(閲覧のみ)