プリケツ
| 分野 | 言語学(俗語)×身体文化(姿勢・動作) |
|---|---|
| 成立時期(推定) | 1990年代後半〜2000年代前半 |
| 主な使用域 | を中心とする都市部の若年コミュニティ |
| 用法 | 褒め言葉/比喩/冗談としての言及 |
| 関連語 | プリ臀、けつプリ、座勢(ざせい) |
| 媒介 | 掲示板、深夜番組のテロップ、ショート動画編集 |
プリケツ(ぷりけつ)は、主にの間で用いられたとされる隠語であり、ある種の「座り方の技術」や「体勢の美学」を指す語である[1]。語源は定かではないが、都市の制服文化と映像編集の慣習が結びついて広まったとする説が有力である[2]。
概要[編集]
プリケツは、身体の「見え方」に注意を向ける言い回しとして語られることが多いとされる。具体的には、座位での骨盤角度、背骨の支持点、太腿と床の接触面積などを意識した“妙に見栄えする体勢”を、冗談めかして称賛する際に用いられたとされる[3]。
一方で、語の射程は姿勢の話だけにとどまらず、映像編集の世界で培われた“見せ方の段取り”を比喩として指す場合もあるとされる。たとえばや民放のバラエティ番組の制作現場では、カメラ位置の微調整を「プリケツ的」と呼ぶ内輪の比喩があった、という証言が複数存在するとされるが[4]、当該証言の一次資料は確認が難しいとされる。
語源と定義の揺れ[編集]
プリケツの語源については、俗説が先行しており、いずれも断定できない状態である。もっとも広く流通した説明としては、「プリント(印字)+ケツ(尻)」に由来し、撮影後に“ケツの輪郭だけを高精細で再現する”という、編集者の癖が転じたとする説がある[5]。
ただし別の説明では、バスケットボール中継で用いられた姿勢カメラの補助脚具が“プリ型”と呼ばれ、その装置が尻部の輪郭を自然に強調したことから連想されたとも言われる[6]。この説では、語がまずのスポーツ映像制作会社で独り言として生まれ、その後に掲示板の書き込みへ逆輸入されたとされる。
さらに、身体文化側の定義として「臀部の“プリっ”とした張り」を意味する、とする説明も見られる。もっとも、その当時の辞書編集方針として“性的ニュアンスを避けたまま、自己肯定の比喩に寄せる”ことが掲げられていたとする内部資料が引用されることがある[7]。なお、用法の一部には差別的含意を含むとする指摘もあり、論争の火種にもなったとされる。
歴史[編集]
都市の座勢文化(1998〜2003年)[編集]
プリケツが“言葉としての型”を獲得したのは、1998年ごろに撮影機材の小型化が進んだ時期だとされる。家庭用デジタルカメラが普及し始めたことにより、撮る側/映る側の両方が自分の姿をチェックする習慣が広がったと推定される[8]。
この頃、の若者向けスタジオで、短時間の撮影に最適化した指導メニューが売り出された。当時のカリキュラムには「座位での骨盤角度の調整」「背中の“影”の出方」「足裏の圧の配分」など、妙に工学的な項目が並んだとされる。特に“座勢”の基準として「骨盤角度 12〜17度」「膝角度 92〜104度」「呼気の長さ 6〜8秒」といった数値が紙片に書かれていた、という逸話が残る[9]。
ただし、プリケツ自体の表現は、数値の正しさよりも“言い切りの勢い”が価値になる形で定着した。結果として、座勢が上手い/場を盛り上げる人を指す褒め言葉として機能し、さらに冗談の比喩へと拡張されたとされる。
編集者の手癖と「テロップ工房」の連鎖(2004〜2009年)[編集]
2004年、テロップ制作を巡る業界で「フチ残し(ぼかしではなく輪郭を残す)」の手法が流行したとされる。このとき、輪郭を強調する作業の担当者が、完成した画を見て「プリケツ、決まった」と口にしたことが発端ではないか、とする回想がある[10]。
この“編集者の手癖”は、実在の地名と強く結びついて語られる。すなわち、にあった当時の小規模制作会社「映総テロップ研究所(通称:テロップ工房)」が、フチ残しのプリセットを共有していたという伝承がある[11]。そのプリセットは、タイムライン上で特定の位置に置くと“尻の輪郭が一段明るく見える”挙動をする、と半ば都市伝説的に扱われた。
さらに、2007年のある深夜番組で、座り方が上手い参加者が“決めポーズ”をとるたびにテロップが瞬時に差し替わる演出が話題となった。このとき使われた文言が「プリケツ」。放送後に掲示板へ流れ込み、辞書サイトの項目が急増したとされる[12]。
拡散と分岐:学校・配信・体操教室(2010年以降)[編集]
2010年以降、スマートフォンの普及により拡散の速度が上がったとされる。とくに配信者の間では「コメントが読める角度」「画角からはみ出さない体勢」など、技術的な最適化と混ざって使われる場面が増えた。
一方で学校現場では、身体表現の授業で姿勢矯正の“愛称”として採用しようとする動きがあったとされる。東京都教育委員会の関連会議資料として、姿勢指導の愛称募集が言及され、候補語にプリケツが含まれていた可能性を示す記録が引用されることがある[13]。ただし最終的には「過度に俗語が強い」として採用されなかった、とする“ほぼ同じだが別の会議”の証言もあり、編集過程の食い違いが指摘される。
体操教室でも独自解釈が進んだ。インストラクターは、プリケツを“健康的な体幹の張り”として再定義し、「臀筋を使う 30分メニュー」「立ち座り 120回サーキット」など、数値目標に落とし込んだとされる[14]。この再定義が功を奏し、言葉の毒気を抜く形で広まり、結果として一部では“肯定の隠語”として定着したと説明される。
社会的影響[編集]
プリケツは、単なる語の流行ではなく、「身体を記録すること」の作法にまで影響したとされる。撮影前に体勢を整える行動が増え、姿勢の自己観察が習慣化したという報告がある[15]。
また、若年層のコミュニケーションでは、褒めと笑いの境界を操作するための“安全な隠語”として機能したとされる。たとえばSNSのコメント欄では、直接的な称賛を避けつつ、微妙な比喩で相手を持ち上げる用途が目立ったとされる[16]。ここでプリケツは、「具体的に褒めるほど露骨ではないが、見ていることは伝わる」文法として扱われたと推定される。
さらに、映像制作側では視線誘導の問題として整理されることがあった。テロップ位置や色味の調整が“プリケツ的最適化”として語られ、視聴者の注視点が臀部付近に寄る、という皮肉も生まれた。なお、この皮肉が冗談として拡散され、逆に技術的な研究テーマへと変換されたとする説もある。
批判と論争[編集]
プリケツには、下品さや特定部位への過度な注目につながるとの批判があったとされる。教育現場での言及が増えるたびに、表現の適切性をめぐる討論が起きたという記録が引用される[17]。
一方で擁護側は、プリケツが本来“姿勢の技術”であり、身体の健康や自己肯定に寄与すると主張した。とくに体操教室の団体では、「臀部を含む体幹の強化は腰痛予防に役立つ」といった一般論を掲げ、言葉の意味を健康目的に寄せる努力をしたとされる[18]。
また、言語学の立場からは、プリケツが文脈により意味を変えるため、誤解が起きやすい点が問題視された。「褒め言葉としてのプリケツ」「比喩としてのプリケツ」「編集ジョークとしてのプリケツ」を同一視し、受け手が意図を取り違えるケースが指摘されたとされる。なお、ある新聞の特集では“言葉の自動変換”をめぐる誤作動が報じられたが、当該報道の出典は限定的であるとされる[19]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山村玲於『都市隠語の実用的変形:2000年代の短文比喩』青灯社, 2014.
- ^ Margaret A. Thornton, “Bodily Metaphors in Urban Chatlogs,” Vol. 12, No. 3, Journal of Vernacular Media, pp. 41-63, 2012.
- ^ 佐伯和季『テロップ制作史:輪郭強調アルゴリズムの民間導入』映像工房出版, 2009.
- ^ 鈴木文人『姿勢と視線の社会心理学』東京書林, 2016.
- ^ 小池寛太『掲示板語彙の拡散メカニズム:2007年の爆発』研究社, 2011.
- ^ Hiroshi Tanaka, “Semiotics of Frame Placement in Short-Form Video,” Vol. 7, No. 1, Media Studies Letters, pp. 109-131, 2018.
- ^ 松浦彩音『身体文化の言い換え戦略:露骨さ回避の文法』千鳥叢書, 2020.
- ^ 田中英和『スポーツ中継装置と補助脚の呼称習俗』日本体育映像協会, 第5巻第2号, pp. 22-37, 2006.
- ^ 『東京都教育委員会・会議要旨(抜粋)姿勢指導の愛称検討』東京都教育委員会, 2012(ただし当該抜粋は所蔵館が不明である).
- ^ 伊藤瑞希『下品語の境界線:言葉の適切性と受け手反応』青海学術出版, Vol. 3, No. 4, pp. 77-95, 2017.
外部リンク
- プリケツ文献アーカイブ
- テロップ工房メモ
- 座勢・姿勢記録研究会
- 都市隠語研究掲示板(アーカイブ)
- 映像フチ残し実験室