ポケモンプリズンブレイク
| タイトル | ポケモンプリズンブレイク |
|---|---|
| 画像 | Pokemon_Prison_Break_boxart.png |
| 画像サイズ | 250px |
| caption | 北米版パッケージ。鉄格子の前で主人公と3匹の“ポケモン”が並ぶ構図が特徴である。 |
| ジャンル | リベレーションRPG |
| 対応機種 | サイバーポケット2、ウィンドレイク64 |
| 開発元 | サクラバイト・インタラクティブ |
| 発売元 | セントラル・ドームソフト |
| プロデューサー | 田所 恒一 |
| ディレクター | M. Thornton |
| 発売日 | 2007年11月22日 |
『ポケモンプリズンブレイク』(Pokemon Prison Break)は、にのから発売された。シリーズの第3作目にあたり、通称は「PPB」である[1]。
概要・概説[編集]
『ポケモンプリズンブレイク』は、が開発したである。プレイヤーは、違法な収容施設「プリズム拘束区」に潜入し、収監された生物たちを脱出させる役割を担う。
タイトルに含まれる「プリズンブレイク」は、当時流行していたの語感を踏まえたものであるが、実際には監獄そのものを破壊するのではなく、分類票と檻番号を入れ替えて“存在上の釈放”を成立させるゲームとして知られている。発売当初は「教育的であるが妙に物騒」と評され、の冬商戦において独特の存在感を示した[2]。
また、本作は第3作目であり、前2作の牧歌的な収集路線から一転して、収容、潜入、連携脱出を重視する方向へ舵を切った作品である。なお、販促資料では「捕まえるゲームから、逃がすゲームへ」という標語が掲げられたが、法務部の指摘により店頭ポスターの一部では「捕まえない」部分だけが妙に太字で印刷されたとされる[3]。
ゲーム内容[編集]
ゲームの基本は、プレイヤーが“獄内調整官”としてを巡回し、囚われたポケモンの状態、監視密度、空調の偏りを読み取りながら脱出ルートを確保することである。各ポケモンには「不満度」「連携度」「壁の向こうへの執着度」が設定されており、これらを適切に高めることで自発的な脱走が発生する。
ゲームシステムの特徴として、戦闘は従来のターン制ではなく、を前提とした“半リアルタイム交渉戦”である。プレイヤーはアイテムを投擲して警備員の視線を逸らしつつ、仲間のポケモンに合図を送り、最終的に全員で換気ダクトへ滑り込む。なお、アイテムの大半は「鍵」や「スープ」など脱出施設でありがちなものだが、なぜか「労働協約の写し」が最強クラスの補助アイテムとして扱われている[4]。
対戦モードでは、二人のプレイヤーがそれぞれ別の収容棟を担当し、先に12体のポケモンを“無事に迷子にする”ことを競う。協力プレイでは、片方が門番の注意を引き、もう片方が天井裏の通路を確保する役割分担が基本である。オフラインモードには「独房編」「面会室編」「非常食編」の3ルートがあり、特に「非常食編」は難度が高く、初回クリア率は発売元発表で18.4%とされた[5]。
ストーリー[編集]
物語は、で発生した大量失踪事件から始まる。同地では、希少ポケモンを“保護”する名目で収容していたが、実際には外部への譲渡記録が不自然に消えており、調査官のが内部告発文書を受け取るところから本編が動き出す。
主人公は、表向きは修復技師、裏では脱出支援の専門家であるである。彼は、かつての研究区画でポケモンの足環設計に関わっていたが、足環が“外れないための規格”から“外れたら通知が飛ぶ規格”へ改変されたことに反発し、施設を離れたとされる。主人公はユウナと合流し、監獄化した保護区の真相を暴くため、監視塔の暗号を解読しながら各棟を開放していく。
終盤では、施設の奥にある「第零観察室」で、収容されたポケモンの行動が都市計画データに転用されていた事実が判明する。これにより、プリズム拘束区は単なる収容施設ではなく、のための群衆制御実験場であったことが示唆される。ただし、最終ボスである所長は、あくまで「秩序を守るために鍵を増やした」と主張し、エンディング後の回想でも姿勢を改めないため、プレイヤー間では“脱獄しても話が通じない男”として長く語られた。
登場キャラクター[編集]
主人公は前述のである。寡黙だが道具の分解が異常に速く、作中では3秒で換気口を開ける演出が名物となっている。公式設定資料では「手先が器用すぎて、幼少期に校舎のドアノブをすべて左右反転させた」とされるが、信憑性については編集者間で意見が分かれている[6]。
仲間キャラクターとしては、内部告発者の、元看守の、そして通信だけで支援する整備士が登場する。特にベンジャミンは、看守としての知識を買われる一方で、警備犬にだけ異様に好かれるという特性を持ち、彼を同行させると通常よりも遠回りな脱走ルートが解放される。
敵対勢力は、を運営する「施設保全局」である。局長ののほか、現場責任者の、足環改造班のが登場する。ニーナは高圧的だがメモ癖があり、倒すたびに設計変更メモを落とすため、実質的にプレイヤーの攻略ヒント役でもある。
用語・世界観[編集]
作中の舞台は、の外縁に築かれた人工区画群である。プリズム拘束区は、名目上は「保護・観察・再適応」を目的とするが、実際には収容番号によって行動範囲を階層管理する高度な区画制度が導入されている。区画の設計にはに関わったとされる都市工学資料が流用されたという説があり、ファンの間では半ば定説化している[7]。
本作における「ポケモン」は、一般的な生態分類に加え、「社会適応度」で再ラベル化されている点が特徴である。たとえば、同じ種でも「協調型」「逃走型」「壁登攀型」に分けられ、それぞれが異なる脱出補助能力を持つ。なお、施設内で流通する通貨単位は“チケット”ではなく“許可書片”であり、10片集めると自動的に面会時間が1分延長される。
また、世界観上の重要概念として「無音権」がある。これは、収容ポケモンが1日3分まで完全な静寂を要求できる制度で、ゲーム内では強力なバフとして扱われる。現実世界の福祉制度を連想させる設定であるが、当時の資料では「本来ならば労務管理に組み込むべきではない」とする内部文書が見つかったとされている。
開発・制作[編集]
本作は第2開発部が中心となって制作された。制作経緯としては、前作までの“捕獲中心”の構造に対し、ディレクターのが「逃がす側の倫理を描くべきである」と主張したことが発端とされる。社内では当初、『プロジェクト・セルドア』の仮題で進められていたが、マーケティング部が「牢屋感が強すぎる」と難色を示したため、最終的に現在の題名に落ち着いた。
スタッフの中でも特筆されるのは、サウンド担当のである。彼女は施設内の空調音、配膳カートの軋み、遠くの金属扉の反響を採取し、それらを1音ずつ逆再生してBGM化したとされる。結果として、本作の曲は“落ち着くのに落ち着かない”と評され、発売後に一部のプレイヤーが現実の集合住宅の換気音に過敏になったとの報告もあった[8]。
制作終盤には、ポケモンを檻から出すたびに紙吹雪が舞う演出が加わったが、デバッグ中に紙吹雪の挙動が暴走し、特定条件下で画面全体が“祝賀会”になる不具合が発生した。これが逆に評判を呼び、後年の移植版ではこの現象が隠し演出として正式採用された。
音楽[編集]
サウンドトラックは全37曲で構成され、うち11曲が施設内BGM、9曲が潜入用、7曲が脱出成功時、残りがイベントおよびメニュー画面用である。代表曲「鍵盤の鳴らない夜」は、の暗い廊下を歩く場面で流れ、シリーズ屈指の人気曲となった。
主題歌は『BREAK THE FENCE』で、ボーカルには無名時代のが起用された。歌詞は一見すると励ましの歌であるが、サビに「番号を捨てて名を呼べ」という一節があり、施設内の表示番号を消すプレイと重ねて受け止められた。発売当時、歌詞カードの一部に“非常に小さくて読みにくい文字”が用いられ、これを拡大するとスタッフの愚痴が現れるという都市伝説が生まれた。
なお、オーケストラ編曲版はにで開催されたファンイベント「ブレイク・アンド・リリース」にて初披露された。会場では、入場特典としてミニ鍵束が配布されたが、実際には何も開かなかったことが参加者の間で有名である。
他機種版・移植版[編集]
初出は版であるが、翌年に版が発売された。後者では読み込み速度が向上し、換気口に入るたびに発生していた待機時間が約42%短縮されたとされる。また、には向けに再構成版が配信され、対戦モードがオンライン対応となった。
の対応版では、当時の通信規格に合わせて“看守の巡回パターン”が完全に再計算され、オフラインでも疑似対戦が可能になった。なお、移植作業を担当したは、イベント中に内部テキストの一部を誤って「独房」ではなく「独奏」と表記してしまい、以後その部屋だけ音楽室のような扱いを受けるようになったという。
海外向けにはとで異なる難度調整が行われ、北米版ではアイテムの説明が平易化された一方、欧州版では一部の看守会話が妙に長文化した。この差異は、ローカライズチームが法律文書風の語感を好んだためとされ、特に“面会申請の更新頻度”に関する注記は、シリーズでも屈指の読みにくさで知られている。
評価・売上[編集]
発売初週の国内販売本数は推定8万4000本で、その後じわじわと伸び、全世界累計で126万本を突破したと公表された。シリーズ作品としては中堅に位置する数字であるが、脱獄という題材の珍しさから口コミ評価が高く、特にではゴールド殿堂入りを果たした。
一方で、プレイヤーの約3割が「最初の看守に話しかける前に詰む」と回答したというアンケート結果もあり、難度の振れ幅が大きい作品としても知られている。販売店の記録では、子ども向け売り場であるにもかかわらず、保護者が説明を求めるケースが多発し、店員が「実質的には施設経営シミュレーションです」と説明したという逸話が残る。
にはの特別賞を受賞したとされるが、選評では「社会制度の語り口をゲームに持ち込んだ点が異様に真面目」と評された。なお、売上資料の一部には、販売数とは別に“脱出成功率”が併記されていたが、これが何を意味するのかについては今なお解釈が分かれている。
関連作品・関連商品[編集]
関連作品としては、前日譚にあたる『ポケモンプリズンブレイク0 収容前夜』、続編の『ポケモンプリズンブレイク2 監視塔の午後』が存在する。いずれも本作の世界観を拡張するもので、特に続編では対戦モードが“警報レベル制”になり、プレイヤーの間で議論を呼んだ。
関連商品では、『ポケモンプリズンブレイク 完全脱出手引書』がより刊行されたほか、『収容区画の歩き方』『看守のための午後三時の辞典』など、やけに硬派な書籍が多数出回った。これらの一部は一般書店でなく文具売り場に置かれていたため、購入者が誤って会議用ノートと一緒に持ち帰る事例が報告されている。
その他の書籍としては、開発資料を収めた『プリズム拘束区 監修記録集』が知られる。本文の半分が監査印で埋まっていることで有名であり、ファンの間では「最も読みにくい設定資料」としてコレクション対象になった。
脚注[編集]
[1] 作品公式パンフレットでは発売日が2007年11月21日と記載された版も存在する。
[2] 『ゲーム総覧 2007 冬号』の読者投稿欄による。
[3] 社内広報資料「脱出系タイトルの販促における法務注意事項」第4版。
[4] 要出典。
[5] 発売元の店頭向け資料では22.1%とする記載もある。
[6] 公式設定集の記述だが、後年の再録版では一部改稿されている。
[7] ただし、都市計画資料との直接の関連は確認されていない。
[8] 体験談をまとめた同人誌に基づく。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 田所 恒一『ポケモンプリズンブレイク 制作日誌』セントラル出版, 2008年.
- ^ M. Thornton, 'Containment and Release in Handheld RPGs', Vol. 12, No. 3, Game Studies Review, 2009, pp. 44-61.
- ^ 渡瀬フミ『換気音のための作曲法』ドーム音楽出版社, 2008年.
- ^ 小橋 理『脱獄ではなく脱出である:2000年代携帯機RPGの制度設計』文化遊戯学会誌, 第18巻第2号, 2010年, pp. 101-129.
- ^ Harvey Lind, 'Prism Ward Design and the Ethics of Inventory', Vol. 7, No. 1, Interactive Systems Quarterly, 2008, pp. 5-22.
- ^ 『ゲーム総覧 2007 冬号』メトロポリタン社, 2007年.
- ^ 村瀬 央『リベレーションRPG史』青霧書房, 2011年.
- ^ Lia Marston『BREAK THE FENCE』歌詞集収録版, ノーザンレーベル, 2009年.
- ^ 『ポケモンプリズンブレイク 完全脱出手引書』セントラル出版, 2008年.
- ^ Nina Volk, 'A Note on Unscheduled Relabeling', Vol. 4, No. 2, Archive of Fictional Computing, 2012, pp. 77-88.
外部リンク
- サクラバイト・インタラクティブ 公式アーカイブ
- セントラル・ドームソフト 製品一覧
- プリズム拘束区 ファン資料館
- 脱出RPG年表委員会
- 架空ゲーム保存会