マテリアルパンプキンORIGIN
| 名称 | マテリアルパンプキンORIGIN |
|---|---|
| 別名 | MPO、パンプキン原器 |
| 分野 | 保存工学・生活雑貨・民俗商品 |
| 提唱者 | 長谷川宗一郎、マーガレット・A・ソーン |
| 初出 | 1968年 |
| 主な拠点 | 大阪市住之江区、神奈川県川崎市 |
| 用途 | 粉体、乾燥食材、試料片の保管 |
| 特徴 | 内部が微弱に自己回転する樹脂層を持つ |
| 流行期 | 1974年 - 1981年 |
| 現状 | 一部の収集家と研究会で継続使用 |
マテリアルパンプキンORIGIN(マテリアルパンプキンオリジン)は、大阪府を中心に流通した、素材保全用のおよびその思想体系を指す名称である。もとはにの外郭研究班が試作した「可搬式の圧縮野菜貯蔵胴」に由来するとされる[1]。
概要[編集]
マテリアルパンプキンORIGINは、外見が小型のに似た保存容器群、ならびにそれに付随する設計思想を指す。名称にと付くのは、後年の量産型に対して「原初の配合比率」を保持した最初期版であることを示すためとされる。
一般には雑貨の一種として扱われるが、実際には期の工業試験、農産物の低温保管、さらには家庭用神棚の補助器具までを横断する複合概念であり、現在でも日本各地の古道具店や企業資料室に断片が残るとされる。もっとも、現存個体の多くは後年の復刻品であり、鑑定の際には底面の刻印と蓋内側の静電膜の有無が重視される[2]。
成立の経緯[編集]
起源は、大阪市北港地区にあったの外郭研究班が、乾燥の長期輸送を目的に行った実験に求められるとされる。主任技師のは、試料を金属缶に入れると香気が失われることを嫌い、内部に柔らかな有機物質の印象を残す外装を求めた。その結果、発泡樹脂を多層焼成して南瓜形に成形する手法が採用された。
一方で、1971年に渡米した材料学者が、の展示会でこれを「material pumpkin」と呼んだことから、名称が半ば定着したという説がある。なお、ORIGIN表記は本来プロトタイプ管理用の帳票印であったが、流通業者が「最初期版ほど味がある」と宣伝したため、そのままブランド化したとされる。ここでいう味とはもちろん比喩ではなく、容器表面が長期使用でわずかに栗風の匂いを帯びる現象を指す[3]。
特徴[編集]
MPOの最も奇妙な特徴は、蓋を閉めてから約17秒後に内部層が0.3度から0.8度だけ自己回転し、内容物の偏りを均す点である。この挙動は当初、の委託分析で「熱膨張による錯覚」と説明されたが、後年の観察では湿度42%前後の環境で最も安定して起こることが確認されたとされる。
また、外装の橙色は単なる塗装ではなく、粉末の飛散を抑えるために兵庫県西宮市の塗料会社が開発した二層顔料である。家庭向けモデルには取っ手が付くが、業務用はむしろ取っ手を嫌い、積み上げた際に「南瓜棚」と呼ばれる安定構造を形成する。これが倉庫現場で好まれた理由のひとつである。
ただし、蓋内面に彫られた三本線の意匠については用途が不明で、当時の技術者メモにも「祈念のため」としか記されていない。これが後年、者の間で「容器に霊性を付与するための設計ではないか」と解釈され、都市伝説化した[4]。
歴史[編集]
試作期[編集]
からにかけては、直径11センチ、14センチ、19センチの三系統が試作された。最初期個体は硬化不足で、落下試験で必ず二つに割れたため、研究班ではこれを「カボチャの反証」と呼んでいた。試作品は計43点作られたが、うち12点は学内の弁当箱として転用され、正式な記録から消えたとされる。
秋、での荷崩れ事故を受け、輸送業者がMPOを緩衝材容器として採用したことで注目が高まった。ここで初めて、食品保存と部材保護の両立が可能だと判明し、以後の量産化が始まった。
社会的影響[編集]
MPOは、収納用品としては小規模な成功に留まったが、デザイン史においては「実用品が記号化するときの典型例」としてしばしば引かれる。とくにでは、南瓜形状が「可食性の幻影を持つ工業製品」として講評され、学生課題の定番となった。
また、奈良県の一部農村では、MPOを床の間に置くと冬越しの豆が減らないという俗信が生まれ、昭和末期まで使われた家があったとされる。こうした民間信仰の広がりが、製品を単なる容器から「家の機嫌を見る道具」へと変化させた点は興味深い。
一方で、保存試料の匂い移りが強い個体が市場に出回ったことで、から「南瓜に見えるが実際は匂いの器である」との苦情も相次いだ。これが逆にブランドを強め、「臭いほど本物」という偏った評価軸を生んだともいわれる。
批判と論争[編集]
MPOをめぐる最大の論争は、ORIGIN表記が本当に原初版を意味するのか、それとも後年の販売促進用に付された誇張なのかという点である。の『関西生活文化年報』は「原型管理番号が消印で改竄されている」と指摘したが、試験所側は「湿気によるにじみ」と反論した[5]。
また、蓋内面の三本線が由来の記号に似ているとして、海外の愛好家の間で「パンプキン・ヒエログリフ説」が流布したこともある。しかし、実際には当時の設計担当者が定規を忘れ、工員が指でなぞって入れた傷ではないかとする見方が有力である。
なお、現存する「初代MPO」のうち少なくとも7点は、後年の復刻キャンペーンで人工的にエイジング処理されたものであるとされる。このため、真贋判定にはの紫外線検査が用いられるが、検査結果が毎回少し違うため、最終判断はしばしば鑑定人の気分に委ねられる。
脚注[編集]
脚注
- ^ 長谷川宗一郎『南瓜形保管胴の試作記録』関西電機工業試験所報告 第12巻第3号, 1970, pp. 41-68.
- ^ Margaret A. Thorn 『Material Pumpkin and the Domestic Container』Journal of Applied Material Folklore, Vol. 8, No. 2, 1973, pp. 115-139.
- ^ 井上信吾『生活改善助成と雑貨市場の変遷』大阪経済評論 第21巻第1号, 1976, pp. 9-27.
- ^ H. Sato, K. Watanabe 『Rotational Lining in Pumpkin-Shaped Storage Vessels』Transactions of the Japan Society for Storage Science, Vol. 15, No. 4, 1980, pp. 201-224.
- ^ 『関西生活文化年報 1987』関西生活文化研究会, 1988, pp. 88-93.
- ^ 田丸美紀『匂いを保つ器の民俗誌』京都民俗出版, 1996, pp. 33-59.
- ^ M. A. Thorn 『The ORIGIN Problem: A Note on Prototype Markings』Proceedings of the Chicago Symposium on Utility Objects, Vol. 3, 1972, pp. 7-18.
- ^ 古川隆之『防災倉庫における南瓜型保管槽の導入事例』地域防災研究 第9巻第2号, 2012, pp. 145-162.
- ^ 大阪市立工芸研究所編『紫外線下における樹脂老化の鑑定法』工芸資料叢書, 2004, pp. 1-74.
- ^ R. Bennett 『The Curious Smell of Early Polymer Produce』London Materials Quarterly, Vol. 6, No. 1, 1979, pp. 55-73.
外部リンク
- 関西電機工業試験所アーカイブ
- 南瓜型保存具研究会
- 大阪古道具資料室
- Material Pumpkin Registry