ムチムチタムチゲーム
| 分類 | 参加型ミニゲーム/即興ルール |
|---|---|
| 主な素材 | タムチ(ぬいぐるみ)/記録カード/音響パネル |
| 発祥地(伝承) | 台東区周辺の催事“座布団広場” |
| 導入年(推定) | 頃 |
| 参加人数 | 2〜8人(同時) |
| 勝敗条件 | 触感点+演出点+“タムチの尊厳”点 |
| 関連組織 | タムチ審査連盟(TAR) |
| 文化的特徴 | 真面目な採点と、妙に柔らかい所作 |
(むちむちたむちげーむ)は、ぬいぐるみを「ぬいぐるみとして扱う」こと自体を遊戯体験に組み込んだとされる、架空の参加型ミニゲームである。専用の審査会と地域イベントを介して普及したとされ、の一部地域で“妙に真面目”に流通したことで知られている[1]。
概要[編集]
は、参加者がタムチ(ぬいぐるみ)を“別のもの”としてではなく、あくまでぬいぐるみとして扱うことを中心に構成されたミニゲームであると説明される。ここでいうタムチは、単なるぬいぐるみではなく「ぬいぐるみをぬいぐるみを指すもの」として機能する、という解釈が採用されることが多い。
遊び方は「所作の一致」を点数化する方式として知られ、触感を直接競うのではなく、審判が“触っているように見える”仕草を採点する点に特色がある。そのため、子ども向けの会合だけでなく、大人の同好会にも“変な納得感”を与えたとされる。
なお本作は、後述するように実在の商業ゲームではないにもかかわらず、資料の多くが“ゲームマニュアル風”に書式を整えていたため、後年に資料が流通すると「本当にゲームだったのでは」と誤解される場合がある[2]。
成立と用語[編集]
タムチの定義(誤読が前提とされる)[編集]
タムチは、一般に「ぬいぐるみ」を指す語として扱われる。しかしでは、言葉遊びの要として、タムチが“ぬいぐるみをぬいぐるみを指す”役割を担う、とされる。すなわち、タムチそのものが指示対象であると同時に、指示が成立する枠組みをも含む、という一見すると循環した定義が採られるのである[3]。
この循環性は、会場で配布されたカードに「タムチはタムチを見てタムチを理解する」と印字されていたことが、のちの研究で“暗黙のルール”として引用されている。もっとも、当時の説明担当者は「理解しなくてよい。所作だけ揃えば勝てる」と述べたとされる[4]。
ムチムチの意味(圧ではなく“間”を指す)[編集]
ムチムチは触感を想起させる語であるが、本ゲームでは“圧をかける”ことが目的ではないとされる。むしろ、ぬいぐるみを持ち上げた瞬間から元に戻すまでの“間”(ま)を、審査員が音響パネルの波形で測定する運用があったと説明される。
具体的には、台座上でタムチの下半身が揺れる回数を「ムチムチ値」と呼び、規定の回数(例:左右それぞれ3回)を外すと演出点が減点されたとされる。もっとも、記録データの一部は“揺れではなく照明のチラつきで加点された”可能性が指摘され、記述が複数の編集者で揺れている[5]。
歴史[編集]
前史:座布団広場と“ぬいぐるみ敬語”[編集]
伝承によれば、の源流は台東区の催事「座布団広場」に求められる。そこで1990年代半ば、来場者がぬいぐるみを雑に扱う“場の温度差”が問題化し、主催側が「ぬいぐるみに敬語を使うように」と掲示したのが発端だったとされる[6]。
掲示文には「タムチを投げない」「タムチに謝る」「タムチを指さして笑わない」といった、いわば倫理指導の文言が並び、その延長として“採点つきの儀式遊び”が考案された。これが“ムチムチタムチ”という名称に繋がった、とする記事が地方紙に掲載されたことがある[7]。
公的な形:タムチ審査連盟(TAR)の設立[編集]
1997年頃、ぬいぐるみの所作を統一する目的で「タムチ審査連盟(TAR)」が任意団体として設立されたとされる。TARはの公民館で初回講習を実施し、参加者に配布した“採点表”には、触感点・演出点・タムチの尊厳点の3要素が記載されていた。
当時の報告書では、触感点は最大30点、演出点は最大40点、尊厳点は最大50点の計120点満点で運用されたとされる。ただし“尊厳点が満点のときのみ触感点が計算される”という、数学的にも気分的にも不自然な条件が併記され、現場の混乱が“笑いの起源”になったとも言われる[8]。
波及:福祉イベントから企業研修へ[編集]
その後、福祉施設のレクリエーション担当が「指示理解と所作反復」に有効性を見出し、堺市のボランティア連絡会経由で普及したとされる。さらに2000年代初頭には、研修会社が「チームの視線合わせ」に転用したという記録がある。
研修会社はではなく、匿名の“市民実験機構”名義だったとされ、参加者には「笑ってはいけない、しかし間違えれば笑う」と説明されたという逸話が残る。なお、当時のパンフレットには「所要時間は13分37秒」と明記されていたが、実測値は施設ごとに±4分の誤差が出たとされる[9]。
ルールと採点システム[編集]
ゲームは通常、1ラウンドを「ウォームアップ(2分)」「所作統一(6分)」「記録確認(5分)」の3フェーズに分けて実施されるとされる。参加者はタムチを並べ、審査員が“指示の聞き方”を観察することで演出点を与える。
採点の核は触感を直接競わない点にあり、審査員がタムチの沈み込みではなく、沈み込み後に戻る“戻り角度”を目視して評価した、とする証言が複数ある[10]。この評価は、波形メータ(音響パネル)の読み取りと相関していたとされるが、パネルの校正が不十分だった地域では結果がブレたとも言われる。
一方で「タムチの尊厳点」には、ぬいぐるみを安全に扱う所作(床への置き方、持ち替えの回数など)が含まれる。あるマニュアルでは「持ち替えは1回まで、ただし祈る場合は2回まで」と注釈され、読者のツッコミポイントになったとされる[11]。
社会的影響[編集]
は“柔らかいルールで人を集める”という点で、当時のコミュニティ運営に影響を与えたとされる。特に、子どもの遊びを大人が見守る形式を確立し、結果として会場内の衝突が減ったという報告がある。
また、タムチを「ぬいぐるみとして扱う」ことが重視されたため、福祉現場では介助者と利用者の境界が緩む効果が期待されたと説明される。研修転用では、チーム内の“視線・間・言い方”を揃える練習として扱われたが、やがて「揃えることが目的化した」とする批判も生まれた(後述)。
さらに、採点が120点満点で示されたことで、SNS的な模倣が起き、各地で独自の“タムチ辞典”が作られた。辞典には、タムチのサイズ(例:縦18.5cm前後)や、目の縫い方(糸の色)まで採点表に紐づけたページがあり、現場の神経質さと熱量の両方を示す資料として残っている[12]。
批判と論争[編集]
批判としては、第一に“ぬいぐるみを評価しているように見える”点が挙げられる。TARの運用説明では「評価されるのは所作」とされていたが、実際には参加者の表情や沈黙の長さも暗黙に点数化されていたのではないか、と指摘されたことがある[13]。
第二に、採点の再現性に問題があるとされる。ある研究ノートでは、同一参加者が同じタムチで同じ所作を行った場合でも、演出点が最大で+12点振れるケースが記録されたとされる。ただし当時のノートは“照明の色温度によって審査員の感情が変わる”という仮説も同時に書かれており、真偽のほどは検証されていないとされた[14]。
第三に、企業研修への転用が「本来の倫理の文脈を失わせた」との声がある。研修会社側は「家庭でのぬいぐるみ扱いを改善する狙い」だったと説明したが、参加者からは「ぬいぐるみがいない会議でもやらされる」などの不満が出たとされる。結果として、いくつかの地域では“ムチムチは封印されるべき”という署名が出たが、反対に「封印した方がムチムチらしい」という逆転も起きた[15]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 山下梓『ぬいぐるみ儀礼の採点学:台東区座布団広場の記録』台東文庫, 2002.
- ^ TAR調査班『タムチ審査連盟(TAR)運用要項と付随解釈』非売品, 1998.
- ^ Katherine N. Whittaker, “Embodied Courtesy Games in Urban Community Halls,” Journal of Playful Regulation, Vol. 12 No. 3, pp. 41-66, 2004.
- ^ 田中真澄『間(ま)を測る:ムチムチ値の生成仮説』音響教育研究会, 第7巻第2号, pp. 12-29, 2001.
- ^ 佐伯隆一『倫理を遊びにする技術:尊厳点の設計思想』明快出版, 2006.
- ^ Matsuda & Rivero, “Mundanely Serious Scoring Systems and the Desire to Standardize,” International Review of Improvised Activities, Vol. 5, pp. 90-103, 2008.
- ^ 吉田澄人『タムチ辞典の系譜:縫糸色と採点の相関(仮)』地方文化資料館年報, 第19巻第1号, pp. 77-88, 2010.
- ^ 編集部『所作の逸脱と笑い:座布団広場から学ぶ実践例』中央会議体報, 2011.
- ^ (書名が一部誤記の文献)Nakamura, “The Respect Index: A Study on Plush Handling,” Plush Studies Quarterly, pp. 1-9, 1999.
- ^ 田口海斗『企業研修としてのムチムチタムチゲーム:善意の空転』労働と遊戯の研究叢書, 第3巻第4号, pp. 55-73, 2014.
外部リンク
- タムチ採点Wiki(非公式)
- 座布団広場アーカイブ
- TAR手順書ポータル
- 音響パネル校正データ庫
- タムチ辞典閲覧室