レムリア(バンド)
| 活動期間 | 2004年 - 2016年(断続的に活動) |
|---|---|
| 出身地 | (結成当初の所在地とされる) |
| ジャンル | オルタナティブ・ロック、音響実験的ロック |
| レーベル | 架空の自主系流通「潮騒レコード」→提携レーベル「青灰社」 |
| 公式サイト | 潮騒レコードのアーカイブに統合(とされる) |
| 代表作 | 『潮位の物語』、『復元された夜』 |
| 特徴 | 空調ログ/来場者の拍動データを“楽器化”する演出 |
| 関連人物 | 音響監修のほか |
レムリア(バンド)(英: Lemuria)は、を拠点とし、初期は“記憶を加工する”系のサウンドコンセプトで知られたロックバンドである[1]。結成直後から口コミ主導で急速に認知され、ライブでは会場の空調ログをサンプリングする演出が話題になった[2]。
概要[編集]
は、2000年代半ばに“ノイズの中に物語の骨格がある”として評価を集めたロックバンドである[1]。表向きにはオルタナティブ・ロックとして紹介されるが、実際には音響制作の手順そのものをパフォーマンス化した点が特徴とされる。
結成の契機は、当時の横浜の深夜スタジオ事情にあると説明される。すなわち、録音中に突如流れ込む空調の唸りが“リフ”として機能してしまい、メンバーがそれを偶然からルールへ昇格させたという筋書きである[3]。のちにファンの間では、空調ログを採取した曲は「潮位が書き換わる」と呼ばれた。
なお、バンド名の由来は古代の海洋文明「レムリア」との関連を示唆する伝承が多いが、当初から意図的に伝説へ寄せていたとも、単なる語感として採用されたともされる[4]。
歴史[編集]
結成と“空調ログ楽器化”の発明[編集]
レムリアは、の旧港倉庫を転用したスタジオ「みなと音源研究所」で結成されたとされる[1]。当時、音響エンジニア志望の学生が、空調制御のログ(毎分1回、8バイト刻み)を保存していることに偶然気づいたのが発端とされる[2]。
当初のデモでは、ログのうち“圧力変動の中央値”だけを抽出し、120 BPMに正規化する方法が採られた。さらに、中央値抽出をやめて“第3四分位点”を使うと、なぜかギターの和音に同期して聴感上のうねりが揃うことが判明したと主張された[5]。この手順は後に「四分位同調法」と呼ばれ、バンドの技術的アイデンティティとなった。
この発明は、現場の関係者のあいだで、録音機材の進歩以上に“運用の発想”として語られた。特に、空調ログを取り込むために、スタジオの契約書には“音響データ保持期間は最長18か月”という条項が追記されたとされる[6]。ただし、当時の契約書原本の所在は確認されていないとする指摘もある[7]。
メジャー化、潮騒レコードと青灰社の攻防[編集]
2007年、レムリアは自主系流通「潮騒レコード」を通じてシングル『海霧のプログラム』をリリースした[3]。この時期の特徴は、曲のタイトルが必ず“潮位(度)”を含む点である。たとえば『-2.7度の拍動』『+13.2度の余韻』のように、海況計の値がそのまま楽曲の座標になっていると説明された[8]。
その後、メディア露出が増えるにつれて、空調ログ由来の音声サンプルが“学術データ”に近いという評価が広がった。一方で、著作権・プライバシーの観点から議論も起きたとされる。特に、来場者の拍動を推定するアルゴリズム(心拍推定はカメラではなくマイクの位相情報から行うと説明された)が、公共空間の利用として過剰ではないかという指摘が現れた[9]。
2010年には、提携レーベル「青灰社」が立ち上がり、レムリアのアルバム制作予算を“音響実験の継続費”として計上したと報じられた[10]。しかし、青灰社はその2年後に経営再編を受け、レムリアのマスター保管をめぐって社内移管が発生したとされる。結果として、2012年以降のリマスタリングに用いられたデータが一部差し替わったという噂が流れた[11]。
活動停止と“復元された夜”の伝説[編集]
レムリアはにアルバム『復元された夜』を発表し、その制作工程は“復元”という言葉で統一された[12]。具体的には、元データから欠損部分を推定し、欠損率が“4.9%以内”に収まるまで試行を繰り返したとされる[13]。この細かさは、ファンが制作報告書のスクリーンショットを拡散したことで広く知られるようになった。
ただし、欠損率4.9%という数値は、後にレポートのフォーマット上の単位(小数点の桁)を誤って解釈した可能性があるとも指摘された[14]。それでもライブでは“復元された夜”の中盤で、ステージ上の大型パネルに天井照明のチラつき周波数が表示される演出が行われたとされ、観客が「曲が観測される」感覚を共有したと語られた[15]。
最終的にレムリアは、公式発表としては“音響環境の変化”を理由に活動を縮小したと記録されている[1]。ただし別の筋書きとして、青灰社の保管データ移管に起因する再制作費の不足があったという説明もある[11]。
音楽性と手法[編集]
レムリアの音楽は、単なる実験に留まらないとされる。中心に置かれたのは「現場の環境を楽器として扱う」発想であり、空調ログの周波数帯域を、ギターの倍音構成へマッピングする手順が繰り返し用いられた[2]。
特に四分位同調法は、デモの段階では“中央値だけだと退屈になる”という反省から生まれたとされる[5]。一方で、第3四分位点に切り替えると“聴感上の重心が前へ出る”という主観的な効果が報告された。この主観は、ライブ会場の反響時間(RT60)を10秒単位で推定していることと関連づけられたが、実測の詳細は公表されていない[7]。
また、作詞面では潮に関する語彙が多用される。『潮位の物語』では全63行のうち、比喩としての“水面”が21回出現する設計だったと語られた[8]。さらに“繰り返し”を統計で管理し、サビの語尾が毎回同じ音節で終わることが検査されたとする証言がある[16]。
社会的影響[編集]
レムリアは、音響データの扱い方をめぐる議論を一般化させたとされる。空調ログや位相情報を“音の材料”として扱う姿勢は、企業の広報担当者にとっても分かりやすい物語になり、2010年代前半にはの文化施策に“環境音の創作活用”が盛り込まれる契機になったと説明される[17]。
一方で、音響実験が“データの収奪”に見える局面もあった。ライブ会場では、周辺の環境音を採取するためのマイクが設置され、結果として「何を採っていたのか」を問う投書が自治体の受付に複数届いたとされる[18]。レムリア側は「個人が特定できない位相特徴量のみを扱った」と反論したが、説明資料の公開が遅れたとも指摘された[9]。
その後、音楽学校や専門学校では“環境ログの取り扱い”を講義に組み込む動きが広がり、講義名が『四分位同調法入門』として整備されたとされる[19]。もっとも、同講義がどの学校で正式採用されたかは文献によって異なり、編集者の推測が混じっている可能性があるともされる[14]。
批判と論争[編集]
レムリアに対する批判として、まず“根拠の薄い数値の多用”が挙げられる。欠損率4.9%や同調精度の“±0.3度”といった指標は魅力的だが、出典が制作報告書のスクリーンショットであったため、再現性の検証が難しいとされた[13]。
また、空調ログ楽器化がプライバシーに触れる可能性については、当初の説明が曖昧だったと指摘されている。レムリアは位相特徴量のみを扱うと主張したが、ファンが解析手順を自作した際に“別の数値が混ざる”ことを発見し、内輪で混乱が起きたとされる[9]。その騒動はメンバー間で「解釈の四分位がずれた」という言い回しで記録されている。
さらに、バンド名由来の古代文明レムリアについても、商業的マーケティングとの関係が疑われた。古代史研究者からは「レムリアという語は本来別文脈のものであり、安易な接続だ」との批判が出たとされる[20]。もっとも、レムリア側は「語源はどうでもよい、耳で確かめろ」といった趣旨の発言を行ったとされ、論争は“理解”ではなく“体験”へとすり替わったと述べられる[1]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 神森 咲『環境音創作の実務と倫理』潮騒出版, 2012.
- ^ 小笠原 亘『四分位同調法の工学的検討』日本音響技術協会, 2009.
- ^ 青灰社編集部『青灰社アーカイブ:契約条項と音源管理』青灰社, 2012.
- ^ レムリア制作委員会『潮位の物語:全制作手順(暫定版)』潮騒レコード, 2010.
- ^ Kira Tanaka, "Quartile Synchrony in Live-Recorded Acoustics," Journal of Soundcraft, Vol. 18, No. 3, pp. 41-58, 2011.
- ^ M. R. Thornton, "Phase Features and Non-Identifying Audio Signatures," International Review of Audio Ethics, Vol. 6, Issue 1, pp. 12-27, 2013.
- ^ 横浜市文化局『環境音の利活用に関する報告書(第2版)』横浜市, 2011.
- ^ 村上 輝彦『ライブ空間におけるデータの見える化』音楽メディア研究会, 2014.
- ^ Dr. Margaret A. Thornton, "A Note on Maritime Folk Metaphors," Vol. 2, No. 7, pp. 201-209, 2010.
- ^ 渡辺 朱莉『海洋伝承の商業的再解釈:レムリア語の系譜』学術出版企画部, 2016.
外部リンク
- 潮騒レコード・アーカイブ
- 青灰社アーティスト資料室
- 横浜文化音響コラボレーション
- 日本音響技術協会 研究者検索
- ライブ会場音響ログ公開窓口