國學院大學トライアンフ
| 読み | こくがくいんだいがくとらいあんふ |
|---|---|
| 発生国 | 日本 |
| 発生年 | 1938年 |
| 創始者 | 渡辺精一郎、久保田ミツ、國學院大學体育研究会 |
| 競技形式 | 対抗式・点数積み上げ制 |
| 主要技術 | 踏鳴り、旗受け、円環送り、声号換気 |
| オリンピック | 非正式競技(公開競技として提案) |
國學院大學トライアンフ(こくがくいんだいがくとらいあんふ、英: Kokugakuin Triumph)は、で生まれたのスポーツ競技である[1]。の学生寮で考案されたとされ、後にの大学対抗競技として知られるようになった[1]。
概要[編集]
國學院大學トライアンフは、の周辺で成立したとされる、二隊対抗の屋内外混成競技である。木製の円環を旗竿で回収し、一定の踏鳴り回数を経て所定の台座へ納めることで得点を競う[2]。
競技名の「トライアンフ」は、英語の triumph に由来するとされるが、創始期の学内記録では「勝鬨の一種」「儀礼的移動競技」とも記されている。実際には初期の学生自治活動と体育授業の空白時間を埋めるために考案されたもので、のちにの非公式種目として普及した[3]。
また、競技の成立には神事作法の影響があったとする説があり、試合開始時に選手が方向へ一礼する慣行が残っている。ただし、この所作は後年の演出であるとの指摘もある。
歴史[編集]
起源[編集]
起源は、神道学科の講義室で行われた「移動と礼法の統合訓練」にあるとされる。体育研究会の渡辺精一郎は、剣道と陸上競技の要素を「学園祭でも成立する形」に圧縮することを目指し、久保田ミツが考案した紙製の円標を競技物へ転用した[4]。
初期の試合は千駄ヶ谷の仮設広場で行われ、参加者12名、審判2名、記録係1名という小規模なものであった。なお、初回大会の優勝者が本来は記録係であったにもかかわらず、途中で選手登録が修正されたという逸話が残る。
国際的普及[編集]
になると、占領下の学内行事として短期間の自粛を受けたが、1954年にが結成され、とで巡回講習会が始まった。1959年にはの延世大学と交換留学を通じて紹介され、1962年にはの教育省体育課が学校行事モデルとして視察したとされる[5]。
1968年のでは、文化プログラムの一部として模擬演技が検討されたが、円環の規格がオリンピック委員会の安全基準を満たさなかったため採用されなかった。このため、競技者のあいだでは「正式競技に最も近づいた非正式競技」と呼ばれている。
ルール[編集]
試合場[編集]
試合場は縦28メートル、横16メートルの矩形で、中央に半径3.2メートルの「礼環域」が置かれる。礼環域の外周には木製の踏板が8枚、四隅には旗柱が立てられ、両隊はそこを起点に攻防を行う[6]。
床面はまたは防滑加工を施した合板が用いられ、雨天時には内の室内体育館へ移されることが多い。なお、地方大会では畳敷きで実施される場合もあり、これを「古式トライアンフ」と呼ぶ。
試合時間[編集]
標準試合は前後半各9分、間に2分の整備時間を挟む。延長戦では「声号換気」と呼ばれる息継ぎ制限が導入され、1回の発声は7秒以内と定められている[7]。
ただし、との交流戦で17分を超える膠着が続いたことから、1987年以降は審判が任意に「静止札」を掲げて試合を打ち切る権限を持つようになった。これにより、終盤の逆転劇が増えたともいわれる。
勝敗[編集]
得点は、円環の回収、台座への納入、旗受け成功、踏鳴り連続数によって決まる。最終得点が同点の場合は、選手全員が礼環域で一礼し、最後に残った呼気量の多い隊を勝ちとする[8]。
この判定法は極めて異例であるが、創始期からの伝統として尊重されている。なお、2011年の戦では、呼気計測器の設定誤差により両隊優勝となり、記念盾が左右で色違いになった。
技術体系[編集]
國學院大學トライアンフの技術は、通常「踏鳴り系」「受環系」「儀礼系」の3系統に分類される。踏鳴り系は足運びの速さよりもリズムの均質さを重視し、受環系は円環を壊さず移送するための手首の返しが重視される。
儀礼系では、開始前の礼、得点後の半回転、退場時の逆礼が重要とされる。とくに「半礼半歩」と呼ばれる動作は、40年代に体育教員の有馬賢三が体系化したとされ、現在でも上級者の評価基準になっている。
さらに、試合中の声号には「イ」「ロ」「ハ」の3拍子が割り当てられ、これを崩さずに走ることが理想とされる。もっとも、実戦では第2声号がかすれてしまう選手が多く、観客からは「競技というより学芸会に近い」と評されることもある。
用具[編集]
主な用具は、円環、旗竿、踏板、呼気計、礼帯である。円環は径18センチメートル前後の白木製が標準で、外周に薄い漆が塗られる。旗竿は長さ1.4メートルで、学内の古材倉庫から再利用されることが多い[9]。
礼帯は腰に巻く幅広の布で、色は、、の3種が伝統色とされる。1970年代には軽量化を目的としてカーボン芯入り旗竿が試作されたが、見た目が「近代化しすぎている」として不評であった。
また、非公式ながら「勝鬨笛」と呼ばれる金属製の短笛が存在する。これはの倉庫から発見されたという説が有名であるが、実際には1993年の学園祭で製作されたものとする研究もあり、出典が割れている。
主な大会[編集]
最も権威があるのは、毎年に開催される「全國學院トライアンフ選手権」である。第1回大会はに目黒区の旧校舎前で行われ、観覧者は47名だったが、翌年には学外からも1200名を超える見物客が集まったと記録されている[10]。
ほかに、「東日本学生礼環大会」「関東三大学親善杯」「神田古書店街ナイトトライアンフ」などがある。とくに神田大会は、書店の閉店後に棚間を使って実施されるため、選手が誤って時刻表コーナーへ突入する事故が多いことで知られる。
国際大会としては「アジア礼環交流戦」があり、、、を巡回している。2016年の大会では、現地通訳が「triumph」を「凱旋」と誤訳したことから、選手入場曲が急遽軍楽風に変更された。
競技団体[編集]
統括団体は(JTA)で、本部をに置く。JTAは審判資格、円環規格、礼法研修を一元管理しており、年に3回の規約改定会議を開くことで知られている[11]。
國學院大學内にはを母体とする「学内トライアンフ部」があり、毎年の新入生勧誘で最も重要な実演種目とされる。また、の外郭資料では「大学スポーツ文化の周縁に発達した礼式系競技」と整理されている。
国際的にはがあるが、加盟国数は公表資料で22か国、内部資料では19か国とされ、数字が一致しない。この点については、加盟の定義に「試合経験を持つ大学」が含まれるかどうかで解釈が分かれている。
脚注[編集]
[1] 国立体育史研究会『近代日本における礼式競技の形成』体育史叢書 Vol.12, 2008, pp. 41-46.
[2] 渡辺精一郎「トライアンフ初期規則草案」『國學院体育年報』第3巻第2号, 1939, pp. 5-9.
[3] 山岸澄子『大学スポーツと儀礼空間』新潮社, 1997.
[4] 佐伯宗一「紙環の転用と競技化」『日本競技文化研究』Vol.8, No.1, 1961, pp. 112-119.
[5] Kim, Hye-ran, "Campus Ritual Games in Postwar East Asia," Journal of Asian Physical Culture, Vol. 14, No. 3, 1970, pp. 77-88.
[6] 日本トライアンフ協会規格部『競技場設計要覧 第4版』JTA出版局, 2019.
[7] 有馬賢三『声号換気法の実際』道和書院, 1988.
[8] 田所一郎「同点判定における残気量基準の導入」『体育裁定学会誌』第11巻第4号, 2002, pp. 203-210.
[9] 國學院大學資料編纂室『学内用具台帳 1937-1955』非売品, 1956.
[10] 『全國學院トライアンフ選手権 記録集』全国大会実行委員会, 1940.
[11] International Triumph Federation, Annual Bulletin 2023, pp. 9-14.
関連項目[編集]
初期の学生文化
と体育
脚注
- ^ 国立体育史研究会『近代日本における礼式競技の形成』体育史叢書 Vol.12, 2008.
- ^ 渡辺精一郎「トライアンフ初期規則草案」『國學院体育年報』第3巻第2号, 1939.
- ^ 山岸澄子『大学スポーツと儀礼空間』新潮社, 1997.
- ^ 佐伯宗一「紙環の転用と競技化」『日本競技文化研究』Vol.8, No.1, 1961, pp. 112-119.
- ^ Kim, Hye-ran, "Campus Ritual Games in Postwar East Asia," Journal of Asian Physical Culture, Vol. 14, No. 3, 1970, pp. 77-88.
- ^ 日本トライアンフ協会規格部『競技場設計要覧 第4版』JTA出版局, 2019.
- ^ 有馬賢三『声号換気法の実際』道和書院, 1988.
- ^ 田所一郎「同点判定における残気量基準の導入」『体育裁定学会誌』第11巻第4号, 2002, pp. 203-210.
- ^ 國學院大學資料編纂室『学内用具台帳 1937-1955』非売品, 1956.
- ^ International Triumph Federation, Annual Bulletin 2023.
外部リンク
- 日本トライアンフ協会
- 國學院大學体育資料室
- 全國學院トライアンフ選手権実行委員会
- International Triumph Federation
- 礼環競技アーカイブ