平成版 役所のお仕事~今日から私は窓口業務~
| タイトル | 平成版 役所のお仕事~今日から私は窓口業務~ |
|---|---|
| 画像 | (架空)行政フロア風のUIスクリーン |
| 画像サイズ | 320×200px |
| caption | 「受付番号B-17」の発券音を再現したとされる演出 |
| ジャンル | 行政窓口シミュレーションRPG |
| 対応機種 | エレクトロ卓上機 / ほぼ同時期の互換携帯端末(通称:旧型手のひら端末) |
| 開発元 | 窓口計画株式会社 |
| 発売元 | 市民商会販売(Civic Mart Distribution) |
| プロデューサー | 渡辺精一郎 |
| ディレクター | 佐橋ユリ子 |
『平成版 役所のお仕事~今日から私は窓口業務~』(よみ、英: Heisei Edition: Office Worker at City Hall ~From Today I Handle the Counter~、略称: マド窓)は、[[2004年]][[9月17日]]に[[日本]]の[[窓口計画株式会社]]から発売された[[エレクトロ卓上機]]用[[コンピュータRPG]]。[[平成庁舎シミュレーション]]の第3作目である[1]。
概要[編集]
『平成版 役所のお仕事~今日から私は窓口業務~』(通称: マド窓)は、[[市役所]]の[[窓口業務]]を模したロールプレイングゲームである。プレイヤーは「新任・臨時窓口員」として、申請書の不備修正、受付番号の管理、書類の期限判定を行いながら、フロア全体の秩序を“それっぽく”維持する任務を遂行する[1]。
本作は、2003年末時点での全申請書類の文言を再構成した「文言アーカイブ方式」を採用したとされる。なお、開発側は“本当に必要だったのは正確さではなく、正確さに見える振る舞いである”と述べており、結果としてゲーム体験は、細部の暗記と読み替えの連続として設計された[2]。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステムの特徴として、プレイヤーは来庁者(NPC)からの申告内容を聞き、[[住民票]]、[[印鑑登録]]、[[税]]、[[福祉]]、[[戸籍]]に分類された“紙束”を組み替える必要がある。UI上の紙束は10〜14枚で構成されることが多く、誤って1枚でも欠けると「窓口判定」がやり直しとなるため、操作は事務作業に寄せている[3]。
戦闘に相当するのは「書類戦(書類上の矛盾解消)」であり、正解の提示には“根拠行”と呼ばれる選択肢が必要である。根拠行は各章で5〜27種類が用意され、プレイヤーの回答速度と丁寧さ(敬語パラメータ)で難易度が上下する。このうち“丁寧さ”は実質的に反射神経の別名として調整されていると指摘されている[4]。
アイテム面では、[[様式]]をめくる「様式紙スキャナ」、書類の不備を隠す「修正テープ(しかしゲーム内では“不可逆”とされる)」、そして受付印の「ゴムの匂い(匂いゲージ)」が存在する。特に匂いゲージは、プレイヤーが深呼吸動作を行うほど増える仕様であると説明されるが、実際には深呼吸の回数が“納得度”を直接上げているだけであるという噂もある[5]。
対戦モードとしては「納税者チーム vs 窓口チーム(擬似)」が用意され、相手の提出期限を“会話で揺さぶる”ことでポイントを奪う仕組みとされる。オンライン対応は未搭載である一方、オフラインモードにて高難度の連続来庁が可能であるとされる[6]。
ストーリー[編集]
ストーリーは、[[平成]]最後の年度に“増員が急に決まった”という触れ込みで始まる。プレイヤーは研修資料の束を受け取り、初日から「受付番号A-03」「B-17」「C-09」の同時進行に巻き込まれる。ここで重要なのは、来庁者ごとに“口癖”が固定されており、その口癖に対応する様式の章が自動的に割り当てられる点である[7]。
中盤では「全申請書類が3つの別紙でつながっている」設定が明かされ、2003年時点の文言アーカイブが、未来のトラブル予防として積み上げられていたことが示唆される。ただし物語の説明は比喩的であり、実装では“矛盾箇所”が単に乱数置換されているだけだとも言われる[8]。
終盤では、都市計画課、福祉課、税務課が同時に“書類の一部を別解釈していた”ことが発覚する。「同じ紙を見ているのに別の正しさが生まれる」ことが敵性イベントとして表現され、プレイヤーは根拠行を連結させて“行政の整合性”を取り戻す任務を負う[9]。
登場人物[編集]
主人公は名前を変更できる“臨時窓口員”であり、初期能力は「声量」「敬語」「紙の並べ替え速度」の3つに配分される。作中では、主人公が受付番号を間違えないように祈るような行動が求められ、成績が良いほど祈り回数が増える仕様が“儀式ゲー”だと評された[10]。
仲間としては、ベテラン窓口員の[[安永カナ]](通称:ゴム印のひと)、研修係の[[若林サチ]](通称:根拠行オタク)が登場する。彼女たちは戦闘というより、プレイヤーに“どの行を根拠とするか”を教える役目を負っている[11]。
敵は明確な人間ではなく、「様式の癖を悪用する来庁者グループ」として扱われる。彼らは同じ用語でも別の漢字を使うような細工をしてくるため、プレイヤーは常用漢字表に近い変換ルールを覚えさせられる。なお、このルールは開発当初に存在せず、後から追加された可能性が指摘されている[12]。
用語・世界観[編集]
本作の舞台は、架空の自治体である[[平成市]]の「庁舎三階・窓口回廊」である。なお、窓口回廊の構造は実在の行政施設の写真を“角度補正して引用した”とされるが、公式は具体名を伏せている[13]。
用語としては、来庁者側の提出物を指す[[提出束]]、窓口で照合するための[[根拠行]]、そして判定が確定する瞬間に発生する擬音の「カチッ」が存在する。カチッはゲームサウンドとしても実装されており、体感上は“正解を押した”時だけに鳴るよう調整されている[14]。
設定として、全申請書類が2003年時点の文言に基づく「過去整合データ」で作られていることが売り文句とされた。ただしデータの作成工程では“誰かがわざと誤記を混ぜ、別の担当者がそれを直すことで整合性が上がる”方式が採用されたとされ、結果としてゲーム内では誤記が頻出するようになったという証言がある[15]。このため、攻略サイトでは「誤記こそ合図」と説明されている。
開発/制作[編集]
制作経緯として、窓口計画株式会社の初期プロトタイプは、窓口業務を“暗記科目”ではなく“会話劇”として作ることを目標にしていた。しかし社内テストの結果、会話の選択肢はプレイヤーが見落としてしまうため、最終的に“紙束操作”が中心へと寄せられたとされる[16]。
スタッフには、プロデューサーの渡辺精一郎、ディレクターの佐橋ユリ子のほか、UI担当に[[立花モトハル]]、文言設計に[[陣内和典]]がクレジットされている。特に文言設計チームは「文言は意味よりも体裁であり、体裁が揃えば正義は後から来る」と主張したと報じられている[17]。
一部には、2004年の発売直前に「期限判定ロジック」に約19,340件の微修正が入ったという社内ログが出回ったとされる。もっとも、これは後年のファン解析であり、出典は定かでないとする指摘もある[18]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラックは「事務用BGM集」として設計され、主旋律は鳴らない。代わりに、窓口の所作音—受付印、紙をめくる、鉛筆を削る—がリズムを形成する方式が採用されたとされる。プレイヤーの敬語パラメータが高いと、所作音のテンポがわずかに揃う仕掛けがあり、「職員としての成功体験が音で伝わる」と評された[19]。
また、特定の根拠行を連結させた時にだけ短いファンファーレが入るが、音量は控えめである。ファンの間では“勝っているのに音が小さい”ことがリアリティであると語られた[20]。
評価(売上)[編集]
発売当初はミリオンセラー級の反応を得たとされ、全世界累計では110万本を突破したと報告されている。ただし公式発表の時点では「対象年齢」や「集計方法」の注記が少なく、後年の集計では数値が10%前後動いた可能性があるとされる[21]。
日本ゲーム大賞では、窓口風RPGの“演出の非ゲーム性”が評価され、日本ゲーム大賞を受賞したとされる。さらに[[ファミ通]]のクロスレビューではゴールド殿堂入り扱いとなり、レビュー担当者の一人が「戦闘より紙が怖い」とコメントしたことが話題となった[22]。
関連作品[編集]
関連作品として、[[平成庁舎シミュレーション]]の第1作目『昭和区画 役所の裏方メモ』、第2作目『平成改訂 住民課の夜勤』、そして本作の続編『平成終盤 監査室の沈黙』が挙げられる。これらは窓口業務を別角度から描くシリーズとして位置づけられた[23]。
またメディアミックスとして、作中の受付番号を擬人化した架空キャラクターが主役のテレビアニメ「受付番号は語りだす」が放送されたとされる。制作サイドは“紙の擬音を歌にしたら勝てる”と考えたという[24]。
関連商品[編集]
攻略本として『平成版 役所のお仕事 窓口判定完全読解ガイド(上巻)』および『同(下巻)』が出版されたとされる。上巻には“根拠行の選び方”が図解され、下巻には“誤記を見抜く漢字置換表(暫定)”が掲載されていると説明される[25]。
さらに、実務“っぽさ”を再現するための書籍『受付番号の鳴らし方—カチッ理論入門—』が発売された。これはゲームプレイではなく、音の鳴りを観察する儀式指南書として売れたとも言われる[26]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「『平成版 役所のお仕事』文言アーカイブ方式の設計意図」『行政UI研究』第12巻第4号, 2004, pp.23-41.
- ^ 佐橋ユリ子「窓口を“戦闘”に変換する—根拠行ロジックの実装報告」『ゲームシステム紀要』Vol.7 No.2, 2005, pp.55-78.
- ^ 陣内和典「誤記は合図である—行政文書データの意図的揺らぎ」『日本語処理とエンタメ』第3巻第1号, 2006, pp.9-26.
- ^ 立花モトハル「所作音がもたらす注意配分—事務BGMの心理モデル」『サウンドインタラクション研究』Vol.2 No.3, 2004, pp.101-118.
- ^ 市民商会販売編『平成版 役所のお仕事 公式ガイドブック』市民商会出版, 2004, pp.1-320.
- ^ 窓口計画株式会社『開発ログ集(社内配布資料の抜粋)』窓口計画, 2004, pp.77-86.
- ^ Margarita A. Thornton「Counter-RPGs and the Theatre of Paper」『Journal of Civic Play』Vol.18 No.1, 2005, pp.14-33.
- ^ 青山ナツキ「受付番号は物語になるか—メディアミックス分析」『文化研究ジャーナル』第21巻第2号, 2007, pp.200-219.
- ^ ファミ通編集部「クロスレビュー:マド窓は“紙が怖い”」『ファミ通』2004年11月15日号, pp.48-49.
- ^ 若林サチ「敬語パラメータと納得度の相関」『対話型ゲーム設計ワークショップ論文集』2004, pp.66-70.
外部リンク
- 平成庁舎資料館(架空)
- マド窓解析コミュニティ(架空)
- 根拠行辞典(架空)
- 受付番号カチッ研究所(架空)
- 窓口計画アーカイブ(架空)