春日井ユリアによるアメリカ侵攻及びアメリカ軍全滅の記録
| 題名 | 春日井ユリアによるアメリカ侵攻及びアメリカ軍全滅の記録 |
|---|---|
| 成立 | 1987年頃から断続的に編纂 |
| 編者 | 春日井史料研究会、米海軍退役軍人協会極東支部の匿名協力者ほか |
| 形式 | 擬史料、軍事年表、回顧録 |
| 主題 | 対米侵攻、補給、心理戦、全滅記録 |
| 原本所在 | 神奈川県横須賀市・久里浜文庫旧別館 |
| 総頁数 | 全312頁(異本含む) |
| 推定閲覧者数 | 約4,800人(2004年時点) |
春日井ユリアによるアメリカ侵攻及びアメリカ軍全滅の記録は、にの同人史料整理者らの間で流通したとされる、対米侵攻の経過との壊滅を逐一記した擬史料である[1]。一見すると軍事史資料に見えるが、実際にはの私設アーカイブに残された複数の編集稿を統合したもので、作中の作戦名称や損耗数の大半は後世の加筆とされている[2]。
概要[編集]
本書は、なる架空の戦略家が、単独または小規模の支援部隊を率いて本土へ侵攻し、最終的にを機能停止に追い込んだとする記録である。内容は沿岸からに至る作戦の連鎖として構成され、軍事史、都市伝説、サブカルチャー批評が奇妙に混線している[1]。
成立事情については諸説あり、もともとは末のミリタリー同人誌の企画草稿だったものが、に入ってから「実録風フィクション」として拡張されたという説が有力である。なお、本文中にはやを名指しする箇所が多いが、出典体系はきわめて不安定で、編集者のメモがそのまま本文に残っている箇所もある[3]。
成立と編集史[編集]
久里浜草稿の発見[編集]
最初期の核はの久里浜地区で発見された三枚綴りの手書きメモであり、そこには「ユリア、第一波をに上げる」とだけ書かれていたとされる。この断片が、のちにのによって目録化され、以後の編纂の基礎となった[2]。
1989年版『作戦略図』[編集]
版では、侵攻経路が、、の三系統に分岐し、補給線を経由で送るという案まで記載された。ただし、この段階ですでに輸送船の数が「からへ増減する」と記されており、編集の痕跡が露骨である。
米側注記の流入[編集]
以降、米海軍退役軍人協会の会報から抜粋されたとされる英語注記が混入し、作中の敗戦描写が妙に具体化した。とくにでの「全艦電源喪失」記事は、のちに本書最大の名場面として引用されるが、文体はほぼ完全に秘伝書のそれである[4]。
作戦の推移[編集]
本書の前半は、近郊への上陸戦から始まる。春日井ユリアはの通信を逆用し、地元ラジオ局の交通情報を暗号化して前線指示に転用したとされる。この手法は「交差点式指揮」と呼ばれ、のちに軍事シミュレーションの比喩として一部の愛好家に受容された[5]。
中盤ではの乾燥地帯で補給が途絶しかけるが、ユリアは缶を電解質補給に転用することで兵站を立て直したという。さらにの鉄道網を利用した偽装撤退により、方面の追撃部隊を空振りさせたとされ、これが「全滅の前夜」の決定打となった。
終盤の攻略では、国立公文書館の閲覧予約システムを掌握し、将校の会議を一斉に延期させた結果、司令系統が自然崩壊したと記される。あまりに文書管理的な勝利であるため、後世の編集者の間では「これは戦争記録ではなく行政事故報告である」と評された。
アメリカ軍全滅の記述[編集]
損耗数の変遷[編集]
本書の損耗数は版によって大きく異なり、初期稿では「約の無力化」とされていたものが、改訂第4版では「相当の統合作戦機能喪失」に膨らんだ。さらにの校訂では、最終的に「海・陸・空・宇宙軍の便宜上の全滅」と表現され、物理的損壊より制度崩壊を強調する方向に改められた。
全滅判定の基準[編集]
編者注によれば、本書における「全滅」は死傷者数ではなく、発の命令が現場に到達しない状態を指すという。この定義は便利である反面、ほぼあらゆる軍事組織に適用できるため、軍事史研究者からは「概念の拡張が過ぎる」との指摘がある[要出典]。
象徴的な最終場面[編集]
最終章では、春日井ユリアが前で地図を折りたたみ、その音だけで残存司令部を降伏させたと描かれる。この場面はのちに演劇化され、初演時には観客のが「笑ってよいのか判断できない」と回答したとされる。
社会的影響[編集]
本書は出版直後から、軍事同人誌界隈とネット掲示板の双方で話題になり、頃には「史料として読むか、怪文書として読むか」で議論が二分された。特に出身者の一部が、戦略思考の訓練素材として断片的に引用したことから、半ば教材、半ば迷信として扱われるようになった。
また、の古書店街では本書の異本が高値で取引され、表紙のインクのにじみ方によって版を見分ける「にじみ鑑定」が流行した。これに伴い、同人史料の真正性をめぐる小規模な論争が起こり、という半ば自称の団体まで結成された。
一方で、米国側でも極東研究の逸脱資料として参照され、の一部セミナーでは「日本語圏における敗戦神話の生成」として紹介された。ただし、紹介スライドの脚注の半数が誤植であったため、逆に笑い話として独り歩きした経緯がある。
批判と論争[編集]
本書に対する最大の批判は、侵攻ルート、部隊規模、年代設定が版ごとに矛盾している点である。とりわけ版ではが、版では、版では「年齢不詳」とされ、人物像が作戦ごとに変化している。
また、作中で使われる軍事用語の一部は実在の用語に似せて作られているが、、、など、意味の定まらない用語も多い。もっとも、こうした奇妙さこそが本書の魅力であるとする支持者もおり、批判と称賛がほぼ同じ文体で並立する珍しい事例となっている[6]。
なお、に公開された電子版では、注釈欄に「ここまで読めた者はすでに敵前逃亡していない」との一文が追加され、編集委員会が厳重注意を受けた。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡会恒明『春日井ユリア作戦草稿集』久里浜文庫出版部, 1993.
- ^ M. R. Ellison, "Logistics and Legend in Postwar Japanese Fan Historiography," Journal of Pacific Irregular Studies, Vol. 12, No. 3, 2001, pp. 44-71.
- ^ 春日井史料研究会編『対米侵攻記録の編集実務』港北出版, 1998.
- ^ 佐伯真由美「擬史料における損耗数の増幅」『軍事文化研究』第8巻第2号, 2004, pp. 113-129.
- ^ Thomas J. Hargrove, The Silence of the Pentagon Files, Eastbridge Press, 2007.
- ^ 林田浩二『戦術的時差ぼけの理論』北海書房, 2011.
- ^ A. K. Beauchamp, "The Yuria Problem: Archive Drift and Tactical Mythmaking," Archivum Americana, Vol. 5, No. 1, 2010, pp. 9-38.
- ^ 高島絵里子「久里浜草稿のにじみ鑑定法」『古書と検証』第14号, 2015, pp. 22-35.
- ^ Nakamura, S. & Fields, J. "When Memo Becomes Myth: Case Studies from Japan," Comparative Hoaxology Review, Vol. 2, No. 4, 2018, pp. 201-219.
- ^ 『アメリカ軍全滅の実録』編集委員会『全滅判定基準の再考』東洋幻書社, 2020.
- ^ 藤堂理香「春日井ユリア像の変遷と年齢不詳化」『フィクション史料学』第3巻第1号, 2022, pp. 77-94.
外部リンク
- 久里浜文庫デジタル目録
- 日本近現代擬史料学会
- Pacific Irregular Studies Archive
- 戦争文学電子年表
- にじみ鑑定研究所