東京賛辞
| 名前 | 東京賛辞 |
|---|---|
| 画像 | TokyoEulogy_2009_live.jpg |
| 画像説明 | 2009年、公演にて |
| 画像サイズ | 260px |
| 画像補正 | yes |
| 背景色 | #EAF2F8 |
| 別名 | トウサン |
| 出生名 | 東京賛辞 |
| 出身地 | |
| ジャンル | アートロック、ポスト歌謡、都市民謡 |
| 職業 | ロックバンド |
| 担当楽器 | ボーカル、ギター、ベース、ドラムス、電子琴 |
| 活動期間 | 1998年 - 2012年、2017年 - |
| レーベル | Morrow Prism Records |
| 事務所 | 霞台音響社 |
| 共同作業者 | 、 |
| メンバー | 神谷澄人、篠原みづき、久我遼、早瀬ユウ |
| 旧メンバー | 立花一郎、園部ノブ |
| 公式サイト | tokyosanji.jp |
東京賛辞(とうきょうさんじ)は、の4人組である。所属事務所は、レコード会社は。1998年に結成、2003年にメジャーデビューした。略称は「トウサン」。公式ファンクラブは「賛辞倶楽部」である。
概要[編集]
東京賛辞は、を題材にした歌詞世界と、合唱的なコーラスを特徴とするのである。都市の喧騒を礼賛するというより、むしろ都市が住民に返してくる無数の沈黙を歌う集団として知られている[1]。
1990年代末、の旧倉庫街で始まった即興セッションを母体に成立したとされ、初期はライブごとに編成と曲順が変わる「移動式バンド」として評判を集めた。後年、やのライブハウスを中心に支持を拡大し、2000年代には「東京を最も東京らしくない方法で讃えたバンド」として批評家の関心を引いた[2]。
メンバー[編集]
現在のメンバーは、神谷澄人(ボーカル・ギター)、篠原みづき(キーボード・コーラス)、久我遼(ベース)、早瀬ユウ(ドラムス)の4人である。いずれも音楽専門学校出身ではなく、周辺の古書店、写真館、印刷所などで働いていた経歴を持つとされる。
旧メンバーには立花一郎(サックス・電子音響)と園部ノブ(打楽器)がいた。2人は1998年から2001年まで在籍し、東京賛辞の初期サウンドに街頭演劇的な要素を与えたが、機材車の荷台に積まれた金属棚の揺れをめぐる口論を機に脱退したという逸話が残る[要出典]。
バンド名の由来[編集]
バンド名は、神谷が1997年冬にの喫茶店で拾った古い観光パンフレットの余白に書かれていた「東京賛辞」という言葉から採られたとされる。もともとは都市賛歌ではなく、都市生活の機械性を皮肉る仮題であったが、メンバーがその語感を気に入り正式名称となった。
また一説には、当時のメンバーがの印刷所で校正の手伝いをした際、誤植として組まれた「東京散事」が、最終的に「東京賛辞」へと修正されたことが由来ともされている。本人たちは後年、どちらが真実かを尋ねられるたびに「東京は訂正され続ける都市である」とだけ答えていた。
来歴[編集]
結成期(1998年 - 2002年)[編集]
1998年、の元織物倉庫で行われたイベント「夜の搬入口」で初演を行い、これが事実上の結成とされる。第1回公演では、神谷が路面電車の音を模したフィードバックを鳴らし、篠原がの地図を譜面台代わりに使ったことで、観客の一部が演劇公演と誤認したという。
2000年には自主制作盤『区画整理のためのラブソング』を500枚限定で頒布し、のインディーズ流通網で評判を得た。とくに収録曲「午前3時の都庁」は、当時まだ存在しないはずの“空港のアナウンス風コーラス”を導入した曲として語られている。
メジャーデビューと転機(2003年 - 2008年)[編集]
2003年、アルバム『賛辞の速度』でよりメジャーデビューした。シングル「雨の」がで初登場18位を記録し、同年の深夜音楽番組でMVが大量に放送されたことで、都市派ロックの新星として注目された。
2005年には、東京都交通局の協力を得たように見えるタイアップ曲「路線図の余白」が話題になったが、実際には駅名の読み違いを逆手に取った映像演出が先行し、関係各所に微妙な気まずさを残したといわれる。2007年のアルバム『高架下の祝日』では、ストリングスと打ち込みを大胆に導入し、長年のファンの一部から「ようやく地上に出た」と評された。
活動休止、再結成(2009年 - )[編集]
2009年末、ボーカルの神谷が喉の疲労と都市観の枯渇を理由に活動休止を発表し、東京賛辞は事実上の沈黙期間に入った。翌年の予定されていた全国ツアーは中止されたが、代替公演としての百貨店屋上で行われた1回限りの朗読会が「無音のライブ」として記録されている。
2017年、の小劇場イベントで突如再結成を発表し、旧曲「築地の灯台」を20年越しに初演した。再結成後はかつての鋭さに加え、年齢相応の諦念とユーモアが増したとされ、2022年以降は各地のホール公演に加えて、自治体主催の都市文化講座にも出演している。
音楽性[編集]
東京賛辞の音楽性は、、、、および昭和期の歌謡曲の節回しを混交したものと評される。ギターは輪郭をはっきりさせず、ベースは歩道のように一定で、ドラムスは信号機の変わり目を連想させる不規則さを持つとされる。
歌詞はの地名を直接多用する一方、実際には東京らしさの記号を1枚ずつ剥がすような構造になっている。代表曲「銀座で迷子」は、百貨店の閉店時刻をモチーフにした3拍子のバラードであり、ライブでは観客が静かに手拍子をずらすことが半ば慣例化していた。
人物[編集]
神谷澄人は、寡黙な司会進行と過剰に詳細な都市豆知識で知られる。実際には鉄道趣味を公言しているが、本人は「切符の裏面に書かれた文字列の方が歌詞より雄弁である」と語ったことがある。
篠原みづきは、バンドの事実上の編曲責任者であり、編成やコード進行の修正を鉛筆で行うため、ライブ前の楽屋が毎回製図室のようになるといわれた。久我遼は無口だが、の実家で飼っていた鶏の鳴き声をサンプリングに用いたことがある[3]。
早瀬ユウはバンドのムードメーカーで、MC中に突然の時刻表を読み上げる癖がある。これが観客の集中を散らすこともあったが、逆に「時間感覚を演出するパフォーマンス」として評価されるようになった。
評価[編集]
東京賛辞は、商業的な成功よりも批評面での影響が大きいバンドとされている。音楽誌『Night Harbor Review』は、「彼らは東京を称えるのではなく、東京が自らを説明できない部分を代弁した」と評し、の年間特集で表紙を飾らせた。
一方で、都市を題材にしながら地方公演での受けが妙に良いことから、地方紙の一部では「東京反省会バンド」と呼ばれたこともある。とくに、、での公演は、観客が歌詞の地名をそれぞれの自分史に読み替える傾向が強く、社会学者の調査対象になったという。
受賞歴・記録[編集]
2004年、『賛辞の速度』が最優秀アルバム賞を受賞した。2007年には「路線図の余白」がで年間最優秀楽曲に選出され、同賞史上初の「歌詞の半分以上が路線名である作品」として記録された。
2018年には再結成後初の全国ツアー『帰還する高架下』が、全12会場で延べ41,200人を動員した。なお、2011年に一度だけ公開された未発表曲「地下道の天使」は、後年の配信停止後もファンの間で幻の名曲として扱われている。
ディスコグラフィ[編集]
シングル[編集]
・「雨の」(2003年) - メジャーデビュー後初のシングルで、駅前の雑踏音を冒頭20秒に収めたことで話題になった。
・「路線図の余白」(2005年) - 交通案内と恋愛歌詞が交互に現れる構成で、MVではのホームを模したセットが使われた。
・「終電の発明」(2007年) - 終電という概念を恋愛の終端に見立てた曲で、カップリングには7分を超える環境音トラックが収録された。
アルバム[編集]
・『区画整理のためのラブソング』(2000年) ・『賛辞の速度』(2003年) ・『高架下の祝日』(2007年) ・『無音の見取り図』(2010年) ・『帰還する高架下』(2018年)
『無音の見取り図』は、全12曲中4曲がほぼ無音で構成されており、発売当初は「プレスミスではないか」と問い合わせが相次いだ。実際には制作陣が意図的に余白を残した結果であるとされる。
映像作品[編集]
・『夜の搬入口 1998-2002』(DVD、2004年) ・『高架下の祝日 - Final Section』(Blu-ray、2008年) ・『再結成 2017 東京公会堂』(配信映像、2019年)
映像作品では、ステージ上の照明が曲ごとに都市の時間帯を表すよう設計されており、特に『夜の搬入口』では終演後に観客が出口を探して10分ほど彷徨ったという。
ストリーミング認定[編集]
東京賛辞の主要曲は、2010年代後半以降、各種配信サービスで再評価が進んだ。2024年時点で「雨の」は累計3,800万回再生、「路線図の余白」は2,900万回再生を突破している。
一方で、アルバム単位の再生は突出しておらず、ファンの間では「通しで聴くと都市が一晩で老ける」と評されることもある。なお、配信認定の基準が年ごとに微妙に変わっているため、事務所発表と各サービスの数値が一致しないケースがある[4]。
タイアップ一覧[編集]
「雨の」は、架空の都市型クレジットカードCM『Night Transfer』の主題歌に起用された。「路線図の余白」は、の文化事業を模したキャンペーン映像『まちの余白を歩く』に使用された。
また、「終電の発明」は深夜帯情報番組のエンディングテーマとして使われ、視聴者が番組内容よりも次の電車を気にする副次効果を生んだとされる。2019年には「築地の灯台」が、再開発を題材にしたドキュメンタリー映画の挿入歌に採用された。
ライブ・イベント[編集]
東京賛辞は、ライブ演出において会場の地理的条件を強く意識することで知られる。たとえばでは曲間に坂道の映像を投影し、では風向きに合わせて曲順を急遽変更したという。
2018年から2019年にかけてのツアー『帰還する高架下』では、各公演でアンコールの代わりに「その街の終電時刻」が読み上げられた。最終日の公演では、終演後に観客の半数が本当に終電を逃したため、周辺のカフェが深夜2時まで臨時営業したという逸話がある。
出演[編集]
テレビ[編集]
音楽番組『MIDNIGHT GRID』や『SONGS』風の特番に出演したほか、地上波の情報番組では「東京を歌うバンド」としてたびたび紹介された。2006年の特番では、神谷がスタジオで路線図を折り紙のように畳み始め、進行役を困惑させたことがある。
ラジオ[編集]
風の架空番組『Tokyo After Echo』にレギュラー出演し、深夜1時台の「終電相談室」を担当した。リスナーから寄せられる恋愛相談に対し、メンバーが最寄り駅の乗換案内だけを返す回が人気であった。
映画・CM[編集]
映画『高架下の祝日』では本人役でカメオ出演し、実際の演奏よりも長い無言のシーンが残された。CMでは、架空飲料「ノクターン炭酸」の広告に起用され、缶を開ける音だけで1分を持たせたことで、業界内で妙に評価された。
NHK紅白歌合戦出場歴[編集]
東京賛辞は、2018年に『路線図の余白』でへ初出場した。舞台装置として風の円形LEDが組まれ、歌唱中にメンバーが実際には走らずに走っているように見せる演出が施された。
2020年にも特別企画枠で出演し、「築地の灯台」を披露した。なお、同年の台本には「歌唱後、司会者が地名の由来について5分ほど尋ねる」と記されていたが、放送では時間の都合で割愛された。
脚注[編集]
1. 東京賛辞の結成史については諸説ある。 2. 2000年代初頭のライブ記録は、ファンサイトの断片的保存に依拠している。 3. 久我遼のサンプリング手法は、本人が一度だけ認めている。 4. 配信再生数は各サービスの集計方式により差異がある。
参考文献[編集]
・佐伯真一『都市を歌う技法――東京賛辞論』Morrow Press, 2019. ・Marina Thornton, "Post-Subway Lyricism in Early 21st Century Japan", *Journal of Urban Sound Studies*, Vol. 8, No. 2, pp. 41-67, 2021. ・黒川冬馬『高架下の歌謡学』霞台出版, 2012. ・「東京賛辞インタビュー記録集」『音楽都市年報』第14巻第3号, pp. 88-103, 2008. ・E. Caldwell, *The Prism and the Platform: Japanese Art Rock After 1995*, Northbridge Academic, 2020. ・田島玲子『無音の見取り図とその周辺』港町書房, 2024. ・S. Hargrove, "A Chorus for the Terminal City", *Sound & Avenue Quarterly*, Vol. 5, No. 1, pp. 9-24, 2017. ・編集部編『東京賛辞年鑑 1998-2023』旧・港区録音協会, 2023. ・小野寺航『終電の発明史』京浜文化社, 2015. ・「賛辞倶楽部会報 第27号」霞台音響社, 2018.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
tokyosanji.jp
Morrow Prism Records 公式アーティストページ
賛辞倶楽部 オンラインアーカイブ
都市音響資料室 東京賛辞特集
夜の搬入口 デジタルライブラリ
脚注
- ^ 佐伯真一『都市を歌う技法――東京賛辞論』Morrow Press, 2019.
- ^ Marina Thornton, "Post-Subway Lyricism in Early 21st Century Japan", Journal of Urban Sound Studies, Vol. 8, No. 2, pp. 41-67, 2021.
- ^ 黒川冬馬『高架下の歌謡学』霞台出版, 2012.
- ^ 「東京賛辞インタビュー記録集」『音楽都市年報』第14巻第3号, pp. 88-103, 2008.
- ^ E. Caldwell, The Prism and the Platform: Japanese Art Rock After 1995, Northbridge Academic, 2020.
- ^ 田島玲子『無音の見取り図とその周辺』港町書房, 2024.
- ^ S. Hargrove, "A Chorus for the Terminal City", Sound & Avenue Quarterly, Vol. 5, No. 1, pp. 9-24, 2017.
- ^ 編集部編『東京賛辞年鑑 1998-2023』旧・港区録音協会, 2023.
- ^ 小野寺航『終電の発明史』京浜文化社, 2015.
- ^ 「賛辞倶楽部会報 第27号」霞台音響社, 2018.
外部リンク
- tokyosanji.jp
- Morrow Prism Records 公式アーティストページ
- 賛辞倶楽部 オンラインアーカイブ
- 都市音響資料室 東京賛辞特集
- 夜の搬入口 デジタルライブラリ