紙コップ石井
| コンビ名 | 紙コップ石井 |
|---|---|
| 画像 | なし |
| キャプション | 下北沢の小劇場公演ポスターより |
| メンバー | 石井弘樹、石井和也 |
| 結成年 | 1989年 |
| 解散年 | 2011年 |
| 事務所 | 架空芸能社 |
| 活動時期 | 1989年 - 2011年 |
| 芸種 | 漫才、コント、紙コップ芸 |
| ネタ作成者 | 石井弘樹 |
| 出身 | 東京都杉並区 |
| 出会い | 都立善福寺工業高校の放送研究会 |
| 旧コンビ名 | ペン皿 |
| 別名 | 紙コップ兄弟 |
| 同期 | ミミズク電機、夕暮れドライバーズ |
| 影響 | 90年代の小道具漫才の隆盛 |
| 現在の代表番組 | なし |
| 過去の代表番組 | 『深夜紙コップ劇場』 |
| 現在の活動状況 | 活動終了 |
| 受賞歴 | 関東若手演芸大賞 優秀賞(1997年) |
| 公式サイト | 紙コップ石井アーカイブ |
紙コップ石井(かみこっぷいしい)は、・発祥とされるの。1989年結成、所属。紙コップを用いた即興漫才と、毎回必ず飲み口が湿るという異様な演出で知られる[1]。
メンバー[編集]
石井弘樹(いしい ひろき、1968年 - )はボケ担当で、ネタ作成も兼任した。無地の白いを用いて観客の注意を一点に集める構成を得意とし、のちに「湿度で間を取る男」と評された。
石井和也(いしい かずや、1969年 - )はツッコミ担当である。相方の紙コップ操作に対し、声量ではなくコップの傾きで感情を表現する独自の手法を確立したとされる。また、現場では「コップ角度87度」と呼ばれるほど姿勢に厳格であった[2]。
来歴[編集]
結成[編集]
、の放送研究会において、校内放送の原稿を回し読みしていた二人が意気投合し結成された。最初は「ペン皿」という名で活動していたが、文化祭で石井弘樹が誤って持ち込んだがマイク代わりに機能したことから、観客の笑いが急増し、翌月には現在の名義に改称したとされる。
初期は周辺の喫茶店の片隅でネタを披露していたが、紙コップを積み上げて崩すだけの演目が「物理的にうるさい」と評判になり、の小劇場に進出した。なお、1980年代末の段階で紙コップ芸を常設レパートリーに持つコンビは珍しく、当時のでは「コップ漫才」とも呼ばれていた[3]。
東京進出[編集]
に活動拠点をへ移した時期があるが、これは関西進出というより、紙コップの仕入れ先がに集中していたためである。二人は毎月第2火曜に問屋街を巡り、底が二重になった業務用紙コップを1000個単位で調達していたという。
にはの深夜番組『深夜紙コップ劇場』にレギュラー出演し、30秒以内にオチをつける「ワンコップ・スタイル」を確立した。これが後年のの象徴的出来事とみなされ、当時の『月刊演芸通信』では「関東の観客は笑う前に耐久試験を受けている」と論評された[4]。
活動休止と解散[編集]
ごろから紙コップの内側に吸水紙を貼る新方式をめぐって意見が割れ、弘樹が「音が鈍くなる」と主張したのに対し、和也は「むしろ人生は鈍い」と譲らなかったと伝えられる。対立は小規模なものだったが、コップを積む段数だけは互いに譲らず、控室に高さ1.8メートルの塔ができたという逸話が残る。
、最後の単独ライブ『最後の一杯』をもってした。終演後、使用済み紙コップがの劇場裏に約2,300個残され、地元の古紙業者が「演芸の痕跡としては異例の美しさ」とコメントしたとされる[要出典]。
芸風[編集]
紙コップ石井の芸風は、を基調としながら、紙コップを用いた視覚的なズレで笑いを生む点に特徴がある。通常のボケ・ツッコミの応酬に加え、コップの底を指ではじく乾いた音、唇が触れる湿った音、積み上げが崩れる破裂音の三層構造があり、観客はその順番で笑わされるとされた。
また、ネタの終盤に必ず一度だけ「紙コップを片手に持ったまま無言で3秒停止する」間が挿入され、これが後年の若手芸人に大きな影響を与えた。本人たちはこれを「静寂の回収」と呼んでいたが、周囲からは単に水分補給の合図と誤解されることも多かった。
では、喫茶店、図書館、給水車の車内など、コップが自然に存在しそうな場所を舞台に選び、現実味を損なわない範囲で異常な量の紙コップを出現させる手法を多用した。こうした演出は一部で「紙コップ主義」と総称された。
エピソード[編集]
、の審査員が、紙コップの内側に仕込まれた小さな鈴を「笑いの補助線」と評価し、結果として同大賞の優秀賞を受賞した。このときの審査講評には「水分量によって間が変化する」という不可解な文言が残っている。
の夏、関連の公開収録で紙コップが高温多湿により変形し、ネタ中に7個中4個がふにゃりと折れたことがあった。しかし石井和也はそのまま「熱波にも負ける紙コップなんて信用できません」とアドリブを入れ、会場の拍手を取ったという。
また、二人は地方営業で配られた紙コップを必ず持ち帰る習慣があり、のホテルでは清掃スタッフが「この部屋だけ空のコップが妙に整列している」と証言したとされる。これは後にファンの間で「紙コップ整列事件」と呼ばれた[5]。
出囃子[編集]
出囃子はの楽曲に似た構成を持つ、架空のインストゥルメンタル『Cup and Loop』であるとされる。実際にはの音響担当が、紙コップを8個並べて順に叩いた音をエフェクト処理したもので、著作権処理の都合上タイトルだけが後付けされた。
ライブハウス版では、最初の2小節で必ず一つだけ空振り音が入るのが決まりであり、常連客はその音で「今日はコップが新しい」と判別したという。
賞レース成績・受賞歴[編集]
『第3回 紙コップ寄席新人戦』準優勝。
『関東若手演芸大賞』優秀賞。
『東京漫才保存会 形式美賞』。
『M-1紙コップ部門』決勝進出(第6位)。この部門は正式名称が毎年変わる不安定な大会であったが、当時の記録では「紙コップを落とさずに笑わせる能力」が採点基準とされていた。
『キングオブコップ』ファイナリスト。決勝では、相方のツッコミよりも紙コップの山が先に崩れたことが逆に評価され、審査員コメントで「敗北の仕方に品がある」と述べられた[6]。
出演[編集]
テレビでは『深夜紙コップ劇場』のほか、『フロアマット48分耐久』、『東京コップ通信』などに出演した。とりわけ『東京コップ通信』では、毎回ゲストが一人ずつ紙コップを持参するルールがあり、結果として番組の小道具費が通常のバラエティ番組の約1.7倍になったとされる。
ラジオでは系の深夜番組『石井和也のぬるい夜』で、和也が一切笑わずにコップの話だけをする回が名物だった。映画出演は少ないが、公開の『給湯室の午後』で、弘樹が「紙コップを一切使わない芸人役」を演じ、実人生とのギャップが話題となった。
舞台ではの小劇場を中心に活動し、にはのホールで単独公演『うすい壁』を開催した。なお、当時の物販では「公演で実際に使用した紙コップ入り」とされた限定品が販売されたが、どのコップも会場で再利用されたものだったという。
単独ライブ[編集]
単独ライブは、初期の『一杯目が勝負』から後期の『最後の一杯』まで、常に紙コップの容量表記に引っかけたタイトルが付けられた。会場装飾には3000個前後の紙コップが使用され、天井の反響を利用して笑いを倍増させる「反響式セット」が採用されていた。
特にの『水位ゼロ』では、開演前に客席へ配られた紙コップに半分だけ水が入っており、観客が飲むか捨てるかを迷う時間そのものを導入部とする実験的な構成であった。演出家のは「笑いとは、満たされる直前の器である」と総括したが、これは後に本人が他のインタビューで完全に否定している[7]。
書籍[編集]
『紙コップ漫才論』(、)は、石井弘樹による随筆集であり、舞台上でのコップの角度と観客の呼吸数の関係が細かく記録されている。
また、『湿る前に笑え』(、)は、二人の対談をもとにした書籍で、巻末付録として「紙コップの底を鳴らすための指の鍛え方」が掲載された。なお、同書の第4刷では誤植により「紙コツプ」と表記されたが、関係者は「むしろ味がある」として修正を見送ったという。
脚注[編集]
[1] 紙コップ石井公式年表編纂室『紙コップ石井年譜 1989-2011』架空芸能社、2014年。 [2] 田所真一「コップ角度と間合いの相関」『演芸身体論集』Vol. 12, No. 3, pp. 44-58, 2002年。 [3] 関東放送芸術協会編『深夜演芸の変遷』第2巻第1号、pp. 101-109、1997年。 [4] 『月刊演芸通信』1996年11月号、pp. 22-25。 [5] 佐伯みちる「紙コップ整列事件の周辺」『小劇場文化史』第8号、pp. 9-13、2011年。 [6] K. Moriyama, "Cup-Based Comedy and Its Discontents", Journal of Performative Humor, Vol. 7, Issue 2, pp. 77-93, 2007. [7] 松浦義彦『うすい壁の演出学』白夜堂、2009年。 [8] 東都芸人研究会『関東若手演芸大賞記録集』、2010年。 [9] 石井和也「無言の3秒について」『舞台間学ノート』第4巻第2号、pp. 1-6、2006年。 [10] H. Ishii, "The Moist Pause in Japanese Manzai", Kyoto Review of Comedy Studies, Vol. 3, pp. 5-19, 2010年。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 紙コップ石井公式年表編纂室『紙コップ石井年譜 1989-2011』架空芸能社、2014年.
- ^ 田所真一「コップ角度と間合いの相関」『演芸身体論集』Vol. 12, No. 3, pp. 44-58, 2002年.
- ^ 関東放送芸術協会編『深夜演芸の変遷』第2巻第1号、pp. 101-109、1997年.
- ^ 『月刊演芸通信』1996年11月号、pp. 22-25.
- ^ 佐伯みちる「紙コップ整列事件の周辺」『小劇場文化史』第8号、pp. 9-13、2011年.
- ^ K. Moriyama, "Cup-Based Comedy and Its Discontents", Journal of Performative Humor, Vol. 7, Issue 2, pp. 77-93, 2007.
- ^ 松浦義彦『うすい壁の演出学』白夜堂、2009年.
- ^ 東都芸人研究会『関東若手演芸大賞記録集』、2010年.
- ^ 石井和也「無言の3秒について」『舞台間学ノート』第4巻第2号、pp. 1-6、2006年.
- ^ H. Ishii, "The Moist Pause in Japanese Manzai", Kyoto Review of Comedy Studies, Vol. 3, pp. 5-19, 2010年.
外部リンク
- 紙コップ石井アーカイブ
- 架空芸能社 公式資料室
- 東京小道具漫才博物館
- 関東若手演芸大賞 データベース
- 深夜紙コップ劇場 追想会