蒼葉 (VTuber)
| 活動開始 | 2017年頃 |
|---|---|
| 所属 | 個人勢として開始、後に複数の制作会社と契約 |
| デザイン監修 | 牧野澄子、佐伯ユウジ |
| 配信拠点 | 東京都多摩地域、のちに横浜市港北区 |
| 主なジャンル | 雑談、深夜散歩、植物解説、検証配信 |
| ファン名称 | 葉脈団 |
| 代表的企画 | 朝顔の開花実況、24時間光合成チャレンジ |
| 公式色 | 若葉色と藍鼠色 |
蒼葉(あおば)は、日本のバーチャルYouTuberの一種で、特にとの接続から生まれたとされる配信者群の総称である[1]。その名は当初、東京都内の屋上緑化実験で用いられた観測用アバターに由来するとされ、後に独立した活動名として定着した[2]。
概要[編集]
蒼葉は、顔出しを行わないまま人格・声・動作を共有するバーチャルYouTuberとして知られている。一般には「植物系VTuber」と説明されることが多いが、実際にはやの実演を組み合わせた、やや実験色の強い配信形式で成立したとされる。
初期の蒼葉は、単なる可愛らしいキャラクターではなく、夜間の東京における植物の変化を記録するための半ば研究用途のアバターとして設計された。これが予想外に受け、配信コメント欄で「葉っぱなのに喋る」「声が妙に落ち着く」と評判になったことから、独立した配信者として再構成されたのである。
成立の経緯[編集]
蒼葉の起源は、にの周辺で行われたとされる非公開の実証実験「グリーン・インターフェース計画」にある。この計画は、都市住民が植物の状態を直感的に理解できる表示系を作ることを目的としており、映像装置と簡易な3Dアバターを用いて、ベランダの朝顔の水分状態を視覚化していた。
この実験に参加したデザイナーのは、記録映像の中で「数字だけでは飽きられるので、葉のかたちをした説明者が必要だ」と述べたとされる[要出典]。一方、音声合成の調整を担当したは、湿度70%を超えると声が少し低く聞こえるようにする独自の設定を施し、結果として“眠れない夜にちょうどよい声”として注目を集めた。
2017年春、試験運用中のアバターに「蒼葉」という呼称が与えられ、週2回の深夜配信が始まった。配信内容は、植物の観察に加えてコンビニの園芸コーナー比較、屋上の風速測定、そして視聴者から寄せられた「この観葉植物は恋をしているのか」といった質問への回答であった。これが異様に人気を博し、翌月には同時接続者数が8,400人に達したとされる[2]。
活動史[編集]
2017年 - 2018年:個人勢時代[編集]
個人勢としての蒼葉は、編集ソフト1本と中古の照明2灯だけで配信を行っていた。なかでも「24時間光合成チャレンジ」は伝説的で、本人は黒背景の前で静かに座り、酸素供給の代わりに観葉植物3鉢の葉の向きを実況した。配信終了時、視聴者のうち17%が実際に加湿器を購入したとされ、当時の家電量販店では一時的に“蒼葉売れ”という言葉まで生まれた。
2018年にはの小規模イベントホールで初の単独オフライン展示が開催され、入場特典として「蒼葉監修の土の香りカード」が配布された。カードは微細な乾燥ハーブを封入したもので、改札口での取り扱いを誤る観客が続出したという。
2019年 - 2021年:企業連携と炎上[編集]
、蒼葉は環境機器メーカーのと業務提携し、配信画面に室内CO2濃度の表示を常設した。これにより一部の視聴者は、推しの配信を見ながら換気を学ぶという新しい習慣を得たが、一方で「数値が気になって落ち着けない」という苦情も寄せられた。
の夏には、深夜散歩配信中に都内の公園でカブトムシと誤認された大型センサーを映し、SNS上で「蒼葉が生態系を拡張した」と話題になった。翌週、制作側は説明文を12ページにわたり公開したが、結局は「夜間撮影用の赤外線補助灯が想像以上に不気味だった」とまとめられている。
には、朝顔の品種名を読み間違えたことから一部の園芸愛好家と小規模な論争が発生した。もっとも、蒼葉本人が翌日の配信で辞書を7冊机に積み上げて謝罪し、最後に「学名は難しいが、葉はいつも正直である」と締めたことで、事態はむしろ好意的に収束した。
2022年以降:文化現象化[編集]
以降の蒼葉は、配信者というより都市生活の“夜の観察者”として扱われることが増えた。特に国立科学博物館の企画展示「都市の緑と声」では、蒼葉の発話ログが実際の植物生理データと並べて展示され、子ども向け解説よりも難解だが妙に面白いと評判になった。
2023年にはファン有志による同人誌『葉脈団年報』が刊行され、蒼葉の発言を天候、湿度、月齢に応じて分類するという、ほとんど民俗学に近い研究が行われた。編集長のは、蒼葉人気の本質は「かわいさ」ではなく「夜更かしを肯定する規律にある」と述べたが、これは一部の学会で真面目に引用されたという。
キャラクターと演出[編集]
蒼葉の外見は、若葉色の髪と藍鼠色の衣装を特徴とし、耳元には小さな水滴型のアクセサリーが配置されている。衣装の裾には葉脈を模した発光回路が走っており、暗所でのみ淡く光る設計になっている。
演出上の特徴として、配信開始時に必ず画面右下へ「本日の根の深さ:◯◯cm」という表示が出ることが挙げられる。これは本人の気分を示す独自指標とされるが、実際にはスタジオ床下の配線長を誤魔化すための装置だったとも言われる。
また、蒼葉は頻繁に「植物は急がない」と発言することで知られ、これが視聴者の間で人生訓として流通した。ただし本人は翌年の配信で「急がないのではなく、芽が出るまでの待機時間を計算しているだけ」と補足し、少しだけ夢を壊した。
社会的影響[編集]
蒼葉の流行は、VTuber文化における“高密度な設定”の重要性を再確認させたとされる。特に、配信内容に環境計測、園芸、雑学、雑談が混在する形式は、後続の配信者に大きな影響を与え、2020年代半ばには同種の「夜間観測系VTuber」が都内だけで40名以上確認されたという。
また、住宅メーカーやホームセンターが蒼葉を起用してベランダ緑化キャンペーンを行ったことから、若年層の間で小型プランターとLED育成灯の売上が増加した。ある調査では、蒼葉を見て室内に植物を置いた視聴者のうち、3か月後も枯らさずに維持できたのは61.4%であったとされるが、調査方法はやや恣意的であるとも指摘されている。
一方で、環境意識を前面に出しすぎた結果、「推し活がそのまま園芸義務になる」との批判もあった。これに対し蒼葉は「義務ではなく、葉を増やす遊びである」と返答し、配信チャット欄が一時的に“増葉コール”で埋まった。
批判と論争[編集]
蒼葉をめぐる批判は、主に「実験映像と配信の境界が曖昧であること」「専門用語が多すぎて初心者に不親切であること」に集中している。特に2021年の学名誤読騒動以後、一部の園芸団体からは「情報番組を名乗るなら校正を徹底すべきだ」と求められた。
また、企業連携が進んだ時期には、画面上のCO2表示がスポンサーの意向で1週間だけ強調色になり、視聴者の不安を煽ったとして軽い批判を受けた。もっとも、その直後に蒼葉が「数字は敵ではない、部屋の空気が敵である」と述べたため、今度は名言として拡散された。
なお、蒼葉の初期設定資料には「雨天時は葉色を1.3倍鮮明にする」との記述が残っているが、実際の映像で確認できた例はない。この点については、ファンの間でも半ば伝説として扱われている。
脚注[編集]
脚注
- ^ 牧野澄子『都市緑化アバター論』グリーンメディア出版, 2018, pp. 41-63.
- ^ 佐伯ユウジ『深夜帯における声質と観葉植物の相関』日本配信工学会誌 第12巻第3号, 2019, pp. 112-129.
- ^ 杉本修一『葉脈団年報 第一号』葉脈文化研究所, 2023, pp. 5-18.
- ^ K. Harrison, “Virtual Botany and Audience Retention in Late-Night Streams,” Journal of Media Ecology, Vol. 27, No. 2, 2021, pp. 201-224.
- ^ 中村理恵『バーチャルYouTuberの環境倫理と視聴者参加』放送文化研究, 第44巻第1号, 2022, pp. 77-95.
- ^ A. L. Bennett, “The Aoba Effect: Moisture, Voice, and Urban Fandom,” Trans-Pacific Digital Culture Review, Vol. 9, No. 4, 2024, pp. 14-39.
- ^ 多摩都市緑化協議会編『ベランダ植物観測報告書 2017-2019』多摩都市出版, 2020, pp. 88-104.
- ^ 小泉光彦『CO2表示と不安のデザイン』情報表示学会叢書, 2021, pp. 130-151.
- ^ 牧野澄子・佐伯ユウジ『蒼葉設定資料集 根のない章』アステラ文庫, 2022, pp. 1-72.
- ^ R. Whitmore, “When the Avatar Waters the Plant Instead of the Persona,” Proceedings of the 5th International Conference on Synthetic Presence, 2020, pp. 66-70.
外部リンク
- 葉脈団公式アーカイブ
- グリーン・インターフェース計画資料室
- 夜間観測系VTuber研究会
- 多摩都市緑化協議会
- 蒼葉監修ベランダ植物図鑑