バーチャルYouTuber
| 名称 | バーチャルYouTuber |
|---|---|
| 別名 | VTuber、仮想演者、画面内配信者 |
| 起源 | 2008年頃の字幕補正実験 |
| 発祥地 | 東京都渋谷区・秋葉原周辺 |
| 主な媒体 | 動画共有サイト、ライブ配信、短尺切り抜き |
| 特徴 | アバター越しの人格運用、声色の分離、視聴者参加型の儀礼 |
| 流行期 | 2016年以降 |
| 関連組織 | 配信研究会、仮想演者協議会、各種事務所 |
| 象徴的装置 | モーションキャプチャースーツ |
バーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー、英: Virtual YouTuber)は、の動画文化を母体として成立したとされる、またはのアバターを介して配信を行う演者の総称である。もともとはの自動字幕誤認識を逆用した配信実験から生まれた概念とされ、後にを中心とする若年層文化へ拡大した[1]。
概要[編集]
バーチャルYouTuberは、実在の人物がや風の身体を用いて配信活動を行う文化形態であるとされる。視聴者は演者本人の素顔ではなく、設計された外見・口調・設定を通じて接触する点に特色がある。
この形式は当初、の若年層向け実験局で試みられた「匿名顔出し不要配信」の亜種として整理されていたが、後に民間の編集者らによって神話化され、独自の作法と経済圏を持つに至った。とくにからにかけて、配信者の挙動を学習した推薦アルゴリズムが偶発的に人気を増幅したことが、拡大の直接要因とされている[2]。
歴史[編集]
前史:字幕補正と匿名配信の時代[編集]
起源は頃、上で自動字幕が実況者の発言を過剰に補正した現象に求められる。ある編集者によれば、東京都の小規模制作会社が、誤字幕を演出として固定することで「話者の本人性を曖昧にする」実験を行ったという。
この実験は、当初は教育用途のアバター朗読に近いものとして扱われていたが、視聴者が「中の人」を探す遊びに熱中したことで、逆に人格の輪郭を強める結果となった。なお、この段階で既にの同人イベントでは、顔を出さないまま握手会を行うという奇妙な催しが確認されている[要出典]。
成立:『画面内の人物』としての定式化[編集]
、の音声合成研究会に所属していたは、アバターを単なる見た目ではなく「配信の字幕と同列の装置」と定義し直した。これが後の「バーチャルYouTuber」という語の原型になったとされる。
にはの制作協同組合が、試験的に12名の演者に同一フレームの配信端末を配布した。結果として、誰が話しているのか分からないまま熱心なファンが生まれ、視聴数は初週で平均8,400回、最大で23,700回に達したという。演者の一人がマイクを切り忘れたまま昼食のをすする音が流れ、これが「生活音が人格を補強する」として話題になった[3]。
拡大:事務所化と儀礼の標準化[編集]
以降、配信活動は的な管理のもとで急速に体系化された。衣装差分、挨拶文、定期配信、ファン名称、誕生日配信といった要素が整備され、形式上はでありながら実態は小規模な劇団に近い運用が定着した。
また、ファン側でも独自の礼法が形成され、配信開始時のコメント整列、スーパーチャットの色分け、切り抜きの引用規則などが半ば慣習法として扱われるようになった。一方で、の一部報告書では、こうした配信文化が「視聴者の孤独感を1.7割低減する可能性」があると推定されていたが、算出方法は不明瞭である[4]。
特徴[編集]
バーチャルYouTuberの特徴は、演者の実名性ではなく、設計されたキャラクターの継続運用にある。とりわけ、声質・口調・反応速度・配信事故の頻度まで含めて「キャラクター資産」とみなされる点が独特である。
また、視聴者は単なる受動的消費者ではなく、コメント欄を通じて演者の設定補強に参加する。たとえば、ある事務所では視聴者が誤って送ったの改元ネタを、数か月後に公式設定へ昇格させた例がある。このように、共同編集に近い構造を持つことが、他の配信形態との差異とされる。
さらに、企業所属の演者と個人勢の境界はしばしば曖昧である。登録者数よりも「深夜に何時間まで雑談できるか」が評価指標になることがあり、内の配信スタジオでは、深夜3時台の接続安定率が採用試験の項目に含まれていたとされる[5]。
社会的影響[編集]
バーチャルYouTuberは、配信文化を超えて観光、広告、教育、地方振興に波及したとされる。の一部自治体では、ゆるキャラの代替としてアバター町長を設置する構想が検討され、実際に議会答弁の3割が録音音声で処理された年もあった。
広告分野では、企業ロゴを画面左上に常駐させる形式が「空気広告」と呼ばれ、視聴者が意識しないまま商品名を復唱する現象が報告されている。の内部資料によれば、2021年時点で関連市場は約1,840億円規模と見積もられていたが、同資料には「切り抜き視聴回数の重複計上を完全に排除できない」との但し書きがある[6]。
教育面では、英会話やプログラミングの教材にアバターが導入され、発話への抵抗感を下げる効果があるとされた。ただし、ある中学校ではバーチャル教師が給食の時間にラーメンを食べる演出を入れすぎたため、授業内容よりも箸の持ち方が議論の中心になったという。
批判と論争[編集]
批判としては、設定と実人生の差異が大きすぎること、事務所の管理が強すぎること、そして視聴者が「中の人」を巡る推理に過度の時間を費やすことが挙げられる。特にの「声紋同一性騒動」では、同じ発声癖を持つ2名の演者が同一人物と誤認され、3日間にわたりSNS上で検証スレッドが連続更新された。
また、匿名性が高い一方で、配信者の生活リズムや住環境が事実上露出する矛盾も指摘されている。ある監査報告書では、深夜配信中に鳴る救急車の音から居住区域を特定する手法が「ファン考古学」と呼ばれ、問題視された[7]。
一方で擁護派は、バーチャルYouTuberは既存の芸能と異なり、視聴者がキャラクターの更新に直接関われる新しい公共圏であると主張する。これに対しては「公共圏にしてはスパチャの額が個人の生活費に近すぎる」との反論もある。
歴代の重要事例[編集]
の『初号機スイカ事件』は、最初期の人気拡大を象徴する事例である。これは配信中にスイカ割りの実況をしていた演者が、誤って天井の反響音を「宇宙船の着艦」と表現したことで、宇宙設定が後付けで公式化された出来事である。
の『新宿駅前同時接続事故』では、複数の大型画面広告に同一演者が別人格として表示され、通行人が1時間以上立ち止まった。この件は、都市空間におけるアバターの占有率が0.8%を超えた最初の例として、後の研究で頻繁に引用される。
には、の普及により配信機材の需要が急増し、モーションキャプチャー用の靴下だけが品切れになる現象が起きた。業界関係者はこれを「足先経済」と呼び、以後、配信事務所は予備の靴下を在庫表の独立項目として扱うようになった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 佐伯みづほ『画面内人格の成立に関する覚書』メディア文化研究所, 2015, pp. 44-61.
- ^ Harold P. Wainwright, “Synthetic Hosts and Audience Reciprocity,” Journal of Digital Performance, Vol. 12, No. 3, 2018, pp. 115-139.
- ^ 山岸玲子『匿名配信の民俗誌』青嵐社, 2019, pp. 203-228.
- ^ Mikael Sørensen, “The Economies of Virtual Applause,” Nordic Review of Internet Studies, Vol. 7, No. 2, 2020, pp. 12-34.
- ^ 総務政策調査室『仮想演者と若年層メディア接触に関する中間報告』東京行政出版会, 2021, pp. 7-19.
- ^ 中村一翔『切り抜き文化と引用倫理』情報社会出版社, 2022, pp. 88-104.
- ^ Eleanor T. Briggs, “Avatar Identity Drift in Live Streaming,” International Journal of Media Interfaces, Vol. 5, No. 1, 2019, pp. 1-27.
- ^ 鈴木真由美『モーションキャプチャー靴下の経済学』港北書房, 2020, pp. 66-73.
- ^ 大庭信吾『バーチャルYouTuber白書 2023』仮想文化センター, 2023, pp. 11-98.
- ^ Kenji Lowell, “On the Misreadings of Karaoke-Style Virtual Hosts,” Proceedings of the Pacific Digital Leisure Forum, Vol. 4, 2021, pp. 55-59.
外部リンク
- 仮想演者研究所
- 日本配信文化アーカイブ
- 渋谷デジタル民俗資料館
- アバター経済観測センター
- 切り抜き史料データベース