谷根千楽派
| 名前 | 谷根千楽派 |
|---|---|
| 画像 | Yanesen_Gakuha_2019.jpg |
| 画像説明 | 2019年の下北沢公演にて |
| 画像サイズ | 220px |
| 画像補正 | yes |
| 背景色 | #4A5A67 |
| 別名 | 楽派 |
| 出身地 | 東京都文京区・台東区・荒川区の境界周辺 |
| ジャンル | インディーロック、都市民謡、ポスト下町ポップ |
| 職業 | ロックバンド |
| 担当楽器 | ボーカル、ギター、ベース、ドラムス、三線、カセット・オルガン |
| 活動期間 | 2008年 - 2017年、2019年 - |
| レーベル | 月面紙工レーベル |
| 事務所 | 長屋電機工房 |
| 共同作業者 | 黒川譲二、片岡ミドリ、浅野スミカ |
| メンバー | 久世一馬、宮下リン、北見航、遠野しずく |
| 旧メンバー | なし |
| 公式サイト | yanesengakuha.jp |
谷根千楽派(やねせんがくは)は、の4人組である。所属事務所は。レコード会社は。[[2008年]]に結成、[[2012年]]にメジャーデビュー。略称および愛称は「楽派」。公式ファンクラブは「」。
概要[編集]
谷根千楽派は、の・・一帯の長屋文化と、1980年代末の宅録ブームを接続する形で成立したとされるである。木造家屋の軒下に反響板を吊るして録音したとされる初期音源が知られ、都市の生活音を旋律化した独特の作風で注目を集めた[1]。
結成当初は地域の祭礼保存会の余興として扱われていたが、[[2012年]]のミニアルバム『』以降、若年層を中心に支持を拡大した。なお、メンバー自身は「楽派」という呼称を嫌っていた時期もあったが、ファン側が半ば学術用語のように定着させた経緯があるとされる。
メンバー[編集]
現在のメンバーは4人で、固定編成で知られている。いずれも周辺の古書店、銭湯、寺務所、印刷所を経由して集まったという経歴を持つ。
* (くぜ かずま) - ボーカル、ギター。歌詞と古地図の照合を担当すると公言している。 * (みやした りん) - ベース、コーラス。アンプの代わりに木箱を用いた低音づくりで知られる。 * (きたみ わたる) - ドラムス、パーカッション。商店街の廃材で作ったスネアを愛用する。 * (とおの しずく) - キーボード、三線、ノイズ処理。録音時の湯気や雨音を同期させる技法で評価された。
初期にはサポートメンバーとして、が参加していたほか、[[2014年]]の全国路地裏巡礼ツアーでは、寺院の鐘を担当する臨時メンバーが各地で入れ替わったという。
バンド名の由来[編集]
バンド名は、結成時に使用していた練習スタジオ「谷根千電気倉庫」の看板の略記に由来するとされる。もっとも、メンバー本人によれば、当初は地名の連結語ではなく、"谷"の低音、"根"の基音、"千"の倍音という音響メモを雑に並べたものだったという[2]。
一方で、地域住民の間では、名前があまりに地名的であるため、町会の回覧板で「観光団体か新規商店街連合か判然としない」と話題になった。これに対し、バンドは[[2010年]]に限定配布した冊子『』で、「地名は場所ではなく拍子である」との声明を発表し、以後の定説となった。
来歴[編集]
結成[編集]
谷根千楽派の起源は[[2008年]]春、の旧下宿「松風荘」で行われた夜間停電の際にあるとされる。停電中にラジカセ1台と携帯電話3台だけで即興演奏を行ったことが、後の「暗所編成」の原型になったという。翌月、の印刷所跡を改装した稽古場で正式に結成され、初期は5人編成であったが、1人が尺八試験に専念するため脱退した[3]。
当時の活動は、主に商店街の閉店後に行われた「深夜の試奏会」であり、観客は近隣の豆腐店主、銭湯の番台、学生数名に限られていた。会場の都合で演奏時間が33分を超えないという不文律があり、この制約が後の短編曲志向につながったとされる。
デビュー[編集]
[[2012年]]、ミニアルバム『』でからメジャーデビューした。収録曲「」は、のインディーズ特集で異例の高評価を受け、地方FM局で1日に14回流されたと記録されている[4]。
デビュー時の宣伝施策として、レコード会社は都内の古い長屋8棟にだけ掲出可能な紙ポスターを制作した。雨に濡れると歌詞が浮き出る仕様だったが、実際には墨汁のにじみで読みにくくなり、かえって話題を呼んだ。これが「読めない広告」として都市伝説化し、後年のミュージックビデオ演出にも影響を与えた。
2014年 - 2017年[編集]
[[2014年]]には1stフルアルバム『』を発表し、累計売上枚数は約18.4万枚を記録した。収録曲「」がテレビ朝日の深夜番組のタイアップに起用され、バンド初の再生数1000万回を突破したとされる。
しかし[[2016年]]、ドラムスの北見が「拍子木の音が実生活に浸食してきた」として一時活動休止を宣言し、バンドは事実上の解散状態となった。[[2017年]]には公式サイトが一度閉鎖され、トップページに「閉店ではなく仮眠」とだけ表示されたことがファンの間で強く記憶されている。
再結成以降[編集]
[[2019年]]、谷中の旧共同浴場を改修したイベント空間で再結成ライブを開催し、活動を再開した。再結成公演では、観客配布の手ぬぐいが実は譜面になっており、アンコールでそれを掲げると照明が変わる演出が行われたという。
以後は、都市再生事業との協働や内の図書館イベントへの出演を増やし、[[2023年]]には「長年に渡る活動と功績がゆえに」を受賞した。もっとも、授賞式の主催がどの組織だったのかについては資料が分かれており、要出典とされる。
音楽性[編集]
谷根千楽派の音楽性は、を基調にしつつ、祭囃子、路面電車の摩擦音、木造住宅のきしみをリズムに取り込む点に特徴がある。特に遠野のキーボードは、初期のポータブル蓄音機の回転むらを模した揺らぎがあり、ライブでは聴衆が「遠くで町内会が始まったようだ」と評したという。
作詞面では、日用品の配置や商店街の開店時刻を比喩として扱うことが多く、代表曲「」では、2番のAメロに実在しない時報が引用されている。楽曲の拍子は5/4や11/8が多用されるが、メンバーは「ただし商店街の都合でそうなっただけ」と説明している。
なお、録音ではの開発した「畳共鳴マイク」を使用したとされるが、実際には古い掃除機の部品を流用したものであり、機材写真が公開された際に話題となった[5]。
人物[編集]
谷根千楽派の4人はいずれも、音楽活動以外に地域史の蒐集、空き家の維持管理、商店街の在庫整理などに関わっていたとされる。久世は古い町名札の筆致に異様な関心を示し、宮下は魚屋の発泡スチロール箱をベースアンプとして改造する特技を持つ。
北見はライブ後に必ず路地の消火栓を確認する習慣があり、これが「安全意識の高いバンド」として行政から評価された。一方で遠野は、楽曲制作の参考資料としての郷土資料室に通い詰め、司書から「半分くらいは借りるべき本ではない」と注意されたという逸話が残る。
メンバー同士の関係は概して穏やかであるが、制作中の議論が「鐘の余韻を何秒残すか」で3時間続いたことがあり、これがバンド内で最も長い喧嘩として語り継がれている。
評価[編集]
批評家の間では、谷根千楽派は「都市の生活音をポップスに昇華した稀有な例」として評価されている。音楽誌『』は、彼らの初期2作を「下町の気密性をそのまま和音にしたようだ」と評した[6]。
一方で、保守的な評論家からは「音が多すぎて夕方のラジオ体操に向かない」「歌詞が住宅地図に近すぎる」といった批判もあった。ただし、こうした評価の揺れこそが彼らの人気を支えたともいわれ、[[2020年]]以降はな下町系バンドと称されることもある。
また、地域振興との結びつきが強すぎるため、観光誘致のための音楽利用ではないかとの指摘もあった。しかし、バンド側は「誘致される側の音楽である」と反論している。
受賞歴[編集]
* [[2013年]] - 審査員特別賞 * [[2014年]] - 最優秀編曲賞 * [[2016年]] - 年間アルバム賞 * [[2019年]] - 文化貢献表彰 * [[2023年]] - 功労賞
このほか、[[2015年]]には「午前の商店街で最も迷惑でなく美しい増幅音」として、機材部門の特別記録を受けたとされるが、正式な賞名は資料によって異なる。
ディスコグラフィ[編集]
=== シングル === * 「」([[2012年]]) * 「」([[2013年]]) * 「」([[2014年]]) * 「」([[2016年]]) * 「」([[2019年]])
=== アルバム === * 『』([[2012年]]) * 『』([[2014年]]) * 『』([[2015年]]) * 『』([[2020年]]) * 『』([[2023年]])
=== ベスト・アルバム === * 『』([[2020年]])
=== 映像作品 === * 『』([[2021年]]) * 『』([[2020年]])
累計売上枚数は全作品合算で約67.2万枚とされ、ストリーミングでは総再生数3.8億回を突破したという。もっとも、公式が「再生回数は雨天時のみ換算」と注記したため、集計方法には議論が残る。
ストリーミング認定[編集]
谷根千楽派は、[[2021年]]に配信シングル「」がの独自集計でプラチナ相当とされたほか、[[2023年]]には『』の主要収録曲が合算で1億回再生を超えたと発表された[7]。
ただし、再生回数の一部は商店街の防犯BGMとして流れたものが含まれるとされ、純粋な音楽消費との区別は曖昧である。それでも「再生されるほど街が静かになる」との逆説的な評価が定着し、配信時代における珍しい成功例として扱われている。
タイアップ一覧[編集]
* 「夕立の改札」 - 2022年夏季キャンペーンソング * 「階段と白猫」 - 深夜ドラマ『』主題歌 * 「午前七時の盆栽」 - 乗車マナー啓発CM * 「消えない町内放送」 - 開館50周年記念ムービー * 「仮眠するアーケード」 - ブランドムービー
特に都営交通とのタイアップは、駅の発車メロディをバンドが再編曲したことで話題となった。制作時、実際のホームで録音した結果、2番線だけ周囲のカラスが一斉に沈黙したというエピソードが残る。
ライブ・イベント[編集]
谷根千楽派は、通常のライブハウスに加え、銭湯、寺院の境内、閉店後のスーパー屋上など、会場選定が極端に独特である。[[2014年]]の『』では、全12公演のうち9公演が雨天中止になったにもかかわらず、客席の傘が照明効果として機能したため成功扱いとなった。
[[2020年]]の再始動後は、『』と題したライブ・コンサートツアーを実施し、、、の3都市で計8公演を行った。各地でアンコール前に必ず5分間の「路地の静寂」を挟む演出があり、これは消防法上の都合と説明されている。
また、[[2024年]]には周辺の夜間特別公演が計画されたが、近隣の猫がステージを占拠したため、演目の半分が即興演奏に変更されたという。
出演[編集]
テレビ[編集]
* 『夜更けの商店街』 * 『音で歩く東京』 * 『路地裏セッション』
テレビ出演は多くないが、深夜帯のカルチャー番組では常連であった。特に『音で歩く東京』では、街の音を採取する企画に協力し、収録中に信号機の待機音を和音として採用したことがある。
ラジオ[編集]
* 『谷根千楽派の仮眠前放送』 * 『長屋の夜会』
ラジオでは、リスナーから寄せられた「家鳴り報告」を音楽化するコーナーが人気を博した。なお、番組中に流れるCM明けジングルは毎回少しだけテンポが違い、これは「その日の湿度に合わせている」と説明されている。
映画・CM[編集]
* 映画『』主題歌 * CMシリーズ
映画への出演は少ないが、[[2022年]]の地域映画『路地の向こうで会う』では、メンバーが本人役で数秒だけ登場した。CMでは和紙と木材の質感を前面に出した広告が多く、バンド名を出さない回もあったが、視聴者の多くが音だけで判別したという。
NHK紅白歌合戦出場歴[編集]
* [[2021年]] - 第72回『階段と白猫』
初出場時は、舞台上に実物大の長屋セットが組まれ、歌唱中に屋根瓦の上を猫型の影が通過する演出が行われた。なお、演奏時間が規定より12秒長かったため、翌年の再演では間奏が短縮されたとされる。
脚注[編集]
[1] 谷根千楽派の初期資料『路地の振動数』ライナーノーツによる。 [2] 2011年配布の小冊子『地名で鳴らす方法』では別説も示されている。 [3] 旧下宿「松風荘」関係者の証言は複数あり、年次に揺れがある。 [4] 『オリコン・インディーズ特集』2012年11月号。 [5] 機材写真はファンサイトで広く流通したが、出典の所在が不明である。 [6] 『月刊ミクロ音響』2014年6月号。 [7] 日本レコード協会の配信認定一覧(2023年版)より。
参考文献[編集]
1. 佐伯玄一『谷中夜光線とその時代』長屋出版、2016年。 2. Margaret H. Thornton, "Urban Folk in Post-Arcade Tokyo", Vol. 12, No. 3, pp. 41-68, 2018. 3. 森田玲子『路地裏ポップの方法論』月面紙工、2015年。 4. 黒川譲二『畳共鳴マイク研究報告』長屋電機工房資料室、2014年。 5. 本田修司『再開発前夜の音響政治』都心文化社、2021年。 6. Akira Yamanashi, "The White Cat at the Staircase: A Live-Performance Study", Vol. 7, No. 1, pp. 9-22, 2020. 7. 片岡ミドリ『商店街のための11拍子』谷中実験文庫、2013年。 8. 『月刊ミクロ音響』編集部『特集・谷根千楽派の二十世紀』第19巻第4号、2019年。 9. 中村匠『地名は拍子である』文京アーカイブ社、2012年。 10. E. C. Holloway, "Dusk Broadcasts and Neighborhood Memory", Vol. 4, No. 2, pp. 77-93, 2017.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
谷根千楽派 公式サイト 月面紙工レーベル アーティストページ 長屋電機工房 アーカイブ 谷根千同盟 ファンポータル 路地裏音響研究所 データベース
脚注
- ^ 佐伯玄一『谷中夜光線とその時代』長屋出版、2016年.
- ^ Margaret H. Thornton, "Urban Folk in Post-Arcade Tokyo", Vol. 12, No. 3, pp. 41-68, 2018.
- ^ 森田玲子『路地裏ポップの方法論』月面紙工、2015年.
- ^ 黒川譲二『畳共鳴マイク研究報告』長屋電機工房資料室、2014年.
- ^ 本田修司『再開発前夜の音響政治』都心文化社、2021年.
- ^ Akira Yamanashi, "The White Cat at the Staircase: A Live-Performance Study", Vol. 7, No. 1, pp. 9-22, 2020.
- ^ 片岡ミドリ『商店街のための11拍子』谷中実験文庫、2013年.
- ^ 『月刊ミクロ音響』編集部『特集・谷根千楽派の二十世紀』第19巻第4号、2019年.
- ^ 中村匠『地名は拍子である』文京アーカイブ社、2012年.
- ^ E. C. Holloway, "Dusk Broadcasts and Neighborhood Memory", Vol. 4, No. 2, pp. 77-93, 2017.
外部リンク
- 谷根千楽派 公式サイト
- 月面紙工レーベル アーティストページ
- 長屋電機工房 アーカイブ
- 谷根千同盟 ファンポータル
- 路地裏音響研究所 データベース