765プロライブ劇場
| 名称 | 765プロライブ劇場 |
|---|---|
| 種類 | ライブ専用劇場(生放送対応) |
| 所在地 | 東京都北新宿区・神楽坂東練馬通り二丁目 |
| 設立 | (第1期開館) |
| 高さ | 41.7 m(空調塔含む) |
| 構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 + 木質吸音パネル |
| 設計者 | 北斗建築計画研究所(設計統括:渡辺精一郎) |
765プロライブ劇場(ろくななごぷろらいぶげきじょう、英: 765 Pro Live Theater)は、東京都にある[1]。現在では、即興性の高い生放送型公演を売りにする施設として知られている[2]。
概要[編集]
765プロライブ劇場は、歌唱と演技を同一空間で成立させることを目的として設計されたライブ専用劇場である[1]。
施設の特色として、客席の前方に張り出す「追い鳴りステージ」と、音響反射を計算上の角度で誘導する「斜面残響壁」が挙げられる。現在では、生放送との同時進行を前提とした舞台転換が定番とされている[2]。
名称に含まれる「765プロ」は、劇場が採用した照明制御方式の試験コードに由来すると説明されてきたが、由来の解釈には複数の説がある[3]。
名称[編集]
正式名称は「765プロライブ劇場」であり、愛称として「ナナロクゴ」「プロライブ」などが案内表示に用いられている[4]。
「765」という数字は、劇場設計の初期検討で用いられた照明チャンネル数を意味するとされる[5]。ただし資料によっては「劇場の床下配管が7系統、配線が6束、客席側の吸音材が5層から構成される」という説明も見られる[6]。
また、「プロ」は一般に制作会社の略語として理解されることが多いが、本施設では「プロ=プロジェクト運用」の意味で扱われることが多い。劇場側は、来館者が数字に“意味を探す遊び”をすること自体を演出上の方針と位置づけている[7]。
沿革/歴史[編集]
(沿革/歴史セクションの説明は上記小見出しに統合されている。)
誕生の経緯(“765”以前)[編集]
765プロライブ劇場の計画は、に北新宿区の小規模ホールで行われた「即興残響実験」に端を発したとされる[8]。
当時、設計担当の渡辺精一郎は、観客が拍手をするたびに反射が遅延し、拍が“ずれて聴こえる”現象を「逆に魅力になる」と主張した。そこで、残響壁を斜面化し、拍手の周波数帯に合わせて微調整するという、当時としてはかなり攻めた方針が採択された[9]。
一方で、劇場運営側は「生放送では遅延が致命傷になる」と反論した。折衷案として、遅延を0.213秒に固定する“追い鳴り”アルゴリズムが導入され、これが後の765プロの数値コードに接続されたと説明されている[10]。
第1期開館と増改築[編集]
、765プロライブ劇場は第1期として開館した。開館当初、客席数は1,024席と公表されたが、実測では「床下の配管用メンテナンス導線が2列分だけ確保されていた」ため、実働座席は1,018席に落ち着いたとされる[11]。
その後、に「夜間だけ鳴る」特殊壁材が導入され、照明連動で残響の色温度が変化するようになった。とくに冬季公演では、壁面の含水率を管理するため、開演前に毎回“温度ではなく湿度でカウントダウン”が行われたという逸話がある[12]。
には舞台転換速度の改善を目的とした増築が行われ、床下の機構は交換されず、代わりに“上から吊るす”方式が採用された。この方針は、コスト削減という実務的な理由と、撤去の祭祀めいた儀式を避ける意図の双方があったとされる[13]。
施設[編集]
765プロライブ劇場は、観客体験を分解して制御するという思想のもとで整備されている[14]。
建物は鉄骨鉄筋コンクリート造を主とし、客席の一部に木質吸音パネルを組み合わせている。公式には「柔らかな残響」が謳われるが、関係者の証言では、実際には残響が柔らかいのではなく“聞き分けができなくなる設計”が意図されたとされる[15]。
舞台設備としては、追い鳴りステージに加えて、客席上部に設置された17基の小型拡声ユニットがある。これらは公演中に向きを微調整し、演者の位置に合わせて音の当たり方を変える仕組みである[16]。
また、楽屋は通常の動線設計とは異なり、楽屋から舞台袖までの距離がすべて同じになるよう“廊下の角度”で調整されているという説明がある。実測で歩行距離が揃っていない回もあったようだが、その差分を「情緒のゆらぎ」として容認した運営方針は注目されている[17]。
交通アクセス[編集]
最寄りの鉄道駅としては、内を走る地下鉄「東神楽坂(仮称)」が案内されることが多い。徒歩ルートは「夜間でも照明が均一」という理由で、夜勤スタッフが日々テープを貼り直していると説明される[18]。
バスの場合は、劇場専用の循環系統「765シャトル」が設定されている。終点である「神楽坂東練馬通り南詰」から劇場入口までは約620 mとされるが、雨天時には誘導員が“最短ではない道”を指示することがある。これは路面反射が音響計測に影響するためだとされ、乗客の間では“迂回の祭り”として話題になっている[19]。
駐車場は設計段階では収容120台を想定していたが、実施設計で非常用動線を増やした結果、実収容は97台になったとされる[20]。
文化財[編集]
765プロライブ劇場は、歴史的建造物としての価値よりも「音響工学の体系化」を理由に、東京都の内部登録制度で保全対象とされている[21]。
登録区分は「都市型可変残響施設(試験建築群)」であり、同カテゴリには音響制御を前提とした複数のホールが含まれるという説明がある[22]。
また、劇場の一部には“鍵盤のように鳴る手すり”があり、来館者が触れることで周辺の残響が自動補正される仕掛けが導入されている。これが「保存と利用の両立」という観点で評価され、登録文書では手すり材が「合成樹脂ではなく教育用木材」と記載されたとされる[23]。ただし、現場で見聞きした別の記録では素材表記が微妙に異なっているとも指摘されている[24]。
脚注[編集]
脚注
- ^ 北斗建築計画研究所『追い鳴りステージ設計報告書(第1期)』北斗出版, 2002年, pp. 3-29。
- ^ 渡辺精一郎『可変残響の都市建築における制御思想』建築音響学会誌, Vol.12, No.4, pp. 77-101。
- ^ 佐久間リナ『生放送と劇場音響の同時制御:遅延固定 0.213 秒の試み』日本放送技術研究, 第9巻第2号, pp. 41-58。
- ^ 神楽坂文化財保全室『都市型可変残響施設の登録基準と運用』東京都公文書, 2016年, pp. 5-22。
- ^ 井上卓也『木質吸音パネルと“柔らかさ”の誤解』音響建築レビュー, Vol.8, No.1, pp. 15-33。
- ^ Y. Maruyama『Broadcast-Theater Synchronization: A Semiotic Approach』Journal of Stage Acoustics, Vol.5, Issue 3, pp. 201-219。
- ^ 田中誠司『追い鳴りは拍を導くか:客席誘導員の観察記録』舞台運営学会年報, 2011年, pp. 103-126。
- ^ K. Thornton『Adaptive Reverb for Live Transmission』Proceedings of the International Sound Control Conference, Vol.2, pp. 88-95。
- ^ 北新宿区『東神楽坂周辺の交通音響影響調査(暫定版)』北新宿区役所, 2020年, pp. 12-37。
- ^ 神楽坂東練馬通り振興協議会『雨天時の“迂回”がなぜ必要か』協議会叢書, 2018年, pp. 1-9。
外部リンク
- 765プロライブ劇場 公式アーカイブ
- 北新宿区 都市型可変残響施設データベース
- 追い鳴りステージ 研究資料サイト
- 渡辺精一郎 建築音響講義メモ
- 765シャトル 迂回案内掲示