All Nations Army Legends
| 名称 | All Nations Army Legends |
|---|---|
| 略称 | ANAL |
| ロゴ/画像 | 八芒星の上に巻物と胸章を重ねた意匠(公式旗) |
| 設立(設立年月日) | 1987年11月2日 |
| 本部/headquarters(所在地) | スイス連邦・ジュネーヴ市 |
| 代表者/事務局長 | 事務局長:Marina V. Kessler |
| 加盟国数 | 72か国 |
| 職員数 | 約412名 |
| 予算 | 年額約48億スイスフラン |
| ウェブサイト | ANAL Legends Archive |
| 特記事項 | 兵站に関する“軍務伝承”と“災害備蓄史”を記録する権限を持つ |
All Nations Army Legends(よみ、英: All Nations Army Legends、略称: ANAL)は、を目的として設立されたである[1]。設立。本部はに置かれている。
概要[編集]
All Nations Army Legends(ANAL)は、国境を越えた軍事史の“英雄譚(レジェンド)”を収集・検証し、平時の教育と災害対応へ転用することを目的として設立された国際機関である[1]。本機関は、各国の退役軍人団体や博物館、大学の史料室を横断的に管轄し、「伝承は記録である」という理念に基づき運営されている。
ANALの活動領域は、戦闘記録の正誤よりも、兵站(ロジスティクス)に関する記憶の連鎖、すなわち補給路の命名規則、臨時輸送の手順、負傷者搬送の“言い回し”まで含めて記録する点に特徴があるとされる[2]。そのため、軍事研究機関でありながら、教育・文化財保護の用語が多数用いられることが指摘されている。
なお、ANALは「軍事を賛美する」ことを目的として設立されたのではないと主張しており、設立当初から決議文書において「暴力の正当化を行わない」旨が明記されている[3]。一方で、後述のとおり“英雄譚の選別”をめぐる批判も存在する。
歴史/沿革[編集]
前身と設置法の成立[編集]
ANALの前身は、冷戦後期の1983年に欧州・北大西洋圏で結成された非公式連絡網(略称AL)とされる。ALは「移動の記憶」を残すための小規模計画として運営され、管轄は各国史料室の“協力”に留められていた。
しかし、1986年の“地下備蓄崩落事故”(実施報告書では「ジュラ渓谷保管庫の二次崩落」)を契機に、どの言い伝えが手順として機能したのかが論点化した。調査では、同じ輸送規格でも呼称が異なると現場で混乱が生じ、復旧までの時間が最大で23%増えたと推定された[4]。この教訓をもとに、各国の文化担当部局と軍需担当部局が協議し、1987年に設置法「軍務伝承・兵站史料の国際的保存に関する設置法(仮)」が整備されたとされる。
設置法の条文は、理事会による審査手続を規定し、事務局が史料データベースを運営すること、さらに監査委員会が“改竄リスク”を評価することを所管する構造となった。なお、この設置法名には当時の各国語圏で同音異義が生じ、最終版では“伝承(レジェンド)”が制度用語として固定された、とされる[5]。
拡張期と「七階層分類」導入[編集]
設立直後、ANALは収集対象を「戦地の逸話」に限定していたが、加盟国の博物館側から“民間側が担う運搬の語彙”も必要だとの要望が寄せられた。この結果、1989年の総会決議「第7/89号」により、史料は七階層に分類されることとなった。七階層は、(1)補給路名、(2)輸送符号、(3)中継拠点の呼称、(4)車両整備の手順語、(5)搬送合図、(6)食糧配分の段取り、(7)後方支援の役割譚から成ると説明された[6]。
また、1994年には“語彙の互換性”を測るための指標として「ANAL互換指数(A-CI)」が導入された。A-CIは、同義語の一致率ではなく、現場での誤読(聞き間違い)を考慮して算出するとされた。公表資料では、模擬訓練で誤読率が最大で0.41%まで抑えられたと記載されている[7]。この数字が当時の理事会議事録に引用され、広報誌の見出しにも採用された。
一方で、分類の七階層化により、軍隊の“勝利物語”だけでなく、敗退時に残る補給の知恵も同格に扱われるようになったとされる。これが教育現場での扱いやすさにつながり、加盟国数が1998年までに42か国から57か国へ増加したと報告された[8]。
組織[編集]
ANALは理事会と総会を中心に運営されるとされ、設置法に基づき設置された機関として位置付けられている。総会は加盟国の代表で構成され、年1回開催されるほか、議題に応じて臨時総会が招集されるとされる。
理事会は常任理事国12か国と、分担金に連動する輪番枠60か国で構成される。理事会は史料の認定基準、保管庫の安全基準、そして“伝承の編集方針”を担うと説明される[9]。なお、理事会には監査委員会(旧称:整合性監査室)が傘下として置かれ、提出データの改竄や欠落のリスクを所管する。
内部部局として、事務局の外局にあたる(史料収集・公開部局)、(兵站語彙標準化ユニット)、(倫理審査委員会)があるとされる。特に倫理審査委員会は、英雄譚の選別が“動機の誘導”になっていないかを審査し、必要に応じて削除勧告を行う。削除勧告が出た場合、決議により再審査が行われると規定されている[10]。
活動/活動内容[編集]
ANALは、加盟国から提出された史料を収集し、検証し、公開する活動を行っている。収集の際には「七階層分類」を基本に、音声・図版・備蓄記録のいずれも同一のインデックス体系へ落とし込む運営される[6]。さらに、各国語の語彙差を橋渡しするため、音韻ベースの検索機構が提供されている。
典型的なプロジェクトとして、1999年から実施された「地図と口伝の同時保全計画(G-MAP)」が挙げられる。G-MAPでは、災害時に配布される車列の順番合図を、紙の標識と音声の両方で保管する取り組みが行われたとされる。報告書では、洪水対応訓練における隊列再編時間が平均で11分短縮したと記載されている[11]。
また、教育目的の配布教材「レジェンド・ワークブック」も作成されており、職員数の多くが翻訳と検証に従事していると報告されている。ANALの広報は、軍事の賛美ではなく“復旧の手順”を後世へ渡すことを担うと述べている。一方で、教材の中に含まれる英雄名が必ずしも中立に並ばないとして、後述のような批判が生じた。
加えて、ANALは「解釈差の吸収」を目的とした討論会も実施している。討論会は、史料の“意味づけ”が異なる国同士で交渉する場として設計され、合意に至らなかった事項は「暫定注記」としてデータベースに残す方針が採られている。なお、この暫定注記の保管期間は最長10年とされる。
財政[編集]
ANALの予算は年額約48億スイスフランであるとされる。財源は分担金と、各国の博物館・大学が共同で受ける委託事業収入、さらに保管庫の安全点検契約から構成されている。
分担金は、加盟国のGDPではなく「兵站訓練の人口係数(LPI)」に基づいて算定されると説明される。LPIは、軍・民双方の災害訓練参加者数と、備蓄施設の稼働面積を用いて計算されるため、経済力の影響が相対的に弱いとされる[12]。この方式は、加盟国間で不満が少ないと評価される一方、政治的な影響を受ける余地が残るという指摘もある。
職員の人件費は予算の35%を占めるとされ、残りは保管庫の維持、史料デジタル化、翻訳、倫理審査の実施経費に分配される。ANALの会計報告書によれば、2022年度のデジタル化関連費は約7億4300万スイスフランで、うち圧縮・復元技術の研究費が1億900万スイスフランとされた[13]。
加盟国[編集]
ANALは72か国が加盟国として参加しているとされる。加盟国は、欧州だけでなくアフリカ、アジア、中東、オセアニアに分布しており、各国の軍事史料機関と民間の教育機関の双方が関与する設計になっているとされる。
特に、史料提出の“準拠度”が高い国には優先保全枠が付与される。優先保全枠は、提出フォーマットの適合度と、七階層分類の整合性検査の合格点に基づき付与されると説明される。合格点が満点の国には、次年度の互換指数(A-CI)再計測が優先される運用が行われている[7]。
なお、加盟の条件には「過去の戦争賛美を目的とする教材配布を禁止する」条項が含まれるとされ、設置法において所管される。もっとも、言語によっては“英雄譚”の表現が微妙に異なるため、解釈差が生まれやすいとも指摘される。そのためANALは、暫定注記と再審査の手続を重視している。
歴代事務局長/幹部[編集]
ANALの事務局長は、総会で選任され、任期は4年とされる。設立当初の事務局長は、ジュネーヴの国際法研究者出身の(初代)であり、設置法の運用細目を整備したとされる。
その後、第2代事務局長は兵站語彙学者の(任期:1991年〜1994年)であったとされる。El-Masriは、A-CIの算出に“誤読”という概念を組み込み、音声保全の重要性を理事会に押し込んだと報告されている[7]。
1998年からは、史料保全エンジニアのが第3代事務局長に就任したとされる。Tanigawaは、保管庫の温湿度管理を七階層のメタデータに紐づけることで、検索性能を向上させたと説明された。なお、幹部には倫理審査委員会の長としてが名を連ねているとされるが、公式には「担当部署の氏名は限定公開」とされるため、詳細は公表資料で確認できないとされる[14]。
不祥事[編集]
ANALは幾度かの不祥事が報じられている。もっともよく知られるのは、2016年の「互換指数改変疑惑」である。監査委員会は、特定言語の音声データの重み付けが、ある加盟国の訓練成績に有利になるよう調整されていた可能性を指摘した[15]。事務局は「単なる復元パラメータの再設定」であるとして説明したが、理事会は暫定注記の付与を命じた。
また、2019年には保管庫の更新工事に伴い、輸送符号の目録が一時的に閲覧不能になった事件があった。ANALは職員数412名のうち37名が復旧作業に投入され、閲覧不能の総時間は「合計84時間13分」と公表した[16]。この数字の精密さがかえって不信感を生んだとされ、広報担当が「復旧の計測可能性を担保するため」と述べたことが話題になった。
さらに2021年、教材の“英雄名”の配列に関する内部資料が漏えいしたとされる。内容は特定の勝利物語を目立たせる意図があったのではないかというもので、倫理審査委員会は「配列は読みやすさのため」と反論した。しかし、批判を受けて配列順をアルファベットと互換指数の双方で決め直す運用が導入されたと報告されている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ Alphonse Renaud『国際機関における軍務伝承の保存設計』ジュネーヴ国際出版, 1989年.
- ^ Marina V. Kessler「ANAL互換指数(A-CI)の算定手順に関する技術覚書」『Journal of Logistic Lexicon』Vol.12第3号, 2020年, pp.44-61.
- ^ Dr. Saad El-Masri『音声保全と誤読抑制:兵站語彙の標準化』Springer, 1995年, pp.18-27.
- ^ Helena Šádková「倫理審査委員会の運用と暫定注記制度」『Ethics in Archival Systems』第2巻第1号, 2013年, pp.92-110.
- ^ Yuki Tanigawa『七階層分類が検索性能を変える:メタデータ設計の実務』ANAL Press, 2001年, pp.1-35.
- ^ 『軍務伝承・兵站史料の国際的保存に関する設置法(運用逐条案)』スイス連邦官報局, 1987年, pp.73-88.
- ^ International Archive & Disaster Learning Network『G-MAP地図と口伝の同時保全計画 報告書』第6版, 2003年, pp.210-238.
- ^ Rita Koval「災害復旧における隊列再編時間の相関:A-CI試験」『Proceedings of the Neutral Training Symposium』Vol.7, 2018年, pp.5-16.
- ^ Tariq Al-Saffar『兵站教育と英雄譚の境界線:ANAL教材分析』University of Doha Press, 2012年, pp.66-79.
- ^ J. M. Carruthers『Logistic Memory and the Fiction of Neutrality』Oxford Ledger Press, 2016年, pp.101-119.
外部リンク
- ANAL Legends Archive
- 七階層分類ガイドライン(閲覧ポータル)
- A-CI 試験記録(公開分)
- G-MAP 地図・音声マッピング
- Ethics Review Board 審査概要