NINTENDON'T
| タイトル | NINTENDON'T |
|---|---|
| 画像 | 架空タイトルロゴ |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 『NINTENDON'T』のジャケットイメージ |
| ジャンル | アクションRPG(“後悔回避”システム搭載) |
| 対応機種 | ポータブル・メトロイド |
| 開発元 | 株式会社ネオンヤマシロ機工 |
| 発売元 | 株式会社星間流通(通称:星間流通ホールディングス) |
| プロデューサー | 佐竹 光成 |
| ディレクター | 綾瀬 朔人 |
| 音楽 | 山城リョウ&バロック・テレメトリー |
| シリーズ | “後悔しない勇者” |
| 発売日 | 1997-10-18 |
| 対象年齢 | 12歳以上 |
| 売上本数 | 全世界累計 184万本 |
| その他 | 日本ゲーム大賞受賞、攻略ブック同梱版あり |
『NINTENDON'T』(英: NINTENDON'T、略称: NDN)は、[[1997年]][[10月18日]]に[[日本]]の[[株式会社ネオンヤマシロ機工]]から発売された[[ポータブル・メトロイド]]用[[コンピュータRPG]]。[[“後悔しない勇者”]]の第2作目にあたる。
概要/概説[編集]
『NINTENDON'T』は、[[1990年代]]後半の携帯ゲーム市場で話題となった[[アクションRPG]]であり、プレイヤーは「後悔」をゲージ化されたリソースとして管理する勇者として操作する。ゲームの最大の特徴として、選択肢の誤りが“物語”そのものを汚し、次周回で世界の色温度が下がることが挙げられる。[1]
同作は、シリーズ第2作目として位置づけられたが、前作『NINTENDON』の不評要素を“否定する”思想で改修したとされる。発売当初からキャッチコピーは「もう迷わない——迷ったら、やり直さない」[2]とされ、あえて否定形を採ったタイトルが商標紛争の火種になったという逸話も知られている。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
プレイヤーは主人公「見習い勇者セツナ」を操作し、街→遺構→遺跡→帰還というループを繰り返しながら、遭遇した敵の行動パターンを観察して“後悔の芽”を摘む。ゲーム進行は主に探索と戦闘から構成され、戦闘はリアルタイムに行われる一方で、判断の瞬間だけ[[コマンド]]入力が止まる「停止準備モード」が挿入される。[3]
システムの中核として「DONTゲージ」があり、これは行動の結果として蓄積する“否定の遺産”を表す。DONTゲージが一定値を超えると、通常の攻撃が“逆方向へ跳ねる”ように見える演出が追加され、誤入力に対する救済にもなるが、同時に物語の分岐も固定化されるとされている。いわゆる救済と後悔管理が同居した設計として、当時の批評家には「優しさを呪いに変える勇気がある」と評された。[4]
アイテム面では、「後悔香」「眠り砥石」「未投函の手紙」など、用途が分かりにくいが効力が“時間差”で発現する装備が多い。特に「未投函の手紙」は、所持中に会話イベントが一つだけ増えるが、その増えた会話の内容が後のボスの台詞に影響するため、最短攻略を目指すプレイヤーほど混乱したという。[5]
対戦モードとしては、最大2人のローカル対戦「反証チェイン」が用意されている。相手のDONTゲージを“文章”として攻撃する体裁で、勝敗はHPよりも「次周回で世界がどれだけ前の状態を保てたか」で判定される。オンライン対応は検討段階で終わり、のちにアドオンが噂されたが、結局発売されなかったとされる。
ストーリー[編集]
物語は、[[架空の都市]]「[[星見町]]」で発生した“否定の雨”を起点に展開する。雨に濡れた者の記憶は、忘れるのではなく「正しさだけが残る形」で編集されてしまい、その結果として人々が互いの言葉を疑い続ける状態が常態化する。セツナは、失われたはずの「最初の選択肢」を探す使命を帯び、遺構「反省回廊」を突破することになる。[6]
中盤では、主人公が訪れる「未投函の郵便局(旧局舎)」が重要な転換点として扱われる。ここで交わす手紙のやりとりは、プレイヤーがどのNPCに謝罪したかに依存し、ボス戦前のイベントが変化する。なお、ゲーム内の説明文では「謝罪は償いではなく、次の沈黙を選ぶ行為」とされているが、これが後に哲学研究会を生んだとも語られる。[7]
終盤では、敵対勢力「[[断罪協会リヴァーブ]]」が、DONTゲージを“正義の燃料”に転換する装置「否認炉」を起動する。装置は街の外周ではなくプレイヤーの体験そのものを燃やす仕組みであり、最終局面でセツナは「倒す」よりも「否定しない」という選択を迫られる。これがシリーズのテーマである“後悔しない勇者”の逆説として受け止められた。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主人公の見習い勇者セツナは、旅の目的が“正解の探索”ではなく“誤りの封印”であることを序盤から強調される。セツナの口癖は「言い返さないと、言い直せなくなる」であり、開発スタッフによればこの台詞は初期案ではなく、テストプレイでプレイヤーが暴言を吐いた結果として生まれたとされる。[8]
仲間として同行するのは、街の時計職人ルーミア(通称:秒針係)である。彼女は装備の錆を“時間の逆算”で解く技能を持ち、戦闘中に「停止準備モード」を延長する補助を担当する。さらに、ルーミアはNPCとの会話を“正確に短く”することで後悔の芽を減らす。結果として彼女は攻略本の表紙を飾り、人気投票では2位に入ったが、1位はなぜかボスのミニ敵だったと報じられた。[9]
敵対勢力側では、断罪協会リヴァーブの幹部グレイ=トゥエルブが象徴的に登場する。グレイは「否定は秩序だ」と信じ、プレイヤーに対して“選択肢の削除”を要求する。彼の最終形態は鎧ではなく巨大な印刷機であり、台詞がページ番号付きで読み上げられる演出が当時のネット掲示板で大きく拡散したとされる。[10]
用語・世界観/設定[編集]
本作の世界観では、選択の結果が物理法則に介入するとされている。特に重要なのが「後悔定数(カタログ値:7.12)」であり、ゲーム内ではデータ項目として隠しステータス扱いになっている。後悔定数が高いほど、同じ行動でも演出が“冷たく”なるため、開発当時はテストチームが夜間に温度計で画面表示を測ったという噂もある。[11]
都市部には「言い直し市場」が存在し、住民は他人の発言を“再編集”して買い戻す。ここで取引されるのは、公式には「記憶の注釈」とされるが、実態は誤解を前提に価値を作る商売であるとされる。なお、市場の所在地としては[[東京都]]に似た地理が示されるが、ゲーム内の地図では「湾岸一丁目」など架空の区割りで表現される。[12]
また、シリーズ共通の概念として「否認炉(ひにんろ)」がある。否認炉は、後悔を燃やして“確信だけを残す装置”として説明されるが、実際にはプレイヤーが選択した回数と相関する挙動を見せるとされ、攻略勢からは「装置というより統計モデルだ」と指摘された。
開発/制作[編集]
開発は[[株式会社ネオンヤマシロ機工]]が担当したとされ、プロデューサーの佐竹光成は「ゲームは謝らせるべきではなく、謝らなくても進めるべきだ」と語ったとされる。[13]。企画は当初、従来型の携帯[[RPG]]に“選択肢の失敗ペナルティ”を入れる案から始まったが、開発中期に「失敗を罰にするとプレイヤーが早く終わらせる」というデータが出たため、罰を“世界の色”に変える方向へ舵が切られたという。
制作経緯としてよく語られるのが、DONTゲージの命名由来である。社内会議で誰かが「NINTENDON'Tって、結局“やらない”んじゃない?」と言ったところから発展し、結果として「やらない」を“やり直さない”へ接続するロジックが作られたとされる。[14]
スタッフ面では、ディレクターの綾瀬朔人が停止準備モードの仕様を担当し、当時の仕様書には「停止は世界が止まるのではなく、プレイヤーの言い訳が止まる」などと書かれていたとされる。また、音響は山城リョウが中心となり、ボス戦BGMには「リハーサルテイク音」が一定確率で混ざる“事故”が仕様として残された。[15]
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラックは『[[バロック・テレメトリー]]』名義でリリースされ、[[山城リョウ]]の作曲と、古楽器サンプルの再合成が特徴とされた。公式表記では「ハープシコードと低音の共鳴」を核にしているが、ファンの解析では同作の特定曲(「反省回廊:第三アーチ」)に、プレイヤー操作音が約0.38秒遅れて混入しているとされる。[16]
また、戦闘BGMのテンポはプレイヤーのDONTゲージに応じて変化し、数値としては基準テンポが156BPMから最大で143BPMへ低下する仕様と説明されている。なお、この変化は演出上の“緊張の薄まり”を表すと同時に、戦闘難易度の微調整にも使われていたとする説がある。ただし公式資料では否定されている。
BGM以外では、会話イベントで流れる短いSE「未投函クリック」があり、ある掲示板では「この音が鳴るとルーミアの好感度が1上がる」と実測されて話題になった。のちに攻略本の改訂版で、好感度ではなく“後悔の芽の種類が変わる”ことが示された。
他機種版/移植版[編集]
同作は発売後に携帯互換機「ポータブル・メトロイドNeo」へ移植された。移植版は1999年[[6月7日]]にリリースされ、ロード時間が平均で約22%短縮されたとされる。内容としては停止準備モードの入力ウィンドウが広がり、初心者向けに“否定しない”選択肢が増えたとされる。[17]
一方で、Neo版ではグレイ=トゥエルブ戦の印刷機演出が一部カットされた。理由は「演出が重く、携帯機の発熱が想定値を超えたため」と説明されるが、ファンの間では「削ったのではなく、プレイヤーの言い分が増えすぎたために“印刷が間に合わなかった”」という解釈が広まった。[18]
また、2001年にはスピンオフ移植として『NINTENDON'T:返送不可』が登場したが、こちらは本編のセーブデータを読み込めず、ほぼ別ゲームとして売り出された。シリーズのファンはこれを「正しさの追放」と呼び、逆に未プレイ層は“別作品”として受け取った。
評価(売上)[編集]
発売当時、『ファミ通クロスレビュー』では総合スコアとして40点満点中37点が付けられ、携帯RPGとしては高評価だった。特にゲームシステムの“後悔回避”が新鮮であるとして、複数の媒体が「プレイヤーの心理をUIにした」と論じた。[19]
売上面では、初週での販売本数が約41万本に達し、その後も波形が急速に落ちないまま推移したとされる。全世界累計では184万本を記録し、日本ゲーム大賞(カテゴリ:携帯RPG部門)で受賞した。なお、同賞の選考理由には「テンポと分岐の両立が高度で、読後感が残る」などと書かれたとされるが、一次資料は確認できていないとする指摘もある。[20]
一方で、後悔管理が合わないプレイヤーには「やり直しが精神を奪う」と不満も出た。攻略勢が最適手順を競うほど、逆にゲームのテーマが硬直化してしまうという批判もあり、以後のシリーズ続編では“後悔を軽くする”方向へ調整が入ったとされる。
関連作品[編集]
シリーズ作品としては前作の『NINTENDON』、派生移植の『NINTENDON'T:返送不可』、さらに後年の『NINTENDON'T:誤差の礼儀』などが挙げられる。特に『誤差の礼儀』では、DONTゲージが“誤差”として扱われ、数値目標が導入されたため、Eスポーツ的に分類される議論まで起きたとされる。[21]
メディアミックスとしては、[[テレビアニメ]]『反省回廊は濡れない』が1998年[[4月]]から放送された。こちらではセツナとルーミアが学校のような場で学び、断罪協会リヴァーブは“体育教師”として描かれたため、視聴者が戸惑ったとされる。ただし原作ゲームの暗さを和らげる方向だったという。
漫画作品では、星見町の日常を扱った『秒針係の午後』が単行本化され、ファンコミュニティでは「ゲームの後悔定数を家庭版で測ろう」とする遊びが流行した。
関連商品(攻略本/書籍/その他の書籍)[編集]
攻略本としては、公式に近い立場の『NINTENDON'T 反証ガイド(上巻)』が1998年[[2月]]に刊行された。上巻ではDONTゲージの数式が“読み物として”説明されているが、どの式が本当かは巻末の注記で曖昧化されている。なお、帯には「後悔は測れる」との強い表現があった。[22]
ほかに、非公式文献として『未投函手紙の読み解き術:星見町郵便局編』があり、こちらは会話イベントの選択履歴を“手紙の文字数”で管理する方法を提案する。さらに、学校の家庭科の教材に似せた『後悔回避クッキング:DONT味噌の配合』という奇妙なレシピ本も流通したが、これは出版社が明確に謝罪文を出したという記録が残っている。[23]
関連グッズとしては、音の鳴らない置き時計「秒針係クロック」があり、購入者の中には「鳴らないのに測定できる」と主張する者が出たため、都市伝説のように広まった。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 綾瀬朔人『停止準備モード設計論:言い訳を止めるUI』星間流通出版, 1998.
- ^ 佐竹光成『否認炉と勇者心理:RPGにおける選択の温度』ネオンヤマシロ機工技術資料, 1999.
- ^ 山城リョウ「『反省回廊:第三アーチ』におけるテンポ変調の実験」『Journal of Portable Game Acoustics』Vol.12 No.3, 2000, pp. 41-58.
- ^ 村上カナメ『後悔回避システムの計量化(試論)』[[星見町]]教育研究所, 1997.
- ^ ファミ通クロスレビュー編集部『携帯RPG白書(NDN特集号)』角星プレス, 1998.
- ^ 田嶋理恵『選択肢が世界を編集する:分岐演出の制作実務』ピクシー出版, 2001, pp. 102-119.
- ^ Margaret A. Thornton『Narrative Inversion in Handheld RPGs』New Albion Press, 2002, pp. 77-93.
- ^ Klaus Berendt「DO-NOT Systems: Player Agency and Negative Memory」『Proceedings of the International Interactive Fiction Workshop』第5巻第2号, 2003, pp. 201-219.
- ^ 星間流通ホールディングス『ポータブル・メトロイドNeo 互換移植報告書』, 1999.
- ^ 山城リョウ『バロック・テレメトリー:サウンドトラック完全解読』星間流通出版, 1998.
外部リンク
- NINTENDON'T 公式記録保管庫
- 星見町郵便局 デジタル資料室
- 断罪協会リヴァーブ 非公式文書館
- 秒針係クロック ユーザーコミュニティ
- 反省回廊 レコメンドアルゴリズム研究会