Street Fighter 865
| タイトル | Street Fighter 865 |
|---|---|
| 画像 | Street_Fighter_865_arcade_flyer.png |
| 画像サイズ | 280px |
| caption | 1988年版筐体ポスター |
| ジャンル | アクションシューティングゲーム |
| 対応機種 | アーケード、家庭用複合端末、磁気カセット式専用機 |
| 開発元 | 北辰電子工房 |
| 発売元 | 北辰電子販売 |
| プロデューサー | 黒田 恒一 |
| ディレクター | 相馬 仁 |
| デザイナー | 安西 透、メアリー・S・ハート |
| プログラマー | 河合 竜二、成瀬 真吾 |
| 音楽 | 久保田 玲子 |
| シリーズ | 865シリーズ |
| 発売日 | 1987年11月18日 |
| 対象年齢 | 12歳以上 |
| 売上本数 | 全世界累計862万本 |
| その他 | 通称は『865』。キャッチコピーは『八百六十五の夜に、拳は通貨になる』 |
『Street Fighter 865』(すとりーとふぁいたー はっぴゃくろくじゅうご、英: Street Fighter 865)は、11月18日に日本のから発売された用である。を抽象化した対戦作法をゲーム化したシリーズの第3.5作目として知られる[1]。
概要[編集]
『Street Fighter 865』は、が1980年代後半に展開した対戦型電子遊戯群の一作であり、格闘と射撃の境界を意図的に曖昧化した異色作である。プレイヤーは「拳銃を持たない闘士」として操作し、相手の間合いを読みながら、画面外にある“865番街区”の支配権を争うとされた[1]。
本作は当初、向けの短時間決着型タイトルとして企画されたが、筐体上部に装着された疑似反射板の仕様により、実際には対戦よりも観戦に時間を要する作品となった。このため、店側が設定した1プレイ料金と勝利条件の不一致が社会問題化し、のちにが「対戦型通貨還流ゲーム」として分類したという[2]。
ゲーム内容[編集]
ゲームシステム[編集]
ゲームシステムの特徴として、プレイヤーはに加えて、3つ目の入力である「都市税」を徴収できる。これにより相手の体力だけでなく、画面下部に表示される“街区指数”を減衰させることが可能であり、一定値を下回ると背景の街灯が消える仕組みであった。
また、入力受付が0.7秒遅れる独自の遅延補正が組み込まれており、開発資料では「現実の路上喧嘩に近い反応速度」と説明されている。なお、この仕様は後年の移植版では再現されず、熱心なファンの間では“855フレーム問題”として知られている。
戦闘[編集]
戦闘はで、各ラウンドは86秒に限定されていた。攻撃判定は拳・肩・視線の3層で構成され、特に視線攻撃は相手の向きを強制的に右回転させる効果があり、対戦後に「疲れたのは目である」との感想が多く寄せられた。
必殺技は全12種が確認されているが、うち2種は実機で発動不能とされる。これは基板上のROM容量を節約するため、技名だけが先行して印刷されたためであり、説明書にも「実際の使用は担当者に確認されたし」と書かれていたとされる[3]。
アイテム[編集]
アイテムは対戦中に空から落下する形式で、主に、、の3系統が存在した。折りたたみ傘は防御にも攻撃にも使える万能装備であったが、一定確率で対戦相手の足元に置かれ、ゲームバランスを著しく損ねたことが知られている。
家庭用版ではこれらに加えて「区画整理チケット」が追加され、使用すると背景の商店街が一時的に再開発される。プレイヤーの間では最も入手困難な隠しアイテムとして扱われたが、実際には吸い込まれた会話音声の誤作動で発生するバグであったという説が有力である。
対戦モード[編集]
対戦モードはローカル同時対戦のほか、筐体どうしを電話回線で結ぶ“遠隔立ち会い”に対応していた。これはが都市部の深夜営業店向けに導入したもので、二店舗の客が互いの筐体を通じて結果だけを交換する仕組みである。
このモードは通信安定性が低く、試合中に相手の顔が突然東京都台東区の観光案内へ差し替わる現象が報告された。後年、これが意図された演出だったのか技術的不具合だったのかについて、社内資料は保存されていない。
オフラインモード[編集]
オフラインモードでは、CPU戦のほかに「空気を読む練習」が収録されていた。これはコンティニュー画面で相手の肩の動きを予測するミニゲームで、全7段階の空気圧を読み切ると隠し称号「路地裏の調停者」が与えられる。
なお、オフラインモードはであるにもかかわらず、筐体左側に補助椅子が付属していた。これは開発者が「観戦者の緊張が勝敗に影響する」と考えていたためで、実際に近隣住民の通報件数が発売後3か月で17件増えたとされる[要出典]。
ストーリー[編集]
物語は、架空都市を舞台としている。ここでは毎年11月18日に「拳の再配分式」が行われ、勝者は翌年の交差点角を優先利用できるという独特の法が施行されていた。
主人公は、失踪した父が残した“865枚の通行証”を探すため、夜の市場と高架下を渡り歩く。途中、の臨時職員や、靴磨き職人の格闘家、退役した屋台警備員などと戦うが、最終的には全員が同じ商店街の再開発反対署名に並んでいたことが判明する。
エンディングでは、敗北しても都市が消滅しない代わりに、次のプレイで路面標示だけが少しずつ増える。これが「真の勝利は地図を塗り替えることではなく、地図に書き込まれた余白を守ること」であるという、当時としてはかなり文学的なメッセージとして評価された。
登場キャラクター[編集]
主人公[編集]
主人公はである。元・地下鉄補修員という経歴を持ち、拳よりも工具の扱いに長けるが、必殺技「終電昇竜拳」を会得してからは一躍人気キャラクターとなった。
設定上は寡黙な人物であるが、勝利台詞がやけに長く、1分を超えることもしばしばあった。このため、筐体周囲の待機列が自然に整列するという珍しい現象が起きたとされる。
仲間[編集]
仲間キャラクターには、屋台連合の配達員、気象観測所の警備技師、そして謎の少年が登場する。彼らはそれぞれ異なる方法で“街を守る拳”を使うが、実際には全員が同じ防犯カメラ映像を共有していたという、後味の悪い設定がある。
ミナ・カジワラは人気が高く、缶詰型ミニフィギュアの売上だけで初回出荷分の14%を占めた。なお、彼女の得意技「豆腐返し」は豆腐を投げる技ではなく、豆腐売り場の照明を消して相手の視認性を奪う技であった。
敵[編集]
敵側の総統はで、元は都市計画課の下請け技師だったとされる。彼は“完璧な街路”を実現するため、住民の足音を分析し、路面の硬度を可変にする装置を開発した。
中ボスのは三方向同時に攻撃してくるが、実際には本人が3人いるのではなく、筐体の奥行き表示の誤認を利用したトリックである。発売当時、これを本物の多重人格設定と誤解した攻略誌が一度だけ存在した。
用語・世界観[編集]
作中で言う「」とは、単なる数値ではなく“町が自分の名前を取り戻すまでに必要な呼吸数”を意味する。開発初期案では「864」だったが、担当編集者が縁起が悪いとして1を足したという逸話が残る。
また、「ストリート」は道路ではなく、法令上の歩行権が共同管理される細街路群を指し、「ファイター」は戦闘員ではなく、交渉の際に拳を交える者全般を指すと説明されていた。このため、ゲーム内の住民は全員が何らかの意味で戦っていることになる。
世界観の中核にはという概念があり、各エリアごとに商店主、清掃員、郵便配達員が別々のボスとして配置されている。なお、設定資料集には「夜間の自動販売機も準ボスである」との記述があり、ファンの間で長く議論の対象となった。
開発・制作[編集]
制作経緯[編集]
本作は、1985年に北辰電子工房が実施した社内企画「拳と通勤路の関係性調査」から生まれたとされる。もともとは教育用ソフトであったが、試作版の時点で駅前の客層が異常に熱狂したため、急遽対戦ゲームとして再設計された。
企画段階では、開発者の相馬仁が「勝負に勝っても街がよくならなければ意味がない」と主張し、これがゲーム内の都市維持システムにつながった。なお、会議録の一部にはコーヒー染みで消えている箇所があり、そこに“865”の由来が書かれていた可能性がある。
スタッフ[編集]
スタッフには、、、久保田玲子のほか、アーケード基板の配線設計を担当した、サウンドの圧縮方式を考案したが参加した。特にエレナは、効果音を「一度聞くと忘れられないが、2回聞くと少し恥ずかしい音」にする方針を採ったことで知られる。
開発末期には、タイトルロゴの“865”が大きすぎるとして、筐体前面の8割を占有した。そのため、展示会ではゲーム名より数字だけが先に覚えられ、来場者アンケートには「8が強い」「6が親切」といった謎の感想が並んだ。
音楽[編集]
音楽はが担当した。ジャズ、盆踊り、工業用サイレンの要素を混ぜた独特のBGMが特徴で、特に1面曲「Morning on 865th Avenue」は、通勤ラッシュの足音をサンプリングしたことで有名である。
サウンドトラックは発売から半年後に『Street Fighter 865 ORIGINAL SOUND TRAFFIC』としてレコード化され、限定版には“駅構内にしか流れない未収録曲”が付属した。これは当初、販促用ジングルとして制作されたが、あまりに哀愁が強かったため単独曲として採用されたという。
効果音の一部は実際の路面清掃車から採取されたものであり、特に勝利時の「カラン」という音は、硬貨ではなく駅の自動改札の閉鎖音を加工したものとされる。
他機種版・移植版[編集]
1988年には版が発売され、画面の横幅が足りない問題を解決するために、キャラクターが全員少し背を丸める仕様となった。これにより、逆に家庭的な印象が増したと評価されている。
1991年には磁気カセット式専用機『865 MINI』に移植されたが、容量不足から背景都市が1枚の壁紙になり、全キャラクターが同じ喫茶店で戦うことになった。にもかかわらず売上は好調で、当時の販促資料には「縮小された方が喧嘩が見やすい」と記されている。
には相当の配信サービスで再配信され、オンライン対戦に対応した。ただしネット対戦では、負けると画面左下に“遅延税”が表示されるため、当時の利用者の半数が設定項目を探していたとされる。
評価[編集]
発売当時、本作は斬新な対戦設計が評価され、相当の特別賞を受賞した。批評家からは「格闘ゲームであると同時に、都市計画ゲームでもある」と評され、ゲーム誌の平均点は7.8点前後で安定していた。
売上は初週で12万本、全世界累計862万本を突破したとされる。特にとで人気が高く、理由として「路地が多い」「夜が長い」「看板が読めなくても楽しい」の3点が挙げられている。
一方で、筐体が重すぎて移動にクレーンを要したこと、対戦中に背景の自治会放送が実際に流れることなどから、苦情も少なくなかった。だが、結果として“遊ぶほど街の事情に詳しくなるゲーム”として、後年は文化史的価値を認められている。
関連作品[編集]
続編として『Street Fighter 865 II: Quiet Block』、外伝として『865: The Alley Chronicle』が制作されたとされる。また、同系列の派生作には落ちものパズル『865 FALL』、ハンティングアクション『865 HUNT』、ロールプレイングゲーム『Roadside 865』がある。
さらに、『Street Fighter 865 〜夕暮れの区画整理〜』、舞台化作品『865 on Stage』など、メディアミックス展開も行われた。もっとも、アニメ版は第3話でほぼ全員が会議を始めてしまい、格闘シーンが極端に少ないことで知られる。
関連商品[編集]
攻略本には『Street Fighter 865 完全立ち回り年鑑』と『Street Fighter 865 必勝路地マニュアル』があり、後者は戦術よりも最寄りの公衆電話の位置に紙幅を割いていた。書籍版では、各キャラクターの“勝てる時間帯”が丁寧に分析されている。
また、菓子メーカーとのタイアップ商品として「865ラムネ」、文具として「通行証メモ帳」、さらに実用書『今日からできる区画整理術』が発売された。なお、最後の書籍はゲーム関連商品かどうかについて編集合戦が起きた。
脚注[編集]
1. ^ 公式パンフレットでは発売日が11月16日となっているが、筐体側面の銘板には11月18日と刻印されている。
2. ^ 日本遊戯機構『対戦型通貨還流ゲーム分類要領』第4版、1988年。
3. ^ 説明書の該当箇所は現存せず、複写版のみが確認されている。
関連項目[編集]
参考文献[編集]
山辺修一『都市格闘ゲーム史序説』北方出版, 1994年.
黒田 恒一『865と街路の倫理』新潮機構, 1992年.
Margaret L. Thornton, "Street Combat and Civic Space in 1980s Arcade Culture," Journal of Imaginary Media Studies, Vol. 12, No. 3, pp. 41-68, 2001.
久保田 玲子『ゲーム音楽の路面電車的構造』音律社, 1990年.
相馬 仁『対戦を街に戻す』北辰未来叢書, 1989年.
Robert K. Ellison, "The 865 Problem: Delay, Blame, and Cabinet Design," Arcade Research Quarterly, Vol. 7, No. 1, pp. 9-22, 1998.
『Street Fighter 865 完全設定資料集』北辰電子工房広報部, 1988年.
エレナ・グリフィス『圧縮音の美学と誤作動』港湾工学社, 1996年.
小野田まさる『アーケード文化と自治会放送』地方史評論, 第18巻第2号, pp. 115-139, 2005年.
T. Watanabe, "Why Numbers Fight: A Case Study of Street Fighter 865," Proceedings of the International Conference on Fictional Game Systems, pp. 201-217, 2010.
外部リンク[編集]
北辰電子工房 公式アーカイブ
865シリーズ年表館
路地裏ゲーム保存会
Street Fighter 865 研究室
アーケード文化資料室
脚注
- ^ 山辺修一『都市格闘ゲーム史序説』北方出版, 1994年.
- ^ 黒田 恒一『865と街路の倫理』新潮機構, 1992年.
- ^ Margaret L. Thornton, "Street Combat and Civic Space in 1980s Arcade Culture," Journal of Imaginary Media Studies, Vol. 12, No. 3, pp. 41-68, 2001.
- ^ 久保田 玲子『ゲーム音楽の路面電車的構造』音律社, 1990年.
- ^ 相馬 仁『対戦を街に戻す』北辰未来叢書, 1989年.
- ^ Robert K. Ellison, "The 865 Problem: Delay, Blame, and Cabinet Design," Arcade Research Quarterly, Vol. 7, No. 1, pp. 9-22, 1998.
- ^ 『Street Fighter 865 完全設定資料集』北辰電子工房広報部, 1988年.
- ^ エレナ・グリフィス『圧縮音の美学と誤作動』港湾工学社, 1996年.
- ^ 小野田まさる『アーケード文化と自治会放送』地方史評論, 第18巻第2号, pp. 115-139, 2005年.
- ^ T. Watanabe, "Why Numbers Fight: A Case Study of Street Fighter 865," Proceedings of the International Conference on Fictional Game Systems, pp. 201-217, 2010.
外部リンク
- 北辰電子工房 公式アーカイブ
- 865シリーズ年表館
- 路地裏ゲーム保存会
- Street Fighter 865 研究室
- アーケード文化資料室