dcsyhi
| 正式名称 | Directional Cognitive Synchrony Yielding Hybrid Interface |
|---|---|
| 通称 | dcsyhi |
| 提唱 | 1997年 |
| 提唱者 | レイモンド・K・サザーランド、長谷川冬馬ほか |
| 分野 | 認知工学、都市設計、情報表示 |
| 主な用途 | 方向案内、注意誘導、群衆制御 |
| 適用地域 | 駅構内、病院、空港、研究施設 |
| 標準化 | 国際符号協会暫定規格 DCSY-4 |
| 関連機関 | 国土空間誘導研究所 |
| 特徴 | 視線誘導と音響反射を組み合わせた多層的表示 |
dcsyhi(ディーシーエスワイエイチアイ)は、末にとの研究者らが共同で提唱した、方向感覚の揺らぎを意図的に再現するための符号化体系である。略称の由来には複数の説があるが、一般には「Directional Cognitive Synchrony Yielding Hybrid Interface」の頭字語とされている[1]。
概要[編集]
dcsyhiは、後半に急速に普及した、視覚・聴覚・言語の三層を重ねて人間の進行方向を半ば無意識に調整するための方式である。単なる案内表示ではなく、利用者が「自分で選んだ」と感じるままに、あらかじめ設計された経路へ導く点が特徴である。
この手法は、の前身組織であるの内部研究と、の空間認知実験が偶然接続されたことから生まれたとされる。もっとも、初期資料の多くが1998年の庁舎移転時に紛失しており、現在では一部の証言と、の地下通路に残された試験標識を手がかりに再構成されている[2]。
名称の由来[編集]
dcsyhiの名称は、当初は研究班内の符牒にすぎず、正式名称は存在しなかったとされる。だが、1996年秋にで行われた貨物動線調査の際、英語メモの欄外に書かれていた「D.C.S.Y.H.I.」が、後に略称として採用された。
一方で、の地下鉄駅で見つかったとする別系統の伝承では、これは「Delayed Corridor Synchrony for Yawing Human Individuals」の略であるともいう。この説はとされることが多いが、実際には初期研究者の一人が冗談半分で作った語を、学会事務局が真顔で採録してしまったものとみられている。
歴史[編集]
前史[編集]
dcsyhiの前史は、にの動線計画を担当した技師たちが、来場者の滞留を減らすために用いた「緩やかな回遊誘導」にさかのぼるとされる。特に近辺では、床面の模様だけで来場者の進路が平均で17度偏向したとの記録がある。
ただし、この記録は後年になってから複製されたもので、原本には「風が強かったため」との手書き注記がある。dcsyhi支持者はこの一文を逆に重視し、風圧と視線誘導の相関を最初に示した文書であるとしている。
確立[編集]
体系としてのdcsyhiが確立したのは、の幕張新都心における実証試験である。ここでは周辺に、白・青・橙の三色で塗り分けた床線と、0.7秒遅延のアナウンス、さらに2.4キロヘルツ帯の微細な反響音を組み合わせた装置が設置された。
試験期間は14日間で、延べ8万1,300人が通過した結果、目的地誤認は従来比で43%減少した一方、12%の被験者が「なぜか一度だけ逆向きに歩きたくなった」と回答した。この副作用が、後のdcsyhiにおける「迷いの質的管理」という概念に結びついた。
普及と制度化[編集]
1999年にはの非公式会合で採り上げられ、の一部搭乗口で試験的に導入された。空港側は当初、搭乗率改善のための単なる案内改善策と説明していたが、実際には遅延便の乗客を別系統の待機列へ穏やかに分散させる効果が大きかったとされる。
2003年、が「DCSY-4暫定規格」を公表すると、やでも応用が進んだ。ただし、同規格の第4版には「濡れた床面では効果が23%低下する」とだけ書かれた脚注があり、編集委員の一人がその数字を毎回違う会議で言い換えていたため、正確な再現は困難であるとされる。
技術的特徴[編集]
dcsyhiの中核は、単独の表示物ではなく、複数の弱い संकेतを連鎖させる「弱誘導連鎖」にあるとされる。具体的には、床面の角度、案内板の語尾、照明の色温度、遠景の反射面が、利用者の注意を0.3秒単位で分散させるよう設計される。
特に有名なのは「三歩先提示法」で、利用者に現在地ではなく3歩先の視界だけを安定的に与えることで、到達先の選択を先回りして整える方式である。開発者の長谷川冬馬は、これを「人間は最短経路ではなく、最も納得できる経路を選ぶ」と説明したが、同席したの行動科学者は、これは実験室ではなく駅ナカでしか成立しないと反論した。
社会的影響[編集]
dcsyhiは、都市インフラの「親切すぎる介入」として議論を呼んだ。とりわけ内の大型複合施設では、利用者が迷わなくなったことで売店の偶発的な立ち寄り率が下がり、周辺店舗が一時的に売上減を訴えたとされる。
一方で、救急搬送の遅延が平均で1分40秒短縮されたことから、系の施設では高く評価された。これによりdcsyhiは「商業的には不誠実だが、公共的には有用」という珍しい評判を得ており、社会学者の間では「善意の設計が最も強い支配になる事例」として引用されている。
批判と論争[編集]
批判の中心は、dcsyhiが利用者の選択の自由をどこまで侵食するかという点にあった。2006年、の地下歩道で行われた実験では、案内線に従った歩行者のうち9%が、目的地に着いたあと「自分がどこかで誘導されていた気がする」と回答し、心理的圧迫を訴えた。
また、初期の標準化会議では、表示の青色をめぐって準拠派と日本独自色票派が激しく対立した。議事録によれば、ある委員は「この青は人を歩かせる青ではない」と発言したとされるが、別の版では「これは迷わせるための青だ」となっており、どちらが原文かは定かでない。なお、dcsyhiの設計思想には、意図的に「少しだけ不安にさせる」要素が含まれていたため、倫理審査でたびたび問題になった。
主な導入事例[編集]
代表的な導入例としては、第2ターミナル、旧導線、南口地下通路が挙げられる。いずれも、導入後3か月以内に「迷子の発生件数」が減少したが、代わりに利用者が展示室や店舗に長く滞在するようになった。
もっとも奇妙な事例として、の山間部にある気象観測施設での試験がある。ここでは積雪時の視認性向上を目的にdcsyhiが応用されたが、吹雪の日に限って職員が「いつもと違う道で戻りたくなる」と述べ、結果として宿直室の利用率が72%上昇したと記録されている。
その後の展開[編集]
2010年代以降、dcsyhiはスマートフォン地図アプリや音声案内システムに取り込まれ、直接名称が使われることは少なくなった。しかし、現在でも大規模イベント会場や病院の誘導設計において、その原理は広く参照されている。
2021年にはの研究グループが、視線追跡データを用いた「dcsyhi 2.0」の試案を公表した。これに対し、初期研究者の一人は「人間を案内するのではなく、迷わせる自由を与えるべきだ」とコメントしたとされ、この発言は引用されるたびに少しずつ短くなっている。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 長谷川冬馬『弱誘導連鎖の設計原理』国土空間誘導研究所紀要, Vol. 12, No. 3, pp. 44-71, 2004.
- ^ Raymond K. Sutherland, “Corridor Synchrony and the Ethics of Guided Choice,” Journal of Spatial Cognition, Vol. 8, No. 2, pp. 113-129, 1999.
- ^ 田所美弥『駅構内における三層案内表示の実証的研究』交通環境学会誌, 第21巻第4号, pp. 201-219, 2001.
- ^ Margaret L. Fenwick, “The Blue That Moves People: Color Calibration in Public Wayfinding,” Urban Interface Review, Vol. 5, No. 1, pp. 9-33, 2002.
- ^ 長谷川冬馬・伊藤兼次『DCSY-4暫定規格とその周辺』空間誘導技術報告, 第7巻第1号, pp. 1-58, 2003.
- ^ A. P. Hargreaves, “Delayed Corridor Protocols in Post-Industrial Transport Nodes,” Edinburgh Papers in Human Navigation, Vol. 14, No. 6, pp. 77-102, 2005.
- ^ 小野寺千尋『視線の三歩先を読む』日本認知工学会誌, 第18巻第2号, pp. 88-97, 2008.
- ^ K. Morita, “A Study on User Confidence in Induced Detours,” Proceedings of the International Conference on Wayfinding Systems, pp. 311-318, 2011.
- ^ 国土空間誘導研究所編『dcsyhi標準運用指針 第4版』都市表示出版, 2009.
- ^ 長谷川冬馬『なぜ人は少し迷うと安心するのか』新橋文化社, 2016.
外部リンク
- 国土空間誘導研究所
- DCSY標準化委員会
- 幕張動線アーカイブ
- Wayfinding Ethics Forum
- 東京表示史料室