『わたしのまっかなおてて』(絵本)
『わたしのまっかなおてて』(絵本)(わたしのまっかなおてて えほん)は、日本の都市伝説の一種[1]。幻の絵本として語られ、内容を思い出そうとすると手が赤くなるという噂があるとされる[2]。
概要[編集]
『わたしのまっかなおてて』(絵本)は、ページを開いたという目撃談が点々と集められている都市伝説である。とくに“読後に指先へ熱が集まり、なぜか赤い紙吹雪のようなものが出る”といった怪談が知られている[3]。
この絵本は、作家とされる(ののや みか)による“幻の児童向け作品”として広まったとされ、同時に「検索してはいけない言葉」扱いされることがある[4]。別名として(あかい てのひら の えほん)、(ち の あそびうた)とも呼ばれる[5]。
歴史[編集]
起源[編集]
起源については、地方の児童会で行われた“手形を押して色を確かめる”工作会が連想されることが多い。伝承では、の冬、栃木県宇都宮市の小さな印刷所で、赤色の染料が一時的に異常発色し、その廃版が絵本の素材になったという話がある[6]。
また別の説では、発端はが東京都文京区にある児童編集室を訪れた際、“赤は慰めの色であり、握りしめると誰かに届く”というメモを残したことにあるとされる[7]。このメモが後に失われ、残った原稿の一部が『わたしのまっかなおてて』に化けたという言い伝えが、いくつかの掲示板で繰り返し引用された[8]。
流布の経緯[編集]
全国に広まったのは以降のことである。噂はまず“夜の返却口に赤い手形の栞が刺さっていた”という図書館目撃談として流れ、次いで「子どもが絵本を持ち帰るが、翌朝にはページが空白になる」といった怪談へと変化した[9]。
その後、インターネット掲示板で「内容を検索するな」という警告文がテンプレ化され、として“まっかなおてて”が危険ワードとして扱われた。さらにの地域ニュース番組が“児童書の紛失騒ぎ”として短く取り上げたことで、ブームが加速したとされる[10]。ただし番組側は「単なる都市伝説」と説明していると噂されており、ここが不気味さを増幅させたとする指摘がある[11]。
噂に見る「人物像」/伝承の内容[編集]
伝承において語られる登場人物は少なくないが、中心にいるのは“赤い手を持つ子”と“最後まで笑わない先生”であるとされる。目撃談では、絵本の表紙に赤い手袋のような形が描かれており、ページをめくるたびに手の位置が少しずつずれるという話が多い[12]。
また「野々野美香によるとされる」と繰り返し言われる理由は、作中の文章が妙に“現場の匂い”を持つと評されるからである。証言によれば、赤いインクの匂いが鼻の奥に残り、読む途中で“自分の手が誰かの手に置き換わった気がする”という恐怖が生じるとされる[13]。
噂の核となる場面としては、最終ページにある“数え歌”が挙げられる。そこでは「五つの指、七つの皺、十のため息」といった奇妙な数え方が登場し、読み終えた直後に指先へ冷えが走ると報告されている[14]。いくつかの目撃談では、読後に手の色が赤いだけでなく、紙面に見えない線が浮かぶという[15]。さらに“ページを閉じると赤い鼓動が聞こえた”とする過剰な証言も存在するが、噂の盛り上がりの一部として扱われることが多い。
委細と派生/派生バリエーション[編集]
派生バリエーションとしては、同じ題名の“版違い”が複数語られている。たとえばでは赤色が暗く、雪の粒のような点が手の甲に沿って増えるとされる。一方では赤がやけに鮮烈で、読み終えた人の汗が赤い筋に見えたという不気味な目撃談が語られている[16]。
また『わたしのまっかなおてて』は、学校の怪談へも編入された。噂の中には、東京都の小学校で“図画工作の時間に配られたのは絵本ではなく空の袋だった”という事例があり、袋の底にだけ赤い手形があったといわれる[17]。さらに、地域によっては“同じ作り方の工作手順が配られていた”とされ、正体は絵本ではなく印刷物の工作キットだったのではないか、という推測も出た[18]。
言い換えとして、絵本が持つ“危険ワード性”が強調される版もある。内容そのものよりも「検索してはいけない」ことで呪いが発動しやすいとされ、“まっかなおてて”をスマートフォンで打ち込んだ人の画面に、一瞬だけ赤い指の影が映るという噂が繰り返し語られた[19]。この変種は、インターネットの文化として語られる典型例としてまとめられることがある。
噂にみる「対処法」[編集]
対処法は、どれも“触れてはいけないものに触れないための儀式”として語られている。まず推奨されるのは、絵本を見つけたら絶対に声に出して読み上げず、代わりに指で空中に文字をなぞる方法である[20]。これは“声が呼び水になる”とされるためで、特定のリズムでなぞると赤い手形が縮むと噂されている。
次に言い伝えられるのが、赤色を“別の赤”で相殺するやり方である。具体的には、北海道の家庭で用いられる“赤い食紅のアイシング”を紙の角に塗り、絵本の角と同じ方向へ折り返すという手順が広まったとされる[21]。もちろん確認された実験ではないものの、“パニックになった子の手が落ち着いた”という目撃談が添えられることで説得力が増した。
さらに、検索に関しては「検索履歴を消すな」と真逆の助言もある。理由として“消すことで絵本が再取得される”という恐怖の解釈が示され、逆にブラウザを閉じるだけでよいとする派閥も現れた[22]。このように、対処法は統一されず、噂が噂を呼ぶ構造が続いているとされる。
社会的影響[編集]
社会的影響としてまず挙げられるのが、図書館・学校での掲示運用である。都市伝説の広まりにより、児童向けの書架管理が“紙のサイズ別”に細分化され、貸出システムの返却口には追加の検査テープが貼られたと噂される[23]。
また、マスメディア側では“子どもの好奇心を煽る内容”として扱われる時期があり、ごろには「絵本のタイトルだけで呼び出す現象がある」と題した特集が組まれたとされる[24]。ただし専門家として紹介されたの委員は、実在しないと指摘されることもあるといわれ、出典の曖昧さが不気味さとして残った。
さらに、ネット上では創作の二次利用が増え、“赤い手のフラッシュカード”などの亜種が登場した。これらは恐怖を娯楽として取り込む一方で、実際の児童書選びにまで影響し、保護者が「赤色の手形が入っている絵本」を避けるようになったという証言もある[25]。
文化・メディアでの扱い[編集]
文化・メディアでは、“恐怖の子ども向け絵本”という括りで取り上げられることが多い。アニメ化や実写化の噂もあるが、企画段階で頓挫したとされる話が目立ち、「台本の赤字部分が勝手に増えた」という怪談が添えられている[26]。
一方で、作家研究の文脈ではが“言葉の色彩に焦点を当てた児童文学”の代表として語られることがある。ただし、本人に関する一次資料は乏しいとされ、作家の実在性そのものが噂の中心へ回収されたといわれる[27]。この「正体は何か」という不確定さが、検索してはいけない言葉としての地位を補強したとする見方がある。
また、教育現場では“安全な怪談の教材”として読み聞かせ風の朗読動画が出回ったとされる。だが聞き手の一部が「語りのリズムが原作と同じだった」と恐怖を訴え、結果的に視聴が制限されたとも噂されている。こうした循環は、インターネットの文化としての都市伝説の典型例とされている[28]。
脚注[編集]
参考文献[編集]
(架空の参考文献)
[1] 国立怪談資料館『平成・未返却図書の記録』国立怪談資料館叢書, 2011, pp.17-21. [2] 斎藤琥珀『児童書に潜む“色の呪い”』青藍出版, 2003, 第2巻第1号, pp.44-58. [3] 山口すみれ『赤い掌の目撃談とその周辺』草花社, 1999, Vol.3, pp.102-130. [4] 野々野美香『児童編集メモ(写本)』文京児童編集室(編), 1996, pp.5-9. [5] 『学校の怪談年鑑 2007』学校安全研究会, 2007, pp.221-236. [6] 版・印刷所異常発色報告(第13号)『地方技術だより』, 1988, No.13, pp.3-11. [7] 佐伯拓也『失われた原稿はなぜ増えるか』幻影書房, 2006, pp.73-90. [8] 工藤ナツキ『検索語が呼ぶ現象論』アルゴリズム叢書, 2010, Vol.1, No.4, pp.12-25. [9] 関東図書館協会『返却口の装飾と安全対策』関東図書館協会資料, 2002, pp.59-67. [10] 田中一樹『マスメディア報道と都市伝説の同期』メディア幽学研究, 2005, 第1巻第3号, pp.88-104. [11] 杉田麻由『“単なる都市伝説”と言った瞬間』夜間放送倫理研究所, 2004, pp.201-219. [12] 高橋銀太『絵本のページズレ現象の考察』紙の民俗学会誌, 1998, Vol.12, pp.14-33. [13] 鈴木紗央『読むと手が反応するという話』小児怪談医学, 2009, pp.301-312. [14] 野々野美香(伝)『五つの指、七つの皺、十のため息』未刊行手稿(複製版), 1997, pp.1-6. [15] 相馬灯『赤い線が浮く証言の分類』怪奇記述研究, 2001, 第5巻第2号, pp.77-96. [16] 伊達蘭『季節版における色相の差異』妖怪インク学会, 2012, pp.66-84. [17] 児童会緊急対応記録(非公開抄録)『自治体安全白書・試案』, 2005, pp.10-18. [18] 北川恭平『工作キット起源説の検討』民俗工作工学会, 2013, Vol.6, pp.25-41. [19] 牧野みつ『危険ワード性と画像残像』インターネット迷信学会誌, 2016, pp.90-108. [20] 神谷凪沙『口に出さない儀礼の効用』呪い予防研究会, 2008, pp.134-156. [21] 佐藤礼子『赤を相殺する家庭儀礼』家庭民俗資料館, 2015, pp.48-59. [22] 和泉真澄『検索履歴は消すべきでない』デジタル疫学叢書, 2018, Vol.9, No.1, pp.9-22. [23] 清水陽斗『書架運用の細分化と心理的効果』公共図書運営学会, 2006, pp.152-168. [24] 報道アーカイブ『児童書特集と恐怖の枠組み』夜の記録編集部, 2004, pp.9-27. [25] 保護者聞き取り調査班『赤い絵本忌避の現場』地方教育統計研究所, 2011, pp.77-101. [26] 中村紗羅『台本の赤字が増えるという伝承』映像怪談技法研究, 2017, Vol.2, pp.210-228. [27] 児童文学資料サミット『野々野美香の“存在”をめぐる議論』未刊行報告書, 2009, pp.1-19. [28] オンライン怪談指数研究会『インターネットの文化としての都市伝説』オムニバス出版, 2020, pp.301-329.
(注:一部の文献の書誌情報には矛盾があるとされる。)
脚注
- ^ 国立怪談資料館『平成・未返却図書の記録』国立怪談資料館叢書, 2011.
- ^ 斎藤琥珀『児童書に潜む“色の呪い”』青藍出版, 2003.
- ^ 山口すみれ『赤い掌の目撃談とその周辺』草花社, 1999.
- ^ 野々野美香『児童編集メモ(写本)』文京児童編集室(編), 1996.
- ^ 『学校の怪談年鑑 2007』学校安全研究会, 2007.
- ^ 工藤ナツキ『検索語が呼ぶ現象論』アルゴリズム叢書, 2010.
- ^ 田中一樹『マスメディア報道と都市伝説の同期』メディア幽学研究, 2005.
- ^ 牧野みつ『危険ワード性と画像残像』インターネット迷信学会誌, 2016.
- ^ 和泉真澄『検索履歴は消すべきでない』デジタル疫学叢書, 2018.
- ^ オンライン怪談指数研究会『インターネットの文化としての都市伝説』オムニバス出版, 2020.
外部リンク
- 赤い手形アーカイブ
- 未返却図書バックナンバー倉庫
- 学校の怪談・安全掲示板
- インターネット迷信ウォッチ
- 児童編集室オーラルヒストリー