イデオロギーファイター
| タイトル | イデオロギーファイター |
|---|---|
| 画像 | (架空ジャケット画像) |
| caption | 反動派の盾を「神話化」して攻略するムーブが流行した。 |
| ジャンル | 対戦型レッテル格闘(アクションシューティング) |
| 対応機種 | PlayStation VR2 / PlayStation 5 / PC(VR対応) |
| 開発元 | カナリヤ・ポリティクス・スタジオ |
| 発売元 | サンブレッド・インタラクティブ |
| プロデューサー | 猿渡 茂文 |
| ディレクター | 神谷 ユリナ |
| 発売日 | 2016年11月3日 |
| 売上本数 | 全世界累計 138万本(2021年時点推計) |
『イデオロギーファイター』(英: Ideology Fighter、略称: IF)は、[[2016年]][[11月3日]]に[[日本]]の[[カナリヤ・ポリティクス・スタジオ]]から発売された[[PlayStation VR2]]用[[アクションシューティングゲーム]]である。革命派と反動派の「レッテル」を操作して精神的ダメージを与え合う対戦格闘として設計され、[[イデオロギー戦記]]シリーズの第3作目にあたる[1]。
概要/概説[編集]
『イデオロギーファイター』は、プレイヤーが革命派または反動派の代理人格「キャリブレーター」を操作し、相手に対してスローガンと記号を投影することで勝敗を決める対戦格闘として知られている。ゲームの核は、パンチやキックではなく、相手の思考を「ラベル(レッテル)」として再分類し、精神的スタン値を削る点にあるとされる[1]。
キャッチコピーは「遊んでマルクス、買ってエンゲルス」であり、公式番組では“思想を殴るのではなく、思想に拳を入れる”という表現が繰り返し用いられた。なお、開発の初期設計書では本作が「社会的誤読の格闘器」と呼ばれていたことも、のちに資料研究会で紹介されたとされる[2]。
本作は[[日本ゲーム大賞]]級の評価を受けた一方で、レッテル操作が現実の対立を“ゲーム化”しうるとの懸念が早くから指摘されている。特に発売初週、[[横浜市]]の展示会会場で「レッテル生成ウェルカム事故」が起きたとする噂が広まり、開発側は翌月、対戦マッチングの文章フィルタを「3層(3-3-5方式)」に改修したと説明した[3]。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
システム[編集]
ゲームシステムの特徴として、通常攻撃に相当するのが「レッテル・スラスト(通称RT)」である。RTは短射程だが、当てた瞬間に相手のHUD上の用語が強制的に“分類語辞典”へ吸い込まれる仕組みとされる。分類語辞典には「正統」「逸脱」「迎合」「暴走」など全128語が収録され、試合中の状態変化が累積すると“精神的回復速度”が鈍化する[4]。
また、勝敗条件は体力ではなく「共感疲労(Emotional Exhaustion)」と呼ばれるゲージである。共感疲労は一定値を超えると「思考停止(暫定)」状態になり、通常ガードが2割遅れると推定される。プロデューサー猿渡茂文はインタビューで、値は「0.73乗則」で設計したと述べたとされ、当時の攻略サイトではこの表現が“数学っぽくて怖い”として話題になった[5]。
なお、レッテルは固定ではなく、プレイヤーが“相手の発言”を想定して入力したスローガンに応じて変化する。公式の言い回しでは「会話の予測が上手いほど、分類が鋭くなる」とされるが、開発ブログでは一部の通信遅延がこの予測精度に影響した可能性も触れられている[6]。
戦闘/対戦モード/協力プレイ[編集]
対戦モードは1on1と2on2のほか、3人チームで役割を割り当てる「陣営編成戦」が用意されている。陣営編成戦では、革命派担当のキャリブレーターが“期待語”を、反動派担当が“防衛語”を投影し、混ざると中立語が生まれて逆転の余地が生じると説明された。
協力プレイとしてはストーリーミッションの同時攻略があり、敵AIではなく「観客NPC」がパフォーマンス値で介入する仕組みになっている。観客NPCは試合のスローガン適合率が高いほど拍手し、拍手が増えると共感疲労の減衰が抑えられるとされる。結果として、チーム戦では“正しさ”より“間合い”が重要になると評された[4]。
オンライン対応は発売時点で全世界同時進行のランキング形式が導入され、月間セッションは約94万回、マッチング失敗率は0.62%として広報された。ただし、後年の検証ではこの値が“VR酔い補正込み”であった可能性が指摘されている[7]。
ストーリー[編集]
物語は、架空都市[[刈谷ノースポート]]に現れる「分類ドーム」をめぐる抗争として描かれる。分類ドームは、街の掲示板・学校のスピーチ・商店街の値札に至るまで、語を同じ規格で再翻訳する装置であるとされる。この装置が作動すると、住民たちは自分の意思ではなく“レッテルの学習”に従うようになると描写された[8]。
革命派側は、正義が言葉に先行するという信念から「期待語フレーム」を開発した。一方反動派側は、秩序が誤読を許さないという立場から「防衛語コンパイラ」を採用したとされる。両者は分類ドームの中で、相手の語彙の優先順位を奪い合うことで勝敗を争うことになる[9]。
終盤では、主人公格のキャリブレーター「ナノハ・レベッカ(ナノハ・レベッカ/南穂 レベッカ)」が、レッテルそのものの辞書を破壊する選択を迫られる。だが辞書を壊すと共感疲労の計算式が空白化し、勝敗が“操作不能な偶然”へ傾くという結末が提示される。公式はこの展開を「自由意志のバグ」と呼び、ユーザーの間では「2回に1回は負けるから許せない」の声も出たとされる[10]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
革命派陣営の中心として「マルチア・カスパール」が登場する。彼は記号設計者であり、会話の間合いを詩の韻へ変換することで相手のHUDを揺らす戦い方を得意とする。攻略記事では、マルチアのRTを当てるより先に“相手の回避語”を先読みする必要があるとされ、上級者大会では“1フレーム早い正義”として流行した[11]。
反動派陣営では「ボルガ・ミハイル」が代表格として扱われる。ボルガは防衛語コンパイラの管理者であり、攻撃ではなく“訂正”で精神的ダメージを与えるタイプである。彼の必殺技「訂章(ていしょう)連鎖」は、相手が言ったスローガンの誤用箇所にのみ反応して分類を上書きする仕組みとされるが、説明が難解すぎたため発売初月は技名検索が急増したという[12]。
また、両陣営の中間に位置する中立NPCとして「観測員ロウレン」が登場する。ロウレンは勝敗に関係なく拍手のタイミングだけを制御する存在で、プレイヤーが“無意味な正確さ”を狙うと拍手が止まり、共感疲労が回復してしまう。開発側はこのキャラを「練習用の良心」と呼んだとされるが、プレイヤーは“良心なら表示されろ”と掲示板で不満を書き込んだと報じられた[13]。
用語・世界観/設定[編集]
本作の用語の中心は「分類語辞典」である。分類語辞典は全部で128語から構成され、各語は“攻撃性”“正当性”“疲労誘導”“回復抑制”の4属性でスコア化されているとされる。属性の合計は必ず100点になるよう丸め処理される仕様で、端数が“切り捨て派”と“切り上げ派”に分かれる論争を生んだ[14]。
次に「共感疲労(Emotional Exhaustion)」がある。共感疲労は、被弾したレッテルの“適合率”と、プレイヤーの入力速度に応じて増減する。公式では「適合率が高いほどダメージが深くなる」とされるが、オンライン検証では入力速度の影響が前提条件(回線・VR酔い)で変わった可能性が示されたとされる[7]。
さらに、世界観を彩る「分類ドーム」は、語の書式統一により都市の秩序を保つ装置として語られている。一方で反対派の資料では分類ドームが「言葉の検閲装置」であると批判される。なお、ゲーム内の説明では両者の主張が同じフォントで併記されており、プレイヤーによって“ゲームが煽っている”と受け取られた[15]。
開発/制作[編集]
制作経緯[編集]
制作は、[[カナリヤ・ポリティクス・スタジオ]]の企画室が「言葉を扱う格闘ゲームなら、操作は身体ではなく認知になる」と結論づけたことから始まったとされる。企画室の当初名は「対立学習シミュレータ」であり、当時の技術調査では“語彙の連想が入力精度に与える影響”が重点項目になっていたという[16]。
プロデューサー猿渡茂文は、開発会議の議事録が残っているとして「スローガンのテンプレは全部で3,204種類から、会話の似せ率で絞った」と説明したとされる。ここでいう似せ率とは、相手キャラの過去データとスローガンの語形の類似性を表す指標で、最終的に選抜されたテンプレは912種類とされた[17]。
ただし、発売直前の社内デモで一部の試作品が“レッテル判定ループ”を起こし、試合時間が平均で+18分伸びたとされる。ディレクター神谷ユリナは、遅延の原因が「分類ドームBGMの拍(はく)が入力判定に干渉した」可能性を挙げ、テンポ調整のために楽曲を49回差し替えたと明かした[18]。
スタッフ[編集]
ディレクター神谷ユリナの下で、デザイン担当には「葛西 ヒカル」が配置された。葛西はレッテルHUDの可読性を最優先し、VRでの視線移動が増えても“語だけはブレない”ようにフォントを設計したとされる。プログラミングは「本郷 イクオ」が主導し、分類語辞典の丸め処理を実装したとされるが、その挙動は一部では“倫理寄りの切り捨て”と揶揄された[19]。
音楽面では、作曲「遠藤 リオネル」が“思想の残響”をテーマに、打楽器とノイズを交互に配置する手法を採用した。対戦開始の合図音が一定条件で攻撃判定に近い心理効果を持つよう調整されたとされ、サウンドチームはこれを「聴覚の予測AI」と呼んだ[20]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
サウンドトラック『分類ドーム響奏集』が2017年2月14日に発売された。収録曲は全24トラックで、各トラックは“語の属性”に対応して短いモチーフが変形する仕様になっているとされる。特に人気が高かった曲は「逸脱の拍子(E-Irregular Beat)」で、共感疲労が高いときにだけ低周波が増える演出が話題になった[21]。
一方で、発売当初に配信されたデモ版ではトラック番号が並び順から外れており、ユーザーは“順番が思想を決めてる”と冗談めかして騒いだ。実際にはメタデータの差し替えミスだったと運営は説明したが、説明の仕方が理屈っぽすぎたため、コミュニティでは“運営もレッテル貼りしてる”と笑いになった[22]。
他機種版/移植版[編集]
PlayStation 5版は[[2019年]]の夏にリリースされた。移植では解像度よりも“レッテル判定のタイムウィンドウ”が調整され、オンライン対戦での体感が改善されたとされる[23]。
また、PC版(VR対応)は2020年9月28日に配信され、VRなしモードでも「視線に代わる入力」としてクラシックコマンドを用いることが可能になった。公式はこれを“身体の置換”と称したが、プレイヤーは“置換されるのは誤入力だけ”と評したという[24]。
その後、バーチャルコンソール対応として「IF Lite」が2022年12月1日に配信された。IF Liteではストーリーの一部が圧縮され、対戦モード中心の構成になっていると案内されたが、実際には未収録分のセリフが“別の用語辞書”に変換されているとの指摘がある[15]。
評価(売上)[編集]
発売初週で全世界累計56万本を記録し、以降も月次で堅調に伸びたと広報された。2021年時点の推計売上は全世界累計138万本を突破したとされ、シリーズ一作目の初動を約1.7倍上回ったと報じられている[25]。
媒体評価では[[ファミ通]]のクロスレビューでゴールド殿堂入りとなった。編集部は“レッテル操作が対戦の駆け引きに落とし込まれている”と記述した一方、別の編集メモでは“説明書が思想の教科書みたい”と書かれていたことも、後年の社内資料で明らかになった[26]。
ただし批判として、共感疲労の仕様が「精神論の優劣」に寄りやすく、初心者が敬遠するという傾向が指摘された。運営は補助機能として「やさしい分類(分類語辞典の表示簡略化)」を追加したが、それでも大会ルールでは簡略化を禁止することが多かったとされる[27]。
関連作品[編集]
関連作品としては、ストーリーをビジュアルノベル化した『分類ドームの余白』がある。また、ゲーム内に登場する架空の教本「レッテル講義録」を元にした漫画『正統の輪郭線』が連載されたとされる。テレビアニメ化されたシリーズとしては『イデオロギー戦記:拍の正義』が挙げられ、全12話で“必殺技の口上”が流行語になった[28]。
さらに、スマートフォンアプリ「スローガン・メモリー」により、プレイヤーが自分の入力癖を振り返る機能が提供された。アプリ側では“入力速度の偏り”を矯正すると宣伝されたが、矯正すると対戦が弱くなるという逆説がコミュニティで共有され、笑いを誘った[29]。
関連商品(攻略本/書籍/その他の書籍)[編集]
攻略本としては『イデオロギーファイター完全分類ガイド』が2016年12月20日に発売され、ISBNの末尾が“006”であることが地味に話題になった。内容は“128語の属性表”“RTの入力早見表”“大会向けメタ読み”まで含むとされる[30]。
また、研究書として『共感疲労と操作認知の関係』が2018年に刊行された。出版社はサンブレッド系の学術部門とされるが、レビューでは“研究なのに語録が多い”と評され、大学図書館に入ったものの貸出が少ないと伝えられた[31]。
他にも、サントラ解説書『分類ドーム響奏集(リミックスではない)』や、用語集『レッテルの辞書体験』が販売された。後者は辞書ページが厚く、落とすと痛いとして注意喚起が添えられていた[32]。
脚注(注釈/出典)[編集]
参考文献[編集]
以下は主に架空の出版物に基づく。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
脚注
- ^ 猿渡 茂文『遊んでマルクス、買ってエンゲルス——対戦格闘の認知設計』サンブレッド・ブックス, 2017.
- ^ 神谷 ユリナ『分類ドームの作り方:レッテルHUD最適化手順』Vol.3, カナリヤ工学叢書, 2016.
- ^ 遠藤 リオネル『思想の残響:共振と低周波の実装(pp. 41-58)』サウンド研究会, 2018.
- ^ 葛西 ヒカル『可読性は倫理になる:VR視線設計とフォント経済学』第2巻第1号, 未来入力出版, 2019.
- ^ 本郷 イクオ『語彙丸め処理の数理(0.73乗則の現場)』Journal of HUD Mechanics, Vol.12 No.4, pp.22-36, 2020.
- ^ Dr.エマ・シュタイン『Emotional Exhaustion Models in Competitive VR』Vol.7, International Review of Game Mediation, 2021.
- ^ 佐嶋 玲央『“レッテル講義録”の誤読史:ゲーム化の副作用』pp.310-329, 表象政策学会叢書, 2018.
- ^ 『ファミ通クロスレビューゴールド殿堂:IFの衝撃』エンターブレティン, 2016.
- ^ 『日本ゲーム大賞受賞作品解説:イデオロギーファイター』日本ゲーム賞委員会, 2017.
- ^ ミラン・ベルトラン『ラベル交換ゲームの社会心理(誤読と怒り)』第1巻第3号, Cambridge Plausible Studies(タイトル略称: CPS)出版社, 2019.
外部リンク
- カナリヤ・ポリティクス・スタジオ 公式アーカイブ
- サンブレッド・インタラクティブ サポート掲示板
- 分類語辞典ビューワー(非公式)
- 共感疲労計測コミュニティ
- IF大会レギュレーション集(読みにくい版)