グランドコーポ札幌
| 名称 | グランドコーポ札幌 |
|---|---|
| 種類 | 複合建築、団地型業務施設 |
| 所在地 | 北海道札幌市中央区北三条西九丁目 |
| 設立 | 1987年 |
| 高さ | 92.4メートル |
| 構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造、一部免震補強 |
| 設計者 | 北海都市建築研究室・大橋康平 |
グランドコーポ札幌(ぐらんどこーぽさっぽろ、英: Grand Corpo Sapporo)は、中央区にある複合建築である[1]。かつてのを母体として成立した高層団地型の施設として知られている[1]。
概要[編集]
グランドコーポ札幌は、の冬季都市対応を目的として構想された複合建築であり、現在では中心部のランドマークの一つに数えられている。名称に「コーポ」を含むが、単なる集合住宅ではなく、上層部に業務区画、中層部に文化施設、低層部に生活利便施設を併設する点に特徴がある。
建設当初は「雪を内側へ抱え込む建築」を理念とした実験的事業であったが、完成後はむしろ内部の吹き抜け空間が観光資源化し、週末ごとに方面からの見学者で賑わった。なお、最上階の回転展望室は計画時点では存在しなかったが、1989年の増築会議で突如追加され、これが後年の人気を決定づけたとされる[2]。
名称[編集]
「グランドコーポ」という名称は、60年代に札幌市内で流行した「共同体を持つ商業建築」の呼称に由来するとされる。ただし、実際には当時のの内部資料に登場する仮称「仮称・大規模居住商業複合体札幌」を、担当技師の一人が会議録上で略記したことが始まりであるという説が有力である。
「札幌」は所在地を示すが、創建当初の計画書では「札幌北三条高架下広場」と記されており、地元紙の誤植によって「グランドコーポ札幌」が定着した。もっとも、設計監修に関わったは、晩年に「誤植こそ建築の運命である」と述べたとされ、名称変更をあえて行わなかったとも言われている[3]。
沿革[編集]
構想期[編集]
1982年、が冬季回遊型の都市拠点整備を進めるなかで、の若手班が「積雪をエネルギーに見立てる建築」を提案した。これが後のグランドコーポ札幌の原型であり、当初は高さ30メートル級の中層施設として想定されていた。
しかし、の試算で「吹雪時の視認性を確保するには、むしろ遠くからも見える塔状構造が望ましい」と判断され、現在のような高層型へ転換された。なお、このとき提出された模型の一部は雪まつり会場で紛失し、後に付近の古物商から発見されたという逸話が残る。
建設と完成[編集]
建設はに開始され、冬季工事を避けるため、基礎部分のみを側で先行施工し、上部構造は翌春に一気に立ち上げる方式が採られた。工期短縮のため、現場では部材の搬入順を逆転させる「上棟先行法」が試みられ、これが後に一部のゼネコンで研究対象になったという。
完成は10月であったが、竣工式の前日に非常用階段の数が図面と一致しないことが判明し、急遽を追加した。この件は「札幌階段事件」と呼ばれ、以後、館内の案内表示には妙に細かい段数表記が並ぶようになった[4]。
再編と保全[編集]
には地下区画の床下空間から想定外の冷気循環が確認され、これを利用して小規模な氷展示室が設けられた。現在では、夏季に涼を求める利用者に人気があるが、展示品の氷像が一晩で半透明の「建築模型」へ変質する現象が報告されている。
の耐震補強では、外壁に見えない形で補助フレームが挿入され、結果として建物の固有周期が「北海道の民謡に似た揺れ方」を示すようになったとされる。これは評価が分かれたが、文化財的価値の保全という観点から改修は最小限にとどめられた。
施設[編集]
グランドコーポ札幌は、地上18階・地下3階の構成で、低層階に商業区画、中層階に地域交流室、高層階に旧来の法人オフィス区画が配置されている。最も知られているのは7階の「雪見回廊」で、外気温が氷点下20度以下になると床下照明が自動的に青白く変化する仕掛けがある。
また、11階には「移動式会議室」が存在し、室内の机が1年に2回だけ中央広場側へスライドする。これは代に入居企業が増減したことへの対応策であったが、現在では「会議のたびに座席配置が変わる建築」として口コミで知られている。
最上部の回転展望室は、風速を超えると自動停止するが、停止時に室内のスピーカーから歌謡が流れるため、観光客の間では「風待ちのフロア」と呼ばれている。なお、屋上の一角には雪庇観測用の小塔があり、これが実質的に建物の象徴となっている。
交通アクセス[編集]
最寄り駅はのとされるが、建設当初はからの直通地下通路が計画されていた。もっとも、地下水位の問題でこの通路は3度中断され、現在では半分だけ残された連絡坑が「幻の歩廊」として案内図に記載されている。
バス路線ではの系統が建物前面を通るほか、冬季には臨時の「雪壁迂回便」が運行される。これは吹雪時に建物周辺へ堆積する雪の高さがに達することがあり、歩行者導線を確保するために編成されたものである。
文化財[編集]
グランドコーポ札幌は、に札幌市景観重要建造物候補として挙げられ、には市民団体の申請を受けて準文化財扱いの保存対象となった。正式な指定は受けていないが、外装パネルの一部については「経年変化が最も美しい人工石材の一つ」として、建築史研究者のあいだでしばしば引用される。
また、1階ロビーの大理石には開業当初の利用者が鉛筆で刻んだ「晴れの日は遠回りせよ」という句が残されており、これは施設の精神を象徴する言葉として壁面保護ガラス越しに保存されている。地元ではこの句を、建物が独自の歩き方を要求する稀有な例として語り継いでいる。
脚注[編集]
[1] 1987年竣工資料「札幌複合建築台帳」では、施設種別を「団地型業務文化施設」と記載している。
[2] 回転展望室の追加は、1989年8月の第4回改修会議議事録に記録があるとされる。
[3] 名称定着の経緯については複数説があり、地元紙『北の朝報』の誤植説が有名である。
[4] 非常階段の段数追加は、施工記録上は「安全基準再調整」と表現されている。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 北海都市建築研究室編『札幌複合建築台帳 第3巻』北海都市出版, 1988年.
- ^ 大橋康平『雪を抱く塔の設計』北海道建築学会誌 Vol.14, No.2, pp. 31-49, 1990年.
- ^ 佐伯由紀『誤植が定着した都市施設名に関する研究』日本都市史研究 第22巻第4号, pp. 112-127, 2003年.
- ^ Margaret L. Thornton, “Winter-Circulation Architecture in Northern Japan,” Journal of Urban Climate Vol.8, No.1, pp. 5-26, 1996.
- ^ 北村俊介『札幌中心市街地における高層団地施設の社会的受容』都市計画評論 第11巻第3号, pp. 68-83, 2001年.
- ^ Tom Ellis, “Misprint as Monument: Naming Errors in Civic Buildings,” Architectural Folklore Review Vol.5, No.4, pp. 201-219, 2008.
- ^ 札幌市景観推進課『景観重要建造物候補調査報告書』札幌市役所, 2014年.
- ^ 中島晴彦『階段の政治学と非常口の文化史』建築安全研究 第17巻第1号, pp. 9-22, 2012年.
- ^ 北の朝報社編『グランドコーポ札幌 竣工20周年特集』北の朝報社, 2007年.
- ^ 渡辺精一郎『移動式会議室の成立と崩壊』現代建築ノート Vol.2, No.6, pp. 141-158, 1999年.
外部リンク
- 札幌都市建築アーカイブ
- 北国建造物研究所
- 景観保存ネット北海道
- グランドコーポ札幌案内室
- 都市回遊建築データベース