ハッピーわくわくハリケーン千とハッピーわくわくハリケーン千尋の神隠し
| 作品名 | ハッピーわくわくハリケーン千とハッピーわくわくハリケーン千尋の神隠し |
|---|---|
| 原題 | Happy Wakuwaku Hurricane Sen and Happy Wakuwaku Hurricane Chihiro's Spirited Away |
| 画像 | HappyWakuwakuHurricaneSenPoster.jpg |
| 画像サイズ | 250px |
| 画像解説 | 公開時のポスター |
| 監督 | 白波瀬 俊彦 |
| 脚本 | 三好 綾乃 |
| 原案 | 白波瀬 俊彦 |
| 製作 | 北条 みどり |
| 製作総指揮 | 相馬 恒一 |
| ナレーター | 日向 ちづる |
| 出演者 | 朝倉 未来、久我 玲、篠田 みなみ ほか |
| 音楽 | 神園 ルイ |
| 主題歌 | 『わくわくハリケーンの夜明け』 |
| 撮影 | 新城 透 |
| 編集 | 河合 まどか |
| 制作会社 | ひかり風車スタジオ |
| 製作会社 | わくわく映画製作委員会 |
| 配給 | 南海シネマズ |
| 公開 | 2003年7月19日 |
| 製作国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| 製作費 | 18億円 |
| 興行収入 | 143.7億円 |
| 配給収入 | 79.2億円 |
| 上映時間 | 127分 |
| 前作 | ハッピーわくわくハリケーン千 |
| 次作 | ハッピーわくわくハリケーン千尋の逆風 |
『ハッピーわくわくハリケーン千とハッピーわくわくハリケーン千尋の神隠し』(はっぴーわくわくはりけーんせんとはっぴーわくわくはりけーんちひろのかみかくし、英題: Happy Wakuwaku Hurricane Sen and Happy Wakuwaku Hurricane Chihiro's Spirited Away)は、に公開された日本のである。監督は、脚本は、音楽はが担当した。興行収入はを記録し、最優秀長編アニメーション賞を受賞した[1]。
概要[編集]
『ハッピーわくわくハリケーン千とハッピーわくわくハリケーン千尋の神隠し』は、が制作し、に配給で公開された長編である。タイトルの異様な長さから、公開前は関係者の間で「印刷所殺し」とも呼ばれていた[2]。
本作は、に落ちた二つの台風雲をめぐり、少女と少年が、風に呑まれた温泉街の契約更新を阻止するという物語である。公開後は、家族映画としての評価に加え、気圧差を情緒の比喩として扱った点が一部の批評家に注目され、地方公共図書館の上映会でも頻繁に使用されたとされる[3]。
あらすじ[編集]
は、東京都の外れにある気象測器学校で、季節風の記録係として働いていた少女である。ある日、彼女は上空で発生した「祝福性ハリケーン」に吸い込まれ、海上の移動温泉都市へ迷い込む。
そこで千は、同じく迷い込んだ少年と出会う。湯都では、風を封じると温泉税が下がるという奇妙な規則が敷かれており、都市を支配するが、台風の目の中に「幸福補給炉」を建設しようとしていた。千と千尋は、風見番の少女、元気象庁職員のらと協力し、三日三晩にわたる風車の暴走を止めることになる。
終盤では、千の名前が「千と千尋」の両方を含むことで契約書の主体が揺らぎ、結果として都市全体の会計年度が巻き戻される。これは脚本段階では存在しなかったが、試写会での拍手の長さを計測したが急きょ追加した場面であるとされる。
登場人物[編集]
主要人物[編集]
は、本作の主人公であり、風の流れを読む能力を持つ少女である。台風の進路図を折り紙のように扱う癖があり、これが後に「気象折紙」として児童教育に引用された。
は、湯都に紛れ込んだ少年で、もともとは神奈川県の港湾測量所で補助作業をしていた。水を怖がる設定であったが、撮影終盤で監督の提案により「自分の足音だけは平気」という奇妙な属性が追加された。
は、風見番の見習いで、劇中で最も早口な台詞量を持つ人物である。台本上は脇役であったが、予告編に一瞬だけ映ったため人気が急上昇し、後年の再上映版ではオープニングが彼女中心に差し替えられた。
その他の人物[編集]
は元気象庁職員を名乗る男で、実際には湯都の配電係であった。会議のたびに「雲は議事録を読まない」と発言し、制作スタッフの間で流行語となった。
は、都市の風量を商用利用しようとする官僚である。帽子の角度によって権限が変化するという設定は、衣装合わせの段階で偶然生まれたものであった。
なお、千の祖母にあたるは、現代日本アニメにしては珍しく作中で一度も説明されないまま物語の核心に関与しているが、この曖昧さが「神隠し性」の演出として高く評価された[4]。
声の出演[編集]
が千を演じた。朝倉は収録時、台風音に合わせて息継ぎする独自の方法を提案し、これが最終的に「風圧演技」と呼ばれるようになった。
が千尋を務めた。久我は変声期直後であったため、初期録音では声が風鈴のように揺れすぎ、制作陣は三度再録を行ったという。
はリリコ役を担当し、放送後に「1分23秒しか出ていないのに、なぜか主題歌より覚えやすい」と評された。ほかに、、らが出演者として名を連ねた。
スタッフ[編集]
映像制作[編集]
本作の映像制作はの第3制作棟で行われた。背景美術には、実在の鎌倉やの坂道取材が用いられたが、完成映像では風速の都合上ほぼ全てが45度傾いている。
特殊技術は、紙風船の物理シミュレーションを応用した「半実写ハリケーン法」が採用された。CG班は雲の輪郭を毎フレーム手書きで修正し、1カットあたり平均14.6回の描き直しが発生したとされる。
製作委員会[編集]
製作はが担当した。参加社には、、など、用途がやや分かりにくい企業が並んでいた。
委員会の議事録には「タイトルを短くすると興行収入が減る可能性がある」との記載があり、実際に会議は4時間11分に及んだという。なお、この会議で決定されたのは最終的に「短くしない」ことだけであった。
製作[編集]
企画[編集]
企画は1999年、白波瀬がの旧気象観測塔を訪れた際、風に飛ばされた脚本メモを拾い集めたことから始まったとされる。初期題は『千と風の休日』であったが、商標調査の結果、タイトルに「わくわく」を二度入れる方針へ変更された。
この「わくわく二重化」は、子ども向けでありながら不穏さを残すための意図的な措置で、のちにアニメ評論家のが「感情を二重台風化した構文」と評した。
美術・CG・音楽[編集]
美術はの商店街との水路を組み合わせたような空間を目指して設計され、実際には測量不能なほど複雑な路地が完成した。これにより、背景班は1日平均7枚しか進まなかったという。
音楽はが担当し、ハーモニカ、尺八、送風機を併用した編成で知られる。主題歌『』は、サビの直前で風速表示が上がる演出があり、ラジオ放送では再生前に注意書きが入った。
なお、後年のHDリマスター版では、当時の色調設計をめぐる誤解から「DVD色調問題」が発生し、空の青が海より濃くなりすぎたとして一部で論争になった。
着想の源[編集]
着想の源は、ととの三要素であると説明されている。白波瀬はインタビューで「神隠しとは、だいたい契約書をなくすことである」と語ったと伝えられるが、当該発言の一次資料は確認されていない[5]。
また、制作班は千葉県の海浜公園で実地観測を行い、強風下で紙を何枚保持できるかを検証した。最終的に、メモ用紙は平均2.8秒しか持たず、これが本作のカット割りの速さに影響したとされる。
興行[編集]
本作はに全国で封切られ、初週興行収入はを記録した。配給側は当初120館規模を想定していたが、試写会での風量演出が評判となり、公開2週目に追加拡大された。
宣伝では「見たら追い風、聞けば向かい風」というキャッチコピーが用いられ、新宿駅の大型広告は強風注意報と誤認されたため、駅員が一時的に案内を増員したという。リバイバル上映は、、2024年に実施され、3回目の再上映では4DX仕様が追加された。
海外では台湾、フランス、韓国で限定公開され、特にパリの上映会では、タイトルの長さを字幕に収めるため1行につき17回改行する独自の字幕フォーマットが採用された。
反響[編集]
批評[編集]
批評家からは概ね好意的に受け止められた。特に、の機関誌では「気圧差を家族の距離として表現した稀有な作品」と評された一方、別の評論では「説明のための説明が多く、風が渋滞している」とも述べられた。
一部の教育関係者は、作中で何度も「急がないと雲が更新される」という台詞が出ることから、時間管理教材として採用した。もっとも、児童が真似して扇風機の前で契約書を掲げる事例が相次ぎ、後に注意喚起が出された。
受賞・記録[編集]
本作はで最優秀長編アニメーション賞を受賞し、さらに、にもノミネートされた。興行収入は最終的にとなり、同年公開のアニメ映画としては最大級の成績を記録した。
また、公開翌年には関連商品売上がを超え、特に「風の鈴型ICタグ」が小学生の間で品切れになった。売上の一部は実際には風車修繕費に充てられたとされるが、明細は今なお公開されていない。
テレビ放送[編集]
ので初放送され、平均視聴率はを記録した。特にラスト15分は、番組表上の「天候注意」に関するテロップと映像の暴風表現が一致したため、視聴者からの問い合わせが一時的に増加した。
以後、の夏休み特集枠や地方局の深夜枠でも放送され、にはデジタルリマスター版が全国同時放送された。放送時の字幕では、リリコの早口が追いつかず、一部で「字幕が先に吹き飛ぶ」と話題になった。
関連商品[編集]
作品本編に関するもの[編集]
関連商品としては、サウンドトラックCD、風向計つきペン立て、折りたたみ式の湯都ジオラマなどが発売された。中でも「千の契約帳」は、表紙の紙質が良すぎたため実際にサイン帳として使われることが多かった。
映像ソフト化はDVD、、後年の4K版が存在する。DVD初回盤には「色が少し青い」ことへのお詫び文が封入され、これが逆にコレクター価値を上げた。
派生作品[編集]
派生作品として、朗読劇『』、舞台版『』、児童向け絵本『』が制作された。いずれも映画の物語を補完する体裁を取っているが、設定が微妙に異なるため、研究者の間では「並行世界三部作」と呼ばれている。
また、にはゲーム化企画が進行したが、台風表現の再現が難航し、最終的に「風を読むクイズアプリ」に縮小された。
脚注[編集]
1. 興行収入の数値は、の社内資料によるとされるが、公開版との整合性には異説がある。
2. タイトルの長さに関する逸話は、制作会議の参加者による回想録に基づくとされる。
3. 地方公共図書館での上映会利用については、の年報に記載があるとされる。
4. リリコの人気に関する記述は、当時のファン雑誌『』の読者投票結果に由来する。
5. 白波瀬の発言は、のトークイベント記録に残るとされるが、映像資料は未確認である。
関連項目[編集]
脚注
- ^ 白波瀬俊彦『風が契約するまで――ハッピーわくわくハリケーン制作記』南海出版, 2005.
- ^ 三好綾乃『脚本術と台風圏――二重タイトルの演劇学』風景社, 2006.
- ^ 神園ルイ『送風機と旋律 Vol.3』晴天音楽出版, 2004.
- ^ 宮下光彦「感情を二重台風化した構文」『映像批評』第18巻第2号, pp. 41-59, 2004.
- ^ 佐伯仁『日本アニメーション都市論』港北書房, 2007.
- ^ Kenji F. Morita, “Wind Contracts and Narrative Weather,” Journal of East Asian Animation Studies, Vol. 12, No. 4, pp. 88-113, 2008.
- ^ 北條みどり「製作委員会の風量管理」『映画産業研究』第7巻第1号, pp. 9-27, 2005.
- ^ Alicia M. Grant, “Spirited Departures from Meteorological Realism,” Cinema & Climate Review, Vol. 5, No. 2, pp. 201-219, 2011.
- ^ 全国公共文化施設連盟『文化施設上映会年報 2004年度版』, 2005.
- ^ 白波瀬俊彦・相馬恒一編『わくわくハリケーン完全解体新書』ひかり風車スタジオ出版部, 2019.
外部リンク
- ひかり風車スタジオ公式年表
- 南海シネマズ作品データベース
- わくわく映画製作委員会アーカイブ
- 日本風景美術協会 受賞一覧
- 風街通信デジタル復刻館