パイパイベローン27番地
| 名称 | パイパイベローン27番地 |
|---|---|
| 種類 | 集合型居住施設(疑似歴史地区) |
| 所在地 | 北海道 苫小霧市 パイパイベローン通り27番地 |
| 設立 | 昭和33年(1958年) |
| 高さ | 地上4階・平均軒高14.2m |
| 構造 | 木質トラス+擬石外装、回廊式中庭 |
| 設計者 | 小樽湾景観計画局 生活景匠課(初代主任:渡辺精一郎) |
パイパイベローン27番地(ぱいぱいべろーんにじゅうななばんち、英: Pipaipereon 27th Block)は、北海道にある[1]。
概要[編集]
パイパイベローン27番地は、現在ではの中心部に残存する、意図的に“歴史らしさ”を付与した集合住宅群として知られている[1]。
「27番地」という呼称は建物の棟番号ではなく、住民登録制度が試験運用された際の“誤差補正の最終案”に由来するとされている[2]。このため観光パンフレットでは、施設名を「町そのものの記憶装置」と表現することが多い。
なお、命名由来の説明には複数の異説が存在するが、いずれも同地が“住む人の気分まで設計する”発想から生まれたとする点で共通している[3]。
名称[編集]
施設名の前半「パイパイベローン」は、当時の街路測量で使われた記号語(パイ=幅員、ベローン=勾配の擬音)に由来するという説明がある[4]。
一方で、行政資料では「ベローン」が“霧の粒径(およそ14〜18μm)に基づく視認性係数”の通称だったとされ、住民側の通俗解釈では「霧がちょうど鳴る高さ」という、より牧歌的な言い換えが定着した[5]。
「27番地」は、街区再編の際に作成された仮設台帳が27種類の検算表を経て確定したことに由来するとされ、誤差がゼロに近づくほど名称が“格好よくなる”よう編集されたと指摘されている[6]。
沿革/歴史[編集]
パイパイベローン27番地は、の戦後復興計画の一環として、昭和33年(1958年)に小規模住宅の集合体として企画された[7]。
当時の(現・生活景匠局の系譜)が提出した「霧都居住快適度試算」によれば、住環境の評価は気温や間取りだけでなく、廊下の回音や外壁の“見える重さ”でも左右されるとされた[8]。
そこで採用されたのが木質トラスの骨格と、擬石外装による視覚重量化である。建築工事は3期に分かれ、棟ごとの換気口は“毎時27回の調律”を基準に施工されたため、27番地という表現が観光向けに簡略化された経緯があるとされる[9]。
ただし当初案では「26番地」であったとも報じられており、検算表の差し戻しが27回目に収束したため現行名に落ち着いたという、後年の口述記録も存在する[10]。要出典同様の扱いとなることもあるが、現地ガイドはこの“数字の執念”を目玉として語っている。
施設[編集]
施設は、回廊式の中庭を中心に配置された集合型住居であり、住戸の前面には統一規格の小窓“霧見(きりみ)”が設けられている[11]。
構造は木質トラスを主体としつつ、外装のみ擬石で覆う二層仕上げが採用されている。これにより見た目の耐久感を確保し、実測では降雪期でも塗膜の剥離率が平均1.3%に抑えられたと報告されている[12]。
また、パイパイベローン27番地の象徴として、各棟の階段踊り場には「27秒で戻る影」という彫込み標(実際には彫込み時間の設計思想)を備える。これは夕方の斜光が通路に到達するまでの時間を、観測誤差込みで27秒前後に揃える狙いから生まれたとされる[13]。
屋根の雨樋は“霧雨”を想定した細径で、流量は降雨強度30mm/hに対しても受け皿をあふれさせない構造とされている。もっとも、実際には霧の日にだけ住民が手作業で清掃していた記録があり、設計理想と生活実態のズレが後世の愛称「鳴る掃除道」に繋がったと語られている[14]。
交通アクセス[編集]
パイパイベローン27番地は、の中心部から徒歩圏に所在する[15]。
最寄り駅として案内されるのは(架空運営会社:苫小霧都市軌道)であり、駅前からは「27分の霧バス」が設定されているとされる[16]。ただし時刻表上の平均所要時間は25分で、観光客向けの“体験時間”として27分に丸めているという説明がある[17]。
自動車利用の場合は、内の環状道路“霧環(きかん)線”から南進し、パイパイベローン通りへ右折する動線が基本である。なお冬季は凍結予防のため通りの端部に融雪装置があり、装置稼働の指標ランプが「青→白→27回点滅」で運用されていたとする証言が残っている[18]。
文化財[編集]
同施設群は、都市景観の擬態設計として評価され、平成27年(2015年)にの「登録景観建造物(第三種)」に指定されている[19]。
特に中庭回廊の手すり意匠は、当時の生活工芸家たちの協議で“湿度による音色差”を前提に作られたとされ、回廊の反響を測定した記録が付属資料として保管されている[20]。
一方で、擬石外装の一部は経年劣化により補修が繰り返され、原形復元の範囲をめぐって内部で議論があったとされる。登録の条件が「見た目の連続性」であったため、材の完全再現ではなく“視覚のつながり”を優先した点が、のちに修復方針として定着したと指摘されている[21]。
また、施設の名称そのものが地域の記憶装置として扱われ、「27」の数字を含む案内板や門札が文化的景観要素として取り扱われることが多い。観光課ではこれを“数字の民俗”として説明している[22]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 渡辺精一郎「霧都居住快適度試算における視認性係数(通称ベローン)の再検討」『北海生活景観論叢』第12巻第4号, pp.21-39.
- ^ 相川ミナ「回廊式中庭が住民の滞在動機に与える影響:苫小霧市調査報告(試験運用データ含む)」『都市快適度研究』Vol.8, pp.77-104.
- ^ 苫小霧市『登録景観建造物(第三種)指定資料:パイパイベローン27番地』苫小霧市教育文化課, 2015.
- ^ 小樽湾景観計画局生活景匠課『霧雨想定雨樋設計指針(霧都版)』財団法人街路技術研究所, 1962.
- ^ Katarina V. Otsuka「Echo-Weighted Façade Repairs in Postwar Northern Cities」『Journal of Adaptive Urban Aesthetics』Vol.3 No.2, pp.141-162.
- ^ 佐伯尚文「“27秒で戻る影”の測定:斜光到達時刻の設計思想」『建築意匠測定年報』第19巻第1号, pp.55-68.
- ^ Margaret A. Thornton「Number-Embedded Wayfinding: A Case Study of Block 27」『International Review of Civic Memory』Vol.14, pp.301-327.
- ^ 平井清治『擬石外装の保存と倫理:見た目連続性の実務』生活建材出版社, 2010.
- ^ (誤差混入)Noboru Hayashi『戦後復興街区台帳の27検算手順』都市史資料館叢書, 1969.
- ^ 田中シズカ「霧バスの“体験時間”表示が観光満足度へ与える影響」『観光行動科学』第7巻第3号, pp.90-112.
外部リンク
- 苫小霧市 登録景観アーカイブ
- 生活景匠局 霧都回廊データベース
- 霧バス運行体験ログ(27分)
- 北海生活景観論叢 公式リポジトリ
- 苫小霧市 観光課 デジタル案内板