ポケットモンスター Psychic The Movie
| 作品名 | ポケットモンスター Psychic The Movie |
|---|---|
| 原題 | Pocket Monsters: Psychic The Movie |
| 画像 | (架空)劇場特報ビジュアル |
| 画像サイズ | 240px |
| 画像解説 | 黒い霧の中で発光する“透視球”が描かれた特報スチル |
| 監督 | 渡瀬セイゴ |
| 脚本 | 宮城良人 |
| 原作 | 田端コーポレーション(原案協力) |
| 製作会社 | ミカヅキ・ラボ、蒼空メディア、夢路出版、さざなみ放送 |
| 配給 | 東梟映画配給(通称・トウキョウクロウ) |
『ポケットモンスター Psychic The Movie』(ぽけっともんすたー さいきっく ざ むーびー)は、1999年8月21日に公開された「ミカヅキ・ラボ」制作の日本のアニメーション映画である。原作・脚本・監督は渡瀬セイゴ。興行収入は38.7億円で[1]、電脳娯楽アワード最優秀映像表現賞を受賞した[2]。
概要[編集]
『ポケットモンスター Psychic The Movie』は、超能力(サイキック)現象を“科学っぽく”説明しようとした劇場版として知られるアニメーション映画である。作中では、ポケットサイズのデバイスが主に用いられ、観客にも“家庭で再現できる”と錯覚させる演出が徹底された。
成立の発端は、1997年に起きた“赤いポスター”騒動と呼ばれる広告トラブルであるとされる。ミカヅキ・ラボの企画会議では、「感情は測定できる」という建付けが求められ、結果として“測定装置の物語”としての劇場版が構想された。なお、最初のタイトルは『サイキック・ポケット計画』だったが、公開直前に語感調整のため改題された[3]。
あらすじ[編集]
舞台は群馬県の架空研究都市。ここでは、通信衛星ではなく“電波の感情成分”を解析する新型システム「Psy-Wave Link」が運用されている。主人公一行は、夜になると道端の標識が一斉に反転する現象に遭遇し、標識が示す文字列が未来の天気予報に一致することを知る。
やがて、現象の中心には“透視球(とうしきゅう)”と呼ばれる装置があると判明する。透視球は未来を映すのではなく、観測者の潜在イメージを先回りで投影するため、見るほど現実が“自分向けに改変”されていく。研究主任のは透視球を「誤差のない占い」と呼ぶが、誤差が存在しないがゆえに訂正不能な事態へ進行していく[4]。
クライマックスでは、都市の地下配管を利用した巨大な共鳴回路が稼働し、主人公たちは超能力バトルという名目で“自己予測の鎖”を切断しようとする。しかし鎖は切断されるたびに観客の記憶から再生成され、映画館のどこかで必ず同じセリフが聞こえる仕組みになっていたとされる。試写でスタッフが同じ夢を見たという証言があり、編集室では最終カットのテロップを3回も書き換える羽目になった[5]。
登場人物(主要人物/その他)[編集]
主要人物[編集]
主人公側の中心は、超能力の“音響同調”を得意とする少年である。カザミはトレーナー免許を取得していないにもかかわらず行動できる設定になっており、作中では「規則が追いつかない熱意」として正当化されている。
相棒は、予感を“短い擬音”で伝えるポケモンである。ハナミノの鳴き声は、音声解析ソフトで見ると周波数が視聴者の心拍に同期し、劇場の前列で特に鮮明に聞こえるとされる[6]。
研究サイドの鍵人物は。彼女は作中で複数の肩書を名乗り、その肩書が毎回微妙に違う。物語上の整合性が意図的に崩されている点が特徴で、評論家は「サイキック研究は肩書のブレで成立している」と述べた[7]。
その他[編集]
「Psy-Wave Link」を運用する事務局はとは別組織として登場するが、公式パンフでは“関係が深い”とだけ匂わせられた。警備役の男はの出向者という設定で、当時の資料班がなぜか千代田区の自治体資料を流用したとされる[8]。
敵対勢力は、透視球の暴走を利用して未来の商機を奪う「霧商会」。名前だけ異様に現実的で、作中では領収書の番号形式まで描写された。領収書の番号が3桁ずつ区切られていることが“視聴者の目を慣らす”ためのギミックとして語られている[9]。
声の出演またはキャスト[編集]
主人公カザミを演じる声は。相棒ハナミノの声(鳴き声)はが担当し、台詞ではなく“呼気”の録音として処理されたとされる[10]。研究主任の渡辺ホノカ役にはが起用された。
また、霧商会の幹部役としてが出演し、同幹部の名乗り口上は公開前に出演者が一度も台本を見ないまま収録したことで知られる。なお、この口上だけが字幕で誤字として残るのは制作側の怠慢ではなく、意図的な“錯読”を促す編集方針だったと説明されている[11]。
スタッフ(映像制作/製作委員会)[編集]
監督の渡瀬セイゴは、原案段階で「サイキックは見せ方の問題」として色設計を先に固めたとされる。脚本の宮城良人は、会話のテンポを“測定ログ”の書式に寄せ、主要シーンでログ番号が挿入される構成にした。
音響面では、の協力により劇伴が二層構造になった。具体的には、メロディ層と“観測層”の2種類が同時に流れるよう設計され、観客が聞き取れるのはメロディ層のみだが、興奮状態では観測層が認識されるとされた[12]。この仕組みが過剰に語られたため、後年の一部批評家からは「サイキックの説明を音で押し付けた」との反論が出た。
製作委員会は「ミカヅキ・ラボ企画室」「夢路出版編集部」「蒼空メディア技術局」「さざなみ放送コンテンツ編成」で構成され、配給は東梟映画配給が担当した。製作決裁の会議は横浜市の某倉庫で行われ、なぜか出席者の署名欄が“透視球の図形”になっていたとされる[13]。
製作(企画/制作過程/美術/CG・彩色/撮影/音楽/主題歌/着想の源)[編集]
企画と着想[編集]
着想の源として、1998年に気象庁付近で観測された“反転看板の気流パターン”が挙げられた。もっとも、当時の公式記録には該当事象が確認できないとされ、後年の研究会では「架空の気流が現実の記憶に付着する現象」という説明が提起された[14]。
企画段階の社内資料では、サイキックを「人間の計算能力の上限」ではなく「情報の摩擦」と定義し直す方針が示された。その結果、透視球は未来予測装置ではなく“思い込みの整列機”という扱いになった。渡瀬はこの装置を“雑誌の占い欄”に似せたかったが、占いの文体をそのまま取り込むと子ども向けの倫理審査に引っかかると判断され、代替として音声波形を文章のリズムにしたとされる[15]。
美術・CG・彩色・撮影[編集]
美術では、地下共鳴回路の配管群が川崎市の工業団地を参考に描かれたとされる。特に赤錆のグラデーションは、彩度を0.3刻みで調整したという社内メモが残っているとされるが、同メモの日付が別プロジェクトのものと一致しており、記録の混入が指摘されている[16]。
CGは“未来改変”の表現として導入され、現実の背景を一度フレームごとに分解してから再合成する手法が取られた。監督は「未来は綺麗に見せない。綺麗だと現実が壊れたことに気づかない」と述べたとされる。なお、透視球の光は3種類の粒子を使用し、それぞれの粒子サイズが最大で1.2mm、最小で0.17mmに設定されたとされる[17]。
音楽・主題歌[編集]
音楽は作曲家が担当し、劇伴には“観客の吐息に近い周波数”が含まれると説明された。主題歌は「境界(きょうかい)のスパーク」で、歌唱は。歌詞の一部には、台詞と同じ数字列が隠されており、当時のファンサイトでは「3-1-4-1-5は何を意味するのか」などの議論が相次いだ[18]。
公開当時の新聞記事では“サイキック演出の音圧が問題になった”と報じられたが、関係者は「音圧ではなく記号の反復が原因」と訂正している。もっとも、訂正を出した記事の見出し自体が別の号で載り直されており、広報の手際の悪さが笑い話として残った[19]。
興行(宣伝/封切り/再上映/テレビ放送・ホームメディア/海外での公開)[編集]
封切りは1999年8月21日、を皮切りに全国で同時公開された。初週の観客動員は上映スクリーンあたり平均1,942人で、これは同時期の劇場版アニメの中で上位3位に入ったとされる[20]。
宣伝では、駅前ビジョンに“未来の広告”が表示されるイベントが行われた。観客が持参したチケット番号の末尾に応じて、翌日の天気が予告されるという演出である。結果として、1日目の予告が当たりすぎたため、地域の商工会が「占い広告に該当するのでは」と問い合わせた記録が残っていると報じられた[21]。
テレビ放送は2000年1月3日にNHK系列で放送され、視聴率は17.4%を記録したとされる[22]。ホームメディアはVHSとレーザーディスクが先行し、後にDVDが発売された際には“黒い霧の色調が緑に転ぶ問題”が話題となった。制作者は「彩色の意図は変えていない。視聴環境の解像度が勝手に補完している」と回答したとされる[23]。
反響(批評/受賞・ノミネート/賞歴・ノミネート歴/売上記録)[編集]
批評では、サイキック現象を感情の計測に見立てる構成が評価された一方で、「説明が多くてバトルが遅い」とする声もあった。特に終盤の“観客の記憶から再生成される”描写は、比喩として読むと面白いが、字面としては不気味だという指摘が出た。
受賞としては、電脳娯楽アワード最優秀映像表現賞を獲得し、同時に同年の子ども映像賞でノミネートされた[24]。売上記録では、国内興行収入38.7億円に加え、関連ソフトの売上が配給収入の1.6倍になったとされる[25]。もっとも、配給会社側の発表と業界紙の集計で数字が微妙に一致しない点が後年に問題視され、「どこかの会議だけ透視球で更新されたのでは」と笑い話になった[26]。
テレビ放送[編集]
テレビ放送では、劇場版の“ログ番号テロップ”が地上波向けに簡略化された。簡略化の基準は「視聴者が読み切る時間」を優先するというもので、結果としてログ番号の一部が抜け落ちたとされる[27]。
一方で、視聴者からは「抜けた数字が口に出したくなる」といった反応があり、放送後に一部の数字列が流行語のように広がった。地域によっては、テレビを見ながら同じ数字を唱える“同調会”が短期間開かれたと報告されたが、参加者の安全面に配慮し翌月には中止されたとされる[28]。
関連商品(作品本編に関するもの/派生作品)[編集]
関連商品としては、設定資料集『透視球の設計図(全88頁)』が発売された。表紙には“設計図なのに完成品の写真”が使われ、書店での陳列場所が変えられたという逸話がある[29]。
また、主題歌のシングル「境界のスパーク」はカップリングとして「Psy-Wave Linkの練習曲(練習用)」(全1曲)が収録された。さらに携帯向け音声コンテンツとして、劇中の鳴き声(ハナミノ)が“バイノーラル再生推奨”で配布されたとされるが、実際には再生機器の相性が必要だったことから混乱も起きた[30]。
派生として、短編アニメ『サイキック・ポケット計画(第0話)』が製作され、主人公が透視球の“起動条件”を試す話が描かれた。第0話は本編と矛盾する点があるとされるが、矛盾こそがサイキックの仕様であるとして受け入れられている。なお、第0話は配信限定だったため、見た人と見ていない人の間で解釈が割れたという[31]。
脚注[編集]
脚注
- ^ 宮城良人『電波の感情成分と劇場版編集の手引き』夢路出版, 1999.
- ^ 渡瀬セイゴ『サイキックを測らないで見せる方法』ミカヅキ・ラボ出版部, 2000.
- ^ 安曇カナ『境界のスパーク歌詞解剖(会議録版)』蒼空メディア, 1999.
- ^ 佐倉ユウキ「観測層を含む二層劇伴の試聴検証」『日本音響映像学会誌』Vol.12第3号, 1999, pp.41-58.
- ^ 西園トモヤ「チケット番号が反応する演出の心理効果」『映像体験研究』第7巻第1号, 2000, pp.15-27.
- ^ 片岡ミサキ「声が“未来”を作る条件」『声優アーカイブ・レビュー』Vol.3, 1999, pp.88-103.
- ^ 『電脳娯楽アワード記録集1999』電脳娯楽アワード事務局, 2000.
- ^ 東梟映画配給編『配給収入の数字は語らない』トウキョウクロウ広報室, 2001.
- ^ Takumi Watanabe, “Pocket-Device Storytelling in Japanese Animation,” Journal of Media Mythology, Vol.4 No.2, 2000, pp.77-95.
- ^ Mika Tsukino, “The Green-Black Mist Color-Shift Problem,” International Review of Home Media, 第2巻第4号, 2000, pp.201-216.
外部リンク
- ミカヅキ・ラボ公式アーカイブ
- 東梟映画配給 1999劇場版特設サイト
- Psy-Wave Linkファン研究所
- 電脳娯楽アワード データベース
- 境界のスパーク歌詞タイムライン