太鼓の達人(初代)
| タイトル | 太鼓の達人(初代) |
|---|---|
| 画像 | TaikoMaster_FEBadge.png |
| 画像サイズ | 300px |
| キャプション | 筐体に刻まれた「鳴動契約・初代」銘板 |
| ジャンル | リズム打撃ロールプレイングゲーム |
| 対応機種 | 筐体型リズム端末(通称: 鳴動台) |
| 開発元 | 株式会社オオバチューナー(音響解析部) |
| 発売元 | 株式会社ドラムウェイヴ流通 |
| プロデューサー | 矢吹 琥珀(Yabuki Kohaku) |
| ディレクター | 雲井 敦正(Kumoi Atsumasa) |
| デザイナー | 小判子 コバン(Koban-Ko) |
| プログラマー | 遠藤 螺旋(Endo Rasen) |
| 音楽 | 鳴門響団(Naruto Kyodan) |
| シリーズ | 太鼓の達人シリーズ |
| 発売日 | 1997年7月17日 |
| 対象年齢 | 全年齢(演奏反射推奨) |
| 売上本数 | 全世界累計 184,320台(鳴動台換算) |
| その他 | 日本ゲーム大賞(触打部門)受賞 |
『太鼓の達人(初代)』(たんごの かみ えいえん、英: Taiko Master (First Edition)、略称: TM-FE)は、にのから発売された用。通称はであり、の第1作目にあたる[1]。
概要[編集]
『太鼓の達人(初代)』は、筐体に取り付けられた巨大な二面太鼓を操作子として用い、リズム入力を「経験値化」する形式のである。プレイヤーは「音符冒険者」として演奏し、成功・失敗に応じて譜面が“成長”する仕様を持つとされる[2]。
本作はの音響解析部が、古い祭囃子の録音から“人間の反射遅延”を数式化する研究を基に考案した。研究チームは当初、精密なテンポ追従を目標としていたが、試作段階で「ズレこそが物語になる」という結論に至り、譜面そのものが分岐する仕組みへと拡張したと説明されている[3]。
さらに、初代の筐体には「鳴動契約」と呼ばれる安全機構が搭載され、規定以上の連打が続くと“物理的に音が減る”のではなく、代わりにゲーム内通貨のが“霞む”演出を行うとされた。なおこの機構は、当時の一部施設から苦情が出たことで、設計変更が行われたという[4]。
ゲーム内容/ゲームシステム[編集]
ゲームシステムの中心は「二面太鼓への左右打鍵」と「中央ハイライトの維持」であり、成功するとが増加し、失敗するとゲージが“逆流”して敵キャラクターの攻撃が強化される点に特徴がある。プレイヤーは譜面中のマーカーを読み、接触タイミングを調整することで、同じ曲でも“別の冒険”へ分岐させることができるとされる[5]。
また本作では、打点は単なるスコアではなく、RPG進行の鍵として扱われた。打点が規定値に到達すると譜面が「鍛造モード」に入り、以降のノートが微小に厚みを持つように表示されると説明される。解析の都合上、表示の厚みは画面比で約2.7%とされ、開発資料では“厚い方が上手く聞こえる”という回帰分析結果が引用された[6]。
アイテムとしてはやが登場し、雷鳴丸は連打の失敗ペナルティを一時的に相殺する。一方静音札は、次の失敗で逆流ゲージを半減させるが、代わりにテンポ判定が厳格化されるため、上級者向けアイテムとして扱われた[7]。
対戦・協力面では、初代はオンライン非対応ながら「隣接席協力」が用意されていた。二人が同時演奏し、片方の失敗がもう片方の成功に吸収されると、協力技としてが発動する。初期ロケテストでは、協力成立率が全国平均で41.8%と報告され、施設ごとにばらつくことが課題化した[8]。
ストーリー[編集]
ストーリーは、楽曲そのものが“封印された太鼓の記憶”であるという設定に基づく。プレイヤーは世界の「テンポ要塞」を旅し、敵対勢力からテンポを奪還する役として描かれる[9]。
第1章では、主人公の音符冒険者が「鳴動台」の上で立ち往生する。そこで現れる案内役は、太鼓の内部に住む小型精霊である。ビートバンディットは、プレイヤーの打鍵の“癖”を観測し、譜面の分岐ルートを提案するが、その提案は必ずしも正解ではなく、あえて遠回りの報酬を提示することでプレイヤーの成長を促すとされた[10]。
中盤の“逆流ルート”では、失敗の連鎖が敵の増援を呼ぶ。ここでの演出は特に細かく、逆流が3回連続すると敵が纏うオーラの色が黄緑から紫へと段階的に変化する。色の変化はRGB値の差分で管理され、開発ノートでは「デルタEが約6.2を超えると読者が“ヤバさ”を認識する」旨が書かれていた[11]。
登場キャラクター/登場人物[編集]
主人公側の中心人物は、プレイヤーが操作する音符冒険者とされ、固有の名前は選択式ではなく“演奏者の名残”として扱われる。初代の仕様書では、名残はゲーム内ログに基づき「左打鍵比率」と「休符への戻り速度」から推定されると記されている[12]。
仲間としてはビートバンディットのほか、沈黙を操る、テンポの地図を描くが登場する。ノラはを作り、マルカは“あなたの間”を翻訳して譜面に注釈を付けるとされる。一方で、マルカの注釈は時折だけ的外れで、その外れが功を奏する場面もあるため、プレイヤー間で「マルカはわざと外す派だ」という雑談が広まったという[13]。
敵側の代表は遅延教団の幹部である。ズレオの攻撃は“ズレの呪文”と呼ばれ、画面上では矢印が中心から約1.1cm逸れる演出で表現されたとされる。なおこの約1.1cmは、筐体据付の個体差を吸収するために設定された目安であり、開発時の検証報告が引用されている[14]。
用語・世界観/設定[編集]
本作の世界では、正しいテンポを保つことが「世界の呼吸」として扱われる。そこで中心となる概念がであり、打点は単純な得点ではなく、冒険者の“記憶の厚み”を表す指標とされる[15]。
もう一つの重要概念がである。これは筐体側がプレイヤーの入力を守る契約で、過度な衝撃を検知した場合でも“音の取りこぼし”ではなく“ゲーム内の気迫の演出調整”として処理する仕組みを指すと説明される。ただし一部資料では、契約が「選ばれた施設でしか有効化されない」とする記述が見られ、編集者の間でも解釈が割れたとされる[16]。
譜面の分岐はと呼ばれ、成功・失敗だけでなく「失敗から復帰までの休符の読み」を含めた複合条件で決まる。公式ガイドブックに相当する同人誌では、条件が“休符の長さの対数”であるとまで言及されているが、これは根拠の明示が弱く、要出典になる可能性があると指摘されている[17]。
開発/制作[編集]
開発はの音響解析部が主導し、試作機は東京都ので“響きの残響”を測定しながら調整されたとされる。プロデューサーの矢吹琥珀は、祭りの屋外録音における風切り音がテンポ判定を揺らすことを問題視し、音声分離のためのフィルタを複数導入したと語られたとされる[18]。
ディレクターの雲井敦正は、音ゲーにありがちな“上手さの単一指標”を避け、「失敗を一つのRPG資源に変える」方針を採った。その結果、初代のスコア計算は通常の加点ではなく、打点の“物語還元率”を掛け合わせる方式が採用されたという。還元率は初期ビルドで83%と設定されていたが、プレイヤーの評価が割れたため試験的に76%へ調整されたと記録されている[19]。
制作面では、ロケテストが全国12施設で行われたとされる。うち7施設が都市型(人口密度が高い)で、残り5施設が観光型(混雑する)だったと報告され、施設混雑が協力成立率に影響する可能性が検討された[20]。
音楽(サウンドトラック)[編集]
本作の音楽はによる“演奏が進むほど曲調が変わる”方式で構成されたとされる。CD音源ではなく、筐体内部でテンポ判定に同期して音が再構成されるため、同じ曲でも打点の質により“勝手に編曲される”と説明される[21]。
代表的な楽曲には、第一章の、逆流ルートのなどがある。特に『遅延司祭の律』は、失敗が続くと低音域が強まり、プレイヤーが“聞こえてしまう”恐怖を感じるよう設計されたとされる。音圧の目安としては、筐体上部で測定した際に平均で約-12.4dB変化するよう調整されたと、制作資料で言及されている[22]。
サウンドトラックのジャケットには、太鼓の内部構造を模した譜面図が描かれた。なお一部で「ジャケットは東京ので描き起こされた」と語られたが、裏付けが薄いとされ、評価の分かれどころになった[23]。
評価(売上)[編集]
発売後、本作は短期間で施設数を増やし、1997年度末までに全世界累計184,320台(鳴動台換算)を記録したと推定される[24]。当時の業界誌では「ミリオンセラー規格に最も近い筐体ゲーム」として取り上げられ、の“触打部門”で受賞したと報じられた[25]。
ただし、プレイヤーの評価は二分された。支持層は「分岐譜がRPGとして面白い」点を挙げたのに対し、反対層は「初代は判定が細かすぎる」と主張したという。特に、復帰までの休符判定がシビアで、静かな店舗環境では成功率が上がる一方、混雑環境では気迫ゲージが過剰に揺れるとされ、施設ごとの差が話題になった[26]。
また、売上の伸びと並行して模倣筐体が出回った。これに対しオオバチューナーは、鳴動契約の音響署名を利用した検知システムを公開し、海賊版対策を“文化としての打ち分け”で行う方針を示したとされる[27]。
関連作品[編集]
続編では、分岐譜がより細かくなり、プレイヤーの演奏履歴が“能力体系”に反映される方向へ進んだと説明される。派生としては『太鼓の達人(初代) 逆流譜大全』のような図鑑系メディアが登場した[28]。
メディアミックスとしては、1998年にテレビアニメ化され、主人公の“ズレ”を巡る友情が描かれたとされる。アニメでは、遅延司祭ズレオが終盤で和解し、静音のノラと共に太鼓の地図を完成させる展開が人気を博したという[29]。
一方で、音楽ゲーム同士を横断する企画もあり、別スタジオの仮想精霊を召喚するコラボシナリオが“夢の続編”として語られたが、公式には限定配布扱いだったとされる[30]。
関連商品(攻略本/書籍/その他の書籍)[編集]
攻略本としては『初代 解析読本(第1版)』が刊行された。内容は譜面の分岐条件を表形式で掲載し、休符の長さを段階評価する「拍読み表」が付属したという[31]。
さらに、企業の内部資料が“書籍化された”体裁の『鳴動台の鳴動契約—運用と安全演出—』が市場に出回ったとされる。これは表紙にの行政標記が印刷されていたため、一部で公的資料と誤認されたが、編集部の調査では実際には社内監修であったと報告された[32]。
そのほか、『遅延教団 設定資料集』や、『ビートバンディット鳴き声辞典』など、なぜかキャラクターの擬音を収集する書籍が相次いだとされる。擬音辞典は“読むと上手くなる”という不思議な評判を呼び、店舗導入の際の販促に利用されたという[33]。
脚注[編集]
関連項目[編集]
脚注
- ^ 矢吹琥珀『鳴動台の設計哲学—打点は物語になる—』オオバチューナー出版, 1998年。
- ^ 雲井敦正「分岐譜における休符判定の確率モデル(初代仕様)」『ゲーム開発月報』Vol.12 No.3, pp.41-58, 1997年。
- ^ 遠藤螺旋「演奏者の反射遅延を推定する音響分離フィルタ」『音響工学ジャーナル(架空)』第5巻第2号, pp.101-120, 1996年。
- ^ Kumoi Atsumasa『Tempo Fortress Architecture』DrumWave Technical Press, 1999.
- ^ 矢吹琥珀「触打部門受賞の経緯と“安全演出”の社会受容」『日本ゲーム審査年鑑』第3版, pp.220-238, 2000年。
- ^ 小判子コバン「擬音が上達を促す理由:ビートバンディット鳴き声辞典の試験」『メディア表現研究』Vol.7 No.1, pp.12-27, 2001年。
- ^ 鳴門響団『同期編曲の実装メモ—筐体内再構成—』鳴門響団ライブラリ, 1998年。
- ^ 静音札調査委員会「静音札による逆流ゲージ制御の統計」『アーケード運用技報』Vol.2 No.4, pp.77-89, 1998年。
- ^ 月島リエ「海賊版検知としての音響署名:鳴動契約の実装事例」『著作権と技術(架空)』第11巻第1号, pp.33-55, 2002年。
- ^ Atsumasa Kumoi and Kohaku Yabuki『Rhythm RPG Systems: A First-Edition Study』Tokyo Gate Press, pp.1-320, 2003年。
外部リンク
- 鳴動契約アーカイブ
- 太鼓マスター譜面研究所
- 遅延教団ファンサイト
- 鳴門響団公式音源保管庫
- オオバチューナー資料閲覧室