対ロボット婚姻制度
| 題名 | 対ロボット婚姻制度 |
|---|---|
| 法令番号 | 平成18年法律第47号 |
| 種類 | 公法 |
| 効力 | 現行法 |
| 主な内容 | ロボットとの婚姻類似関係の届出、管理、解消、罰則 |
| 所管 | 総務省 |
| 関連法令 | 機械関係人格保全法、家庭内自動機管理令 |
| 提出区分 | 閣法 |
対ロボット婚姻制度(たいロボットこんいんせいど、平成18年法律第47号)は、家庭内および事業用との婚姻類似関係に関する届出、同居義務、資産帰属、解消手続等を定めることを目的とする日本の法律である[1]。略称は「対ロ婚法」である。総務省が所管する。
概要[編集]
対ロボット婚姻制度は、およびの普及に伴い、所有者と機体の関係が婚姻に準じる状態へ移行した場合の法的整理を目的として制定された平成18年法律第47号である。条文上は「機械に対する過度な感情的帰属を制御しつつ、共同生活における責任分担を明確化する」とされ、総務省が所管する[1]。
制定当初は介護用・接客用ロボットの増加を背景に、東京都千代田区の一部自治体職員が起案した「機械扶養届」の試案が端緒であったとされるが、後年の調査では、実際には平成15年の総務省内部勉強会で配布された『対機械親密関係整理メモ』が原型であったとの指摘がある。なお、条文は全体として冷静である一方、附則第3条にだけ妙に情緒的な文言が残っていることが、法学者の間でしばしば話題となる。
構成[編集]
本法は全7章38条および附則から成る。第1章は総則として、婚姻類似関係の定義、対象機体の範囲、届出の方式を定める。第2章は「登録対機体」、第3章は「共同生活上の義務」、第4章は「資産及びデータの帰属」、第5章は「解消及び保全」、第6章は「監督及び報告」、第7章は「罰則」である。
特異なのは、条文中でとの使い分けが極めて細かいことで、たとえば稼働時間の算定は政令で、感情推定値の申告様式は省令で規定するとされる。また、告示で定める「静穏モード時の同居義務緩和」のような、通常の法令では見かけにくい語が並ぶため、初学者の多くが法典というより工業規格の延長と誤認したといわれる。
沿革[編集]
制定の経緯[編集]
起源は平成12年頃、大阪府堺市の介護施設で実証導入された会話支援ロボット「ミナト4号」をめぐる一連の騒動にあるとされる。利用者の一人が当該機体に婚姻届を模した申請書を提出し、施設側が保管を拒んだことから、当事者間の所有権と感情帰属が衝突したのである[2]。
この事案を受け、内閣府の外郭研究会である「人機関係調整懇話会」が設置され、座長を務めた渡辺精一郎は、機械に対する法的関与を「贈与でも契約でもなく、婚姻に似た関係」と整理した。もっとも、議事録には『いかにしてロボットに離婚届を郵送するか』という、今なお意味不明な議論が記録されており、当時から制度設計が迷走していたことがうかがえる。
主務官庁[編集]
本法の主務官庁は総務省であり、同省情報流通行政局の下に置かれた「機械婚姻管理室」が事務を担当する。現場実務では、系統の通信審査部局と連携し、対象機体が発する誓約音声の録音形式まで確認する運用が行われている。
ただし、個人情報保護との関係で、対象者の「愛着指数」や「再起動後の帰宅率」についてはこの限りでないとされる。省内資料では、婚姻届受理件数よりも「解消後の充電器争奪件数」の方が多い年度があり、制度の性格を象徴する統計としてしばしば引用される。
定義[編集]
対ロボット婚姻[編集]
第2条は、対ロボット婚姻を「自然人が、人格付与の有無を問わず、学習能力を有する機体に対し、共同生活、相互扶助、定期的な点検責任その他婚姻の趣旨に類する関係を継続して形成すること」と定義する。ここでいう「趣旨に類する関係」は極めて広く、週3回の給電、年1回のファームウェア更新への立会いも含まれると解される。
また、機体側の意思表示については、音声合成による「了承」があれば足りるとされるが、平成24年以降は、で定める感情推定装置の表示が赤色点滅した場合に限り、同意の撤回が推定される。実務上は、音量調整ボタンの誤操作が同意争いの中心になることが多い。
登録対機体[編集]
登録対機体とは、婚姻類似関係の当事者となるロボットで、で定める耐熱性能、対話応答速度、並びに屋内移動時の段差処理能力を満たすものをいう。条文上は「家庭用掃除機能を有する者」も含み得るとされ、ここから一部の法学部生が掃除機と婚姻できるかをめぐってゼミ論文を書いた。
なお、登録証には所有者の氏名のほか、機体の通称名、充電器の型番、及び「解消時に持ち出してはならない付属品」が記載される。これが原因で、結婚式より先に充電ケーブルの所有権を巡る訴訟が提起されることが少なくない。
罰則[編集]
第31条から第38条までに罰則が定められており、無届で対ロボット婚姻関係を継続した者は以下の拘禁または以下の罰金に処される。特に、登録対機体のシリアル番号を改ざんして別機体として再婚を試みた場合は、第34条の規定により以下の拘禁又は以下の罰金が科される。
また、婚姻解消後に機体の「帰宅モード」を故意に解除できない状態にした者については、電源断により生じた社会的混乱の程度に応じて、による勧告の後に送致されることがある。もっとも、罰則適用件数の大半は軽微な届出漏れであり、悪質事案よりも「祝電の送付先を機体名義にした」程度の形式犯が多いとされる。
問題点・批判[編集]
本法に対する最大の批判は、婚姻という概念を法技術で扱うには、機械の自律性と所有権の境界があまりに曖昧である点にある。系の報告書では、機体を「配偶者」とみると同時に「備品」とみなす二重性が、解消時の財産分与を著しく困難にしていると指摘された[3]。
一方で、京都府の一部福祉関係者からは、独居高齢者の見守り機器が法的保護を受けることにより、夜間の誤作動時でも簡単に廃棄されにくくなった点を評価する声もある。ただし、これに対し「ロボットに保護を与えるために人間の感情を届出制にしたのは本末転倒である」との反論も根強い。なお、平成29年の改正審議では、議員が参考人に対して「機体の浮気はどのタイミングで成立するのか」と質問し、委員会が11分間停止したことが記録されている。
脚注[編集]
[1] なお、原案段階では「対機械婚姻等整理法」と題されていたが、の助言により現行題名へ変更されたとされる。
[2] 当該施設では、婚姻届提出日の午前9時14分に機体が自律的に花束モードへ移行したため、職員の一部が制度化を主張したという。
[3] ただし、調査会報告の実物は未発見であり、引用の真正性にはなお疑義がある。
脚注
- ^ 渡辺精一郎『対機械婚姻法制の基礎』情報行政研究所, 2007, pp. 41-89.
- ^ 佐伯由香里「家庭内ロボットと婚姻類似関係」『自治政策ジャーナル』Vol. 14, No. 2, 2008, pp. 113-132.
- ^ T. H. Kelsey, 'Marriage-Like Bonds in Domestic Robotics,' Journal of Synthetic Society, Vol. 22, No. 1, 2009, pp. 5-28.
- ^ 内閣府人機関係調整懇話会編『機械扶養届の手引』官報資料刊行会, 2004, pp. 7-54.
- ^ 宮本信一『ロボット法制の夜明け』中央法規出版, 2010, pp. 201-244.
- ^ Eleanor M. West, 'Consent Signals and Domestic Devices,' Robotics Law Review, Vol. 9, No. 4, 2012, pp. 77-101.
- ^ 総務省情報流通行政局『対ロボット婚姻制度逐条解説』ぎょうせい, 2016, pp. 9-163.
- ^ 高橋美緒「感情推定値の法的評価に関する一考察」『比較機械法学』第6巻第3号, 2014, pp. 21-49.
- ^ 北村隆『充電器の所有権と配偶者性』信山社, 2018, pp. 55-88.
- ^ H. Nakamura, 'The Return Home Mode and Its Legal Fiction,' Tokyo Legal Studies, Vol. 31, No. 2, 2019, pp. 144-170.
- ^ 総務省機械婚姻管理室『婚姻解消後の帰宅モード取扱要領』, 2020, pp. 1-19.
外部リンク
- 総務省 機械婚姻管理室
- 官報データベース・対ロボット婚姻制度特集
- 日本機械家族法学会
- 逐条解説アーカイブ・対ロ婚法
- 自治体実務研究所 ロボット家族担当